こんにちは。行政書士の稲福です。この記事では、令和5年1月10日から受付が開始された建設業許可等電子申請システム『JCIP』について解説をしたいと思います。
建設業許可申請は、従来の書面での申請に加え、オンライン上でシステムを用いての申請が可能となりました(書類等もデータ添付により提出可)。
このオンライン化により、行政手続きに係る業務負担が軽減されることによる利便性の向上が見込まれており、今後も普及していくことが期待されております。
そこで、まずは『JCIP』の概要と大まかな仕組みについて現時点(令和6年4月現在)でわかっていることをこの記事でお伝えできればと思います。
JCIP(建設業許可等電子申請システム)の概要
JCIP(建設業許可等電子申請システム)とは
JCIP(Japan Construction Industry electronic application Portal)とは、建設業許可等のオンライン申請システムのことで、正式名称は『建設業許可・経営事項審査電子申請システム』といいます。
そして、JCIP導入の目的は以下の2点となります。
☑建設業の働き方改革推進の一環として、申請者・許可行政庁の事務負担を軽減し、生産性の向上を図ること
☑新型コロナウイルス感染症の拡大等を踏まえ、非対面での申請手続を行うことができる環境を整備すること
なお、JCIPのシステムを利用するためには、事前にデジタル庁が提供する『GビズID(gBizID)』のアカウントを取得する必要があります。
オンライン化に至った背景
従来、建設業許可申請は書類申請のみでしたが、申請準備、審査が申請者及び行政双方にとって大きな負担となっていました。
そのような経緯があり、行政側は建設業の働き方改革推進の一環として、申請者・許可行政庁の事務負担を軽減し生産性の向上を図ることを目的として、建設業許可についての全国統一電子申請システム(JCIP)システムの構築に取り組んできたという背景があります。
オンライン化によるメリット
前述のとおり、建設業許可等電子申請システム(JCIP)利用により、申請業務における利便性の向上が見込まれます。以下、オンライン化による具体的なメリットについて列挙してみます。
①書面での原本提出が不要なため、データ入力と書類添付のみで申請が可能である。
②代理申請は、GビズID(gBizIDプライム)による委任関係を用いてシステム上で委任状を作成し承認するため手続きが簡易である(紙面での委任状の作成は不要)。
③書面申請と比較して、省略可能な情報入力や書類が多い。
④申請手数料を電子納付できる(証紙等での納付が不要)。
⑤受付状況をネット上で確認することができる
電子申請では大量の書面を持ち運んだり郵送する手間が省け、データでのやりとりができるようになるため、大変便利ですね。
また、他機関のシステムとのバックヤード連携により、申請時に添付する書類を省くことができたり、データ入力が省略できるようになるなど申請手続きが簡略化されていることも特筆すべきことです。
ここで一点注意が必要なのは、建設業許可申請の代理では必ず『gBizIDプライム』のアカウントを取得する必要があるということです(gBizIDエントリーは不可)。
また、gBizIDを持たない申請者からの『委任申請書』も使うことができませんので、こちらも注意が必要です。
なお、バックヤードとの連携により提出を省略できる書類は以下のとおりです。
【対象となる資料】 | 【具体的なメリット】 | 【連携先機関】 |
☑健康保険・厚生年金保険「領収証書は納入証明書」の写し | 年金事務所での請求又は郵送請求(標準処理時間3日)手続きが不要となる。 紙書類の複写・送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 厚生労働省(日本年金機構) |
☑登記事項証明書(商業登記) | 法務局での請求又はオンライン請求手続き、手数料(480~600円)が不要となる。 紙書類の送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 法務省 |
☑法人税・所得税納税証明書 | 税務署での請求又はオンライン請求手続き、手数料(370~400円)が不要となる。 紙書類の送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 国税庁 |
☑身分証明書 | 本籍地のある市区町村での請求、郵送手続き、手数料(300円程度)が不要となる。 紙書類の送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 総務省/市区町村 |
☑登記事項証明書(不動産登記) | 法務局での請求又はオンライン請求手続き、手数料(480~600円)が不要となる。 紙書類の送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 法務省 |
☑雇用保険:申請時の直前の「労働保険概算・確定保険料申告書」の控え・保険料の「領収済通知書」の写し | 紙書類の複写・送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 厚生労働省 |
☑法人事業税・個人事業税納税証明書 | 都道府県税事務所での請求手続き、手数料(400 円)が不要となる。 紙書類の送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 都道府県 |
☑健康保険被保険者証カードの写し | 保険者証の複写・送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 真正性が担保される。 | 厚生労働省(日本年金機構) |
☑法人番号指定通知書 ☑法人番号公表サイト画面(写し) | 法人基本3情報の入力を補助できる。 法人番号の確認が不要となる | 経済産業省 |
☑登記されていないことの証明書 | 紙書類の複写・送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 法務省 |
☑工事請負契約書、注文書、請書、請求書 等 | 紙書類の複写・送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | (一財)日本建設情報総合センター (一財)建設業振興基金 |
☑監理技術者資格者証(写し) ☑登録基幹技能者講習修了証(写し) ☑その他合格証・免許証(写し)等 | 資格者証等の複写、送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | (一財)建設業技術者センター 登録基幹技能者講習実施機関 (一財)建設業振興基金 その他試験実施機関 等 |
☑建設業退職金共済事業加入履行証明書 ☑中小企業退職金共済制度加入証明書 ☑法定外労働災害補償制度加入証明書 | 請求手続きが不要となる。 紙書類の複写・送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 紙書類の送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | (独)勤労者退職金共済機構 (公財)建設業福祉共済団等 |
☑経営状況分析結果通知書 | 審査側の入力作業コスト、ミスを削減できる。 紙書類の送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 登録経営状況分析機関 |
☑自動車検査証(写し) | 紙書類の送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 運輸局 |
☑ISO9001、14001認証登録証明書、付属書(写し) | 証明書等の複写、送付、電子ファイル化・アップロード作業を削減できる。 | 認証機関 |
対象地域について
JCIP(建築許可申請等電子申請システム)は令和6年3月時点において、次の地域を除いた44府県道で稼働しています。
☑大阪府(開始時期は未定)
☑兵庫県(開始時期は未定)
☑福岡県(開始時期は未定)
なお、京都は令和5年4月から、東京は同年10月からJCIP(建設業許可申請等電子申請システム)利用して電子申請できるようになりました。
課題について
まず、いかにGビズID(gBizID)のアカウント発行をいかにスムーズに行えるかがポイントです。
なお、申請者がマイナンバーカードを持っていないとオンライン申請ができないため、書類を郵送して申請することになりますが、この場合だと書類審査と発行までに約2週間ほどかかってしまいます(オンライン申請だと最短即日発行)。
そして、GビズIDのアカウント(gBizIDプライム)がないとJCIPの利用自体ができないので、マイナンバーカードは事前に用意しておきたいところですが、マイナンバーカード無しでGビズIDアカウント発行するまでのプロセスをいかに短くできるかが今後の課題になるでしょう。
次に、ヘルプデスク等のサポート体制をいかに充実させられるかです。
紙面による申請からオンライン申請に移行させるには、申請者に対する相応のサポート体制が必要となり、特にオンラインでの申請に不慣れな建設業者に対しは、如何にわかりやすく丁寧に説明を行えるかかがポイントで、細かいフォローが重要です。
以下、ヘルプデスクの詳細になります。
JCIPヘルプデスク(受付時間: 平日 9:00~17:00)
TEL:0570-033-730
業務内容 : 問い合わせの受付、対応記録の作成
応対時間 : 平日(土曜日、日曜日、祝日、年末年始を除く)9時~17時
受付方法 : 電話、メール
想定件数 : 2,000件/月
体制 : 5名程度(管理者、予備要員含む)
まとめ
最後までご覧頂きありがとうございました。
この記事では、JCIP(建設業許可申請等電子申請システム)に関して現時点でわかっていることを解説しました。
JCIPの利便性がより一層向上することによって、多くの建設業者様の業務負担が軽減されることを切に願っております。
未だ大阪、兵庫、福岡のオンライン申請の開始時期が未定となっておりますが、最新の情報がアップデートされ次第、当ブログでも適宜紹介していこうと思っております。
JCIPのポータルサイトのリンクも貼っておくのでよろしければ参考にして下さい。
さいごに
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所は、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をポートしております。
また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。
お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。
コメント