こんにちは、行政書士の稲福です。
この記事では、建設分野における『特定技能2号』ついてわかりやすく解説したいと思います。
『特定技能』という言葉は知っていても内容がよくわからない、1号や2号の違いがわからない、又はそもそも『特定技能』という制度がよくわからないと思っている方も多いと思います。
そこで『特技能2号』の概要をはじめ、1号と2号の違いについて、また取得要件と今後の展望についてもご紹介するので『特定技能2号』について詳しく知りたい方は是非参考にしてみて下さい。
特定技能2号とは
2019年から、外国人を新たに受け入れる制度である『特定技能』制度が始まりました。
『特定技能』制度とは、人手不足が深刻化する特定産業分野において、即戦力となる外国人労働者の受け入れるための制度です。
なお、『建設分野における特定技能制度』について別の記事で紹介しておりますので、もしよろしければ参考にして下さい。
そして特定技能制度では、新たな在留資格として『特定技能』が創設され、そこで『特定技能1号』と共に『特定技能2号』が設けられました。
特定技能2号の概要
『特定技能2号』は即戦力となりうる外国人材の中でも、『特定産業分野(中小企業や小規模事業者をはじめとして人手不足が深刻化し、国内人材の確保が困難な状況にある12の産業分野)に属する熟練した技能』を持つ外国人材を対象としています。
つまり、『特定技能2号』とは『熟練した技能を有する業務』に従事するための在留資格であり、特定技能1号の『相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務』とは異なった定義づけとなっています。
もう少しざっくりとした表現をすると、1号は3~5年現場の経験がある外国人材で、2号はリーダーや職長クラスを担当できるレベルの外国人材であると想定されています。
在留資格 | 業務内容 |
特定技能1号 | 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格 |
特定技能2号 | 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格 |
なお、『特定技能2号』は長期就業が可能となる在留資格で、更新を続けることで実質的に在留期限のない長期就業が可能とになり、また、『特定技能1号』から『特定技能2号』へ移行することにより本国から日本へ家族を呼べ寄せることができるようになるので、特定技能外国人にとっては非常にメリットが大きい在留資格となります。
その他にも、受入企業にとっては『特定技能1号』で必須だった義務的支援が『特定技能2号』では義務ではなくなりますので、管理費や登録支援機関への委託費用等のコストがかからない点も大きな魅力となります。
特定技能2号(建設)の対象分野
建設分野における『特定技能2号』の対象となる業務区分は、業務区分【土木】分野、業務区分【建築】分野、業務区分【ライフライン・設備】分野の3つになります。
3つに業務区分それぞれの現場において、複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理するもの(班長)としての実務経験が必要となります。
『特定技能1号』から『特定技能2号』への移行を考えている外国人材がいる場合、移行も考えて経験を積ませる必要があるでしょう。
1.土木分野(コンクリート圧送、とび、建設機械施工、塗装など)
2.建築分野(建築大工、鉄筋施工、屋根ふき、左官、内装仕上げ、塗装、防水施工など)
3.ライフライン・設備分野(配管、保温保冷、電気通信、電気工事など)
業務区分 | 業務内容 |
土木分野 | 【主として土木施設に係る作業】 さく井工事業/舗装工事業/しゅんせつ工事業/造園工事業/大工工事業/とび・土工工事業/鋼構造物工事業/鉄筋工事業/塗装工事業/防水工事業/石工事業/機械器具設置工事業 |
建築分野 | 【主として建築物に係る作業】 大工工事業/とび・土工工事業/鋼構造物工事業/鉄筋工事業/塗装工事業/防水工事業/石工事業/機械器具設置工事業/内装仕上工事業/建具工事業/左官工事業/タイル・れんが・ブロック工事業/清掃施設工事業/屋根工事業/ガラス工事業/解体工事業/板金工事業/熱絶縁工事業/管工事業 |
ライフライン・設備分野 | 【主としてライフライン・設備に係る作業】 板金工事業/熱絶縁工事業/管工事業/電気工事業/電気通信工事業/水道施設工事業/消防施設工事業 |
特定技能1号の場合は、土木分野・建築分野・ライフライン・設備分野の3区分内であれば、同じ区分に限り試験不要で転職が可能です。
また、特定技能1号における業務区分・技能にかかわらず、特定技能2号評価試験の合格をもって、資格取得した技能による就労が認められます。
例えば、特定技能1号で業務区分『ライフライン・設備分野』に携わっていた特定技能外国人が、特定技能2号試験で『土木』分野に合格すれば、その技能で就労できます。
ただし、受入れ事業者は実務に関連する研修・OJTに取り組み、労働災害リスクの回避に努めなければなりません。
特定技能1号と特定技能2号との違いについて
特定技能は特定技能1号と2号の2種類のビザ(在留資格)があります。
そして、それぞれ在留期間の上限や、求められる技能水準、永住権や家族の帯同が認められるかなど、さまざまな違いがあります。
まずは特定技能1号と特定技能2号の違いを表で確認していただいたうえで、それぞれの詳細について解説していきます。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間 | 1年を超えない範囲で法務大臣が個々の外国人について指定する期間ごとの更新、通算で上限5年まで(1年・6ヵ月・又は4ヵ月ごとの更新) | 3年、1年又は6か月ごとの更新(上限なし) |
技能水準 | 特定産業分野(建設)に属する相当程度の知識又は 経験を必要とする技能 | 特定産業分野(建設)に属する熟練した技能 |
日本語能力水準試験の有無 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) | 試験等での確認は不要 |
家族の帯同 | 認められない | 条件を満たせば可能 |
永住権の取得 | 認められない | 要件を満たせる可能性有り |
支援の必要の有無について | 支援計画の策定実施は義務であり必須 | 支援計画の策定実施は不要 |
試験の実施状況 | 国内外で実施中 | 国内のみで実施 |
在留期間について
特定技能1号と2特定技能の最も大きな違いは、在留期間の上限です。
1号認定では最大5年のところ、2号では制限なく日本に滞在できます。
また、更新の頻度も特定技能1号では1年・6ヵ月・または4ヵ月ごとの更新ですが、特定技能2号では3年・1年・または6ヵ月ごとと更新のスパンが長くなります。
技能水準について
特定技能1号の場合は、特定産業分野に属する『相当程度の知識又は経験』が求められ、特定技能2号は『熟練した技能』が求められます。
そして、熟練した技能とは『長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、例えば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準のもの』であると定義づけられております。
つまり、各業務区分によって技能の内容は違いますが、単純に作業するだけでなく工程指導・管理ができることが条件になります。
よって、特定技能2号のビザ(在留資格)を取得するには、長年の実務経験にもとづいて専門的な業務に従事でき、必要な場合はリーダーとして業務を統括できるようなレベルの技能が必要となり、当然ながら特定技能1号よりもはるかに高い水準の技能が求められりことになります。
そして、特定技能2号に必要な技能水準を満たしているかどうかは、産業分野ごとに行われる技能試験の他、個々人の実務経験によって判断されます。
例えば、『ライフライン・設備区分』においては、特定技能1号と特定技能2号で以下のような違いがあります。
■特定技能1号⇒「配管(指導者の指示・監督を受けながら配管加工・組立て等の作業に従事)」
■特定技能2号⇒「配管(複数の建設技能者を指導しながら、配管加工・組立て等の作業に従事し、工程を管理)」
つまり、同じ『配管』の業務であっても、特定技能2号では、他の建設技能者を指導したり、工程を管理するなどの指導的な経験が求められるということになります。
そして、建設分野においては、工程によって異なりますが技能検定1級や建設特定技能2号評価試験等をクリアする必要があります。
このように、2号認定時には各分野での技術試験を受ける必要がありますが、特定技能1号として5年間を工夫しながら真面目に働いてきた1号特定技能外国人にとってはそれほど難しいことではないでしょう(工程の管理までできるのが条件ではありますが)。
逆に特定技能1号の5年間、主体性なく受け身の姿勢で言われたことのみをして時間を過ごしてきた1号特定技能外国人にとっては少し難易度が高いかもしれません。
日本語能力水準試験の有無について
特定技能1号の場合、『技能評価試験』に加えて日本語能力を確認するための試験が行われます(ただし、在留資格の『技能実習2号』を修了した場合、技能評価試験と日本語試験が免除されます)。
一方、特定技能2号の場合は今のところ日本語試験がありませんが、今後の対象分野拡大を受けて試験実施要領が変更になり、日本語試験が開始される可能性はあります。
家族の帯同について
特定技能1号については、家族帯同が認められていませんので、日本で就労する1号特定技能外国人は単身赴任で働くしかありません。
一方、特定技能2号については、配偶者と子(父親や母親は不可)であれば要件を満たすことで本国から呼び寄せ日本での帯同が認められています。
その場合、配偶者と子については家族滞在ビザ(在留資格)が付与され、日本で生活することができます。
特定技能外国人にとって家族の存在は大きな支えとなるでしょうし、永住権を取得したい場合など、日本での生活が長くなる場合には家族を連れてくることができるのが大きな魅力です。
永住権の取得について
永住権の申請の要件のひとつに、原則として在留資格(ビザ)をもって日本国内での10年間在留することとありますが『技能実習』と『特定技能1号』の場合はその例外となっていて、永住申請に必要な10年間の在留期間にカウントされません。
しかし、『技能実習』と『特定技能1号』と異なり『特定技能2号』の在留資格で日本に在留した場合、永住申請に必要な10年間の在留期間にカウントされるため、取得してから10年を超えると永住権の申請が可能になります。
”原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。”
出入国在留管理庁/永住許可に関するガイドラインより
上記は、出入国在留管理庁のサイトに記載されている永住許可に関するガイドラインとなります。
『特定技能2号』の在留資格は在留期間の更新に上限がなく何度も更新ができ、そして取得してから10年を超えると永住権の申請が可能になります。
つまり『特定技能2号』の在留資格で10年間在留し就労すれば、永住申請の要件を満たすということになります。
支援の必要性の有無について
特定技能1号の外国人を受け入れる場合、受入れ機関は『支援計画(1号特定技能外国人支援計画)』を作成し、職業生活や日常生活、社会生活を円滑に送れるようにサポートしなければなりません。
そして、支援計画には特定技能取得者の送迎方法や支援の計画を細かく記載する必要があり、住居や口座開設の支援など、細かに記載することが義務づけられています。
さらに、これらを外国人が十分理解できる言語で記載しなければなりません。
これら全てを受入会社自身で作成することが困難な場合には、登録機関に委託して支援計画を作ってもらうことも選択肢のひとつです。
なお、過去二年間に中長期在留者(就労資格に限る)の受入れ又は管理を適正に行った実績がなかったり、過去2年以内に中長期在留者の生活相談業務を経験した者が社内にいない場合『登録支援機関』へ支援を委託しなければなりません。
また、これらの要件を満たしても、マンパワーの問題やコスト面などの理由で自社による支援が難しいことから、登録支援機関へ特定技能外国人の支援を委託するケースもあります。
一方、特定技能2号の場合、受け入れた外国人への支援は義務化されていません。
そのため、支援計画を作る手間を省くことができるため、企業にとって受け入れ時の負担が少ないというメリットがあります。
建設技能評価試験の実施状況について
『建設分野特定技能1号評価試験』については、国内外で定期的に実施されています。
2024年5月現在、海外での建設技能評価試験の試験実施国はインドネシア、フィリピン、バングラデシュ、カンボジア、インド、モンゴル、スリランカ、タイ、ウズベキスタン、ミャンマー、ネパールとなっております。
また、海外現地で試験が実施されていない場合は、短期滞在ビザなどで来日して受験することで要件を満たすことも可能です。
一方、建設分野特定技能2号評価試験ですが、すでに日本国内で実施されていますが、海外では未だ実施されておりません。
詳細に関しては、最新の情報がアップデートされ次第当ブログにて紹介していこうと思います。
特定技能2号の取得要件
『特定技能2号』のビザ(在留資格)を取得するためには、5年間が経過すれば自動的に取得できるものではなく、『建設分野特定技能2号評価試験』または『技能検定1級』(または『技能検定単一等級』)の試験に合格していることに加え、班長として1~3年の実務経験が要件とされております。
☑班長として一定の実務経験があること
☑『建設分野特定技能2号評価試験』または『技能検定1級』に合格すること
熟練した技能を有する外国人に対しては、班長としての一定の実務経験(建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験)に加えて、技能検定1級の水準に相当する『建設分野特定技能2号評価試験』(実施主体:JAC)又は『技能検定1級』に合格すれば、在留資格の審査を経て、『特定技能2号』というびざ(在留資格)が付与されます(『技能検定1級』は本来日本人向けの試験ですが『建設分野特定技能2号評価試験』は外国人専用の試験ですので、外国人しか受験することができません)。
参考までに、『建設分野特定技能2号評価試験』の土木分野における実技試験のサンプル問題を掲載します。
専門的な知識が必要なことは当然ながら、かなりのレベルの日本語能力を要求されていることがわかります。
なお、班長としての一定の実務経験とは、具体的には、『建設キャリアアップシステム』におけるレベル3(職長レベルの建設技能者)を想定しています(建設キャリアアップシステムによる能力評価基準の設定のない職種にかんしては実務経験が「就業日数(職長+班長)が3年(勤務日数 645 日)以上であること」とする)。
つまり、3つに業務区分それぞれの現場で複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理するもの(班長)としての実務経験が必要です。
したがって、1号で在籍している上限5年間の間に、いかにこの試験と実務経験の要件を満たせるように教育・育成していけるかが非常に大切なポイントとなってきます。
実際に『特定技能1号』でいる全員が『特定技能2号』に移行できるわけではないと想定されますので、計画的な人材育成を策定し、優秀な人材を少しでも多く残せるような対策が必要となります。
なお、『特定技能2号』で定める技能水準を有していると認められる者であれば、『特定技能1号』を経なくても『特定技能2号』の在留資格を取得することは可能となります。
また上述のとおり、現時点では特定技能2号の在留資格を得るために必要となる日本語試験の要件はありません。
『特定技能2号』取得のための対策について
前述のとおり『特定技能2号』へ移行するための要件は大きくわけて『建設分野特定技能2号評価試験試験』合格と『班長としての実務経験』となります。
まずは『建設分野特定技能2号評価試験試験』に合格しないことにはいくら実務経験があっても要件を満たしませんので、この技能評価試験に合格することが大前提となります。
十分な試験対策をせずに特定技能1号の上限である5年間を過ごしてしまうと、いざ2号に移行しようと思っても『建設分野特定技能2号評価試験』合格という壁を超えられないというケースも多々あります。
そして、『建設分野特定技能2号評価試験』は当然のことながら日本語にて行われるため、日本語での読解や漢字の読み書きが必要になります。
そのため、まずは、5年の間にいかにして特定技能外国人日本語のレベルを底上げできるかが受入企業にとっては重要で、会社として試験合格に向けての全面的なバックアップも必要となるでしょう。
また、『建設分野特定技能2号評価試験』に合格できたとしても、班長として2~3年(分野による)の実務経験がないと『特定技能2号』へ移行はできません。
班長としての実務経験、すなわち日本語でしっかりと他の従業員に教育ができるレベルなのか否かが問われているということになります。
試験における読み書きのみで日本語のレベルを問うだけでなく、コミュニケーションにおいてもビジネスレベルの日本語能力が求められているということになります。
したがって、2号に移行するには、ペーパーテストの読み書きができる日本語のレベルアップと、班長として活躍できるビジネスレベルでの会話力をいかに5年間の間に養成するかが重要なポイントとなります。
そして、受入機関側としても『特定技能2号』移行を視野にいれた長期育成プランが不可欠で、また特定技能外国人が技能評価試験に合格するのため、時間的な面や金銭的な面でバックアップすることも必要になるでしょう。
まとめ
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
特定技能1号だと在留可能期間が最大5年という制約があるため、特定技能1号からどのように移行できるのか必要条件や対応について考えておくことが大切です。
また、特定技能1号の間に技能試験をパスするだけの技能を取得しておくことで、2号が取得しやすくなりますので、長く日本に在留しながら就労したい1号特定技能外国人は、『特定技能2号』移行への準備をしながら特定技能1号の期間を過ごしてみるとよいでしょう。
同様に、外国人材を長期間雇用したいと考えている受入企業側も『特定技能1号』から『特定技能2号』へ移行することを見据えた採用・人材育成を行うことも検討してみてください。
受入企業側にも特定技能外国人側にもメリットがある『特定技能2号』の制度を正しく理解し、即戦力となる外国人労働者をサポートしていきましょう。
さいごに
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所では、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をサポートしております。
また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。
お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。
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