こんにちは、行政書士の稲福です。
この記事では、『FITS(国際建設技能振興機構)』についてわかりやすく解説していきます。
特定技能の建設分野において、特定技能外国人を受け入れるためには『JAC(建設技能人材機構)』団体に直接または間接的に加入をしなければなりません。
そしてJACは、特定技能外国人の適正な就労環境を確保するため、『企業への巡回指導』及び『母国語相談ホットライン』等の業務を『適正就労監理機関』であるFITSに委託して実施しております。
また、特定技能外国人受入後に受講が義務付けられている『スタートアップセミナー(受入後講習)』もFITS独自の業務として行います。
そこでこの記事では、FITSがどのような機関で具体的にどのような業務を担っているのかを中心に解説していきたいと思います。

FITSの役割について


FITSは、建設分野をはじめとする技術・技能・知識を習得・実践しようとする各国の人材の受入れや雇用、育成等、特定技能外国人の適性な就労環境確保のための必要な支援等を行う団体として設立されました。
そしてFITSは、平成27年3月からは国土交通大臣より適切な就労環境を保持させる能力があると認められた建設分野における『適正就労監理機関』となり、国土交通省の委託により建設分野の特定技能外国人を正しく雇用して育成するためのサポートをしております。
また、建設分野において特定技能外国人を受入れるには事前に『建設特定技能受入計画』を作成し、国土交通省による認定審査を受ける必要があるのですが、受入後に適正な就労が行われているかどうかを継続的に確認するのもFITSの業務になります。
『建設特定技能受入計画』に関しては、別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
このように、建設分野において特定技能外国人を受け入れる場合はFITSのサポートを受けることが必須となります。
そして、その具体的な業務として①事前ガイダンスや生活オリエンテーション、②適正契約締結サポート(事前巡回指導)、③スタートアップセミナー(建設特定技能受入後講習)、④受け入れ企業への巡回指導、⑤母国語相談ホットライン、⑥外国人材の表彰の6つがあります。
①事前ガイダンスや生活オリエンテーション
②適正契約締結サポート(事前巡回指導)
③スタートアップセミナー(受入後講習)
④受け入れ企業への巡回指導
⑤母国語相談ホットライン
⑥外国人材の表彰
なお、前述の『特定技能受入計画』にて、事前に国土交通省の認定を受けるために必要になってくるのが、特定技能外国人の受入後に②適正契約締結サポート(事前巡回指導)の受入れor③スタートアップセミナー(受入後講習)を受講することに加え、定期的な④受け入れ企業への巡回指導を受けることに同意することです。
参考までに『建設特定技能受入計画』が国土交通省の認定を得るために、クリアすべき建設分野特有の基準を挙げてみます。
☑建設業の許可を受けていること
☑建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録
☑JAC(建設技能人材機構)への加入
☑国内人材確保に努めていること(ハローワーク求人票の提出)
☑同一技能・同一賃金、月給制、昇給がある
☑重要事項について、母国語による書面での事前説明
☑特定技能外国人の受入れ人数が常勤職員の数を超えないこと
☑安全衛生教育の実施、技能に関する適切な教育機会を提供すること
☑特定技能外国人の受入後、FITSによる事前巡回指導もしくは受入後講習を受講させること
☑特定技能外国人の受入後、FITSによる巡回指導による確認を受けること
なお、受入後講習は従来は15,400円(税込)がかかっていましたが、2023年3月1日以降実施の講習は特定技能外国人受入事業実施法人のJACが負担することになりました。
次項では、それぞれの具体的な業務内容について解説していきたいと思います。
FITSの業務内容について

①事前ガイダンスや生活オリエンテーション
受入企業は一定の要件を満たせば、『登録支援機関』へ特定技能外国人の支援業務を委託せずに自社ですべての支援業務を行う『自社支援』が可能になります。
登録支援機関に関しては別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にしてみて下さい。
その際には『事前ガイダンス』や『生活オリエンテーション』の実施をFITSへ『一部委託』という形で委託することができ、FITSは定額かつ適正費用にて行うこととされています。
なお『事前ガイダンス』は、特定技能外国人が日本へ入国する前に仕事内容や入国手続きなどについて、テレビ電話などで直接本人に対して説明を行うもので、『生活オリエンテーション』は、入国後や在留資格取得後に行うのが一般的です。
『事前ガイダンス』や『生活オリエンテーション』の実施を含む特定技能外国人への『義務的支援業務』に関しても別の記事で紹介しておりますので、よろしければ参考にしてみて下さい。
『生活オリエンテーション』に関しては8時間以上の時間をかけ実施することとされており、日本で生活するにあたって必要なことや注意すべきことにについて本人が理解できる言語にて丁寧に説明しなればなりません。
②適正契約締結サポート(事前巡回指導)
受入企業は、特定技能外国人の受入れにあたり、国交省が定める基準を満たすよう雇用条件等を定め、重要事項を外国人が十分に理解できる言語で説明したうえで、特定技能の雇用契約を締結する必要があります。
しかし実際には、雇用契約の内容に不備があったり、特定技能外国人の日本語能力の問題で正しく伝わっておらず、あるいは理解不足のため往々にしてトラブルが起きがちです。
そこでFITSは、JACからの委託に基づき、特定技能外国人の受入れを予定する企業が希望し、かつ同企業による適切な受入れが見込まれる場合、事前巡回指導を通じて、中立的な立場から適正な契約締結をサポートします。
具体的には、受入企業からの要望に応じて重要事項事前説明と雇用契約の締結サポート(雇用契約書等の締結時の立会いや外国人と面談し、雇用契約の重要事項等を理解しているかの確認)を行っていますが、これらサポートの活用は無償となっており、また受入企業の任意となります。
なお、事前巡回指導で重要事項事前説明及び雇用契約締結の立会いを受けた1号特定技能外国人は受入後講習(スタートアップセミナー)の受講が免除される他、『特定技能受入計画』の認定審査における差戻の防止・審査の迅速化に寄与するなどのメリットがあります。

《事前巡回指導の概要》
☑国交省への建設特定技能受入計画申請前に実施
☑重要事項事前説明書・雇用契約案の作成に関する企業への指導及び助言
☑重要事項事前説明・雇用契約締結に立会い、適正な契約締結を確認
☑特定技能外国人になろうとする者と面談し、契約内容等に関する理解度を確認
また、前述のとおりオプション(有償)で『事前ガイダンス』の実施も委託することができます。
※令和6年6月現在、対象言語は中国語・ベトナム語・インドネシア語・フィリピン語のみとなっています。
③建設特定技能受入後講習(スタートアップセミナー)
FITSの業務のうち、メインとなる業務のひとつが『受入後講習(スタートアップセミナー)』です。
建設分野において特定技能外国人を受入れる企業は、受入後(就労開始日からおおむね3ヶ月以内)に適正就労監理機関であるFITSが実施するこの『受入後講習(スタートアップセミナー)』を受講することが義務付けられております。
この『受入後講習(スタートアップセミナー)』では、建設分野の特定技能外国人が安心して目標をもって仕事に打ち込むことができるよう、受入れ・保護の仕組みについて理解を深め、自らの雇用条件等を再確認するとともに将来のキャリアについて考える機会を提供することを目的に行われます
例えば『受入後講習(スタートアップセミナー)』では、特定技能外国人が受入計画の内容を理解できているかを確認したり困ったときの相談場所などの説明の他、二重契約や虚偽の申請がないかの確認も母国語の通訳をつけて行っております。
これらが実施されることにより、特定技能外国人本人が特定技能制度のしくみや賃金・業務内容などの企業との契約内容をしっかり理解することができ、ひいては企業との信頼関係が構築され外国人とのトラブル・引き抜きの防止につながるという効果が期待できるというわけです。
ただし、前項で解説した『事前巡回指導』で重要事項事前説明および雇用契約締結の立会いを受けたり、入国前に特定技能外国人受入事業実施法人の同様のセミナーを受講した特定技能外国人にかんしては、この『受入後講習(スタートアップセミナー)』の受講は免除されますので、受け入れ予定の特定技能外国人が同じようなセミナーを現地で受けていないか事前に確認しておきましょう。
なお実施費用に関しては、2023年3月1日以降はJACが負担することになったため、受入企業側の費用負担はなくなりました。

④受け入れ企業への巡回指導
『受入後講習(スタートアップセミナー)』の受講に加え、もうひとつ受入企業に義務付けられているのが『受け入れ企業への巡回指導』です。
FITSは、1年に1回以上の頻度で受け入れ企業へのを巡回訪問を行い、『建設特定技能受入計画』が適切に実施されているか(受入計画に沿った就労が行われているか)を下記の方法で確認し、必要な場合には指導・助言を行います。
☑受入れ責任者・担当者の方からのヒアリング
☑賃金台帳、出勤簿等の関係書類の確認
☑特定技能外国人との母国語での面談
そして特定技能外国人へのヒアリングや面談を通じ、気が付いた点には助言をまた違反があれば文書及び口頭で改善指導を行いますが、重大な違反(労基法違反など)がある場合には国による監査対象にもなり得ます。
そして、巡回指導・監査の結果、受入計画の認定取り消しとなった場合には在留資格にも影響するため注意が必要です。
また巡回指導訪問に先立ち、特定技能外国人の受入れ開始後まもないタイミングで受入企業宛てに『調査票』を送付し、質問事項への回答や必要資料の提出を求めることにより受入状況について確認する『受入状況確認』も実施しています。
⑤母国語相談ホットライン
FITSでは、特定技能人材の苦情や相談に母国語で対応する窓口として『母国語相談ホットライン』を用意して、特定技能外国人が母国語で相談ができる環境を整えております。
『母国語相談ホットライン』では、特定技能外国人からの苦情又は相談に対して受入企業を介さずに直接対応し速やかに必要な対応を実施することになっており、巡回指導・母国語相談ホットライン業務の実施を通じて受入企業による以下の行為を発見した場合には、JACによる改善指導を行い、当該指導の内容を国土交通省に報告します。
☑認定受入計画に違反する行為
☑労働関係法令、出入国管理法その他関係法令への違反が疑われる行為
☑1号特定技能外国人の適正な就労環境の確保に支障を来す行為
そして国土交通大臣は、JACの改善指導を受けた受入企業や認定受入計画の実施状況を重点的・定期的に確認する必要があると判断した受入企業については、重点監査企業として適正就労監理機関であるFITSに監査をさせることにより『建設特定技能受入計画』の適切な実施を担保しております。
この『母国語相談ホットライン』では、平日と休日の固定日における電話相談や24時間受付のメール相談もできるので、何かわからないことがあったり困ったりしたときには気軽に相談ができます。
なお、電話相談において対応可能な言語(2024年6月現在)は、中国語、ベトナム語、インドネシア語、フィリピン語(タガログ語)および英語、カンボジア語(クメール語)、ミャンマー語になります。
上記7つの言語以外が母国語の外国人にかんしては、hotline@fits.or.jp宛てに母国語でメールを送れば数日以内に母国語で回答がくることになっております。
⑥外国人材の表彰
FITSでは建設現場での指導的役割を目指す外国人技能者、外国人材の育成と処遇改善に取り組む企業、外国人材との接点を契機に新たな事業を展開する企業等を表彰し、外国人材との共生社会の実現をめざします。
2024年も『外国人材とつくる建設未来賞(国土交通大臣賞)』を開催し、建設技能やコミュニケーションスキルの習得が顕著な特定技能外国人、さらには、外国人材の育成に尽力されている企業や団体と、その受入れを契機に新たな事業を展開されている企業も対象とし、様々な努力、工夫を重ねる多くの皆様の活動を表彰しました。
このようにFITSでは、有能な外国人や企業を表彰することで、建設分野の技能や育成スタイルの向上を応援しており建設業における外国人材との共生を推進し、ひいては持続可能な建設業の実現を目指しています。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
この記事では、『FITS(一般財団法人国際建設技能振興機構)』についてその役割や業務内容を中心に解説しました。
FITSは、建設分野で働く特定技能外国人の適正な就労をサポートしている機関で、その業務を通じ特定技能外国人と受入企業の双方へ必要な支援を実施しております。
深刻な人手不足にあえぐ建設業界においては、新たな労働力の担い手となる外国人労働者との共存は不可欠です。
サスティナブルな建設業の実現のため、今後『適正就労監理機関』としてのFITSの役割はますます重要になってくることでしょう。
さいごに
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所では、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をサポートしております。
また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。
お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。



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