こんにちは、行政書士の稲福です。
この記事では、建設分野の特定技能外国人の適正な就労を支える『FITS(一般財団法人国際建設技能振興機構)』について、わかりやすく解説します。
建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、『JAC(一般社団法人建設技能人材機構)』の賛助会員として直接加入するか、JACの正会員である建設業者団体へ加入し、間接的にJACの会員となる必要があります。
JACは、特定技能外国人の適正な就労環境を確保するため、受入企業への巡回指導や母国語相談ホットラインなどの業務を、適正就労監理機関であるFITSへ委託して実施しています。
また、FITSは、建設分野の特定技能外国人を対象とした『スタートアップセミナー(建設特定技能受入後講習)』も実施しています。特定技能外国人は、原則として受入れ後にこの講習を受講する必要がありますが、事前巡回指導で重要事項の説明や雇用契約締結の立会いを受けた場合などには、受講が免除されることがあります。
そこでこの記事では、FITSがどのような機関なのか、受入後講習、巡回指導、母国語相談ホットラインなど、具体的にどのような業務を担っているのかをわかりやすく解説します。

- 建設特定技能でFITSが関わる理由
- FITSが担う適正就労監理機関としての役割
- 事前ガイダンス・生活オリエンテーションの内容
- 受入後講習・スタートアップセミナーで確認されるポイント
- 巡回指導で賃金台帳・出勤簿・本人面談が行われる理由
- 母国語相談ホットラインや受入計画違反の注意点

FITSの役割について

FITSは、外国人建設技能者が安心して働き、生活できる環境を整えるとともに、受入企業による適正な雇用や人材育成を支援することを目的として活動する団体です。
FITSは、2015年から外国人建設就労者受入事業の制度推進事業実施機関として、外国人建設就労者の適正な受入れに関する業務を行ってきました。その後、在留資格『特定技能』の創設に伴い、建設分野の特定技能外国人の適正な就労環境を確保する『適正就労監理機関』としての役割を担うようになりました。現在は、JACからの委託を受け、受入企業への巡回指導、特定技能外国人との母国語による面談、相談ホットラインなどを通じて、雇用条件や就労環境に問題がないかを継続的に確認しています。
また、建設分野で特定技能外国人を受け入れるためには、受入企業が事前に『建設特定技能受入計画』を作成し、国土交通大臣の認定を受けなければなりません。FITSは、認定後も受入計画に沿った適正な雇用や就労が行われているかを確認し、必要に応じて指導や助言を行います。
『建設特定技能受入計画』の認定要件や申請方法については、別の記事で詳しく解説していますので、よろしければ参考にしてください。
このように、建設分野で特定技能外国人を受け入れる場合には、受入後講習や巡回指導などを通じて、FITSが受入れ後の適正な就労監理に関わることになります。
FITSが行う主な業務には、①事前ガイダンス・生活オリエンテーション、②適正契約締結サポート(事前巡回指導)、③スタートアップセミナー(建設特定技能受入後講習)、④受入企業への巡回指導、⑤母国語相談ホットライン、⑥外国人材・受入企業等の表彰があります。
ただし、これらすべての利用が一律に義務付けられているわけではありません。事前ガイダンスや生活オリエンテーションの委託、適正契約締結サポートなどは任意で利用できる業務です。一方、受入後講習は原則として受講が必要であり、受入企業への巡回指導には協力しなければなりません。
なお、『建設特定技能受入計画』の認定を受けるためには、受入企業が、FITSによる適正就労監理に協力することが求められます。
具体的には、特定技能外国人の受入れ前に②適正契約締結サポート(事前巡回指導)を利用するか、原則として受入れ後に③スタートアップセミナー(建設特定技能受入後講習)を受講させる必要があります。さらに、受入れ後に行われる④受入企業への巡回指導に協力することについても、あらかじめ同意しなければなりません。
参考として、『建設特定技能受入計画』について国土交通大臣の認定を受けるために満たす必要がある、建設分野固有の主な基準を以下に整理します。
なお、建設特定技能受入後講習の受講料は、従来15,400円(税込)とされていましたが、2023年3月1日以降に実施される講習については、特定技能外国人受入事業実施法人であるJACが負担しています。そのため、現在、受入企業や特定技能外国人本人に受講料の負担はありません。
次項からは、FITSが行うそれぞれの業務について、具体的に解説します。
FITSの業務内容について
FITSは、建設分野の特定技能外国人が適正な環境で安心して働けるよう、受入れの各段階に応じた業務を行っています。その内容は、雇用契約締結前のサポートから、受入れ後の講習、巡回指導、母国語による相談対応まで多岐にわたります。
一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS)は、 建設分野の特定技能外国人の適正な就労環境を確保する 「適正就労監理機関」として、 受入企業への巡回訪問、受入れ後講習、母国語による相談対応などを行っています。
建設分野で特定技能外国人を受け入れる場合は、 在留資格の手続だけでなく、 FITSによる受入れ後講習や巡回訪問など、建設分野独自の仕組み についても確認しておくことが重要です。
FITS|特定技能に関する業務を見る FITSについて確認するここからは、FITSが担う主な業務について、それぞれ具体的に解説します。
①事前ガイダンスや生活オリエンテーション
受入企業は、支援責任者・支援担当者の選任や外国人の受入れ・相談対応に関する実績など、法令上の要件を満たしている場合には、登録支援機関へ委託せず、1号特定技能外国人に対する支援を自社で実施する『自社支援』を選択できます。
一方、自社だけで適切な支援体制を整えることが難しい場合には、支援計画の全部の実施を登録支援機関へ委託することができます。登録支援機関の役割や委託できる支援業務については、別の記事で詳しく解説していますので、よろしければ参考にしてください。
自社支援を行う受入企業は、義務的支援のうち、『事前ガイダンス』や『生活オリエンテーション』の実施を、FITSへ一部委託することができます。FITSでは、これらの支援を外国人が十分に理解できる言語で実施しており、費用については所定の料金が設定されています。
『事前ガイダンス』は、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請を行う前に、労働条件、入国・在留手続、保証金や違約金の有無、相談窓口などについて、対面またはテレビ電話等により本人へ説明する支援です。一方、『生活オリエンテーション』は、原則として入国後または特定技能への在留資格変更後に、日本の生活ルール、交通、医療、防災、行政手続、相談窓口などを説明する支援です。
なお、一部の支援をFITSへ委託した場合でも、支援計画全体を適正に実施する責任は受入企業に残ります。事前ガイダンスや生活オリエンテーションを含む『義務的支援』の具体的な内容については、別の記事で詳しく解説していますので、よろしければ参考にしてください。
『生活オリエンテーション』は、原則として8時間以上かけて実施する必要があります。日本で生活するうえで必要となるルールや注意事項、行政手続、医療、防災、交通、相談窓口などについて、特定技能外国人が十分に理解できる言語を用いて、丁寧に説明しなければなりません。
②適正契約締結サポート(事前巡回指導)
受入企業は、建設分野の特定技能外国人を受け入れるにあたり、国土交通省が定める基準に適合するよう、報酬、昇給、業務内容、労働時間などの雇用条件を定めなければなりません。また、雇用契約を締結する前に、重要事項について、外国人本人が十分に理解できる言語で説明する必要があります。しかし、実際には、雇用契約や重要事項事前説明の内容に不備があったり、説明内容が外国人本人へ十分に伝わっていなかったりすることで、受入れ後にトラブルが生じることがあります。
そこでFITSは、JACからの委託に基づき、特定技能外国人の受入れを予定する企業から希望があり、適正な受入れが見込まれる場合に、『適正契約締結サポート(事前巡回指導)』を実施しています。具体的には、受入企業に対して重要事項事前説明書や雇用契約書案に関する指導・助言を行うほか、重要事項の事前説明や雇用契約締結の場に立ち会い、外国人本人との面談を通じて、雇用条件や重要事項を正しく理解しているかを確認します。
このサポートは、受入企業の希望に基づいて無償で実施される任意の制度です。なお、FITSが申請書類や雇用契約書を受入企業に代わって作成する制度ではなく、適正な説明と契約締結を確認するための指導・助言や立会いを行うものです。事前巡回指導において、重要事項の事前説明と雇用契約締結の立会いを受けた1号特定技能外国人については、原則として、受入れ後の『スタートアップセミナー(建設特定技能受入後講習)』が免除されます。
また、申請前に雇用条件や説明内容を確認してもらうことで、『建設特定技能受入計画』の認定申請における不備や差戻しを防ぎ、審査を円滑に進める効果も期待できます。

《事前巡回指導の概要》
☑国交省への建設特定技能受入計画申請前に実施
☑重要事項事前説明書・雇用契約案の作成に関する企業への指導及び助言
☑重要事項事前説明・雇用契約締結に立会い、適正な契約締結を確認
☑特定技能外国人になろうとする者と面談し、契約内容等に関する理解度を確認
また、受入企業は、FITSの『適正契約締結サポート(事前巡回指導)』を利用する際に、オプションとして、1号特定技能外国人に対する『事前ガイダンス』の実施を有償で委託することもできます。
事前ガイダンスは、外国人本人が十分に理解できる言語で実施する必要があります。FITSが対応できる言語や利用料金は変更される可能性があるため、委託を希望する場合には、申込み前にFITSへ最新の対応状況を確認することが重要です。
③建設特定技能受入後講習(スタートアップセミナー)
FITSの主要な業務の一つが、『建設特定技能受入後講習(スタートアップセミナー)』の実施です。
国土交通大臣から『建設特定技能受入計画』の認定を受けた受入企業は、原則として、特定技能外国人の受入れ後、おおむね6か月以内にFITSが実施する受入後講習を受講させる必要があります。なお、講習は業務の一環として受講させるものであり、有給休暇を使用させて参加させるものではありません。
この講習は、建設分野の特定技能外国人が、受入れや保護の仕組みについて理解を深め、安心して目標を持って働けるようにすることを目的としています。講習では、自らの雇用条件を再確認するとともに、将来のキャリアについて考える機会も設けられます。具体的には、特定技能制度、支援制度、母国語相談ホットライン、雇用契約、受入計画、労働安全衛生、技能や日本語能力の向上、日本で安心して生活するための注意点などについて説明が行われます。
講習は、ルビ付きの日本語と母国語を併記した教材を使用し、日本語による講義に通訳者を配置する形で実施されます。また、当日は、重要事項事前説明書、雇用契約書・雇用条件書、直近1か月分の給与明細書などを持参し、実際の雇用条件についても確認します。
これにより、特定技能外国人本人が、賃金、業務内容、労働時間などの契約内容や、困った場合の相談先を改めて確認できるため、受入企業との認識の相違や受入れ後のトラブルを防ぐ効果が期待できます。ただし、FITSによる『適正契約締結サポート(事前巡回指導)』を受け、重要事項の事前説明と雇用契約締結の立会いが適切に行われた場合などには、受入後講習が免除されることがあります。免除の対象となるかについては、事前にFITSへ確認しておくとよいでしょう。
なお、2023年3月1日以降に実施される受入後講習の受講費は、特定技能外国人受入事業実施法人であるJACが負担しているため、受入企業や特定技能外国人本人に受講料の負担はありません。

④受け入れ企業への巡回指導
『建設特定技能受入後講習(スタートアップセミナー)』の受講とあわせて、受入企業に協力が求められるのが、FITSによる『巡回訪問(巡回指導)』です。
FITSは、建設分野の特定技能外国人が適正に受け入れられているかを確認するため、受入企業を定期的に訪問します。巡回訪問では、『建設特定技能受入計画』や雇用契約に沿った就労が行われているか、賃金・手当が適切に支払われているか、月給制や昇給が適正に運用されているかなどを確認し、必要に応じて指導・助言を行います。
主な確認方法は、次のとおりです。
また、巡回訪問に先立ち、受入れ開始後の早い段階で調査票を受入企業へ送付し、回答や関係資料の提出を求める『受入状況確認』が行われることもあります。受入企業は、巡回訪問や受入状況確認に適切に協力する必要があります。
その他にも、受入責任者・担当者へのヒアリングや特定技能外国人との母国語による面談、関係書類の確認を通じて、受入状況に問題がないかを確認します。改善が必要な事項が認められた場合には、受入企業に対して指導・助言を行います。
さらに、『建設特定技能受入計画』への違反、労働関係法令・出入国管理関係法令への違反が疑われる場合などには、JACによる改善指導や国土交通省への報告につながることがあります。重大な違反や改善が行われない場合には、国土交通省による監査や認定取消しの対象となる可能性もあります。
建設特定技能受入計画の認定が取り消された場合には、特定技能外国人の受入れを継続できなくなり、本人の在留資格や今後の就労にも影響する可能性があるため注意が必要です。
⑤母国語相談ホットライン
FITSでは、建設分野の特定技能外国人が、仕事や生活上の悩み、受入企業とのトラブルなどについて母国語で相談できる窓口として、『母国語相談ホットライン』を設置しています。
FITSでは、建設分野の特定技能外国人が、 仕事や生活上の悩み、受入企業とのトラブルなどについて相談できる 「母国語相談ホットライン」 を設置しています。
電話、FAX、メールによる相談に母国語で対応しており、 外国人本人が受入企業に直接相談しにくい場合でも利用できる相談窓口となっています。 対応言語や相談日、受付時間は変更される場合があるため、 利用前にFITS公式サイトで最新情報を確認してください。
FITS|母国語相談ホットラインを確認する FITS|特定技能の取組みを見る母国語相談ホットラインでは、特定技能外国人からの相談や苦情について、受入企業を介さず、電話、FAXまたはメールで直接受け付けています。1号特定技能外国人だけでなく、2号特定技能外国人からの相談にも対応しており、2号特定技能外国人の家族についても、生活上の困り事がある場合には地域の相談窓口を案内しています。
また、巡回訪問や母国語相談ホットラインを通じて、『建設特定技能受入計画』への違反、労働関係法令・出入国管理関係法令への違反が疑われる行為、特定技能外国人の適正な就労環境を損なう行為などが確認された場合には、FITSからJACへ情報が共有され、必要に応じてJACによる改善指導や国土交通省への報告につながることがあります。
JACによる改善指導を受けた受入企業や、建設特定技能受入計画の実施状況について重点的な確認が必要と判断された受入企業は、国土交通省による監査等の対象となることがあります。監査や確認では、FITSによる巡回訪問や受入状況確認の結果なども踏まえ、認定された受入計画が適切に実施されているかが確認されます。
母国語相談ホットラインでは、電話のほか、メールでも相談を受け付けています。電話相談の対応言語や相談日は言語ごとに異なるため、利用する際はFITSの公式サイトで最新の受付日程を確認するとよいでしょう。現在、電話相談に対応している言語は、中国語、ベトナム語、インドネシア語、フィリピン語(タガログ語)、英語、カンボジア語(クメール語)およびミャンマー語です。
これら以外の言語についても、hotline@fits.or.jpへ母国語でメールを送ることができ、通常は数日以内に母国語で回答を受けられます。
⑥外国人材の表彰
FITSでは、建設現場で指導的な役割を担うことを目指す外国人技能者や、外国人材の育成・就労環境の向上に取り組む受入企業などを表彰する『外国人材とつくる建設未来賞(国土交通大臣表彰)』を通じて、外国人材との共生と持続可能な建設業の実現を推進しています。
「外国人材とつくる建設未来賞」は、 建設技能や日本語によるコミュニケーション能力の向上に取り組み、 建設現場で指導的な役割を目指す外国人技能者や、 外国人材の育成・就労環境の向上に継続的に取り組む受入企業などを表彰する 国土交通大臣表彰です。
優れた外国人建設技能者や受入企業の取組を広く紹介することで、 外国人材との共生、技能・日本語能力の向上、就労環境の改善、 持続可能な建設業の実現 を推進することを目的としています。 FITSでも募集や受賞者に関する情報が案内されています。
国土交通省|外国人材とつくる建設未来賞 FITS|受賞者・表彰情報を見る2025年度の表彰では、建設技能や日本語によるコミュニケーションスキルの習得に積極的に取り組み、建設現場で指導的な役割を目指す特定技能外国人を対象とした『優秀外国人建設技能者賞』が設けられました。また、外国人建設技能者の技能、日本語能力および就労環境の向上に継続的に取り組む企業を対象とした『外国人材育成賞』や、建設技能、日本語能力、共生、事業展開の各分野で優れた取組を行う企業を対象とした『未来への取り組み賞』も設けられています。
このように、外国人技能者本人だけでなく、その育成や就労環境の整備に取り組む受入企業も表彰し、優良事例を広く紹介することで、建設分野における技能・日本語能力の向上や外国人材との共生を促進し、持続可能な建設業の実現を目指しています。
まとめ
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
この記事では、『FITS(一般財団法人国際建設技能振興機構)』について、その役割や具体的な業務内容を中心に解説しました。FITSは、建設分野で働く特定技能外国人の適正な就労環境を確保するため、受入後講習、受入企業への巡回訪問、母国語相談ホットラインなどの業務を行う『適正就労監理機関』です。
深刻な人手不足が続く建設業界において、外国人材が安心して働き、技能を身につけながら長期的に活躍できる環境を整備することは、今後ますます重要になります。
特定技能外国人と受入企業の双方を支え、外国人材との共生と持続可能な建設業を実現するうえで、FITSが果たす役割は、今後さらに大きくなっていくでしょう。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直


















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