こんにちは、行政書士の稲福です。
この記事では、企業がどのような流れで特定技能外国人を雇用するのか、また特定技能外国人を雇用するにあたって費用はどれくらいかかるのかについて詳しく解説していきたいと思います。
特定技能外国人を雇用するために、これから受け入れ体制を構築しようとお考えの企業様の参考になれば幸いです。
特定技能について

『特定技能』とはビザ(在留資格)の名称で、就労系ですと『技術・人文知識・国際業務』、『高度専門職』、『企業内転勤』、『技能』等があり、身分系ですと『永住者」や『日本人の配偶者等』、『家族滞在』、『定住者』などがありますが、『特定技能』も就労系に分類されるビザ(在留資格)の種類になります。
なお、『特定技能』は、人材を確保することが困難な状況にある人材を労働力として受け入れることができるビザ(在留資格)と定義づけられており、現在、建設分野の他に、農業・漁業・介護などがあり、厚生労働省・経済産業省・国土交通省・農林水産省の管轄の元、12分野において『特定技能』のビザ(在留資格)外国人材が受け入れられております。
なお、2019年に特定技能制度が創設される以前は、『技術・人文知識・国際業務』のようないわゆる高度人材のビザ(在留資格)においては上記の12分野における単純労働等は行うことができませんでしたが、これら分野における深刻な人手不足解消のためには日本人だけでは働き手が足りないことから、専門的な知識と経験を持った外国人に即戦力として働いてもらうことで人手不足を解消するべく新設されたのが、この『特定技能制度』となります。

なお、外国人材を受け入れるという点では、『技能実習』というビザ(在留資格)もありますが、それぞれ明確な違いがあります。
『技能実習』の目的は、日本の技能・技術などを開発途上地域に移転して国際協力をすることにありますが、『特定技能』は、即戦力となる外国人材の受け入れにより、日本国内の企業の人手不足を解消する目的で創設されています。
『技能実習』と『特定技能』の違いについては別の記事でわかりやすく解説しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
特定技能外国人を受入れるための要件

前述のとおり『特定技能』では、深刻な人手不足に対応するため人材の確保が困難な建設業を含む計12の特定分野において、一定の専門性や技能を有している外国人材を学歴や実務経験に関係なく雇用することが可能となりました。
ただし、特定技能外国人はどの会社でも雇用することができるわけではなく『受入機関』となる企業側が大枠で3つの基準を満たしている必要があります。
『受入機関』となる企業側が満たすべき3つの基準は下記の通りとなります。
1.受入機関自体が満たすべき基準(受入機関自体が適切であること)
2.雇用契約を結ぶうえで満たすべき基準(雇用契約が適切であること)
3.支援体制を構築する上で満たすべき基準(支援体制が整っている/支援の中立性が保たれている/適切な支援計画が立てられていること)
以下、各々の基準における詳細についてまとめてみました。
受入機関自体が満たすべき基準 | ① 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること ② 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと ③ 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと ④ 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと ⑤ 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと ⑥ 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと ⑦ 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと ⑧ 支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと ⑨ 労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が①~④の基準に適合すること ⑩ 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること ⑪ 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること ⑫ 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと ⑬ 分野に特有の基準に適合すること ※分野所管省庁の定める告示で規定 |
雇用契約を結ぶうえで満たすべき基準 | ① 分野省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること ② 所定労働時間が、同じ受入れ機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること ③ 報酬額が日本人が従事する場合の額と同等以上であること ④ 外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇に ついて、差別的な取扱いをしていないこと ⑤ 一時帰国を希望した場合、休暇を取得させるものとしていること ⑥ 労働者派遣の対象とする場合は、派遣先や派遣期間が定められていること ⑦ 外国人が帰国旅費を負担できないときは、受入れ機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑に なされるよう必要な措置を講ずることとしていること ⑧ 受入れ機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることと していること ⑨ 分野に特有の基準に適合すること ※分野所管省庁の定める告示で規定 |
支援体制を構築する上で満たすべき基準 | ①中長期在留者の雇用経験があること(次のいずれかに該当すること)。 イ)過去二年間に中長期在留者(就労資格に限る)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役員又は職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。 ロ)役員又は職員であって過去二年間に中長期在留者(就労資格に限る)の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。 ハ)イ又はロと同程度に支援業務を適正に実施することができる者として認めたもので、役員又は職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。 ②外国人が十分に理解することができる言語によって支援ができる体制を有していること。 ③支援の状況に係る文書を作成し、当雇用契約終了の日から1年以上備えて置くこと。 ④支援計画の中立な実施を行うことができる者であること。 ⑤5年以内に支援計画に基づいた支援を怠ったことがないこと。 ⑥支援責任者又は支援担当者が特定技能雇用契約の当事者である外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること。 ⑦分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。 |

受け入れ要件にも上記のようにさまざまな基準が設けられており、また、建設分野のように独自の基準(上乗せ基準)が定められていることもありますので事前に確認することが必要です。
建設分野における独自基準については、別の記事で詳しく解説しておりますので、よろしければ参考にして頂ければと思います。
なお、直近2年間で特定技能外国人を受け入れた実績がない場合、また支援を実施できる人材が社内にいない場合は、支援体制を構築する上で満たすべき基準をクリアできていないので、登録支援機関を利用することになります。
仮に上記基準をクリアできていたとしても、マンパワー不足等により自社内で支援を実施することが難しいようであれば、支援業務を委託できる登録支援機関の利用を検討されるとよいでしょう。
登録支援機関へ支援を委託した場合には、受入企業は特定技能外国人を支援する体制があるものとみなされ(支援体制を構築する上で満たすべき基準をクリア)、支援義務を負わなくなります。
特定技能外国人を雇用するまでの流れ

特定技能外国人を受入れるための要件をクリアしたうえで、特定技能外国人を実際に雇用するまでは、以下の6つのステップを踏む必要があります。
【STEP①】受入れ要件の確認
【STEP②】人材募集・面接
【STEP➂】雇用契約の締結
【STEP④】支援計画の策定
【STEP⑤】在留資格の申請(建設分野の場合は建設特定技能受入計画認定申請も必要)
【STEP⑥】就労開始・配属
なお、国外から呼び寄せるパターンと国内での転職希望者を雇用するパターンで若干流れが変わってきますので(在留資格変更許可申請<国内>or在留資格認定証明書交付申請<国外>、国外から招聘する場合の査証申請など)その点は留意する必要があります。

また、建設分野で特定技能外国人を採用する場合は、入管へ在留資格許可申請をする前に、国交省へ『建設特定技能受入計画』の認定申請をする必要がありますので注意が必要です。
なお、採用後も、書類作成から在留資格許可申請等の手続きが必要となり、実際に就労できるまでには採用が決まってから3~6か月ほどかかります(建設分野の特定技能はさらに3~4か月ほどかかります)。
実際に想定していたタイミングでの就労が叶わない可能性もあるので、特定技能外国人を雇用する際にはできるだけ早めに準備を進めておいた方がよいでしょう。
受入れ要件の確認
特定技能外国人を雇い入れるためには、まず自社が特定技能の受け入れ要件を満たしている企業かを確認する必要があります(受入機関自体が満たすべき基準をクリアしていること)。
例えば、社会保険に加入していることや納税義務を履行していること、また過去1年以内に特定技能外国人を解雇したり行方不明者を発生させたりしていないなどの条件を満たしている必要があります。
また、特定技能外国人を受け入れることができるのは前述した特定技能制度で定められた特定12分野(14業種)に限られておりますので、当然のことながらそれ以外の分野においては特定技能外国人を雇用することはできません。
特定技能外国人を受入れるための要件については別の記事でも解説しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
人材募集・面接
自社が特定技能外国人の受け入れ要件を満たしていることがわかったら、採用に向けて人材募集をして書類選考と面接を行うことになりますが、すでに日本国内に居住している外国人材なのか、現在は国外在住の外国人材なのかによって募集の手続きが異なります。
国内にいる外国人材を採用する場合には、自社ホームページや求人サイト等を用いて人材募集を行うか、または人材紹介会社を利用する方法があり、国外の外国人材を雇用する際『送り出し機関』を仲介者として外国人を雇用することが可能です。
なお、国外から外国人材を招聘する場合、国によっては必ず『送り出し機関』を利用しなければならない場合もありますが、その場合は『送り出し機関』と提携している人材紹介会社を利用することが一般的なケースになります。
また、特定技能外国人の採用には、『技能試験に合格した人材を採用する』または『技能実習2号を修了した人材を採用する』という2つのパターンがあり、とくに技能実習2号を修了している外国人であれば、日本語能力試験や技能評価試験が免除されるなどのメリットがあります。

『技能実習』から『特定技能』への移行については、別の記事でも解説しておりますので、よろしければ参考にして下さい(建設分野のみならず全分野共通の基準や要件について解説しております)。
ただし、技能実習制度は、より実態に即した在留資格へ見直すことを目的として、2023年11月24日に政府の有識者会議が廃止に関する最終報告書を取りまとめていますので、今後は、外国人材の確保・育成を目的とした育成就労制度を新たに運用する見通しです。
なお、法務省の『最終報告書たたき台(概要)』によると、この制度では基本3年の育成期間を通して特定技能1号の水準まで外国人を育成するとしており、特定技能ビザを取得する新たなルートとして普及することが見込まれております。
一方で技能評価試験に合格するパターンにおいては、対象分野における技能評価試験と日本語能力試験の合格により、特定技能外国人の人材基準を満たすことができます。
ただし、介護分野に限っては、ほかの分野と同じ日本語能力試験の合格に加え、『介護日本語評価試験』にも合格しなければなりませんので注意が必要です。
雇用契約の締結
採用したい外国人材が見つかり、特定技能ビザを取得できる見込みがあることが確認できたら、労働基準法(及び、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法等)に準じて雇用契約を締結しますが、記載すべき内容については『特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令』によって業務内容や所定労働時間、報酬などが定められており、その定められた内容に基づいて作成する必要があります。
例えば、所定労働時間が日本人従業員と同じであることや、給与の金額が日本人従業員と同等以上であること、一時帰国を希望する場合には休暇を取得させることなど、雇用契約に含めるべき内容は法律によって細かく定められており、これらの基準を満たしている必要があります。
詳しい記載内容は、以下のとおりになります。
☑雇用期間について
☑就業場所について
☑従事させる業務について
☑所定労働時間について
☑休日について
☑報酬について
☑割増賃金について
☑待遇について
☑一時帰国時の有給休暇取得について
☑帰国時の旅費の負担について
☑生活と健康のサポートについて
☑派遣先について
☑保証金や違約金の禁止について
☑退職に関する事項について
☑分野別に規定された基準に関する内容

特定技能の雇用契約については別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
なお、特定技能雇用契約書は、在留資格申請時に出入国在留管理庁へ写しを提出する必要があり、もしこれらの基準に適合していなかったり内容に不備がある場合は、雇用契約書の再提出が求められたり在留許可が下りないケースもあるので注意しましょう。
また、雇用条件に関する契約書ということもあり、内定者である特定技能外国人自身が契約内容を十分理解できることが重要で、いくら内定者である特定技能外国人の日本語が上手だったとしても、母国語でしっかりと雇用条件書の内容を伝えるべきでしょう。
というのも、特定技能制度で来日してくる外国人材は一定の日本語能力を有しておりますが、それでも難しい漢字や言いまわしなどを使ってしまうと、雇用条件などは理解できない恐れがあります。
たとえ日本語で丁寧に説明したと受入企業側が思っていたとしても、相手側である特定技能外国人が理解できていなかった場合、入社後に「このような雇用条件だとはおもわなかった」「こんな雇用条件の説明は受けていない」と不信感につながってしまい、せっかくお金をかけて採用したにもかかわらず早々に退職してしまいかねません。
また雇用契約書にかんしても、特定技能外国人の母国語や英語など、内定者である特定技能外国人本人が理解できる言語で書類を作成する必要があるため、日本語と特定技能外国人が理解できる言語を併記した『特定技能雇用契約書』および『雇用条件書』を作成することになります。
例えばベトナム人の特定技能外国人を雇用する際には、日本語とベトナム語がセットで表記された特定技能雇用契約書・雇用条件書を作成することになります。
繰り返しになりますが、雇用条件を特定技能外国人の母国語で口頭で丁寧に説明し、かつ『特定技能雇用契約書』『雇用条件書』の母国語を併記を徹底し、後々のトラブルを防ぐよう心がけましょう。
なお、建設分野においては、報酬等の労働条件に係る独自のルールがありますので留意しておきましょう。
【労働条件に係る建設分野における独自の基準について】
建設分野で特定技能外国人を雇用するにあたっては、報酬等の労働条件係る建設分野独自のルールがあります。
①報酬について
建設分野においては、出入国在留管理庁へ特定技能の在留資格の申請を行う前に、国交省へ『建設特定技能受入計画』の認定申請を行いまが、受入計画を作成を作成する際に具体的に日本人従業員の方と給与の比較を行い、この比較した日本人の給料が地域別最低賃金に1.1を乗じた金額より下回っているときは、同等以上の給料であったとしても、要件の一つである『適切な国内人材確保の取組を行っている』ということが認められず受入計画の認定は下りません(よって必然的に特定技能外国人の給与も地域別最低賃金に1.1を乗じた金額より上回ることになります)。さらに同一圏域における建設技能者の賃金水準との比較も必要となり、各都道府県労働局において公表されているハローワークの求人求職賃金を参考にして同じ地域の同業と比較して明らかに低水準の給与設定となっている場合には人手が確保できなくても当然とされ、これを理由に特定技能外国人を雇用することも認められません。
②昇給等について
雇用契約において受入企業に特定技能外国人の技能習熟に応じた昇給が義務づけられ、技能の習熟度に応じ昇給額を明確にし、かつ毎年昇給させることが求められています。そして、その昇給の予定額や昇給条件を『雇用条件書』と『重要事項事前説明書』に記載し、内定者である特定技能外国人本人が理解できる言語で説明しなければなりません。習熟度を示す指標には、実務経験年数や資格、また建設キャリアアップシステムにおける能力評価などを活用します。
なお、この昇給は、1年あたりに見込まれる1か月当たりの賃金の上昇額が千円未満である場合には、定期昇給とは認められず、国交省へ申請する『建設特定技能受入計画』は認定されませんので注意が必要です。
➂報酬の支払い形態について
特定技能外国人への給与は月給制でかつ口座振り込みにて支給しなければなりません。これは、特定技能外国人の安定的な報酬を確保するため、仕事の繁閑により報酬が変動しないこと(天候や受注状況によって基本給が大きく変動しないこと)、すなわち『月給制』により、あらかじめ特定技能外国人との間で合意を得た額の報酬を毎月安定的に支払うことが必要であるという理由からです(建設分野の過去の失踪理由の中に月給制でないため安定的に給与が支払われず不安を感じたからという声が多かったことに起因しています)。建設業の特徴として、季節や工事受注状況による仕事の繁閑により予め想定した報酬予定額が下回ることがあることがありますが、特定技能人材を受け入れる場合は、特定技能外国人の離職や失踪を避けるためにも月給制を採用しなければならないルールになっています。なお、天候や受入企業の責めに因らない事由による休業の場合には、休業手当(平均賃金の60%以上)を支払うことは認められています。そして、日本人従業員が月給制でない場合でも、特定技能人材に関しては月給制でなければならないという点には注意が必要です。また、建設業ですと、給与を現金で手渡しにしている企業方がまだ多いように見受けられますが、外国人労働者(特定技能外国人)を雇用した際には口座振り込みの手続きが必要となります。そしてこの場合、同等の技能を有する日本人の技能者に実際に支払われる1か月当たりの平均的な報酬額と同等でなければなりません。
1号特定技能外国人支援計画の策定
雇用契約を結んだ後は、支援計画の策定を行います。
特定技能外国人を受け入れる企業は、特定技能外国人が安定的かつ円滑に日本で活動を行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画である『1号特定技能外国人支援計画書』を作成し、当該計画に基づき特定技能外国人の支援を行う義務があります。
『1号特定技能外国人支援計画書』については別の記事でも解説しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
まず大前提として、受入機関は、支援計画を策定するにあたって特定技能外国人を支援できる体制を構築しなければならず、以下の支援体制において満たすべき基準をクリアする必要があります。
①中長期在留者の雇用経験があること(次のいずれかに該当すること)。
イ)過去二年間に中長期在留者(就労資格に限る)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役員又は職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。
ロ)役員又は職員であって過去二年間に中長期在留者(就労資格に限る)の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。
ハ)イ又はロと同程度に支援業務を適正に実施することができる者として認めたもので、役員又は職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。
②外国人が十分に理解することができる言語によって支援ができる体制を有していること。
③支援の状況に係る文書を作成し、当雇用契約終了の日から1年以上備えて置くこと。
④支援計画の中立な実施を行うことができる者であること。
⑤5年以内に支援計画に基づいた支援を怠ったことがないこと。
⑥支援責任者又は支援担当者が特定技能雇用契約の当事者である外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること。
⑦分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。
まず、少なくとも1名以上の中長期間日本に在留する外国⼈労働者を雇用した実績や、外国人労働者をある程度の期間にわたり受け入れた経験がある(登録支援機関や組合に委託している期間を含む)ことが必要となり、その間においても入管法をはじめ技能実習法や労働法等の外国人雇用に関連する法令を遵守していたことが要件となります。
つまり、直近2年間の内で一部期間でも雇用や管理の実績があれば、支援体制ありと認められることになります。
もし会社自体に外国人労働者の受け入れ実績がない場合には、中長期間日本に在留する外国⼈労働者の生活にかかるような相談に対応をした経験者が社内にいて、かつその経験者が『⽀援責任者』や『⽀援担当者』になれば中長期在留者の雇用経験があるという基準を満たすことができます。
会社が過去に外国人労働者の受入実績がなかったとしても、外国人労働者に生活相談に従事した経験のある従業員が1人社内にいれば、この基準をクリアできるということになります。
なお、『中長期在留者』に該当する在留資格には、日本人の配偶者等、 定住者、 技術・人文知識・国際業務、技能実習、特定技能、留学、永住者等が該当し、在留期間が3ヶ月以下の短期滞在ビザは該当しません。
次に、特定技能外国人が理解出来る言語(原則母国語)で面談をしたり、相談の対応ができる体制が常時確保されていることが必要となります。
特定技能外国人からの相談や苦情はいつ何時あるか分からないので、これらに応対するための専用の連絡先・メールアドレス等の設置をするなどして、可能な限り休日や夜間でも対応可能な体制を整えることが必要となり、また、交通事故などの緊急時にも連絡を取ることができる体制を構築することも望まれます。
そして、日本語を学習し試験に合格しているものの、言語レベルは完全ではない特定技能外国人に様々な決まり事や支援内容をしっかりと理解してもらうため、彼らが十分に理解できる言語で支援ができる体制づくりが求められます。
もし上記の対応が可能であれば、通訳者を常駐の職員として雇用することまでは必要なく、必要なときに委託する等して通訳者を確保できていれば問題ありません。
最後に、『支援責任者』および『支援担当者』についてですが、まずここでいう『支援責任者』とは、特定技能外国人を受け入れている企業の役員または職員で、支援担当者を監督する立場にあり、支援担当者が行う支援を管理・監督したりする責任者のことを指します。
そして『支援担当者』とは、特定技能外国人を受け入れている企業の役員または職員で、支援計画に沿った支援を実施することを任されている担当者のことを指しています。
そして『支援担当者』の場合は常勤であることが望ましとされ、様々な手続きの同行や、定期的な面談、入管への報告書類の作成等、外国人雇用にまつわる様々な業務を担当することになります。
なお、支援責任者と支援担当者は兼任可能のため、最低1名の人員を確保できていれば問題ありませんが、その場合においてもでもそれぞれの基準を満たさなければなりません。
支援責任者と支援担当者の詳細について別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
以上のような支援体制において受入企業が満たすべき基準を全てクリアしたうえで支援計画を策定していきますが、具体的な支援内容は以下の通りになります。
なお、特定技能外国人の受入企業は外国人が安定して働けるように、仕事面はもちろん生活面まで全面支援しなければなりません。
支援の項目 | 支援内容 |
①事前ガイダンスの提供 | 日本での実際の生活状況やルールなどのガイダンスの提供を行う。対面もしくはオンラインにて実施 |
②出入国する際の送迎 | 入国時は空港から受け入れ企業までの送迎を行い、帰国時は空港の保安検査場までの送迎、同行まで行う |
➂確保、日常生活に必要な契約支援 | 住居探しの補助や、社宅の提供、銀行口座などの開設など |
④生活オリエンテーションの実施 | 日本でのルールやマナーの説明、公共交通機関の利用方法の説明、 災害時の対応方法の説明など |
⑤公的手続き等への同行 | 必要に応じて、手続きの同行や書類作成の補助を行う |
⑥日本語学習機会の提供 | 日本語教室の紹介、手続きの補助や日本語学習教材の情報提供など |
⑦相談・苦情への対応 | 職場や生活上での相談や苦情に対して、外国人が十分理解できる言語での対応し、必要に応じて助言や指導を行う |
⑧日本人との交流機会の促進 | 地域住民との交流の場の促進や地域の行事の案内、参加の補助など |
⑨転職支援(人員整理等企業都合の場合) | 転職先探しの手伝いや推薦状の作成、求職活動のための有給休暇の付与、必要な行政手続きの情報提供など |
⑩定期的な面談の実施・行政機関への通報 | 3か月に1回以上の面談を実施、受け入れ機関が労働基準法などに違反していないかの確認など |
支援内容の詳細については別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
もし企業が支援計画の策定や実施が難しい場合には、登録支援機関に委託することも可能です。
そして、受入企業が特定技能外国人の支援計画の全部の実施を『登録支援機関』へ委託した場合は、外国人を支援する体制があるとみなされるため、支援体制において受入企業が満たすべき基準をクリアできます。
また、特定技能外国人の支援を登録支援機関に委託する場合は、登録支援機関からの要求される書類作成や情報提供のみとなり受入企業が支援業務を行うことはありません。
登録支援機関についても別の記事でも紹介しておりますので、是非参考にして下さい。
在留資格の申請(在留資格許可申請/在留資格認定証明書交付申請)
雇用契約締結後、支援計画の策定まで完了すれば、必要な書類を揃えたうえで最寄りの入管(出入国在留管理庁)へ在留資格の申請を行います。
在留資格の申請時における必要書類には、特定技能共通の書類(受入企業に係る書類・内定者である特定技能外国人本人に係る書類)と12分野それぞれで定められた分野別必要書類があります。
書類の主な内容としては、会社の情報、雇用条件について、社会保険や税金の支払いについて、本人が特定技能人材としての要件を満たしていることを示す書類などがあります。
☑受入れ企業に係る書類
☑内定者である特定技能外国人に係る書類
☑対象分野独自の書類
なお『対象分野独自の書類』に関しては、該当の分野に関する技能検定の合格証明書の写しや、特定技能外国人の受け入れに関する誓約書、事業所の概要書、建設分野においては『建設特定技能受入計画』などがあり、分野や条件ごとに必要な書類が大きく異なるので、詳細は出入国在留管理庁のWebサイトをご覧ください。
次に、誰がこの申請をできるかという点についてですが、基本的には、申請人または申請人を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、申請人の住居地または受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署へ申請を行うことができることになっております(申請人が16歳未満の子どもの場合は、父母等の法定代理人)が代理人として申請することができます)。地方出入国在留管理官署ごとの管轄区域をまとめてみましたのご参照下さい。
地方出入国在留管理官署 | 管轄する区域 |
札幌出入国在留管理局 | 北海道 |
仙台出入国在留管理局 | 宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県 |
東京出入国在留管理局 | 東京都、神奈川県(横浜支局が管轄)、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、新潟県 |
名古屋出入国在留管理局 | 愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県 |
大阪出入国在留管理局 | 大阪府、京都府、兵庫県(神戸支局が管轄)、奈良県、滋賀県、和歌山県 |
広島出入国在留管理局 | 広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県 |
福岡出入国在留管理局 | 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県(那覇支局が管轄) |
その他にも、出入国在留管理庁へ届け出を行っている『申請取次者』であれば、申請人等に代わって申請を行うことができ、行政書士、弁護士など、一定の研修を受けて出入国在留管理庁に登録された者が『申請取次者』の対象となります。
なお、特定技能の在留資格の申請は、申請書類や添付する書類全体のボリュームが他の就労系の在留資格就労と比較して非常に多く手続きが煩雑になりがちで、また受け入れの回数に応じて準備する書類の内容も異なってきますので、登録支援機関や行政書士のサポートを受けながら申請の準備を進めることが一般的です。
そして、万が一申請書類の不備が原因で再申請が必要になると、準備作業に余計なコストがかかるうえ、特定技能外国人を受け入れるスケジュールにも支障をきたすので注意が必要です。
最後に、申請方法について、申請人が日本国内に在留している場合と、海外から招聘する場合とそれぞれ分けて解説していきます。
日本国内に在留している場合
すでに在留資格を有して国内にいる特定技能外国人の場合には、『在留資格変更許可申請』を行うことになります。
そして、申請人(規定技能外国人)本人または(特定技能外国人)を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、申請人の住居地または受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署へ申請を行うことになります。
なお、代理人は申請書に名前を記載する代表取締役などに限らず、受け入れる機関の『職員』であれば問題なく、グループ会社の人事関連業務を行う会社の職員も含みます。が申請人の住居地を管轄する出入国在留管理庁にて申請行いますが、申請人が16歳未満の子どもの場合は、法定代理人(父母等)が代理人として申請することができます。
なお、技能実習2号等の在留期間満了日の2か月前から在留資格変更許可申請が可能ですので、計画的に準備されることをお勧めします。
海外から招聘する場合
国外から特定技能外国人を採用する場合には、新たに『在留資格認定証明書交付申請』を行います。
ここでの対象者は、技能評価試験合格者または技能実習2号を良好に修了して帰国した者(技能実習2号を良好に修了後、技能実習3号または外国人建設就労者の経験を有し帰国した者を含む)になり、申請先は申請人の居住予定地もしくは受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署になります。
そして、申請人を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、代理人として申請を行うことができますが、この場合、代理人は申請書に名前を記載する代表取締役などに限らず、受け入れる機関の『職員』であれば問題なく、グループ会社の人事関連業務を行う会社の職員も含みます。
なお、入国予定年月日の3か月前から在留資格認定証明書交付申請が可能ですので、計画的に準備されることをお勧めします。
⑥就労開始・配属
無事に在留資格の取得や変更の手続が完了すると、いよいよ特定技能外国人の就業の受け入れを始めることになります。
就業するにあたって、労働者自身に引っ越しや住居の手配が必要であれば、別途支援を実施するなど義義務的支援を全うしましょう。
そして、受入企業としての義務を履行することはもちろんのこと、雇用契約に記載されてある雇用条件・待遇を誠実に履行することが重要です。
また、次項で解説するハローワークや出入国管理庁などへの届け出を忘れずに行うよう心がけましょう。
雇用後の手続きについて

特定技能外国人を雇用した際は、在留資格の申請をするために作成しなければならない書類がありますが、雇用後の手続きにおいても同様に作成する必要がある書類があります。
以下、解説していきます。
外国人雇用状況届出
特定技能外国人を雇い入れた際または退職した際には、外国人雇用状況届出を作成しなければなりません。
なおこの届出は、特定技能にかかわらず、外国人労働者を雇用した際、または外国人労働者が退職した際に作成する必要があり、指定されている様式に必要事項を記載したうえで、管轄のハローワークに提出します(厚生労働省の公開している外国人雇用状況届出システムを利用すれば、オンラインでの届け出も可能です)。
四半期ごとに提出する書類
特定技能外国人の雇い入れた後においては、下記のとおり四半期ごとに報告が義務付けられている書類があります。
☑受け入れ状況に関わる届出書
☑活動状況に関わる届出書
☑支援実施状況に関わる届出書
そして、特定技能外国人を新たに雇い入れた後は四半期ごとに定期面談を実施し、定期面談の内容を報告書に取りまとめたうえで、管轄の地方出入国在留管理庁に提出する必要があります。
変更事由発生時に必要な書類
在留資格の申請時の雇用条件や支援計画の変更、また届け出ていた情報に変更があれば、管轄地方の地域在留管理局へ随時提出する必要があります。
届出が必要な書類は以下のとおりです。
☑特定技能雇用契約の届出書
☑支援計画変更の届出書
☑支援委託契約の届出書
☑受け入れ困難の届出書
☑出入国あるいは労働に関する法令に関する不正または不当な行為の届出書
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
特定技能外国人の実際に雇い入れるためには、受入れ要件の確認、人材募集・面接、雇用契約の締結、支援計画の策定、在留資格許可申請、就労労開始・配属までのステップを踏まなければなりません。
特に雇用契約の内容に関しては、後々トラブルに発展してしまうケースも多いため、労働法関連の法令を遵守したうえで雇用契約書を作成すると同時に、特定技能外国人の母国語で丁寧に説明をしておくことがとても重要です。
この記事が、これから特定技能外国人を新たに雇い入れようとしている事業者主様のお役に立てれば幸いです
さいごに
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所では、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をサポートしております。
また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。
お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。



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