こんにちは。行政書士の稲福です。
この記事では、特定技能『建設分野』における特定技能外国人受け入れまでの流れについて徹底解説していきたいと思います。
『特定技能』とはビザ(在留資格)の名称のことでで、就労系ですと『技術・人文知識・国際業務』、『高度専門職』、『企業内転勤』、『技能』等があり、身分系ですと『永住者」や『日本人の配偶者等』、『家族滞在』、『定住者』などがありますが、『特定技能』も就労系に分類されるビザ(在留資格)の種類になります。
また、『特定技能』は、人材を確保することが困難な状況にある人材を労働力として受け入れることができるビザ(在留資格)と定義づけられており、現在、建設分野の他に、農業・漁業・介護などがあり、厚生労働省・経済産業省・国土交通省・農林水産省の管轄の元、12分野において『特定技能』のビザ(在留資格)外国人材が受け入れられています。
なお、2019年に特定技能制度が創設される以前は、『技術・人文知識・国際業務』のようないわゆる高度人材のビザ(在留資格)においては上記の12分野おいては単純労働や技能の業務は行うことができませんでしたが、これら分野における深刻な人手不足解消のためには日本人だけでは働き手が足りないことから、専門的な知識と経験を持った外国人に即戦力として働いてもらうことで人手不足を解消するために新設されたのが『特定技能制度』となります。
そして、この記事では、特定技能制度における建設分野について詳しく解説するとともに、特定技能外国人を受入れまでの全体的な流れについてもわかりやすく解説していきたいと思います。
特定技能『建設分野』について

特定技能『建設分野』が創設された背景について
現在、建設業界は深刻な人手不足に直面しています。その背景には、過酷な労働環境や不安定な雇用といった待遇面の問題から若手の志望者の減少があると考えられています。
その他にも、技術者の高齢化も人手不足の一因としてあげられています。
既存の熟練技術者が退職すれば、いくら案件があったとしても監督役が不在になり工事がスムーズに進めないといった事態に繋がっているというわけです。
なお、総務省の統計局労働力調査によると、建設業界の就業者数は1997年の685万人がピークとされ、2023年時点では483万人にまで減少しています。
そこで、このような建設業界における深刻な人手不足の現状を解消するために、一定の技能を有した即戦力となる外国人労働者の就労を認める制度として、2019年に『建設分野』における特定技能が創設されました。
特定技能『建設分野』の現状と受入見込み人数について
特定技能が創設された2019年には、特定技能『建設分野』において就労する外国人の人数は267人でしたが、コロナ禍を経て、2024年4月には29,456人とその受入れ人数は年々大幅に増加しています。

また、2023年12月末時点では、特定技能の12分野のうち、建設分野は4番目に特定技能外国人の受け入れ人数が多い分野となっています。

そして、2024年から5年間の特定技能外国人の受入れ見込み人数も、建設分野においては80,000人を予定しており、制度開始時の受入れ見込み人数の40,000人から倍増しております。

建設分野において受入れが可能な職種について
以前は、技能実習生が従事できる作業は技能実習計画で認定を受けた33作業のみのうちの1作業のみ、また特定技能に関しても業務区分が19区分と細分化されており、業務範囲が限定的でした。
そのため、ある区分で特定技能の資格を取得するとそれ以外の区分の業務はできず、業務範囲が限定されることや建設業に関わる作業の中で、特定技能の対象となっていない作業があるなどの問題があったため、2022年8月30日に業務区分の再編と特定技能の対象となる作業の見直しが行われました。

その結果、建設業における業務区分が3区分(土木、建築、ライフライン・設備)に統合され、その業務範囲も拡大され、1つの区分で特定技能の資格を取得すると同一区分内の作業すべてに従事できるようになりました。
そして、技能実習職種を含む建設業に係る全ての作業が新区分に分類されたため、より幅広い業務に従事してもらうことができるようになりました。
業務区分 | 業務内容 |
土木分野 | 【主として土木施設に係る作業】 さく井工事業/舗装工事業/しゅんせつ工事業/造園工事業/大工工事業/とび・土工工事業/鋼構造物工事業/鉄筋工事業/塗装工事業/防水工事業/石工事業/機械器具設置工事業 |
建築分野 | 【主として建築物に係る作業】 大工工事業/とび・土工工事業/鋼構造物工事業/鉄筋工事業/塗装工事業/防水工事業/石工事業/機械器具設置工事業/内装仕上工事業/建具工事業/左官工事業/タイル・れんが・ブロック工事業/清掃施設工事業/屋根工事業/ガラス工事業/解体工事業/板金工事業/熱絶縁工事業/管工事業 |
ライフライン・設備分野 | 【主としてライフライン・設備に係る作業】 板金工事業/熱絶縁工事業/管工事業/電気工事業/電気通信工事業/水道施設工事業/消防施設工事業 |
建設特定技能外国人の採用ルートについて

まず大前提として、建設業界において現場作業者の有料職業紹介は禁止されているので、有料職業紹介会社経由での特定技能外国人の採用はできません。
なお、有料紹介事業とは『営利を目的とするか否かにかかわらず、職業紹介に関し手数料又は報酬等の対価を受けて行う職業紹介事業』とされており人材紹介、転職エージェント、転職支援などの呼称があります。
そして、職業安定法32条の11第1項では、有料職業紹介事業者が取り扱い可能な職業について記されており、その中で、港湾運送業務、そして土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務の『建設業務』について、有料職業紹介事業者は求職者への紹介を禁じられています。
よって、特定技能から特定技能の転職の場合はもちろん、海外在住の特定技能有資格者へ職業紹介を行う場合も同様で、無料職業紹介事業での斡旋のみ認められており、有料職業紹介事業での斡旋は禁止されております。
それでは次に、建設分野における特定技能外国人の採用ルートについて解説していきますが、大きくわけて以下の3つのルートがあります。
①技能実習からの移行
②無料職業紹介事業者を利用する
➂自社で求人募集をする
以下、①~③について解説していきます。
技能実習から移行
自社ですでに技能実習生を受け入れている場合、技能実習生本人が希望すれば、技能実習修了2号修了後に在留資格の変更を申請し、特定技能として就労してもらうことができます。
技能実習2号・3号修了者は特定技能評価試験に合格しなくても、技能実習を行った職種であれば移行が可能となり、技能実習2号を良好に修了し、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる場合は、『建設分野特定技能評価試験』および日本語能力試験は免除されます。
『建設分野特定技能評価試験』については、別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
なお、『技能実習2号を良好に修了する』とは、以下2点いずれをも満たすことをいいます。
☑技能実習を2年10か月以上修了。
☑技能検定随時3級若しくはこれに相当する技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していること。または受かっていなくとも、受入企業が外国人の実習中の勤務・生活態度を記載した評価に関する書面により、技能実習2号を良好に修了したと認められること。
もし技能実習生の受入がない場合には、他社で受け入れている技能実習生を採用することも可能ですが、この場合、技能実習生本人は特定技能への移行を希望しているものの、技能実習を行っている企業では特定技能としての雇用を検討していない場合のみ採用ができることになります。
また、技能実習から特定技能へ移行するためには、移行したい特定技能の職種と技能実習の職種および作業と関連していなければなりません。
建設分野における、従事しようとする業務と技能実習2号の職種および作業の関連性については以下の対応表通りです。
分野(業務区分) | 技能実習2号における職種(作業名) |
土木 | 【建設関係(22職種33作業)】 さく井(パーカッション式さく井工事/ロータリー式さく井工事)、型枠施工(型枠工事)、鉄筋施工(鉄筋組立)、とび(とび)、コンクリート圧送施工(コンクリート圧送工事)、ウェルポイント施工(ウェルポイント工事)、建設機械施工(押土・整地/積込み/掘削/締固め) 【機械・金属関係(17職種34作業)】 鉄工(構造物鉄工) 【その他(21職種38作業)】 塗装(建築塗装/鋼橋塗装)、溶接(手溶接/半自動溶接) |
建築 | 【建設関係(22職種33作業)】 建築板金(ダクト板金/内外装板金)、建具製作(木製建具手加工)、建築大工(大工工事)、型枠施工(型枠工事)、鉄筋施工(鉄筋組立)、とび(とび)、石材施工(石材加工/石張り)、タイル張り(タイル張り)、かわらぶき(かわらぶき)、左官(左官)、内装仕上げ施行(プラチック系床仕上げ工事/カーペット系床上げ工事/鋼製下地工事/ボード仕上げ工事/カーテン工事)、サッシ施工(ビル用サッシ施工)、防水施工(シーリング防水工事)、コンクリート圧送施工(コンクリート圧送工事)、表装(壁装)、築炉(築炉) 【機械・金属関係(17職種34作業)】 鉄工(構造物鉄工) 【その他(21職種38作業)】 塗装(建築塗装/鋼橋塗装)/溶接(手溶接/半自動溶接) |
ライフライン・設備 | 【建設関係(22職種33作業)】 建築板金(ダクト板金/内外装板金)、冷凍空気調和機器施工(冷凍空気調和機器施工)、配管(建築配管/プラント配管) 【その他(21職種38作業)】is 溶接(手溶接/半自動溶接) |
技能実習から特定技能への移行については、別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
無料職業紹介事業者を利用する
前述のとおり、建設業の技能者は有料職業紹介自体が法律で禁止されていますが、その一方で、外国人の特定技能雇用を促進するために積極的に無料の職業紹介を行っている団体があります。
JAC(建設技能人材機構)
JACでは、建設業で働きたい外国人材や受け入れを希望する企業に無料の職業マッチングを行っております。
JACの事業のひとつに『特定技能外国人に対する講習、訓練又は、研修の実施、就職のあっせんその他の特定技能外国人の雇用の機会の確保を図るために必要な取組』というものがあり、特定技能外国人を雇用したい企業への人材の紹介と、建設業で特定技能外国人として就業したい人材に仕事を無料で紹介しております。
なお、求人する際には求人申込みフォームに以下の情報を入力する必要があります。
☑企業情報(企業情報、代表者情報、担当者情報、主な事業内容 など)
☑建設業許可情報(建設業許可、建設業許可年、建設業許可番号 など)
☑建設キャリアアップシステム 事業者ID
☑就業についての情報(就労時間、年間労働日数、就労場所 など)
☑ハローワークの求人票(撮影またはスキャンしたJPEG等の画像ファイル)

また、今働いている会社が合わないと感じる特定技能外国人には再就職支援を実施し、外国人の失踪をこれ以上増やさないためのサポートをしております。
なお、特定技能外国人の求人を出す時点でJACの会員でなくとも構いませんが、転職希望者が特定技能として就労するためには、国土交通省へ受入計画を申請する必要があるため、その時点でJACの会員になっている必要があります。
そのため、紹介予定の方がすぐに特定技能の在留資格で働けない可能性がある場合は、特定技能で働きたいという転職希望者にとって不利な条件となり求職希望者に選ばない可能性もありますので、計画的にJACへの加入を検討された方がよいでしょう。
出入国在留管理庁運営の『特定技能総合支援サイト』
出入国在留管理庁では『特定技能総合支援サイト』をというWebサイトを設け、サイト上で定期的にマッチングイベントや制度説明会開催の告知をしております。
もちろんイベントの主催自体も出入国在留管理庁となり、すべて無料で参加できます。

ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)とは、仕事を探している人や採用したい企業に対して、サービスを無償で提供する厚生労働省が運営している機関で、全国に500か所以上設置されています。
そして国内での募集に限りますが、ハローワークでは特定技能の求人募集も可能で、受入企業は日本人の求人と同じように外国人を募集し、採用するまでハローワークのサポートを受けることができます。
さらに、ハローワークには外国人を専門とした窓口もあり、仕事を探している外国人と外国人を受け入れたい企業がお互いに利用しやすくなっております。
求人の申し込み手続きは、ハローワークインターネットサービスにて行うことができます。

自社で求人募集をする
自社サイトや求人サイトに募集広告を掲載して、自社で直接求人募集をかけることも可能です。
ただしこの場合、求職者が直接求人に応募することになるため、応募者が要件を満たしているか、また自社が特定技能外国人を受入れるための基準を満たしているか、求職者がどれくらいの業務を熟せるか等のスクリーニングは自社で行うことになります。
よって受入企業は、少なくとも自社が特定技能人材の雇用するための要件を満たしているか、また求職者自身が雇用可能な特定技能人材の要件を満たしているかを受入企業側で判断することさえできれば、自社での求人募集も理屈上は可能となります。
建設分野で特定技能外国人を受入れるための要件

前述のとおり『特定技能』では、深刻な人手不足に対応するため人材の確保が困難な建設業を含む計12の特定分野において、一定の専門性や技能を有している外国人材を学歴や実務経験に関係なく雇用することが可能となりました。
ただし、特定技能外国人はどの会社でも雇用することができるわけではなく『受入機関』となる企業側が大枠で3つの基準を満たしている必要があります。
『受入機関』となる企業側が満たすべき3つの基準は下記の通りとなります。
1.特定技能外国人が満たすべき基準
2.受入機関自体が満たすべき基準(受入機関自体が適切であること)
3.雇用契約を結ぶうえで満たすべき基準(雇用契約が適切であること)
4.支援体制を構築する上で満たすべき基準(支援体制が整っている/支援の中立性が保たれている/適切な支援計画が立てられていること)
以下、各々の基準における詳細についてまとめてみました。
特定技能外国人が満たすべき基準 | ① 18歳以上であること ② 健康状態が良好であること ③ 退去強制の円滑な執行に協力する外国政府が発行した旅券を所持していること ④ 保証金の徴収等をされていないこと ⑤ 外国の機関に費用を支払っている場合、額・内訳を十分に理解して機関との間で合意していること ⑥ 送出し国で遵守すべき手続が定められている場合は、その手続を経ていること ⑦ 食費,居住費等外国人が定期に負担する費用について、その対価として供与される利益の内容を十分に理解した上で合意しており、かつ、その費用の額が実費相当額その他の適正な額であり、明細書その他の書面が提示されること ⑧ 分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定) ⑨必要な技能及び日本語能力を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていること(ただし、技能実習2号を良好に修了している者であり、かつ、技能実習において修得した技能が、従事しようとする業務において要する技能と関連性が認められる場合は、これに該当する必要がない) ⑩ 特定技能1号での在留期間が通算して5年に達していないこと |
受入機関自体が満たすべき基準 | ① 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること ② 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと ③ 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと ④ 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと ⑤ 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと ⑥ 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと ⑦ 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと ⑧ 支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと ⑨ 労働者派遣の場合は、派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで、適当と認められる者であるほか、派遣先が①~④の基準に適合すること ⑩ 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること ⑪ 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること ⑫ 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと ⑬ 分野に特有の基準に適合すること ※分野所管省庁の定める告示で規定 |
雇用契約を結ぶうえで満たすべき基準 | ① 分野省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること ② 所定労働時間が、同じ受入れ機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること ③ 報酬額が日本人が従事する場合の額と同等以上であること ④ 外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇に ついて、差別的な取扱いをしていないこと ⑤ 一時帰国を希望した場合、休暇を取得させるものとしていること ⑥ 労働者派遣の対象とする場合は、派遣先や派遣期間が定められていること ⑦ 外国人が帰国旅費を負担できないときは、受入れ機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑に なされるよう必要な措置を講ずることとしていること ⑧ 受入れ機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることと していること ⑨ 分野に特有の基準に適合すること ※分野所管省庁の定める告示で規定 |
支援体制を構築する上で満たすべき基準 | ①中長期在留者の雇用経験があること(次のいずれかに該当すること)。 イ)過去二年間に中長期在留者(就労資格に限る)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役員又は職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。 ロ)役員又は職員であって過去二年間に中長期在留者(就労資格に限る)の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。 ハ)イ又はロと同程度に支援業務を適正に実施することができる者として認めたもので、役員又は職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。 ②外国人が十分に理解することができる言語によって支援ができる体制を有していること。 ③支援の状況に係る文書を作成し、当雇用契約終了の日から1年以上備えて置くこと。 ④支援計画の中立な実施を行うことができる者であること。 ⑤5年以内に支援計画に基づいた支援を怠ったことがないこと。 ⑥支援責任者又は支援担当者が特定技能雇用契約の当事者である外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること。 ⑦分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。 |

特定技能外国人を受け入れるための要件として、上記のようにさまざまな基準が設けられております。
受入機関が満たすべき基準については別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
そして、ここからが特に重要になるのですが、建設分野においては特定技能の全分野共通の基準に加え、独自の基準(上乗せ基準)が設けられております。
☑認定申請者(受入企業)に関する事項
➡建設業許可、建設キャリアアップシステムへの事業者登録、JACの構成員であること
☑国内人材確保の取り組みに関する事項
➡直近1年以内にハローワークに申請した求人申込書の提出
☑適正な就労環境(報酬等の労働条件)の確保に関する事項
➡報酬の額(地域別最低賃金に1.1を乗じた金額より上回っている必要がある)、報酬の支払い形態(報酬形態は時給や日給は認められず月給制にする必要がありかつ銀行振込にしなければならない)、技能習熟に応じた昇給が義務づけられている
☑報酬以外の就労環境に関する事項
➡特定技能外国人の受入枠の上限
☑安全衛生教育および技能の習得に関する事項
➡安全衛生教育の実施、技能に関する適切な教育訓練の機会を提供
これらの基準を満たした『建設特定技能受入計画』を作成し、国土交通省の認定を受ける必要があります。
建設分野において特定技能外国人の雇い入れは、他の特定技能の業種に比べて煩雑で、国土交通省への建設特定技能受入計画認定申請と出入国管理庁への特定技能ビザ申請のダブルチェック体制になっているという意味でとりわけに複雑になっています。
建設分野における独自の基準については、別の記事で詳しく解説しておりますので、よろしければ参考にして頂ければと思います。
建設特定技能外国人受入れまでの流れ

特定技能外国人を受入れるための要件をクリアしたうえで、特定技能外国人を実際に雇用するまでは、以下の7つのステップを踏む必要があります。
【STEP①】受入れ要件の確認(建設業許可/建設キャリアアップシステムへの登録/JACへの加入)
【STEP②】特定技能雇用契約に係る重要事項事前説明
【STEP➂】特定技能雇用契約の締結(特定技能雇用契約書/雇用条件書)
【STEP④】建設特定技能受入計画の認定申請(国土交通所省 外国人就労管理システム)
【STEP⑤】1号特定技能外国人支援計画の策定
【STEP⑥】在留資格許可申請/在留資格認定証明書交付申請
【STEP⑦】就労開始・配属
なお、国外から呼び寄せるパターンと国内での転職希望者を雇用するパターンで若干流れが変わってきますので(在留資格変更許可申請<国内>or在留資格認定証明書交付申請<国外>、国外から招聘する場合の査証申請など)その点は留意する必要があります。
そして、建設分野で特定技能外国人を採用する場合は、入管へ在留資格許可申請をする前に国土交通省へ『建設特定技能受入計画』の認定申請をする必要があります。
なお、採用後も、書類作成から在留資格許可申請等の手続きが必要となり、実際に就労できるまでには採用が決まってから3~6か月ほどかかります(建設分野の特定技能はさらに3~4か月ほどかかります)。
実際に想定していたタイミングでの就労が叶わない可能性もあるので、特定技能外国人を雇用する際にはできるだけ早めに準備を進めておいた方がよいでしょう。

受入れ要件の確認(建設業許可/JACへの加入/建設キャリアアップシステムへの登録)
『建設特定技能受入計画』の認定基準においては、受入企業である『認定申請者』の要件として
①建設業許可を受けていること
②建設キャリアアップシステム事業者登録
➂JACの構成員であること
の3つが求められております。
それでは、それぞれの要件について解説していきたいと思います。
建設業許可を受けていること
建設分野において外国人労働者(特定技能外国人)を受け入れる企業は、建設業法第3条の許可(建設業許可)を受けている必要があります。
通常であれば、請負代金が500万円未満(税込)の建設工事であれば、建設許可を受けなくても請け負うことが可能ですが、特定技能外国人を雇い入れるためには、建設業許可を受けていることが要件になります。
また、建設業許可の種類と受入予定の特定技能外国人が従事する職種が一致している必要はなく、何らかの建設業許可を取得して入れば特定技能の受け入れが可能です。
なお、建設業許可申請は、従来の書面での申請に加え、『建設業許可等電子申請システム(JCIP)』を用いることによりオンライン上での申請が可能となりました(書類等もデータ添付により提出可)。
このオンライン化により、行政手続きに係る業務負担が軽減されることによる利便性の向上が見込まれており、今後も普及していくことが期待されております。
JCIPについては別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
建設キャリアアップシステムへの事業者登録
『建設キャリアアップシステム(CCUS)』への登録では、①事業者登録②技能者登録の2つの登録が必要となります。
つまり、建設分野において特定技能外国人を受け入れる企業は、企業自体の事業者登録をした後、雇い入れる特定技能外国人を技能者として『建設キャリアアップシステム(CCUS)』に登録しなければなりません。
事業者登録においては、企業情報(商号、所在地)、建設業許可情報(業種、番号、有効期間)、技能者の社会保険加入状況などを登録し、技能者登録は、本人情報(住所、氏名、生年月日、性別、国籍)、職種、社会保険加入状況、建退共手帳の有無、保有資格、研修受講履歴、受賞履歴、健康診断受診歴の有無などを登録します(所属会社が登録代行可能)。
なお、日本に在留する外国人を特定技能として受け入れる場合には、技能者登録は必要ですが、海外から呼び寄せる際には『建設特定技能受入計画』申請前の登録は不要となりますが、入国後2週間以内に、受け入れの報告とともに特定技能外国人の技能者登録申請を行う必要があります。
なお、申請の際には事業者確認資料や加入保険確認資料などの添付ファイルが必要になるので、予め準備しておきましょう。
『建設キャリアアップシステム(CCUS)』については別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
JAC(建設技能人材機構)の構成員であること
JAC(建設技能人材機構)は、建設分野での特定技能外国人の受け入れを適切に行うための活動を行っている建設業界の団体や企業が発起して設立した組織で、特定技能外国人の賃金アップや昇給の確保など、日本で働く外国人の処遇を改善したり、長時間の低賃金労働をさせるブラック企業を排除したりといった活動を行っております。
そして、建設業で特定技能外国人を雇う会社はすべてJAC(建設技能人材機構)又は、JACの正会員である建設業者団体に加入しなければなりません(JACの賛助会員になるか、JACの正会員である建設業者団体の会員となるかを選択できる)。
なお、令和6年6月現在、正会員の建設業者団体は53団体あり、その何れかの団体に加入することで間接的にJACの会員になることができ、JACへの加入という要件を満たすことができます。
もちろん、これら団体へ加入するためには年会費が発生することにはなりますが、JACの賛助会員になるよりも費用を安く抑えられますので、特定技能外国人を雇入れるためにJACに加入したいという建設業者様にとってはこちらの方法がお勧めです。
JAC(建設技能人材機構)については別の記事でも紹介して
おりますので、よろしければ参考にして下さい。
また、JAC(建設技能人材機構)は本来担うべき役割の一つである『適正就労監理』についてFITS( 一般財団法人国際建設技能振興機構) に委託しており、特定技能外国人の受入企業には、スタートアップセミナー(受入後講習)の受講とFITSによる定期巡回指導の協力が求められます。
FITS( 一般財団法人国際建設技能振興機構)についても別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
特定技能雇用契約に係る重要事項事前説明
受入企業は、必ず『雇用契約に係る重要事項事前説明書』を用いて、特定技能外国人に支払われる報酬予定額や業務内容等、また危険有害業務に従事する可能性やそれに伴う安全衛生教育の実施について、事前に当該外国人が十分に理解することができる言語を用いて説明し、雇用契約に係る重要事項について理解していることを確認する必要があります。
なお、この重要事項説明については、必ずしも直接対面で行う必要はなく、テレビ電話などで行うことも可能です。
実際の様式を用いた記載例を添付しますので、ご参照下さい。


特定技能雇用契約の締結
受入企業は、『特定技能雇用契約書』および『雇用条件書(賃金の支払を含む)』という出入国在留管理法で定義された特別な雇用契約書を作成し特定技能外国人と雇用契約を交わすことになりますが、記載すべき内容については『特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令』によって業務内容や所定労働時間、報酬などが定められており、その定められた内容に基づいて作成する必要があります。
例えば、所定労働時間が日本人従業員と同じであることや、給与の金額が日本人従業員と同等以上であること、一時帰国を希望する場合には休暇を取得させることなど、雇用契約に含めるべき内容は法律によって細かく定められており、これらの基準を満たしている必要があります。
主な記載内容は、以下のとおりになります。
☑雇用期間について
☑就業場所について
☑従事させる業務について
☑所定労働時間について
☑休日について
☑報酬について
☑割増賃金について
☑待遇について
☑一時帰国時の有給休暇取得について
☑帰国時の旅費の負担について
☑生活と健康のサポートについて
☑派遣先について
☑保証金や違約金の禁止について
☑退職に関する事項について
☑分野別に規定された基準に関する内容

そして、建設分野においては特定技能における他の分野共通の基準に加えて、建設業界の特性を踏まえて、労働条件に係る建設分野独自の基準(①報酬について、②昇給について、③報酬の支払い形態について)も満たさなければなりません。
【労働条件に係る建設分野における独自の基準について】
建設分野で特定技能外国人を雇用するにあたっては、報酬等の労働条件係る建設分野独自のルールがあります。
①報酬について
建設分野においては、出入国在留管理庁へ特定技能の在留資格の申請を行う前に、国交省へ『建設特定技能受入計画』の認定申請を行いまが、受入計画を作成を作成する際に具体的に日本人従業員の方と給与の比較を行い、この比較した日本人の給料が地域別最低賃金に1.1を乗じた金額より下回っているときは、同等以上の給料であったとしても、要件の一つである『適切な国内人材確保の取組を行っている』ということが認められず計画の認定は得られません(当然ながら特定技能外国人の給与も地域別最低賃金に1.1を乗じた金額より上回っている必要があります)。さらに同一圏域における建設技能者の賃金水準との比較も必要で、各都道府県労働局において公表されているハローワークの求人求職賃金を参考にしますが、同じ地域の同業と比較して明らかに低水準の給与設定となっている場合は、人手が確保できなくても仕方がなく、これを理由に外国人人材を雇用するすることもできません。
②昇給等について
雇用契約において受入企業に特定技能外国人の技能習熟に応じた昇給が義務づけられ、技能の習熟度に応じ昇給額を明確にし、かつ毎年昇給させることが求められています。そして、その昇給の予定額や昇給条件を『雇用条件書』と『重要事項事前説明書』に記載し、内定者である特定技能外国人本人が理解できる言語で説明しなければなりません。習熟度を示す指標には、実務経験年数や資格、また建設キャリアアップシステムにおける能力評価などを活用します。
なお、この昇給は、1年あたりに見込まれる1か月当たりの賃金の上昇額が千円未満である場合には、定期昇給とは認められず、国交省へ申請する『建設特定技能受入計画』は認定されませんので注意が必要です。
➂報酬の支払い形態について
特定技能外国人への給与は月給制でかつ口座振り込みにて支給しなければなりません。これは、特定技能外国人の安定的な報酬を確保するため、仕事の繁閑により報酬が変動しないこと(天候や受注状況によって基本給が大きく変動しないこと)、すなわち『月給制』により、あらかじめ特定技能外国人との間で合意を得た額の報酬を毎月安定的に支払うことが必要であるという理由からです(建設分野の過去の失踪理由の中に月給制でないため安定的に給与が支払われず不安を感じたからという声が多かったことに起因しています)。建設業の特徴として、季節や工事受注状況による仕事の繁閑により予め想定した報酬予定額が下回ることがあることがありますが、特定技能人材を受け入れる場合は、特定技能外国人の離職や失踪を避けるためにも月給制を採用しなければならないルールになっています。なお、天候や受入企業の責めに因らない事由による休業の場合には、休業手当(平均賃金の60%以上)を支払うことは認められています。そして、日本人従業員が月給制でない場合でも、特定技能人材に関しては月給制でなければならないという点には注意が必要です。また、建設業ですと、給与を現金で手渡しにしている企業方がまだ多いように見受けられますが、外国人労働者(特定技能外国人)を雇用した際には口座振り込みの手続きが必要となります。そしてこの場合、同等の技能を有する日本人の技能者に実際に支払われる1か月当たりの平均的な報酬額と同等でなければなりません。
なお、特定技能雇用契約書は、在留資格申請時に出入国在留管理庁へ写しを提出する必要があり、もしこれらの基準に適合していなかったり内容に不備がある場合は、雇用契約書の再提出が求められたり在留許可が下りないケースもあるので注意しましょう。
また、雇用条件に関する契約書ということもあり、内定者である特定技能外国人自身が契約内容を十分理解できることが重要で、いくら内定者である特定技能外国人の日本語が上手だったとしても、母国語でしっかりと雇用条件書の内容を伝えるべきでしょう。
というのも、特定技能制度で来日してくる外国人材は一定の日本語能力を有しておりますが、それでも難しい漢字や言いまわしなどを使ってしまうと、雇用条件などは理解できない恐れがあります。
たとえ日本語で丁寧に説明したと受入企業側が思っていたとしても、相手側である特定技能外国人が理解できていなかった場合、入社後に「このような雇用条件だとはおもわなかった」「こんな雇用条件の説明は受けていない」と不信感につながってしまい、せっかくお金をかけて採用したにもかかわらず早々に退職してしまいかねません。
また雇用契約書にかんしても、特定技能外国人の母国語や英語など、内定者である特定技能外国人本人が理解できる言語で書類を作成する必要があるため、日本語と特定技能外国人が理解できる言語を併記した『特定技能雇用契約書』および『雇用条件書』を作成することになります。
例えばベトナム人の特定技能外国人を雇用する際には、日本語とベトナム語がセットで表記された特定技能雇用契約書・雇用条件書を作成することになります。
繰り返しになりますが、雇用条件を特定技能外国人の母国語で口頭で丁寧に説明し、かつ『特定技能雇用契約書』『雇用条件書』の母国語を併記を徹底し、後々のトラブルを防ぐよう心がけましょう。
特定技能における雇用契約について別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
建設特定技能受入計画の認定申請(国土交通所省 外国人就労管理システム)
出入国在留管理局へ特定技能としての資格取得に必要な申請を提出する前に、特定技能『建設分野』では国土交通省による『建設特定技能受入計画』の認定を受ける必要があります。
この建設特定技能受入計画の申請は『外国人就労管理システム』を通じてオンラインで行いますが、特定技能外国人に支払われる報酬予定額や業務内容等の記載および入力については、
☑雇用条件書(賃金の支払を含む)
☑雇用契約に係る重要事項事前説明書
☑外国人就労管理システム
3つの内容をすべて合わせなくてはなりませんので注意が必要です。

また、建設特定技能受入計画では申請から認定までにかかる標準的な審査期間は3~4ヶ月程度とされていますが、審査は非常に細かく、修正などの対応も多く発生するため、期間に余裕をもって申請することをおすすめします。
オンライン申請に必要な添付書類は以下のとおりになります。
対象事項 | 添付書類 |
特定技能受入機関になろうとする者に関する事項 | ①登記事項証明書(履歴事項全部証明書)(申請日より3か月以内発行のもの) ※個人事業主の場合は代表者の住民票(申請日より3か月以内発行のもの) ②建設業許可証(有効期限内のもの) ➂常勤職員数を明らかにする文書(社会保険加入の確認書類) ④建設キャリアアップシステムの事業者ID を確認する書類 ⑤特定技能外国人受入事業実施法人に加入していることを証する書類(会員証明書) |
代理申請者に関する事項 | ⑥委任状、弁護士証票または行政書士証票(代理申請を行う場合のみ) 行政書士会から委任状の様式が展開されています。 展開されている様式と同じ要件の記載があれば、任意様式の委任状もご使用いただけます。 建設特定技能受入計画の認定申請は行政手続きに該当するため、行政書士または弁護士以外の者は代理申請ができません。従って、資格を持たない登録支援機関や監理団体の職員が、認定申請の委任を受けることはできません。 |
適正な就労環境の確保に関する事項 | ⑦ハローワークで求人した際の求人票(申請日から直近1年以内。建築・土木の作業員の募集であること) ⑧就業規則及び賃金規程、退職金規程(労働基準監督署に提出したものの写し。常時10人以上の労働者を使用していない企業であって、これらを作成していない場合には提出不要) ⑨時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届) ⑩変形労働時間に係る協定書、協定届、年間カレンダー |
特定技能外国人に関する事項 | ⑪建設キャリアアップシステムの技能者ID を確認する書類 ⑫同等の技能を有する日本人と同等額以上の報酬であることの説明書 ⑬同等の技能を有する日本人の賃金台帳(直近1 年分。賞与を含む) ⑭同等の技能を有する日本人の実務経験年数を証明する書類(経歴書等。様式任意) ⑮特定技能雇用契約書及び雇用条件書の写し(全員分) ⑯雇用契約に係る重要事項事前説明書(告示様式第2)(全員分) |
なお、『建設特定技能受入計画』の審査は、受入企業の主たる営業所を管轄する地方整備局等が担当しますが、前述のとおり地域によっては審査が完了するまでに3〜4か月かかる場合があります。
1号特定技能外国人支援計画の策定
雇用契約を締結後、国土交通省への建設特定技能受入計画の認定申請を終えたら、次に特定技能外国人の支援計画の策定を行います。
特定技能外国人を受け入れる企業は、特定技能外国人が安定的かつ円滑に日本で活動を行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画である『1号特定技能外国人支援計画書』を作成し、当該計画に基づき特定技能外国人の支援を行う義務があります。
『1号特定技能外国人支援計画書』については別の記事でも解説しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
まず大前提として、受入機関は、支援計画を策定するにあたって特定技能外国人を支援できる体制を構築しなければならず、以下の支援体制において満たすべき基準をクリアする必要があります。
①中長期在留者の雇用経験があること(次のいずれかに該当すること)。
イ)過去二年間に中長期在留者(就労資格に限る)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役員又は職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。
ロ)役員又は職員であって過去二年間に中長期在留者(就労資格に限る)の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。
ハ)イ又はロと同程度に支援業務を適正に実施することができる者として認めたもので、役員又は職員の中から、支援責任者及び支援担当者を選任していること。
②外国人が十分に理解することができる言語によって支援ができる体制を有していること。
③支援の状況に係る文書を作成し、当雇用契約終了の日から1年以上備えて置くこと。
④支援計画の中立な実施を行うことができる者であること。
⑤5年以内に支援計画に基づいた支援を怠ったことがないこと。
⑥支援責任者又は支援担当者が特定技能雇用契約の当事者である外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること。
⑦分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。
まず、少なくとも1名以上の中長期間日本に在留する外国⼈労働者を雇用した実績や、外国人労働者をある程度の期間にわたり受け入れた経験がある(登録支援機関や組合に委託している期間を含む)ことが必要となり、その間においても入管法をはじめ技能実習法や労働法等の外国人雇用に関連する法令を遵守していたことが要件となります。
つまり、直近2年間の内で一部期間でも雇用や管理の実績があれば、支援体制ありと認められることになります。
もし会社自体に外国人労働者の受け入れ実績がない場合には、中長期間日本に在留する外国⼈労働者の生活にかかるような相談に対応をした経験者が社内にいて、かつその経験者が『⽀援責任者』や『⽀援担当者』になれば中長期在留者の雇用経験があるという基準を満たすことができます。
会社が過去に外国人労働者の受入実績がなかったとしても、外国人労働者に生活相談に従事した経験のある従業員が1人社内にいれば、この基準をクリアできるということになります。
なお、『中長期在留者』に該当する在留資格には、日本人の配偶者等、 定住者、 技術・人文知識・国際業務、技能実習、特定技能、留学、永住者等が該当し、在留期間が3ヶ月以下の短期滞在ビザは該当しません。
次に、特定技能外国人が理解出来る言語(原則母国語)で面談をしたり、相談の対応ができる体制が常時確保されていることが必要となります。
特定技能外国人からの相談や苦情はいつ何時あるか分からないので、これらに応対するための専用の連絡先・メールアドレス等の設置をするなどして、可能な限り休日や夜間でも対応可能な体制を整えることが必要となり、また、交通事故などの緊急時にも連絡を取ることができる体制を構築することも望まれます。
そして、日本語を学習し試験に合格しているものの、言語レベルは完全ではない特定技能外国人に様々な決まり事や支援内容をしっかりと理解してもらうため、彼らが十分に理解できる言語で支援ができる体制づくりが求められます。
もし上記の対応が可能であれば、通訳者を常駐の職員として雇用することまでは必要なく、必要なときに委託する等して通訳者を確保できていれば問題ありません。
最後に、『支援責任者』および『支援担当者』についてですが、まずここでいう『支援責任者』とは、特定技能外国人を受け入れている企業の役員または職員で、支援担当者を監督する立場にあり、支援担当者が行う支援を管理・監督したりする責任者のことを指します。
そして『支援担当者』とは、特定技能外国人を受け入れている企業の役員または職員で、支援計画に沿った支援を実施することを任されている担当者のことを指しています。
そして『支援担当者』の場合は常勤であることが望ましとされ、様々な手続きの同行や、定期的な面談、入管への報告書類の作成等、外国人雇用にまつわる様々な業務を担当することになります。
なお、支援責任者と支援担当者は兼任可能のため、最低1名の人員を確保できていれば問題ありませんが、その場合においてもでもそれぞれの基準を満たさなければなりません。
支援責任者と支援担当者の詳細について別の記事でも紹介しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
以上のような支援体制において受入企業が満たすべき基準を全てクリアしたうえで支援計画を策定していきますが、具体的な支援内容は以下の通りになります。
なお、特定技能外国人の受入企業は外国人が安定して働けるように、仕事面はもちろん生活面まで全面支援しなければなりません。
支援の項目 | 支援内容 |
①事前ガイダンスの提供 | 日本での実際の生活状況やルールなどのガイダンスの提供を行う。対面もしくはオンラインにて実施 |
②出入国する際の送迎 | 入国時は空港から受け入れ企業までの送迎を行い、帰国時は空港の保安検査場までの送迎、同行まで行う |
➂確保、日常生活に必要な契約支援 | 住居探しの補助や、社宅の提供、銀行口座などの開設など |
④生活オリエンテーションの実施 | 日本でのルールやマナーの説明、公共交通機関の利用方法の説明、 災害時の対応方法の説明など |
⑤公的手続き等への同行 | 必要に応じて、手続きの同行や書類作成の補助を行う |
⑥日本語学習機会の提供 | 日本語教室の紹介、手続きの補助や日本語学習教材の情報提供など |
⑦相談・苦情への対応 | 職場や生活上での相談や苦情に対して、外国人が十分理解できる言語での対応し、必要に応じて助言や指導を行う |
⑧日本人との交流機会の促進 | 地域住民との交流の場の促進や地域の行事の案内、参加の補助など |
⑨転職支援(人員整理等企業都合の場合) | 転職先探しの手伝いや推薦状の作成、求職活動のための有給休暇の付与、必要な行政手続きの情報提供など |
⑩定期的な面談の実施・行政機関への通報 | 3か月に1回以上の面談を実施、受け入れ機関が労働基準法などに違反していないかの確認など |
特定技能外国人の支援計画については別の記事でも解説しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
もし企業が支援計画の策定や実施が難しい場合には、登録支援機関に委託することも可能です。
そして、受入企業が特定技能外国人の支援計画の全部の実施を『登録支援機関』へ委託した場合は、外国人を支援する体制があるとみなされるため、支援体制において受入企業が満たすべき基準をクリアできます。
また、特定技能外国人の支援を登録支援機関に委託する場合は、登録支援機関からの要求される書類作成や情報提供のみとなり受入企業が支援業務を行うことはありません。
登録支援機関についても別の記事でも紹介しておりますので、是非参考にして下さい。
在留資格許可申請/在留資格認定証明書交付申請
建設特定技能受入計画の認定申請を終え、支援計画の策定まで完了すれば、必要な書類を揃えたうえで最寄りの地方出入国在留管理官署へ在留資格の申請を行います。
なお、建設特定技能受入計画の認定前に、地方出入国在留管理局に対する在留資格変更許可申請等を行うことはできますが、在留資格変更許可等を受けるためには、建設特定技能受入計画の認定証の写しの提出が必要となります。
そして、在留資格の申請時における必要書類には、特定技能共通の書類(受入企業に係る書類・内定者である特定技能外国人本人に係る書類)と12分野それぞれで定められた分野別必要書類(建設分野独自の書類である『建設特定技能受入計画』)があります。
書類の主な内容としては、会社の情報、雇用条件について、社会保険や税金の支払いについて、本人が特定技能人材としての要件を満たしていることを示す書類などがあります。
☑受入れ企業に係る書類
☑内定者である特定技能外国人に係る書類
☑対象分野独自の書類(建設特定技能受入計画)
次に、誰がこの申請をできるかという点についてですが、基本的には、申請人または申請人を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、申請人の住居地または受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署へ申請を行うことができることになっております(申請人が16歳未満の子どもの場合は、父母等の法定代理人)が代理人として申請することができます)。
地方出入国在留管理官署ごとの管轄区域をまとめてみましたのご参照下さい。
地方出入国在留管理官署 | 管轄する区域 |
札幌出入国在留管理局 | 北海道 |
仙台出入国在留管理局 | 宮城県、福島県、山形県、岩手県、秋田県、青森県 |
東京出入国在留管理局 | 東京都、神奈川県(横浜支局が管轄)、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、新潟県 |
名古屋出入国在留管理局 | 愛知県、三重県、静岡県、岐阜県、福井県、富山県、石川県 |
大阪出入国在留管理局 | 大阪府、京都府、兵庫県(神戸支局が管轄)、奈良県、滋賀県、和歌山県 |
広島出入国在留管理局 | 広島県、山口県、岡山県、鳥取県、島根県 |
福岡出入国在留管理局 | 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、沖縄県(那覇支局が管轄) |
その他にも、出入国在留管理庁へ届け出を行っている『申請取次者』であれば、申請人等に代わって申請を行うことができ、行政書士、弁護士など、一定の研修を受けて出入国在留管理庁に登録された者が『申請取次者』の対象となります。
なお、特定技能の在留資格の申請は、申請書類や添付する書類全体のボリュームが他の就労系の在留資格就労と比較して非常に多く手続きが煩雑になりがちで、また受け入れの回数に応じて準備する書類の内容も異なってきますので、登録支援機関や行政書士のサポートを受けながら申請の準備を進めることが一般的です。
そして、万が一申請書類の不備が原因で再申請が必要になると、準備作業に余計なコストがかかるうえ、特定技能外国人を受け入れるスケジュールにも支障をきたすので注意が必要です。
最後に、申請方法について、申請人が日本国内に在留している場合と、海外から招聘する場合とそれぞれ分けて解説していきます。
日本国内に在留している場合
すでに在留資格を有して国内にいる特定技能外国人の場合には、『在留資格変更許可申請』を行うことになります。
そして、申請人(規定技能外国人)本人または(特定技能外国人)を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、申請人の住居地または受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署へ申請を行うことになります。
なお、代理人は申請書に名前を記載する代表取締役などに限らず、受け入れる機関の『職員』であれば問題なく、グループ会社の人事関連業務を行う会社の職員も含みます。が申請人の住居地を管轄する出入国在留管理庁にて申請行いますが、申請人が16歳未満の子どもの場合は、法定代理人(父母等)が代理人として申請することができます。
なお、技能実習2号等の在留期間満了日の2か月前から在留資格変更許可申請が可能ですので、計画的に準備されることをお勧めします。
海外から招聘する場合
国外から特定技能外国人を採用する場合には、新たに『在留資格認定証明書交付申請』を行います。
ここでの対象者は、技能評価試験合格者または技能実習2号を良好に修了して帰国した者(技能実習2号を良好に修了後、技能実習3号または外国人建設就労者の経験を有し帰国した者を含む)になり、申請先は申請人の居住予定地もしくは受入れ機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署になります。
そして、申請人を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者が、代理人として申請を行うことができますが、この場合、代理人は申請書に名前を記載する代表取締役などに限らず、受け入れる機関の『職員』であれば問題なく、グループ会社の人事関連業務を行う会社の職員も含みます。
なお、入国予定年月日の3か月前から在留資格認定証明書交付申請が可能ですので、計画的に準備されることをお勧めします。
就労開始・配属
無事に在留資格の取得や変更の手続が完了すると、いよいよ特定技能外国人の就業の受け入れを始めることになります。
就業するにあたって、労働者自身に引っ越しや住居の手配が必要であれば、別途支援を実施するなど義義務的支援を全うしましょう。
そして、受入企業としての義務を履行することはもちろんのこと、雇用契約に記載されてある雇用条件・待遇を誠実に履行することが重要です。
また、ハローワークや出入国在留管理庁などへの届け出を忘れずに行うよう心がけましょう。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
特定技能『建設分野』における特定技能外国人受け入れまでの全体の流れについて解説しました。
建設分野で特定技能外国人の雇い入れるためには、受入れ要件の確認、人材募集、雇用契約の締結、建設特定技能認定申請、支援計画の策定、在留資格許可申請、就労労開始・配属までそれぞれのステップを踏まなければならず、特に雇用契約の内容に関しては、後々トラブルに発展してしまうケースも多いため、労働法関連の法令を遵守したうえで雇用契約書を作成すると同時に、特定技能外国人の母国語で丁寧に説明をしておくことがとても重要です。
また、特定技能制度には複雑なルールも多いうえに、JACへの加入や受入認定計画、FITSの受入後講習や、巡回指導など建設分野だけに課されている要件も数多くあるため、特定技能外国人材を雇い入れる際にはとくに注意が必要となります
この記事が、これから特定技能外国人を新たに雇い入れようとしている事業者主様のお役に立てれば幸いです。
さいごに
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所では、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をサポートしております。
また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。
お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。



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