【建設分野】特定技能外国人の給料はいくらにするべきか

建設

こんにちは、行政書士の稲福です。

この記事では、建設業で特定技能外国人の賃金をいくらに設定すればよいかについてわかりやすく解説したいと思います。

技能者の高齢化が進む建設業は、将来にわたって担い手を確保していくことが業界全体の課題となっております。

そこで、働き改革や処遇改善だけでは埋めきれない人材の不足分を外国人材の受入れによって確保しようとしていましたが、技能実習制度においては、建設分野は他分野に比べ突出して多くの失踪者を出していたという問題が発生してしまいました。

よって、2019年からスタートした特定技能制度では、建設分野において適正な受入れを実現するため、国交省による企業の特定技能外国人の受入れ計画の審査がおこなわれることになりました。

具体的には、建設技能者全体の処遇改善やブラック企業の排除といったこと考慮しており、そのため特定技能における他の分野共通の基準に加えて、建設分野の特性を踏まえて国土交通大臣が定める基準も満たすことが要求されており、その基準に則った給料額にしないと、国内人材確保の取り組みを行っているとは認められず、国土交通省の認定が下りないので注意が必要です。


その中でも、特に賃金については他の分野とは異なる特有の基準がありますので、その辺りを掘り下げて解説していきたいと思います。

賃金設定における4つのステップ

建設分野では、令和4年3月28日に国土交通省から給料に関する通知が出ており、令和4年6月1日以降の申請より適用されております。

まず、賃金設定にあたり、全体的な流れとしておさえておくべき点は以下の4つになります。

キーワードは『最低賃金』『×1.1』『同一労働同一賃金』です。

① 地域別最低賃金を調べる
② 地域別最低賃金全国加重平均の金額を調べる
③ 地域別査定賃金・全国加重平均のどちらか高い方の金額に1.1をかけた金額にする
④ 同等技能を有する日本人従業員と同等額以上の賃金設定にする

①地域別最低賃金を調べる

下記のリンク『厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧』にアクセスすると地域別の最低賃金を調べることができます。

全国の最低賃金が北海道から始まり、最後の沖縄県まで順次掲載されています。

ちなみに最低賃金の水準がもっとも高い都道府県は東京都で1,163円、もっとも低い都道府県は秋田県で951円となっております。

②地域別最低賃金全国加重平均の金額を調べる

地域別最低賃金の全国加重平均とは、全国の最低賃金を都道府県ごとの労働者数で重み付けして平均した額のことです。

上記のリンク内『地域別最低賃金の全国一覧』の沖縄県の下に、全国加重平均が掲載されており、令和6年度の全国加重平均は1,055円となっており、引き上げ率が前年比で5.1%(令和5年度は1,004円)となっております。

③地域別査定賃金・全国加重平均のどちらか高い方の金額に1.1をかけた金額にする

そして、いよいよ賃金の設定ですが、『特定技能外国人』と『比較対象の日本人従業員』の報酬は①『地域別最低賃金』に1.1を乗じた金額と②『地域別最低賃金の全国加重平均』に1.1を乗じた金額のどちらも上回っている必要があります。

例えば、群馬県の企業が特定技能外国人を雇用した場合を例に説明しますと、群馬県の最低賃金985円で、全国加重平均が1,055円になっているので、群馬県の最低賃金985円は全国加重平均の1,055円を下回っているで、特定技能外国人の賃金は、群馬県の最低賃金985円はもちろんのこと、全国加重平均の1,055円を上回ることが求められます。

ここでのポイントは、特定技能外国人のみならず、比較対象の日本人従業員の賃金もこの金額を上回っている必要があり、この金額を下回っているときは、次項で解説する特定技能外国人の賃金が比較対象日本人の賃金と同等以上であったとしても、要件の一つである『適切な国内人材確保の取組を行っている』ということが認められず計画の認定は得られません。

なお、ここでの『賃金』は『所定内賃金』のことを指し、基本給や安定的に支給される手当などは含まれますが、時間外労働や支給が未確定な手当は含まれません。

つまり、比較される日本人の『所定内賃金』が、事業所等が存する地域に係る地域別最低賃金と地域別最低賃金の全国加重平均のどちらにも1.1をかけた金額より低い時は、職員の適切な処遇、適切な労働条件を提示した労働者の募集その他の国内人材確保の取り組みを行っているとは認められず、受入計画は認定されません。

④同等技能を有する日本人従業員と同等額以上の賃金設定にする

特定技能外国人の給料は比較される同等技能を持つ日本人従業員の報酬額と同額以上にする必要があり、例えば同種の業務(例えばとび職)に従事し、かつ同程度の技能(経験年数・取得資格)を有する日本人従業員と同水準、またはそれ以上の報酬が求められます(同一労働・同一賃金)。

特定技能外国人の場合、3年以上の経験があるものとして扱わなければならず(少なくとも技能検定3級合格者または技能実習2号修了者以上のレベルとみなされるため)、報酬額については、技能実習2号の実習生を上回るのはもちろん、同じ技能レベルの日本人従業員と比較して、最低でも同等の額に設定する必要があるのです。

ちなみに、ここでの『報酬額』とは、賃金、給料、手当、時間外勤務手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として支払われるすべての金銭のことを指し、特定技能外国人の報酬額が、比較される同等の技能を有する日本人従業員の『報酬額』と比べて、正当かつ合理的な理由なく低くなっているときその他不当に差別的なものとなっていると認められるときは受入計画の認定はされませんので注意が必要です。

なお、報酬額が同じ業種で同程度の技能レベルの日本人従業員(もし同程度の技能レベルの日本人従業員がいなければ、特定技能外国人と最も技能レベルが近い従業員を比較対象日本人とする)と比較して同等以上であることを立証する必要があり、その際に比較対象の日本人従業員の賃金台帳の提出が求められ、もし比較対象の日本人従業員と報酬額に差があった場合にはは、その合理的な理由の説明が求められます(例えば経験年数の違いや保有資格の種類や数などがその典型で、日本語能力を理由として報酬額に差異を設けることは認められておりません)。

もしも比較対象の日本人従業員が職場にいないケースにおいては、賃金規定や就業規則に基づき、3年程度の経験を有する技能者の報酬額と比較していくことになります。

なお、賃金規定はあっても賃金テーブルがない場合には、周辺地域における建設業者の平均賃金や、設計労務単価等を根拠にするなどして報酬額が適切であることを立証する必要があります。

まとめ

建設分野において外国人労働者(特定技能外国人)の雇い入れは、他の特定技能の業種に比べて煩雑で、国土交通省への建設特定技能受入計画認定申請と出入国管理庁への特定技能ビザ申請のダブルチェック体制になっているという意味でとりわけに複雑になっています。

特に特定技能外国人へ支払う賃金に関しては、特定技能の他分野にはない独自の基準が設けられおり、これらを全て満たしたうえで受入計画の認定申請を行う必要があります。

当事務所では、これから特定技能外国人を雇い入れる建設業者様向けに『建設特定技能受入計画』の作成から認定申請、そして特定技能ビザ申請まで一貫してサポートしておりますので、これから特定技能外国人の雇い入れを検討されている建設業者様は是非一度ご相談下さい。

さいごに

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所では、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をサポートしております。

また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。

お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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