こんにちは、行政書士の稲福です。
この記事では、建設特定技能外国人を受け入れるにあたり加入が義務付けられているJACおよび全中連をはじめとした『建設業者団体』についてわかりやすく解説したいと思います。
特定技能制度に関して重要な項目の一つに、「協議会への加入」がありますが、特定技能外国人の受入れ可能な分野では、分野ごとに専門の協議会が設置されております。
そして、この協議会への加入手続き怠ってしまうと特定技能外国人の受入れ自体ができなくなってしまうため、その仕組みを正しく理解しておく必要があります。
特定技能の各分野で設置されている協議会では特定技能外国人に関するさまざまな活動を行っておりますが、この記事では建設分野における協議会にあたる『建設業者団体』について解説していきます。
建設分野における特定技能の制度については、別の記事でも解説しておりますので、もしよろしければ参考にしてください。
この記事が、建設分野において特定技能外国人の雇用を検討している企業様の一助になれば幸いです。
建設特定技能について

特定技能の『建設分野』においては、外国人材の雇い入れるにあたり、建設技能者全体の処遇改善やブラック企業の排除といったこと考慮するべく、建設分野特有の基準が設られております。
というのも、そもそもこの建設分野における特有の基準を設けた背景には、建設業における技能実習生の失踪者数の多さというものがあります。
実は、建設分野における技能実習生の失踪率は他の特定技能における分野と比較しても高く、失踪率が全分野で約2.1%に対し、建設分野においては約8%と4倍近い数字となっており、失踪した技能実習生が別の現場で不法に就労するなど業界としてもかなり問題視されていました。
そして失踪の主な原因と考えられているのが労働法令違反で、実に技能実習実施企業の約8割が違反していると言われており、その内容として賃金台帳の未整備、割増賃金に関して、賃金の未払いなどが挙げられています。
これらの状況を改善するべく作られた建設業独自の仕組みが『建設特定技能受入計画』で、建設分野においては特定技能における他の分野共通の基準に加えて、建設分野の特性を踏まえて国土交通大臣が定めたこの独自の基準も満たさなければなりません。
そして『建設分野』においての特定技能外国を受け入れるためには、受け入れ企業は外国人に対する報酬額や昇給内容等を記載した『建設特定技能受入計画』を作成し、その内容が適切である旨の国土交通大臣の認定を受ける必要があります。
詳しくは別の記事にて解説していますので、もしよろしければ参考にして頂ければと思います。
特定技能『建設分野』における建設業者団体について

特定技能制度では分野ごとに協議会を設置し、特定技能外国人の受入れに関するさまざまな活動を行うことが定められています。
その中でも、建設分野の協議会は他の分野と比べて仕組みが異なり、建設特定技能外国人を受け入れる企業は、協議会に加入する代わりに、特定技能外国人受入企業実施法人として登録されている「建設技能人材機構(JAC)」と呼ばれる機関またはJACの正会員である建設業者団体に加入することになります。

そこで、次の見出しからは建設分野で協議会の役割を持つ「建設技能人材機構(JAC)」について解説していきます。
JAC(一般社団法人建設技能人材機構)とは
建設業においては、他の業界と異なり、建設技能人材機構(JAC)という組織が協議会の役割を担っています。
建設技能人材機構(JAC)とは、深刻化する人材不足を抱える日本の建設業界に、建設分野における外国人材の適正かつ円滑な受入れを実現するために、2019年4月に設立された組織で、主に評価試験の実施、無料職業紹介事業の実施および建設分野特定技能外国人の適正な就労環境確保のための適正就労監理業務を行っています。
建設業において、特定技能外国人を受け入れる場合には、受け入れ企業は、すべてJAC(一般社団法人建設技能人材機構)または、JACの正会員である建設業者団体に加入しなければなりません(JACの賛助会員になるか、JACの正会員である建設業者団体の会員となるかを選択できる)。
そして、出入国在留管理局に対して特定技能外国人の在留申請をする際には、このJACまたはJACの正会員である建設業者団体に加入していることが条件となるため、受け入れ企業は、それ以前にJACに加入をしておくことが求められております。
なお、特定技能の支援を行う登録支援機関については、このJACへの加入は任意となっていますが、加入する場合、下記の事項を遵守しなければなりません。
☑出入国管理及び難民認定法に規定する登録拒否事由に当てはまる者ではないこと
☑特定技能外国人の支援に必要な費用について、外国人に負担させないこと
☑支援の範囲や支援委託費用についてサイトに掲載し、掲載内容以外の費用を受入れ企業に請求しないこと
☑受入れ企業に対してJACが行う職業紹介事業の周知や活用促進などの協力をすること
☑一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS)の巡回訪問・調査指導に協力すること
JACについては別の記事にて詳細に解説しておりますので、もしよろしければ参考にして下さい。
JACの正会員である建設業者団体について
もう一つの方法として、JACの正会員である建設業者団体の会員となるルートがあり、これにより、間接的にJACに加入することが可能です。
令和7年3月4日現在、JACの正会員として登録をしている建設業者団体は55団体存在し、それらのいずれかの団体に所属することで、JACへの加入という要件を満たし特定技能外国人の受け入れを行えるようになります。
JACのホームページにて正会員(55建設業者団体)のリストが掲載されていますので、加入を希望されるの建設業者団体に問い合わせてみて下さい。
なお、当事務所が受入計画の認定申請をサポートしてきた企業様が多く入会されていた建設業者団体で『全中連(一般社団法人 全国中小建設工事業団体連合会)』という団体がありますが、次の見出しでは『全中連』について解説したいと思います。
全中連(全国中小建設工事業団体連合会)について
『全中連』は、全国の中小建設事業者を支援する団体で、中小建設工事業者の経営支援を図るとともに技術・技能の向上に資する事業を行い、中小建設工事業の健全な発展に寄与することを主な目的として発足した組織です。
主な事業内容として、海外における教育訓練の支援、建設分野特定技能1号評価試験実施への支援、無料職業紹介事業実施への支援、各県連団体並びに会員企業への外国人技能者受入れに関する情報提供、「受入負担金」の収納代行(JACより委託)などがあります。
全中連では、建設業界における深刻な人手不足の解消として、国が進めている一定の専門性・技能を有する外国人(特定技能外国人)の受入れについて、会員企業の外国人技能者受入れにおける全面的な支援をいており、全国規模で対応する登録支援機関等との業務提携により、受入企業が行う各種の支援業務と公的手続をワンストップで利用できます。
そして、全中連加入の最大の魅力は最大のメリットは、入会条件等の縛りがなく間口が広いという点、また、正式に加入できるまでに要するリードタイムが短いうえに一年中随時会員を募集をしているという点です。
なお、協議会によっては、
●会員の推薦などが必要
●募集回数が年数回しかない
●申込みから加入までの期間が長い
●エリアによっては加入ができない(東京23区と神奈川県は原則不可など)
など色々と不便で融通かきかない点が多いのですが、全中連は、上述のアドバンテージがあるうえに、唯一の入会条件が、他のJACの正会員団体(他の54の協議会)に加入していないということ、これのみです。
また、JACの賛助会員に加入する場合は、1社あたり24万円の年会費がかかりますが、全中連の年会費は年間72,000円(月6,000円×12ヶ月)と費用面においても雇い入れ時のイニシャルコストをおさえられ、申込書類も非常に簡易でスムーズに申請を行うことができます。
年会費は発生するものの、JACの賛助会員になるよりも費用を安く抑えられますので、特定技能外国人を雇入れるためにJACに加入したいという建設業者様にとっては全中連入会がお勧めです。

なお、当事務所では、建設業者様むけに全中連への加入申し込みの代行サービスも承っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
本記事では、建設分野における特定技能の協議会加入について要点をまとめて解説しました。
建設業界においては、慢性的な人材不足を解消するべく就労環境の改善のための様々な取り組みをしており、建設分野における協議会もその取り組みの一環としての役割を果たしており、建設業で働く全ての特定技能外国人が正しい給料・待遇を受けられるため雇い入れる企業の加入が義務付けられております。
なお、今回は全中連を紹介させて頂きましたが、どの団体もメリット・デメリットがありますので、各企業様の状況に応じて、どの組合に加入するか考えるべきだとは思いますが、特定技能外国人を雇い入れる場合は、内定から入社までにかかる時間をできるだけ短くする必要がありますので、素早く入会できる団体に入会することを強くお勧めします。
今回解説した2つのパターンでの団体加入までのプロセスを理解し、建設業者様が計画通りに特定技能外国人を受入れることができれば幸いです。
さいごに
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所では、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をサポートしております。
また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。
お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。



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