建設特定技能外国人の転職についてわかりやすく解説

建設

こんにちは。行政書士の稲福です。

この記事では、建設分野における特定技能外国人
「転職」について解説します。

そもそも特定技能外国人は、転職が可能なのか、転職をする場合の要件はどのようなものがあるのか、また、企業が行うにあたってどのような点に注意しなければならないのか等、特定技能外国人を雇い入れる企業様の疑問に答えていきたいと思います。

結論から申し上げると、特定技能外国人は一定の条件を満たしていれば自由に転職することが可能です。

技能実習制度であれば、実習生は3年間は自由に転職することができませんが、特定技能にその制限は一切ありません

ただし、転職先を見つけたからといってすぐに転職ができる訳ではなく、受入れ企業と特定技能外国人の双方に必要な要件と手続きがあり、どちらの要件も満たしてはじめて転職が可能となります

特に、建設分野における特定技能外国人の転職は、特定技能の他分野と異なり建設分野特有の手続きがありますので注意が必要です。

これより、その詳細について、できるだけわかりやくす解説していきます。

特定技能外国人が転職をする要因について

特定技能外国人が転職する場合、大きくわけて以下の3つの要因が考えられます。

それぞれのシチュエーション
において、必要な手続きや留意すべき点が異なりますので要チェックです。

☑ 自己都合による退職
☑ 企業都合の退職
☑ 技能実習を修了後に特定技能1号へ移行するタイミング

自己都合による退職

前述したとおり、特定技能外国人は、日本人労働者と同じく自分の都合でいつでも退職することが可能です。

しかし、特定技能外国人が転職するには、転職先の受入れ企業の協力が必要不可欠です。

後述しますが、特定技能外国人は、『指定書』で指定された活動のみ行うことができます。

『指定書』とは、出入国在留管理局が発行し、パスポートに添付される紙のことで、企業名や特定技能の分野、従事する業務区分などが記載されており、特定技能外国人は、その企業であらかじめ決められた業務しかできないという決まりになっております。


つまり、特定技能外国人が日本で行える活動の範囲は、パスポートに添付されている『指定書』で定められているめ、新たな受け入れ企業からの協力を得ながら在留資格変更許可申請を実施しなければならず、転職する場合は、転職先の受入れ企業の協力を得て、在留資格変更許可申請を改めて行う必要があります。

再度、入管へ在留資格変更許可申請を行うことで、新しい在留カードと指定書が発行され、はじめて新しい受入れ企業で働くことが可能となります。

なお、特定技能外国人は自己都合による退職をした場合(会社の倒産といった受け入れ企業側の都合による退職や特定活動の在留資格を得た場合を除く)、転職期間中及び在留資格許可申請中のアルバイトが禁止されています。

これは、特定技能外国人は、指定書に記載されている企業、分野、業務区分でしか働けないためであり、転職先の企業は、在留資格変更許可が下りるまでは雇用できない点は注意する必要があります。

そのため、在留資格変更許可が下りるタイミングを想定して、前職の退職日を調整するか、あるいは十分な貯金を確保しておく必要があります。

というのも、在留資格の変更許可申請は、必要書類が多く準備に時間がかかるだけでなく、許可が下りるまで約2〜3ヶ月の時間がかかるため、転職する特定技能外国人に貯金が無いと生活が困窮する恐れがあるためです。

特定技能外国人は給与の何割かを母国の家族へと送金しているケースも多く、貯金額もそこまで高くないケースも多いため、申請期間中の生活費を賄うことができず友人から借金してトラブルになる等の問題が発生してくる場合もあります。

会社都合の退職

会社都合の退職とは、解雇や事業縮小、倒産など特定技能外国人の責任ではなく、受け入れ企業側の都合でで会社を辞めなければならないことを指しますが、「自己都合退職」とは異なり、行政手続きや在留資格においても取り扱いが変わる場合があります。

この会社都合の退職は、出入国在留管理庁の運用要領では『非自発的転職』とも記述されていますが、こういったケースの場合、受け入れ企業側で特定技能外国人が次の職を見つけるための支援を実施しなければならず、具体的にはハローワーク(公共職業安定所)や民間の人材紹介事業者を紹介したり、失業給付や保険関係の行政手続きのサポートのことを指しています。

特定技能の在留資格は、「特定産業分野の業務に従事すること」が前提で、仕事を失うとそのままでは在留資格の継続が難しくなることがありますので、これらは特定技能外国人を雇い入れた会社側にとって当然の義務だといえます。

ちなみに、登録支援機関に支援業務の委託している場合においては、これらのサポートを全て委託することが可能とされておりますが、企業側も一定程度のサポートは必要でしょう。

なお、会社都合で退職になった場合については特例として、求職活動のための「特定活動」の在留資格が長期で認められるケースもあり、その間の就職活動が許可される場合があります(「在留資格変更」や「活動制限の緩和」を含む)が、この期間中に転職先が見つからない場合は帰国しなければならない可能性があります。

技能実習を修了後に特定技能1号へ移行するタイミング

技能実習生は、以下の要件を満たすことで特定技能へ移行することができます。

技能実習2号/3号を良好に修了
➡ 技能実習1号(1年)と2号(1年10ヶ月)の合計2年10ヶ月以上の実習期間があれば移行可能。


技能実習での職種/作業内容と特定技能1号の職種が一致していること 
➡ 移行したい建設特定技能の業務区分と技能実習の職種および作業とが関連していること

例えば、技能実習2号を良好に修了した後、ステップアップとして特定技能1号に移行することもできますが、その際に転職をすることも可能です。

つまり、技能実習を良好に修了したタイミングで、技能実習時に実習をしていた企業ではなく、別の企業へ転職することもできます。

ただし、技能実習期間を修了し、技能検定3級又は技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格しないと、そもそも特定技能1号に移行ができませんので、技能実習先や監理団体とのスケジュール調整が必要です。

また、建設分野においては、技能実習時の職種および作業と特定技能の業務区分が関連していなければ、これまた移行することができませんので注意が必要です。

建設分野における技能実習の移行対象職種と業務区分との対応をまとめたのがこちらの表になります。

技能実習制度における移行対象職種のうち25職種が、建設分野における特定技能1号の在留資格を取得する際の試験
免除の対象となっております。

各職種がどの業務区分に対応しているかについては、確認してみてください。

建設特定技能外国人の転職のフローと必要な手続きについて

次に、転職のおおまかな流れについて説明していきます。

①転職先の所属機関(新しい受入れ企業)を決める
退職・『契約機関に関する届出』を出入国在留管理庁へ提出
➂新しい就業先での雇用が決定後に雇用契約結ぶ

④特定技能雇用契約に係る重要事項説明
⑤在留資格『特定活動(6ヶ月・就労可)』の申請
⑥国交省(地方整備局)へ『建設特定技能受入計画』の認定申請
⑦1号特定技能外国人支援計画の策定
⑧地方出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請

⑨就労開始・契約機関に関する届出』を出入国在留管理庁へ提出

①転職先の所属機関(新しい受入れ企業)を決める

まず、新しい受入れ企業(雇用先)を見つける必要があります。

ここで一点注意が必要なのは、建設分野においては、「業務区分」という概念が存在し同じ建設分野であっても、「従事する業務区分」が異なる場合には、従事する業務区分毎の特定技能評価試験を受けて、合格する必要があります。

建設分野では、「土木」「建築」「ライフライン・設備」という3つの業務区分が存在し、それぞれ独自の試験を設けております。

そして、同じ業務区分内であれば転職は可能ですが、「建築」の業務区分でどび職として働いていた特定技能外国人が、電気設備や配管工事業を営む企業へ転職するには、業務区分「ライフライン・設備」の建設特定技能評価試験に合格している必要があるのです。

例えば、同じ建設分野であっても、「ライフライン・設備区分」で働いている特定技能外国人が、「建築区分」で働く場合には、「建築区分」の技能評価試験に合格しなければなりません。

せっかく特定技能外国人と転職先企業のニーズがマッチしても、業務区分の問題で転職できないといった問題に直面する可能性がありますので、建設分野において、どの業務区分であれば特定技能1号へ移行が可能なのかという点は事前に確認しておくようにしましょう。

また、技能評価試験を受験する場合においても、開催日程が限られているため、事前に調べておくことは必須です。

②退職・『契約機関に関する届出』を出入国在留管理庁へ提出

新しい所属機関(転職先の会社 新・受入れ企業)が決まったら、現在勤務している所属機関(退職する会社 旧・受入企業)へ原則、退職の30日前までに通知することになります。

そして、特定技能外国人は、離職後14日以内に『契約機関に関する届出』を出入国在留管理庁へ提出しなければなりません。

この『契約機関に関する届出』は、次の就職先が決まる前に退職した場合でも、退職した日から14日以内に届出をしなければならず、その後、就職先が決まって新しい会社に入社をしたら、入社をした日から14日以内にまたこの届出を出すことにはなります。

この手続きを行わない場合、今後の在留に影響が出る場合がありますので注意しなければなりません。

こちらの様式は出入国在留管理局のHPよりダウンロードできます。

届出先は地方出入国在留管理官署で、インターネットを利用した電子届出・窓口への持参・郵送のうち、都合の良い方法を選択できます。

➂新しい就業先での雇用が決定後に雇用契約結ぶ

次に受入れ企業と特定技能外国人との雇用契約の締結に移りますが、特定技能外国人と締結する雇用契約が適切であることが求められ、外国人である旨を理由に雇用契約を不当な内容にしてはならず、その内容が適切でなければ、受け入れ機関としては認められず、雇用も開始できません。

そして、特定技能の雇用契約が満たすべき具体的な基準として、以下の項目があります。

①分野省令で定められた技能を要する業務に従事させる内容である
②所定労働時間が、特定技能人材以外の通常の労働者と同等である
③報酬額が日本人と同等以上である
④外国人である旨を理由とした不当な条件が記載されていない
⑤一時帰国を希望した場合の休暇取得の規定がある
⑥派遣の場合は派遣先や派遣期間が明確に定められている(派遣形態での雇用は農業・漁業分野のみ可)
⑦外国人が帰国旅費を負担できない場合、受け入れ機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑に進むよう必要な措置を講ずる内容が記載されている
⑧外国人の健康状態や生活状況を把握するために必要な措置を講ずる内容が記載されている
⑨分野特有の基準に適合している(※分野所管省庁の定める告示で規定)

などがあります。

その他にも、建設分野に関しては他の分野と比べて厳格な制度運用がされており、雇用契約の内容において受入れ企業が遵守しなければならない独自の基準が設けられているため、雇用契約締結時には十分注意が必要です。

詳細は、別の記事で解説しておりますので、よろしければ参考にしてみて下さい。

④特定技能雇用に係る重要事項説明

雇用契約を締結したら、次は、建設分野特有の要件である特定技能雇用に係る重要事項説明です。

特定技能外国人の受入れ企業は、建設特定技能外国人を受け入れるにあたり、受入れ企業が外国人本人に対して事前に説明しなければならない項目をまとめた『雇用契約に係る重要事項事前説明書』(告示様式第2(第3条関係))を用い、1号特定技能外国人に支払われる報酬予定額や業務内容等について、事前に当該外国人が十分に理解することができる言語を用いて説明し、雇用契約に係る重要事項について理解していることを確認する必要があります。

この重要事項説明は、特定技能外国人が安心して適正に就労できるようにするための義務的手続きのひとつで、雇用契約書・労働条件通知書と矛盾がないよう整合性をとることが求められております。


国交省のホームページに、実際の様式(10か国語版)および記載例がアップされておりますので、是非参考にしてみてください。

⑤在留資格『特定活動(6ヶ月・就労可)』の申請

⑥でも解説をしますが、建設分野の特定技能外国人が転職する際は、独自に基準により受入れ企業(所属機関)が国土交通省の『建設特定技能受入計画』の認定を取得しなければなりません。

この国交省認定申請ですが(一度実際に申請をなさった方であればお分かりいただけると思いますが)、申請人である外国人本人、受入れ企業ともに、日常業務ではなかなかお目にかかることのないような小難しい書類を何種類も取り寄せたうえで申請書類を作成する必要があり申請準備に相応の時間と手間がかかります。

また、審査を経て認定が下りるまでに通常3ヶ月程度要するため(重箱の隅をつつくような意味不明な差し戻しも多いです)、国交省への認定申請と入管への在留資格変更許可申請に必要な書類の準備と許可がおりるまでにかなりの時間がかかってしまい、転職希望の特定技能外国人の在留期限が迫っている場合、すぐに対応しきれず在留期限がきれてしまう場合もあります。

このような状況を見越して、入管は特例として『特定活動(6ヶ月・就労可)』という在留期間6ヶ月の在留資格へ変更し、その期間中に特定技能の申請書類を準備・申請することを認めています。

つまり、この制度は、転職による在留資格変更を希望する場合において、申請人本人や雇い入れる企業で準備すべき書類が在留期限までに間に合わず、在留期間中に変更の申請ができない特定技能外国人のために作られた制度で、『特定技能1号』へ在留資格の変更予定の外国人材に対する特例措置という位置づけとなっております。

このように『特定活動(6か月・就労可)』は、企業の人手不足を改善するために、一定の専門性や技能を有する外国人に対し、特定技能1号の変更申請の準備に時間を要する場合に与えられるの在留資格で、2024年1月9日以降の申請から『特定技能1号』への移行準備のための在留期間が6か月(従前は4か月)に延長されました。

特に建設分野においては、企業が初めて特定技能外国人を受入れるケースですと、事前に建設キャリアアップシステムに登録したり建設業者団体に加入したり、『建設特定技能受入計画』策定し国交省の認定申請を行うなど多くの手続きが必要となるため、転職時にはこの『特定活動(6ヶ月・就労可)』を申請し、在留資格を得て、転職先の企業で就労しながら受入計画認定を待つことが一般的となっております。

なお、この『特定活動(6か月・就労可)』は、許可された場合、受入れ予定企業で就労することも可能ですが、この特定活動として就労していた期間は、特定技能の在留期間5年に合算される点はご留意ください。

⑥国交省(地方整備局)へ建設特定技能受入計画の認定申請

⑤でも解説したとおり、『建設特定技能受入計画』の認定とは、建設分野で特定技能外国人を受け入れる受入れ機関が、国土交通省の認定を受ける制度で、在留資格の申請および許可要件となっております。

よって、そもそもこの認定がおりなければ、建設分野において特定技能外国人を雇用することができないことになります。

そして、この制度の主な目的としては、技能実習からの円滑な移行、建設分野での適正な外国人雇用の確保、技能水準の維持・向上、適切な労働条件と生活支援の提供などがあります。

というのも、建設分野においては特定技能外国人を雇い入れるにあたり、建設技能者全体の処遇改善やブラック企業の排除といったこと考慮しており、そのため特定技能における他の分野共通の基準に加えて、建設分野の特性を踏まえて国土交通大臣が定める基準も満たす必要があるというロジックになります。

実は、建設分野における技能実習生の失踪率は他の特定技能における分野と比較しても高く、失踪率が全分野で約2.1%に対し約8%と4倍近い数字となっており、失踪した技能実習生が別の現場で不法に就労するなど建設業界としてもかなり問題視されています。

そして、失踪の主な原因と考えられているのが労働法令違反で、実に技能実習実施企業の約8割が違反していると言われており、その内容として賃金台帳の未整備、割増賃金に関して、賃金の未払いなどが挙げられています。

これらの状況を改善するべく作られた建設業独自の仕組みが『建設特定技能受入計画』で、建設分野においては特定技能における他の分野共通の基準に加えて、建設分野の特性を踏まえて、受入れ企業側が国土交通大臣が定めたこの独自の基準も満たすことが求められております。

詳細は別の記事でも解説しておりますので、よろしければ参考にしてみてください。

⑦特定技能外国人支援計画の策定

特定技能外国人の支援計画とは、特定技能外国人の受入れ企業が、その外国人の日本での生活や就労に必要な支援を行うために策定する計画のことで、この支援計画の作成・実施は、法務省令で義務付けられており、こちらを策定することも在留資格の許可要件となっております。

特定技能外国人の受入れ企業は,雇用した外国人労働者が日本で暮らしていくため、日々の生活を支援する義務があり、職業生活上,日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画である『1号特定技能外国人支援計画書』を作成後に入管へ提出し、その計画に基づき支援を行わなければなりません。

なお、受入機関である雇用主は,支援計画の実施を登録支援機関に委託することができ、支援を委託した場合には雇用主は外国人を支援する体制があるものとみなされるため、支援義務を負わなくなります。

そこで、もし雇用主が特定技能外国人に対して支援業務を行うことが難しい場合には、登録支援機関へ実際の支援業務を委託することになります。

登録支援機関については、別の記事でも解説しておりますので、是非参考にしてみてください。

例えば、建設業の一人親方や小規模の建設会社などでは支援体制や支援の中立性などの基準を満たすことが難しいため、通常は登録支援機関に支援業務を委託することになります。 

ちなみにこの支援計画の内容が不十分の場合、特定技能外国人の雇い入れが許可されないこともあるので注意が必要です。

⑧地方出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請

前述のとおり、まず大前提として、特定技能外国人が転職する際には、すでに特定技能の在留資格を持っていたとしても、受入れ企業を変えるごとに新たに「特定技能」の在留資格変更許可申請を実施しなければなりません。

なぜなら、特定技能外国人は、『指定書』に記載されている企業・分野・業務区分でしか働けず、転職を機に所属機関が変更になるため、在留資格変更許可の申請を再度行う必要があるからです。

そして、この指定書は、特定技能外国人のパスポートに貼り付けられており、特定技能の在留資格が許可された際に入管から発行されます。

なお、建設分野の特定技能外国人は、同一の業務区分内であれば転職は可能ですが、例えば、同じ建設分野でも業務区分が異なるケースにおいては転職不可となっております(例えば、大工工事業から電気工事業への転職は、業務区分が異なるため転職はできません)。


次に、在留資格変更許可申請時に必要な書類についてですが、「申請人に関する提出書類」「所属機関に関する提出書類」「分野に関する提出書類」に分けられます。

まず、申請人である特定技能外国人本人の必要書類としては、健康診断個人票、住民税の課税証明書・納税証明書、源泉徴収票、技能試験の合格証などがあります。

そして、所属機関に関する提出書類は、転職先の受入れ企業に準備してもらわなければなりませんが、履歴事項全部証明書、労働保険料等納付証明書(未納なし証明)、社会保険料納入状況回答票、税務署発行の納税証明書、法人住民税の市町村発行の納税証明書などがありますが、条件によっては省略できるものもあります。

最後に分野に関する提出書類ですが、特定技能技能評価試験の合格証明書、日本語検定合格証、また、分野ごとに技能実習を良好に修了した証明書などの提出が求められます。

⑨就労開始・『契約機関に関する届出』を出入国在留管理庁へ提出

在留資格変更許可申請の認定許可が下り、新しい在留カードが発行された日から就業が可能となります。

そして、前述のとおり、特定技能外国人は会社の退職時と転職先の受入れ企業に入社時、それぞれ14日以内に出入国在留管理庁で『契約機関に関する届出』を行う必要があります。

その他にも『外国人雇用状況の届出』をハローワークに届け出る必要がありますが、こちらは『雇用保険被保険者資格取得届』の提出をもって外国人雇用状況の届出とすることができます(雇入れの翌月10日が期限です)。

また、特定技能外国人の在留資格変更許可後は、特定技能所属機関として、定期的な届出と、契約の変更時などの随時の届出が必要になります。

特定技能外国人が転職するための要件について

特定技能外国人は、何の制限もなく自由に転職ができるわけではなく、特定技能外国人側はもちろんのこと、受入れ企業側も満たすべき要件があります。

それぞれの要件を確認しておきましょう。

特定技能外国人側の要件

建設分野において注意が必要なのは、他の分野にはあまり馴染みのない業務区分」という概念が存在することです。

例えば、建設分野では「土木」「建築」「ライフライン・設備」という3つの業務区分が存在し、それぞれ独自の技能評価試験を設けています。

そして、業務区分「土木」で働いていた人が、「ライフライン・設備」区分に該当する業務を営む企業へ転職するには、「ライフライン・設備」の特定技能評価試験に合格する必要があります。

よって、同じ建設分野の転職であっても、業務区分が異なる場合は改めて該当の特定技能評価試験を受験し、合格しなければならないという点は押さえておきましょう。

特定技能外国人を受け入れる企業側の要件

まず前提として、建設分野に該当し、かつ3つの業務区分(建築・土木・ライフラン設備)のいずれかに該当していることが必須で、この分野該当性を判断するために、分野ごとに独自の基準が設けられております(建設分野であれば建設業許可の取得・建設キャリアアップシステム事業者登録等)。

その他、受入れ企業が満たすべき基準として、

①受け入れ機関自体が満たすべき基準
②雇用契約に関する基準
➂支援体制に関する基準

の3つの基準がありますが、②、③に関しては前述のとおりですので、ここでは『①受け入れ機関自体が満たすべき基準』について主な項目を列挙します。

①反社会的勢力と関係がないこと
②労働,社会保険及び税金をしっかり納めていること
➂1年以内に従業員を解雇していないこと(特定技能外国人と同じ業務に従事する従業員)
(企業側の責任で)1年以内に行方不明者を発生させていないこと
⑤5年以内に
外国人の不適切な受入れ歴がないこと(技能実習での重大違反など)
⑥外国人等が保証金の徴収等をされていないこと(受入れ機関がそれを認識して雇用契約を締結していないこと)
⑦受入れ企業が違約金を定める契約等を締結していないこと
⑧特定技能外国人の支援に要する費用を直接又は間接に本人に負担させないこと
⑨労災保険関係の成立の届出等をしていること
⑩給料を銀行口座振り込みによって支払うこと

こちらの詳細は出入国在留管理庁のHPにある『1号特定技能外国人支援に関する運用要領』にて確認することができますので、参考にしてみてください。

転職までにかかる期間について

建設分野において特定技能外国人が転職を行う場合、手続きには一定の期間(数ヶ月)がかかります。

まず、受入れ企業が国交省へ建設特定技能受入計画の認定申請を行いますが、書類の準備に2週間から1ヵ月程度、そして認定がおりるまで、おおよそ2ケ月から3ケ月程度時間を要します(国交省の審査状況により変動)。

そして、建設特定技能受入計画認定証明書の発行後に入管へ在留資格変更許可申請を行いますが、その所要期間の目安がおおよそ1~2ケ月(書類の不備や入管の混雑状況により遅れる可能性あり)であることを考えると、建設特定技能外国人の場合は、採用してから特定技能1号の在留資格がおりるまで、最大で約6ヶ月くらいかかることを想定しておきましょう。

一方で、前述しました『特定活動(6ヶ月・就労可)』の場合は、通常1ヶ月~1ヵ月半くらいで許可が下りるため、就労開始までのリードタイムを短縮できることになります(ただし、その後は建設特定技能受入計画認定申請および在留資格変更許可申請の準備をしなければならないため、遅滞なく手続きを進めていく必要があります)。

いずれにしろ、転職先が決定してもすぐに就労が開始できないことについては、面接時にしっかりと説明を行い、特定技能外国人本人から承諾を取ったうえで、早急に必要な申請書類の準備を開始することが内定後の辞退を防ぐために大切です。

特定技能外国人が転職する際の注意点

特定技能外国人は自由に転職ができる一方で、転職に至るまでに経るプロセスや制度面での問題が発生し、超えるべきハードルは多いのも事実です。

例えば、外国人本人と雇用先の企業側だけでなく、転職先の企業の協力が必要であることから手続きが煩雑になったり、建設特定技能受入計画認定申請や在留資格変更許可申請に日数がかかるうえに申請中は働くことができずに収入が得られないなどの問題もあります。

ここからは特定技能外国がの転職する際の問題点について解説していきます。

在留資格変更許可申請中に他社でアルバイトができない(自己退職時)

前述のとおり、特定技能外国人は自己都合による退職(自発的離職)をした場合、他社でアルバイトをすることがが禁止されています

つまり、会社の倒産といった受け入れ企業側の都合による退職(非自発的離職)や特定活動(6ヶ月・就労可)の在留資格を得た場合を除いて、転職期間中及び特定技能への在留資格変更許可申請中のアルバイトができないのです(指定書に記載されている企業、分野、業務区分でしか働けないため)。

そのため、特定活動(6ヶ月・就労可)への在留資格変更許可申請を行い、就労までのリードタイムを短縮するか、在留資格変更許可が下りるタイミングを想定して、前職の退職日を調整するか、十分な貯金を確保しておく必要があり、転職のハードルが高くなります。

特に建設分野においては、特定技能の他の分野よりも在留資格の変更許可がおりるまでに時間がかかるため(就労開始まで最長で6ヶ月ほど)注意が必要です。

また、特定技能特定技能外国人を受け入れる企業側も、申請人本人の在留資格変更許可が下りるまでは雇用することができないため、注意が必要です。

なお、特定技能外国人が、企業の都合により転職(非自発的離職)をする場合は注意が必要で、元の就労先であった企業は、転職先探しや行政情報の提供など、必要なサポートを行わなければならない点を理解しておきましょう。

在留資格申請が不許可になった場合、帰国する必要がある

もし在留資格の変更申請が不許可になった場合ですが、特定技能外国人は一旦帰国を余儀なくされる可能性もあります

帰国するとなれば、再び日本で働くためには、在留資格認定証明書交付申請をはじめとした入国手続きをしなければならないとはもちろん、受入れ予定だった企業の内定も取り消されることになるでしょう。

よって、在留資格変更許可申請の申請内容に齟齬や不備がないよう十分注意しましょう。

引き抜き自粛規定の存在

引き抜き自粛規定とは、特定技能外国人が特定の地域(特に大都市圏)や業種に過度に集中するのを防ぐ目的で、政府や各産業別協議会が 他社が特定技能外国人を安易に引き抜く行為 を自粛するよう要請している制度で2019年3月に、飲食料品製造業分野で「特定技能所属機関による外国人労働者の引き抜き防止に係る申し合わせ」が行われ、その後、建設、漁業など他分野の協議会にも広がりました 。

現在、協議会や省庁から「申し合わせ」「要請」という形で通達されており、強制力こそないものの、業界全体での遵守が求められておりますが、そもそも何をもって引き抜きとなるのか、明確に定義されているわけではありません

また、特定技能外国人の転職の機会が抑制されることにより、転職市場での流動性が停滞するという問題も出てくるでしょう。

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございました。

本記事では、建設分野における特定技能外国人の転職ついて解説しました。

特定技能外国人は、一定の要件を満たせば、受入れ企業となる転職先があれば、本人の希望により転職することができますが、受入れ企業・特定技能外国人本人ともに必要な手続きがあるため抜かりなく行うようにしましょう。

また、受入れ企業としては、雇用した特定技能外国人になるべく長く働いてもらため、な受け入れ体制を整え、日常生活まで(可能な限り特定技能外国人の母国語で)サポートすることにより、転職を防ぐことが大切です。

安心して働ける環境を構築し、特定技能外国人と受入れ企業が良い関係性を築いていけるといいですね。

さいごに

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所では、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をサポートしております。

また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。

お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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建設未分類特定技能
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