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建設現場での『技人国』不法就労の実態とそのリスクについてわかりやすく解説

技人国
建設現場の「技人国」で企業が注意すべきこと
結論

建設業で技人国の外国人材を雇用する場合、 「施工管理」「技術者」という肩書きだけで判断してはいけません。 重要なのは、実際に設計、施工管理、積算などの 専門的・技術的な業務に従事しているかどうかです。 人手不足を理由に、型枠、鉄筋、とび、資材運搬、 手元作業などの現場作業を継続的に行わせれば、 偽装就労・不法就労の問題につながる可能性があります。

根拠

技人国は、土木・建築の設計、施工管理、積算、 技術資料の作成など、 専門的な知識・技術を必要とする業務を対象とする在留資格です。 一方、建設現場での肉体労働を中心に行わせる場合には、 業務内容に応じて建設分野の特定技能など、 現場就労を前提とした在留資格を検討する必要があります。 また、申請時だけ適法な職務内容を整えるのではなく、 入社後も実際の配属・業務内容を継続的に確認することが、 不法就労助長罪などのリスクを防ぐために重要です。

こんにちは、行政書士の稲福です。

この記事では、建設現場での『技人国』偽装就労の実態とそのリスクについて解説していきたい思います。

近年、日本の建設業界では慢性的な人手不足が続き、外国人労働者の受け入れが加速しています。しかしその一方で、「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」という本来、ホワイトカラー向けの在留資格を取得した外国人が、建設現場で肉体労働をしているケースが後を絶ちません。

これは一見すると、単なる柔軟な労働配置のように思えるかもしれませんが、実際には入管法違反となる偽装就労であり、企業・外国人双方に重大なリスクをもたらします。

この記事では、建設業界における「技人国」の偽装就労の実態、そしてその背景や対策について、わかりやすく解説します。

✅ この記事でわかること
  • 技人国ビザの審査で会社側が見られるポイント
  • 受入企業の事業内容・業務実態が重要になる理由
  • 外国人本人の学歴・職歴と仕事内容の関連性
  • 単純作業や現場作業が含まれる場合のリスク
  • 雇用契約書・職務内容説明書で注意すべき点
  • 不許可を防ぐために事前確認すべき実務ポイント

『技術・人文知識・国際業務』は、以下のようなホワイトカラー業務が対象とした在留資格です

「技術・人文知識・国際業務」の主な3つの分野
☑ 技術分野
土木・建築・機械・電気・ITなど、理工系の専門知識や技術を活かした 設計・開発・技術管理などの業務が対象となります。
☑ 人文知識分野
法律・経済・経営・社会学など、人文科学分野の専門知識を活かした 企画・営業・マーケティング・経理などの業務が対象となります。
☑ 国際業務
外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする、 翻訳・通訳、語学指導、海外取引、デザインなどの業務が対象となります。
出入国在留管理庁:「技術・人文知識・国際業務」の運用

「技術・人文知識・国際業務」は、専門的・技術的な知識や、 外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事するための在留資格です。 出入国在留管理庁では、在留資格該当性や学歴・職歴との関連性、 許可・不許可事例など、具体的な運用上の考え方を公表しています。

単純作業を主たる業務とすることはできません 実際の業務内容が、申請人の学歴・職歴等を背景とした 専門的・技術的な知識を必要とする業務に該当するかが重要です。 職種名だけではなく、実際にどのような業務に従事するのかを踏まえて審査されます。
▶ 「技術・人文知識・国際業務」の運用資料を見る
出典:出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」 (2026年4月15日改定)

つまり、専門的な知識や技術を必要とする業務に外国人が従事することを想定した在留資格で、現場作業員(ブルーカラー)としての就労は認められておりません。

また、大卒や専門学校卒など一定の学歴・実務経験が必要となり、設計や施工管理、CADオペレーター、事務職などで就労することを想定しております。

次に、在留資格『技人国』の該当性ですが、現場作業ではなく、専門的な知識や技術を必要とする業務に従事することが求められています。

建設業において、就労が認められている業務は以下のようなものがあります。

建設分野で想定される主な業務例
☑ 設計
CADを使用した設計業務、構造計算、建築法規の検討、 建築図面の作成・修正など
☑ 施工管理
建築・土木工事の施工計画、工程管理、品質管理、安全管理、 現場における技術的な管理・調整など
☑ 積算・見積り
設計図書や仕様書をもとにした数量計算、工事費の積算、 見積書の作成など、建築・土木に関する専門知識を要する業務
☑ 技術事務
インフラ開発等に関する技術提案、工事に必要な技術資料・報告書・ 計画書の作成など、専門的・技術的知識を必要とする業務
※ 在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、職種名だけでなく、 実際の業務内容に専門的・技術的知識が必要とされるかどうかが重要となります。

設計ですと、CADオペレーターは、パソコンのソフトで建物を設計する専門職であり、建築士の描いた図面を読み取る能力と、CADを操作するスキルが必要となっており、また建設法令や、建設についての専門用語の知識も必要です。

また、施工管理は現場のスケジュールや品質などを管理し、現場監督は現場で職人をまとめて指揮を執りますので、ともに現場での監督・管理を職務内容とするので、土木・建築に関する高度な専門的知識がなければできない職務となります。

その他にも、建設業の事務職には、総務、人事、経理、会計、法務、マーケティングなど、さまざまな職種があったり、営業職は工事案件の獲得を担当し、建設・建築などの自然科学系の知識や、会社の経営やビジネスに直結する法務、経済、経営、会計などの人文知識が必要になります。

つまり、『技人国』での就労は 、専門的な知識や技術を必要とする業務であるホワイトカラー職に限定されており、建設現場での肉体労働はできないことになります。

『技人国』での偽装就労とは、『技人国』の在留資格では本来認められていない現場作業を行わせることを指します。

前述したとおり、『技人国』は、専門的な知識や技術を活かして、ホワイトカラー業務(建設業で言えば、施工管理や設計、積算などが該当)に従事する外国人のための在留資格ですが、建設会社の中には『技人国』の在留資格で外国人を雇用し、本来その資格で認められていない現場での鉄筋・型枠・とび作業やコンクリート打設や解体工事、また内装や塗装などの補助作業のような現場の単純作業(肉体労働)を行わせているというのが実状です。

言うまでもなく、これらは「技人国」の在留資格外の活動であり、このような現場作業は、建設特定技能や技能実習の在留資格でなければ従事することはできません。

このよに、『技人国』の在留資格を持つ外国人材に対して、現場での肉体労働(型枠、鉄筋、とびなど)を行わせることを『偽装就労』と呼びます。

そしてこれは、本人の在留資格の活動内容を大きく逸脱する違法行為
となります

DATA|CONSTRUCTION & RESIDENCE STATUS
建設業で働く外国人|在留資格別の構成
2025年10月末|建設業の外国人労働者を在留資格別に比較
建設業で働く外国人労働者
206,468
建設業外国人の在留資格別構成
技能実習 119,868人|58.1%
特定技能 26,965人|13.1%
身分に基づく在留資格 23,326人|11.3%
技術・人文知識・国際業務 19,849人|9.6%
特定活動 13,391人|6.5%
高度専門職・経営管理・技能等 1,925人|0.9%
※高度専門職、経営・管理、技能、企業内転勤、研究などを含む。 建設業について各在留資格の個別人数は公表されていないため合算。
資格外活動 1,142人|0.6%
うち留学524人
特定技能と技人国を比較
建設業における「現場技能者」と「専門技術者」の外国人材
特定技能
26,965人
建設業外国人の13.1%
技術・人文知識・国際業務
19,849人
建設業外国人の9.6%
特定技能+技人国
46,814人
建設業外国人全体の 22.7%
2資格だけで比較した場合
特定技能
57.6%
技人国
42.4%
建設業では、特定技能と技人国の役割は明確に異なります。

特定技能は、土木、建築、ライフライン・設備など、 建設現場で実際に技能を発揮する人材 が中心です。

一方、技人国は、 施工管理、設計、CAD・BIM、積算、技術管理など、 専門的・技術的な業務を担う人材 が中心です。

つまり建設業の外国人材は、 「現場作業を担う外国人」だけではなく、 技術者層にも広がっている ことが分かります。
身分系23,326人の内訳
永住者
12,057人
定住者
5,893人
日本人の配偶者等
3,925人
永住者の配偶者等
1,451人
建設業|在留資格別外国人労働者数
在留資格・区分 人数 建設業外国人に占める割合 主な位置づけ
技能実習 119,868人 58.1% 建設現場における技能実習
特定技能 26,965人 13.1% 土木・建築・ライフライン/設備等の技能者
身分に基づく在留資格 23,326人 11.3% 永住者・定住者・日本人の配偶者等など
技術・人文知識・国際業務 19,849人 9.6% 施工管理・設計・CAD/BIM等の技術者
特定活動 13,391人 6.5% 各種特定活動
高度専門職・経営管理・技能等 1,925人 0.9% その他の専門的・技術的分野。個別人数は非公表
資格外活動 1,142人 0.6% うち留学524人
合計 206,468人 100% ※不明2人を含む
特定技能と技人国の違い
比較項目 特定技能 技人国
建設業での人数 26,965人 19,849人
建設業外国人に占める割合 13.1% 9.6%
主な役割 現場技能者 専門技術者
主な業務 土木・建築・ライフライン/設備等 施工管理・設計・CAD/BIM・技術管理等
2資格内の構成比 57.6% 42.4%
建設業の外国人材は、技能実習や特定技能だけではありません。

技能実習が119,868人と最大ですが、 特定技能26,965人、身分系23,326人、 技人国19,849人、特定活動13,391人など、 多様な在留資格の外国人が働いています。

特に注目すべきなのが、 特定技能と技人国を合わせると46,814人、 建設業外国人全体の22.7% に達している点です。

特定技能が建設現場の技能者を担う一方、 技人国は施工管理、設計、CAD・BIMなどを担っています。

つまり、外国人材の活用は 「現場作業者の確保」から「外国人技術者の活用」まで、 建設業全体へ広がっている と見ることができます。
出典
厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ (令和7年10月末時点)
別表6「在留資格別・産業別外国人労働者数」

※本文中の「建設業外国人に占める割合」は、 建設業外国人労働者206,468人を100%として算出。
※厚生労働省の別表6に記載される「構成比」は、 各在留資格の全国総数に占める建設業の割合であり、 本グラフの割合とは計算方法が異なります。

厚生労働省|外国人雇用状況を見る →
厚生労働省|在留資格別・産業別データを見る →
参考|技術・人文知識・国際業務に関する出入国在留管理庁の公式資料

在留資格「技術・人文知識・国際業務」の対象業務、許可基準、必要書類、 派遣形態で就労する場合の取扱いなどについては、 出入国在留管理庁が公式資料を公表しています。

それでは、建設業で偽装就労が起きてしまうのか、その背景や原因をわかりやすく解説します。

①特定技能や技能実習の受け入れ準備が整っていない

本来、建設現場などで外国人材に現場作業を担ってもらうのであれば、業務内容に応じて、特定技能や技能実習といった在留資格を適切に活用する必要があります。これらの在留資格は、現場での就労を制度上予定している一方で、受入れにあたっては一定の制度的・実務的な準備が求められます。

たとえば、特定技能では、分野ごとの受入れ要件を満たしたうえで、技能評価試験や日本語試験の合格者を採用し、さらに必要に応じて支援計画の策定・実施体制を整えなければなりません。また、支援を登録支援機関に委託する場合には、その選定や契約、支援実施の管理も必要になります。

一方、技能実習では、監理団体との契約、技能実習計画の作成・認定申請、実習実施体制の整備、生活支援や相談対応の体制構築など、受入れ前後を通じて多くの準備が必要となります。制度上求められる書類や運用管理も多く、受入企業には継続的な対応が求められます。

このように、特定技能や技能実習による受入れは、制度の趣旨に沿った適正な運用が可能である反面、一定の事務負担や手続負担を伴います。そのため、特に人手不足が深刻な中小建設業者においては、「すぐに働ける人材を確保したい」「煩雑な手続はできるだけ避けたい」という現実的な事情から、比較的受け入れやすく見える技人国の在留資格を持つ外国人材に頼ってしまう構図が生まれがちです。

しかし、ここで注意しなければならないのは、受入れ準備が大変だからという理由で、本来その在留資格で認められていない現場作業に従事させてよいわけではないという点です。制度上は特定技能や技能実習で受け入れるべき業務を、便宜的に技人国の外国人に担わせてしまえば、結果として在留資格該当性を欠く就労となり、不法就労や偽装就労の問題につながるおそれがあります。

つまり、特定技能や技能実習の受入れ準備が整っていないこと自体が問題なのではなく、その不備を技人国による便宜的な運用で埋めようとすることが、法的リスクを高める大きな要因となります。

外国人材を適法かつ安定的に活用するためには、手続の煩雑さだけで判断するのではなく、業務内容に応じた適切な在留資格を選択し、必要な受入れ体制を整備することが重要です。

②採用コストが安い

外国人材を雇用する際には、在留資格の種類によって、受入れに要する費用や継続的に発生する管理コストに大きな違いがあります。そのため、現場では法的な適合性よりも、コスト面の負担の軽さが優先され、不適切な在留資格で就労させてしまう一因となっている場合があります。

まず、技能実習では、受入れにあたり、監理団体への手数料や、現地の送り出し機関に対する費用、事前研修や書類手続に関する費用など、比較的多くの初期費用が発生します。さらに、受入れ後も監理団体に対する監理費が継続的に必要となり、一般的には月額2万円〜5万円程度の負担が生じます。

次に、特定技能の場合には、技能実習のような監理団体は不要である一方、受入企業が義務的支援を自社で行わず、登録支援機関へ委託する場合には、支援計画に基づく支援委託費が発生します。この費用は一般的に月額1万円〜3万円程度であり、受入れ後も継続的な支援コストがかかる点が特徴です。

これに対して、技人国の在留資格を持つ外国人については、紹介会社を利用しない限り、高額な初期採用費用が発生しないことも多く、また、技能実習のような監理団体や、特定技能のような登録支援機関を必ず介する必要もありません。そのため、企業側から見ると、受入れ後の月額コストも比較的抑えやすく、費用構造がシンプルであるという特徴があります。

さらに、技人国には特定技能のような支援計画の策定・実施義務がないため、企業によっては「管理の手間もコストも少ない在留資格」として安易に捉えてしまうことがあります。その結果、本来は技人国で認められていない現場作業に従事させてしまう、いわゆる偽装就労につながっている実態も見受けられます。

しかし、コストが低いからといって、在留資格と職務内容の適合性を無視してよいわけではありません。むしろ、コスト負担が軽いことを理由に不適切な配置を行えば、後に企業側が不法就労助長罪等の重大なリスクを負う可能性があるという点を十分に理解する必要があります。

外国人雇用においては、単なる費用比較ではなく、在留資格制度の趣旨に沿った適法な受入れを前提に判断することが不可欠です。

➂在留資格の制限

日本の在留資格制度には、単純労働を目的とした一般的な在留資格が存在せず、この制度的な制約が、偽装就労の背景にあります。

つまり、業務範囲が分野ごとに限定される『特定技能』で認められている業種を除き、単純労働に従事するための一般的な在留資格がないため、受入れ企業側は(特定技能での在留資格が認められていない業種においては)技術職として『技人国』の在留資格を持つ外国人材を採用と申請し、実際には現場作業員として働かせるという手法を使うことがあります。

④外国人労働者側の事情

来日前や就職時に、企業や仲介者から通訳として働けると説明され日本に来たにもかかわらず、いざ働いてみると単純労働を強いられ、母国に戻るわけにもいかず、泣く泣く働き続けるケースも多々あります。

つまり『技人国』の在留資格で日本に来たはずが、現場作業や単純労働など、本来認められていない仕事をしているというパターンです。

このようなケースにおいて、外国人労働者も日本で働き続けたいという希望があるため、不当な労働環境に声を上げられない状況が続いたり、多少のリスクがあっても働かざるを得ないケースもあります。

しかし、在留期間の更新時に、在留期間中に実際に従事していた仕事内容を立証できない場合には、更新が不許可になることもあります。

⑤書類審査中心の制度の隙

技人国をはじめとする在留資格の審査は、実務上、申請時に提出された書類を中心に行われるため、入管が在留資格取得後の就労実態まで常に細かく把握しているわけではありません。そのため、申請書類上は適法な業務内容が記載されていても、実際には異なる業務に従事しているというケースが生じ得る構造となっており、これが偽装就労を見逃す温床になっている側面があります。

特に中小企業、とりわけ建設分野のように現場ごとの人員需要が大きい業界では、在留資格ごとの就労範囲に対する理解や管理が十分でないまま、実務が優先されてしまうことがあります。その結果、「とりあえず現場に出してみる」「問題にならなければそのままでよい」といった安易な判断がなされ、制度の隙につけこむような就労実態が生まれやすくなります。

しかし、本来は、入管にすぐ把握されるかどうかとは別に、実際の業務内容が在留資格に適合していなければ、それ自体が重大な法的リスクを伴います。書類上の整合性だけで安心するのではなく、実際の就労実態まで含めて適法性を確保することが、企業に求められる重要な責任といえるでしょう。

⑥入管法の知識不足

一部の建設会社では、技人国=外国人を雇用できる在留資格といった大まかな理解にとどまり、実際にどのような業務に従事させることが認められているのかまで十分に理解しないまま、現場に配置してしまうケースがあります。しかし、技人国はあくまで専門的・技術的な業務を前提とする在留資格であり、単純な現場作業や肉体労働を主たる業務として行わせることは、原則として想定されていません。

このような誤解が生じる背景には、入管法や在留資格制度に関する知識が、現場責任者や採用担当者に十分共有されていないという問題があります。在留カードを所持していることだけで安心し、「就労できる資格があるのだから問題ない」と判断してしまうと、結果として在留資格に適合しない業務へ従事させてしまうおそれがあります。

また、建設業界特有の多重下請構造も、偽装就労が生じやすい一因です。

元請、一次下請、二次下請と業務が重層化する中で、実際に誰がどのような業務指示を行い、どこまで雇用責任や配置管理責任を負っているのかが曖昧になりやすく、適法性の確認が不十分なまま就労実態だけが先行してしまうことがあります。

その結果、表向きには「施工管理」「技術者補助」などの名目で雇用していても、実際には下請現場で継続的に資材運搬、片付け、手元作業などの肉体労働に従事させているケースも見受けられます。このような運用は、名目上の職種ではなく実際の業務内容によって判断されるため、入管法上大きな問題となり得ます。

だからこそ企業には、在留資格制度を正しく理解し、採用時だけでなく、配属後の実態も含めて適法性を確認する姿勢が求められます。特に建設業では、下請構造の中で責任が曖昧になりやすいからこそ、誰がどの業務を担い、どの在留資格で従事しているのかを明確に管理することが重要です。

⑦ブローカーの関与

偽装就労の背景には、受入企業や外国人本人だけでなく、外国人材の紹介や就職支援に関与するブローカー的な仲介業者の存在があることも少なくありません。ここでいうブローカーとは、表向きには合法的な人材紹介会社や支援者を装いながら、実際には在留資格制度の趣旨を逸脱した就労をあっせんし、不適切な受入れを助長している者を指します。

こうした業者は、企業側の制度理解が十分でないことや、外国人本人が日本の入管法制度に詳しくないことにつけ込み、あたかも問題のない手続であるかのように話を進めることがあります。しかし実際には、形式だけを整え、実態が伴わない形で在留資格を取得・維持させるような関与が行われているケースもあり、結果として偽装就労や不法就労につながる大きな要因となります。

よく見られる手口としては、たとえば、「事務職」や「管理業務」などの名目で雇用契約書や申請書類を作成しながら、実際には現場作業に従事させるといった、偽装書類の作成支援があります。また、在留資格を形式的に維持するために、実態とは異なる勤務内容を前提とした説明や報告を行い、入管に対して実情と異なる情報を提出するケースもあります。

さらに問題なのは、外国人本人に対しても「この働き方で問題ない」「みんなこうしている」といった説明を行い、本人に違法性の認識がないまま就労させてしまう場合があることです。本人としては適法だと信じて働いていたにもかかわらず、後になって不法就労として扱われ、在留継続や将来の申請に重大な影響を受けることもあり得ます。

また、外国人材紹介業者やブローカーが、企業に対して「技人国の在留資格を取れるから、とりあえず日本に呼べる」といった甘い説明を行い、職務内容との適合性を十分に検討しないまま受入れを進めさせるケースもあります。このような場合、企業側が制度を正確に理解しないまま受け入れてしまうことで、結果として在留資格に適合しない就労実態が生じ、企業も本人も大きな法的リスクを負うことになります。

だからこそ、外国人雇用においては、仲介業者の説明をそのまま鵜呑みにするのではなく、在留資格と職務内容の適合性を企業自身が確認し、必要に応じて行政書士などの専門家に相談することが極めて重要です。ブローカーの関与を排除し、透明性のある適法な受入れ体制を整えることが、企業と外国人本人の双方を守ることにつながります。

企業側のリスク

偽装就労が認定された場合、企業は入管法違反にとどまらず、採用・労務管理体制そのものに重大な法令違反があると評価されるおそれがあります。

その結果、刑事・行政上の責任に加え、企業名の公表、取引先や監督官庁からの信用低下など、事業運営全体に深刻な影響が及ぶ可能性があります。

偽装就労が発覚した場合の企業側の主なリスク
リスク 内容 企業への影響
不法就労助長罪 外国人に認められていない業務をさせた場合、 企業や担当者が不法就労助長罪に問われる可能性があります。 在留カードの確認だけでなく、実際の業務がその在留資格で 認められているかまで確認することが重要です。 現行:3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金
2027年4月1日からは、 5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金 に引き上げられます。
在留資格の取消し・更新不許可等 「技術・人文知識・国際業務」で認められない業務を 主たる業務として行うなど、実際の活動が在留資格に 適合していない場合、本人の在留資格にも影響する可能性があります。 在留資格の取消しや更新・変更不許可などにつながり、 雇用を継続できなくなるおそれがあります。
今後の外国人雇用への影響 問題が発覚すると、個別の外国人だけでなく、 企業の外国人雇用管理や法令順守体制そのものが 審査上確認される可能性があります。 今後の在留資格申請や外国人採用への影響、 制度上の受入れ制限、取引先や関係機関からの 信用低下につながるおそれがあります。
労働法・安全配慮上の責任 現場作業に従事させる場合、安全教育、作業手順の指導、 保護具の使用、安全管理などが不十分であれば、 労働関係法令や安全配慮義務の問題が生じる可能性があります。 労基署等への対応、是正指導、労災対応、 損害賠償請求などに発展する可能性があります。
重要なポイント 「在留資格を持っているから働かせてよい」ということではありません。 企業には、在留カードの確認だけでなく、 「その在留資格で、実際にその業務に従事できるのか」 まで確認することが重要です。

外国人本人のリスク

外国人本人も、不法就労が認定されれば、退去強制や在留資格の更新・変更が認められにくくなるなど、今後の在留継続に重大な影響を受けるおそれがあります。

また、一度問題が生じると、その後の就職や各種申請においても不利に働く可能性があるため、本人にとっても極めて大きな法的リスクがあります。

偽装就労・不法就労が発覚した場合の外国人本人の主なリスク
リスク 内容 本人への影響
不法就労による刑事責任 就労が認められていない状態で働いた場合や、 資格外活動許可を受けずに在留資格で認められた範囲を超えて 報酬を受ける活動を行った場合には、 入管法違反として刑事責任を問われる可能性があります。 事案によっては 3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金、またはその併科 の対象となる可能性があります。 「会社から指示された」という事情だけで、 当然に責任を免れるわけではありません。
在留資格の取消し・退去強制 実際の活動が在留資格に適合していない場合や、 本来の在留資格に基づく活動を行わず、 認められていない就労活動を行っている場合には、 在留資格取消しや退去強制手続の対象となる可能性があります。 日本での在留継続が困難となり、 就労先を失うだけでなく、 日本からの退去を求められる可能性があります。
再入国への影響 入管法違反により退去強制となった場合には、 一定期間、日本への上陸が認められなくなる 「上陸拒否期間」が適用されることがあります。 初回の退去強制では原則 5年間、 過去に退去強制等の経歴がある場合には原則 10年間 日本に上陸できない場合があります。
更新・変更申請への影響 不法就労や在留資格に適合しない就労実態が判明した場合、 その後の在留資格更新・変更申請では、 過去の在留状況や法令順守状況も含めて審査されます。 更新・変更が認められにくくなるなど、 将来の日本での就労や在留継続に 大きな影響が生じる可能性があります。
外国人本人も業務内容の確認が重要です 「会社から指示された仕事だから問題ない」とは限りません。 現在の在留資格で、 実際にその業務へ従事することが認められているのか を、勤務開始前に確認しておくことが重要です。

偽装就労を防ぐためには、企業も本人も在留資格ごとの就労範囲を正確に理解することが何より重要で、もし現場作業が主であれば、「特定技能」や「技能実習」での受け入れを検討するべきです。

また、雇用前に職務内容の整合性をチェックする体制を整えることも大切です。

①虚偽申請・偽装に対するリスク認識の共有

就労内容の実態を正しく反映しないまま在留資格申請を行ったり、名目上は適法な業務として申請しながら、実際には認められていない業務に従事させたりする行為は、いわゆる虚偽申請や偽装就労として重大な法的リスクを伴います。このような形で「不法就労」が発覚した場合、外国人労働者本人が処分の対象となるだけでなく、受入企業側も不法就労助長罪などに問われるおそれがあります。

特に建設分野では、人手不足を背景に、実務の現場で「とにかく現場で働いてもらえればよい」「在留カードがあるから問題ないだろう」といった安易な認識が生じやすく、これが後々大きなトラブルにつながるケースがあります。しかし実際には、外国人が有効な在留カードを所持していることだけでは足りず、その在留資格で、その業務に従事できるのかという点まで含めて確認しなければ、適法な雇用とはいえません。

また、こうした問題は、担当者一人の認識不足だけで起こるものではなく、経営層、現場責任者、人事担当者の間で制度理解にずれがあることで発生しやすいという特徴があります。そのため企業に求められるのは、単に申請手続を外部に任せることではなく、制度の正しい理解を前提として、社内でリスク認識を共有し、実際の配置や業務内容まで含めて一貫した管理体制を整えることです。

外国人材の活用は、適切に運用すれば企業にとって大きな力になります。その一方で、制度理解が不十分なまま受け入れを進めると、本人の在留継続だけでなく、企業の信用や事業運営そのものにも影響を及ぼしかねません。だからこそ、虚偽申請や偽装就労のリスクを軽視せず、法令順守を前提とした受入れ体制を整えることが重要です。

適切な対応を行うことで、外国人材の活用とコンプライアンスの両立を実現していきましょう。

②在留資格と職務内容の適正なマッチング

外国人を雇用する際は、在留資格の名称だけを見るのではなく、実際に従事させる業務内容がその在留資格で認められているかを丁寧に確認することが重要です。たとえば、現場での作業を中心とする業務に従事してもらうのであれば、その業務内容に応じて、特定技能や技能実習など、現場就労を前提とした在留資格で受け入れる必要があります。

一方で、技人国は、専門的・技術的な知識や業務従事を前提とした在留資格であり、単純作業や現場作業を主たる業務とする働き方は、原則として想定されていません。そのため、採用時の肩書きや求人票上の記載だけを整えていても、実際の就労実態が現場作業中心であれば、当然ながら在留資格該当性の観点から問題が生じます。

企業としては、「この人は就労可能な在留資格を持っているか」だけでなく、「この在留資格で、この業務に従事できるのか」という点まで確認しなければなりません。外国人雇用においては、在留資格と職務内容を適正に一致させることが、法令順守の出発点であり、将来のトラブルを防ぐうえでも極めて重要です。

➂入社後の業務実態の確認・定期モニタリング

外国人雇用においては、採用時や在留資格申請時に適法であったとしても、それだけで十分とはいえません。入社後に実際に従事している業務内容が、申請時の内容や在留資格で認められた範囲から逸脱していないかを、継続的に確認していくことが重要です。

そのためには、外国人を雇用するための社内体制を整備したうえで、適正な労働条件による雇用契約を締結し、実際の業務内容と在留資格との整合性を常に意識した運用を行う必要があります。特に、現場の都合や人員不足を理由に、当初予定していなかった業務へ安易に配置転換してしまうと、結果として在留資格に適合しない就労実態が生じるおそれがあるため注意が必要です。

また、不法就労を未然に防ぐためには、社内の労務管理体制を強化し、定期的に業務内容を確認するチェック体制を構築することが求められます。人事担当者だけでなく、現場責任者や管理職も含めて、外国人労働者の従事業務に対する理解を共有し、実態とのずれが生じていないかを確認できる仕組みを整えておくことが重要です。

さらに、職務内容を明確にしたうえで、就業規則や業務分掌、配置管理のルールを整備しておくことで、外国人労働者が実際にどのような業務に従事しているのかを客観的に確認しやすくなります。こうした記録や運用体制は、社内管理の適正化に資するだけでなく、万一入管から調査や照会を受けた場合にも、企業として適切に説明・対応できる基盤となります。

外国人雇用において重要なのは、「採用時に問題がなかったか」だけではなく、入社後も適法な就労状態を維持できているかを継続的に管理することです。定期的なモニタリングを通じて業務実態を把握し、必要に応じて是正できる体制を整えることが、企業のコンプライアンス確保と安定した外国人雇用の両立につながります。

④外部専門家との連携

外国人雇用においては、在留資格ごとの就労範囲や申請実務、入社後の運用管理に至るまで、専門的な判断が求められる場面が少なくありません。制度の理解が不十分なまま受入れを進めてしまうと、企業側にその意図がなかったとしても、結果として不適切な配置や在留資格に適合しない就労実態を招くおそれがあります。

そのため、行政書士など外国人雇用制度や入管実務に精通した専門家の支援を受けながら、採用前の段階から業務内容の整理、在留資格との適合性確認、必要書類の整備、入社後の運用体制の確認まで、一貫して適法性を意識した対応を行うことが重要です。特に、どの在留資格で受け入れるべきか、実際の職務内容が許容範囲に収まっているか、配置転換や業務追加に問題がないかといった点は、専門家の視点を交えて慎重に判断すべき事項です。

また、外部専門家と連携しておくことで、法改正や審査運用の変更があった場合にも、早い段階で必要な見直しや是正対応を行いやすくなります。これは単に申請を進めるためだけではなく、企業として継続的に適法な受入れ体制を維持し、将来的なトラブルを未然に防ぐうえでも大きな意義があります。

外国人材の受入れを安定的かつ適法に進めるためには、社内だけで判断を完結させるのではなく、必要に応じて外部専門家の知見を取り入れながら、適切な人材配置と運用管理を徹底することが重要です。

専門家との連携は、コンプライアンスの確保と安心できる受入れ体制づくりを支える、有効な手段の一つといえるでしょう。

最後までご覧いただきありがとうございます。この記事では、建設現場での『技人国』偽装就労の実態とそのリスクについて解説しました。

外国人労働者は、建設業にとって貴重な戦力ですが、制度の理解と正しい活用が不可欠で、特に在留資格に対する認識の欠如はリスクが非常に大きいです。

特定技能や技能実習など、現場業務に適した在留資格を選び、しっかりと受け入れ体制を整えることが、企業にとっても外国人材にとっても安心できる雇用の第一歩となります。

適切な外国人材の活用こそが、これからの建設業を支える鍵となってくると思います。

出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直

ENGINEER / SPECIALIST VISA × CONSTRUCTION

建設業では、職種名ではなく実際の業務内容によって在留資格の適合性が判断されます。技人国の外国人材を現場作業へ配置せず、採用後も申請内容に沿った業務を継続することが重要です。

CHECK POINT

現場作業に従事する場合は、特定技能など業務に適した在留資格を選択する必要があります。技人国では、施工管理・設計・積算などの専門的業務に実際に従事していることを継続的に確認しましょう。

採用前の業務設計から在留資格申請、受入れ後の配属管理まで一貫した体制を整えることが、企業と外国人材の双方にとって安心できる長期雇用につながります。

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 代表
東京都行政書士会 会員番号第15128号
登録支援機関 登録番号26登録ー013601
専門は、専門:外国人雇用・在留資格申請、特定技能、技術・人文知識・国際業務、高度専門職、経営・管理、登録支援機関・受入企業の実務支援等

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