登録支援機関は、 所属機関(受入企業)に義務付けられた定期届出について、 支援業務の一環として届出書そのものを作成するのではなく、 支援実績や必要な事実関係の整理・情報提供にとどめることが重要です。 届出の主体と最終責任は受入企業にあり、 書類作成を専門家へ依頼する場合は、 行政書士など適切な資格者との役割分担を明確にする必要があります。
特定技能の定期届出は、 外国人の受入れ状況、雇用状況、支援の実施状況、 法令遵守状況などを所属機関として報告する手続です。 登録支援機関は支援実績や事実関係を受入企業へ提供することはできますが、 官公署へ提出する書類を他人の依頼を受け、 対価を得て業として作成することは行政書士法との関係で問題となります。 2026年施行の改正行政書士法では、 報酬の名目を問わないことも明確化されているため、 「支援費に含まれているから無料」という整理にも注意が必要です。
こんにちは、行政書士の稲福です。
顧問をしている登録支援機関から、最近とくに多く寄せられる質問の一つが、「登録支援機関が、所属機関(受入企業)の年1回の定期届出を作成しても問題ないのか?」というものです。
結論から申し上げると、登録支援機関は所属機関の定期届出を作成することはできません。ただし、この点は非常に誤解が生じやすいため、理由と正しい役割分担を丁寧に整理していきたいと思います。
- 特定技能における年1回の定期届出の基本
- 登録支援機関が所属機関の定期届出を作成できない理由
- 支援業務と入管提出書類の作成業務の違い
- 登録支援機関が関与できる「情報提供・補助」の範囲
- 受入企業・行政書士・登録支援機関の正しい役割分担
- 善意の書類作成が法令違反につながるリスク

そもそも「年1回の定期届出」とは何か
特定技能制度では、特定技能外国人の受入企業(特定技能所属機関)に対して、外国人の受入れ状況、活動状況、報酬の支払状況、支援の実施状況などを内容とする定期届出を、年1回、地方出入国在留管理局へ提出する義務が課されています。
2025年4月の制度改正により、従来の四半期ごとの届出は年1回へ変更され、「受入れ・活動状況」と「支援実施状況」の届出も統合されました。
重要なのは、この定期届出の提出義務を負う主体は登録支援機関ではなく、特定技能外国人を受け入れている所属機関、つまり受入企業そのものであるという点です。支援業務を登録支援機関へ委託している場合であっても、特定技能所属機関としての在留管理上の責任まで登録支援機関へ移るわけではありません。
出入国在留管理庁は、令和7年3月12日に公布された 「出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令」により、 特定技能所属機関による定期届出の運用を見直しました。
・特定技能所属機関による定期届出の 届出項目を変更
・提出頻度を 四半期ごとから1年に1回へ変更
・定期届出における提出書類についても見直し
この定期届出は、 特定技能外国人を受け入れている所属機関、 つまり受入企業が行う届出 です。
1号特定技能外国人の支援を登録支援機関へ委託している場合でも、 特定技能所属機関としての届出義務そのものが 登録支援機関へ移るわけではありません。
「2 特定技能制度における運用改善について (令和7年3月12日『出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令』公布)」
登録支援機関の立場と権限
登録支援機関とは、特定技能外国人を受け入れる所属機関(受入企業)に代わって、特定技能外国人に対する生活支援・就労支援・相談対応・各種同行支援等の義務的支援(および任意的支援)を適切に実施するために、出入国在留管理庁に登録された機関をいいます。
そして、登録支援機関は、あくまで支援業務の実施主体であり、在留資格に関する申請・届出書類の作成主体ではない点が重要なポイントです。つまり、在留資格に関する申請書類や入管に提出する法定届出書類について、「作成権限」が付与されているわけではありません。
登録支援機関は、特定技能所属機関から委託を受けて、 1号特定技能外国人支援計画に基づく支援を実施する機関 です。
・事前ガイダンス
・生活オリエンテーション
・住居確保等の支援
・相談・苦情への対応
・定期面談
・行政機関への通報
・その他、支援計画に定められた支援の実施
登録支援機関として登録されていること自体によって、 外国人本人の在留資格に関する申請書類や、 特定技能所属機関が提出主体となる法定届出書類を、 業として作成する権限が付与されるわけではありません。
定期届出についても、登録支援機関が支援状況に関する 必要な情報・資料を所属機関へ提供する場合はありますが、 提出主体は特定技能所属機関 とされています。
改正後の行政書士法第19条では、 行政書士または行政書士法人でない者が、 「他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」 官公署提出書類の作成を業として行うことについて、 業務制限の趣旨が明確化されています。
したがって、 「支援委託料に含まれているから」 「登録支援機関だから」 という理由だけで、当然に入管提出書類の作成まで行えるものではありません。
ここで重要なのは、支援業務と、入管提出書類の作成業務は、法的に別物だという点です。登録支援機関については、別の記事でも解説しておりますので、是非参考にして下さい。
なぜ「作成できない」のか
年1回の定期届出は、法令に基づく「他人(=所属機関)のために官公署(入管)へ提出する書類」に該当します。そして、このような書類を、業として作成できるのは、原則として弁護士と行政書士のみです。
したがって、登録支援機関が所属機関に代わって定期届出書を作成するという行為は、明確に行政書士法違反として処罰の対象となります。
なお、2026年1月1日より施行された改正行政書士法により、これまで曖昧に運用されてきた入管への申請書類作成において「グレーゾーンの排除」と「責任主体の明確化」という明確なラインが引かれることにました。
2025年6月13日に公布された改正行政書士法では、 行政書士または行政書士法人ではない者による業務制限について、 「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」 という文言が追加されました。 改正法は2026年1月1日から施行されています。
さらに両罰規定も整備され、 違反行為を行った担当者だけでなく、 その者が所属する法人にも100万円以下の罰金が科される可能性 があります。
特定技能の登録支援機関や人材紹介会社などが行政書士業務と隣接するサービスを行う場合には、 単に「書類作成料」を別途受け取っていないというだけでなく、 支援料・コンサル料・手数料などの対価の中に、 官公署提出書類の作成業務が実質的に含まれていないか を確認することが重要です。
▶ 衆議院「行政書士法の一部を改正する法律」を確認する ▶ 日本行政書士会連合会「会長談話」を確認する今後は、本来は適法に外国人材を受け入れているはずの受入企業にまで、調査や是正指導、場合によっては入管からの厳しい確認が及ぶ可能性がありますので、十分注意が必要です。
詳しくは、別の記事で解説しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
支援機関が一切関与してはいけないのか?
ここでよくある誤解が、「では、登録支援機関は一切関与してはいけないのか?」という点です。
答えは NO です。
登録支援機関は、「支援実績の事実関係を整理する」「必要な情報を所属機関に提供する」「内容の確認・説明を行う」といった『情報提供・補助』の立場で所属機関の定期届出に関与することは可能です。
ただし、「書類の文言を組み立てる」「届出書を完成させる」「形式的に作成者となる」といった行為は、役割分担を越えてしまうことになります。
実務上の正しい整理
実務的に安全なのは、次の形です。
● 内容の最終責任者
● 法的観点からの確認
● 内容説明・資料提出
この三者の役割を分けることで、制度違反・法令違反のリスクを最小限に抑えることができます。
「良かれ」のつもりが一番危険
「良かれ」と思ってやったことが、後から振り返ると登録支援機関にとっても所属機関にとっても一番リスクが高かった――外国人雇用の現場では、そうした場面が少なくありません。
忙しい企業の代わりに書類を整えた。現場が回るよう、手続きを先回りした。制度に詳しいからこそ、つい踏み込み過ぎてしまった。
しかし、善意であっても、役割や権限を越えた瞬間に違法性をおびるのが入管実務や士業関連業務の怖いところです。「悪意はなかった」「助けたかった」では済まされない。だからこそ今、“良かれ”ではなく、“正しいかどうか”で判断する姿勢がこれまで以上に求められています。
さいごに
登録支援機関は、所属機関の年1回の定期届出について、
- 作成主体にはなれない
- 情報提供・補助にとどめるべき
というのが、大前提となります。
特定技能制度は、「支援」と「申請・届出」の線引きを誤ると、関係者全体にリスクが波及する制度でもあります。不安がある場合は、早めに専門家へ相談し、正しい役割分担のもとで制度を運用することが、結果として、企業・外国人・支援機関すべてを守ることにつながります。
制度を守ることは、誰かを縛るためではなく、関わるすべての人の事業と立場を守るためのものです。本稿が、登録支援機関・受入企業の皆さまにとって、制度を正しく理解し、安心して特定技能制度を運用するための一助となれば幸いです。
出入国在留管理局申請取次行政書士
稲福 正直


















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