外国人を雇用する際は、 「在留カードを持っているから大丈夫」 「技人国だから働ける」と考えるだけでは不十分です。 重要なのは、その外国人の在留資格で 実際に任せる仕事が認められているかを確認し、 採用後も業務内容が在留資格の範囲から外れていないか 継続的に管理することです。 紹介会社や派遣会社に任せきりにせず、 受入企業自身が適法な外国人雇用を管理する必要があります。
技人国では、肩書きや雇用契約書の名称ではなく、 実際の業務に専門性があるかどうかが重要です。 営業、通訳、管理業務などで採用していても、 人手不足を理由に清掃、仕分け、製造補助、 倉庫作業などが中心になれば、 在留資格との不整合が問題となる可能性があります。 また、「知らなかった」「本人や紹介会社から大丈夫と聞いていた」 というだけで企業の確認責任がなくなるわけではありません。 採用時だけでなく、配置後の仕事内容まで確認する体制づくりが重要です。
こんにちは。行政書士の稲福です。
外国人雇用についてご相談をいただく中で、企業のご担当者様からは、しばしば次のようなお話を伺います。
「在留カードは確認しています」
「紹介会社からは問題ないと聞いています」
「本人も働けると言っています」
もちろん、こうした確認は大切です。しかし実際には、それだけで十分とはいえない場面も少なくありません。
最近は、不法就労に対する取締りや行政の対応が一層厳しくなっており、単に“見た目上は問題がなさそう”というだけでは済まされない時代になっています。添付資料でも、不法就労の実態、不法就労助長罪の考え方、「技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)」の留意点、そして関係省庁による対策強化が整理されています。
私自身、この分野で日々実務に携わる中で強く感じるのは、悪質な会社だけが問題になるわけではないということです。むしろ、真面目に雇用しているつもりだった企業が、制度理解の不足や現場運用のズレによって、思わぬリスクを抱えてしまうことがあります。
今回は、添付資料の内容を踏まえながら、外国人雇用における不法就労リスクについて、実務目線で分かりやすく整理してみたいと思います。
- 不法就労助長罪とは何か
- 外国人雇用で企業が責任を問われるケース
- 技人国ビザでも不法就労になり得る理由
- 在留カード確認だけでは不十分な理由
- 採用後の業務内容確認が重要な理由
- 紹介会社・派遣会社任せにする危険性
- 企業が今すぐ見直すべき外国人雇用の管理体制

不法就労助長罪をめぐる制度改正の動きと、 外国人材を扱う人材紹介会社・登録支援機関などへの 影響について解説した参考記事です。
▶ 参考記事を確認する不法就労はどの企業にも起こり得る問題
不法就労というと、どこか極端な事例や、明らかに悪質なケースを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、実際にはそう単純ではありません。
実際、不法就労は一部の特殊な世界の話ではなく、一般の企業活動の中でも十分起こり得ることが分かります。さらに重要なのは、近年問題視されているのが、不法残留者をそのまま雇うような分かりやすいケースだけではないという点です。資料でも、表面上は正規の在留資格を有しているように見えても、実態としてその在留資格に応じた活動をしていない事案が強調されています。
つまり、企業側としては、「在留資格があるから大丈夫」ではなく、「その在留資格で、その仕事をしてよいのか」まで見なければならないということです。
ここを曖昧にしたまま採用や配置を進めると、後から大きな問題になりかねません。
不法就労助長罪とは何か
外国人雇用の場面で特に注意しなければならないのが、不法就労助長罪です。
これは、就労資格のない外国人を働かせたり、在留資格の範囲を超えた就労をさせたり、あるいはそうした就労をあっせんした場合などに問題となるものです。添付資料では、入管法73条の2に基づき、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科という重い法定刑が示されています。また、個人だけでなく法人も処罰対象となり得ることが整理されています。
2024年6月21日に公布された改正法では、 入管法第73条の2第1項について、 「三年」を「五年」に、「三百万円」を「五百万円」に改める と明記されています。
したがって、外国人を雇用する企業にとって、 不法就労の防止や在留資格・就労可能範囲の確認は、 これまで以上に重要なコンプライアンス事項となります。
外国人を採用する際には、 在留カードの有効性だけでなく、 在留資格、就労制限の有無、資格外活動許可、 さらに 実際に担当させる業務がその在留資格で認められているか まで確認することが重要です。
▶ 衆議院「改正法」の条文を確認する実務上、ここで怖いのは、企業側が「知らなかった」「本人が大丈夫だと言っていた」「紹介会社に任せていた」と説明したとしても、それで簡単に免責されるわけではなく、確認を尽くしていない場合には責任が問われます。つまり、確認すべきことを確認していなかったこと自体が問題になるのです。
外国人雇用は、善意でやっていれば大丈夫、というあまいものではありません。制度に沿って、確認すべきことをきちんと確認しているか。そこが問われます。
「技人国」でも不法就労になることがある
ここは非常に誤解が多いところです。
企業の方の中には、「技人国の在留資格を持っているなら、ある程度幅広く働けるのではないか」と考えている方も少なくありません。
しかし、実際にはそうではありません。
「技術・人文知識・国際業務」に該当するためには、学術上の素養や専門性、あるいは外国文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務であることが求められますが、その一方で、反復訓練で従事できるような業務や、単純作業が中心となる業務は対象にならないことが示されています。
不許可例も非常に分かりやすいです。たとえば、
■ホテル勤務として採用予定でも、実態が客室清掃中心だった例
■主体的な創作活動を伴わない裁断・縫製等の制作補助だった例
■商品仕分けの現場を回り、アルバイトへの指示や注意喚起を通訳することが中心だった例
■バイク修理やタイヤ交換など、現場作業が主たる内容だった例
などが挙げられています。
ここで大切なのは、雇用契約書の書き方や肩書ではなく、実際に何をしているかで判断されるということです。
たとえば、採用時には営業、通訳、管理業務としてスタートしたとしても、現場の人手不足を理由に、次第に倉庫作業、清掃、製造補助、仕分け等が中心になっていけば、それは技人国の活動として問題視される可能性があります。この“少しだけ手伝ってもらう”が積み重なって、気づけば本来業務と逆転している、というのは現場で本当によくある話です。
出入国在留管理庁が公表している、 在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の 該当性や審査上の考え方を整理した公式資料です。 外国人本人の学歴・職歴だけでなく、 実際に従事する業務が専門的・技術的な活動に該当するか、 学んだ内容や実務経験との関連性があるか などが重要な判断ポイントになります。
最近の対策強化で何が変わるのか
警察庁、法務省、出入国在留管理庁、厚生労働省による「不法就労等外国人対策の推進(改訂)」によると、関係機関の連携強化、偽装在留や偽装請負への対応、不法就労助長に対する取締りの徹底などが示されています。特に、国内外のブローカーが関与し、表面上は適法に見せかけながら、実態としては在留資格に合わない活動をさせる事案が問題視されています。
要するに、これからはますます、「形式上整っているか」だけではなく、「実態として適法か」が厳しく見られるということです。
また、資料では、在留カードの確認、偽造カード対策、失効情報照会などの重要性にも触れられています。単にコピーを保管して終わりではなく、本人確認や就労資格確認を適切に行う体制づくりが、企業に求められています。
警視庁は、外国人を雇用する事業主に対し、 在留カードや旅券を確認し、 在留資格・在留期間・就労制限・資格外活動許可の有無などを確認したうえで、 その外国人を適法に雇用できるか確認すること を求めています。
・在留資格と在留期限
・表面の「就労制限の有無」
・裏面の「資格外活動許可欄」
・実際に担当させる業務が在留資格の範囲内か
企業が今すぐ見直すべきポイント
適正な外国人材受入れのために、企業が特に注意すべきポイントをまとめます。
在留カード確認を形式作業にしない
在留カードは確認している、という会社は多いです。ただ、見ているだけでは足りません。
こうした点まで確認して、初めて意味があります。添付資料でも、偽造や失効確認への言及があります。
採用時だけでなく、配置後も業務内容を確認する
ここが最も重要です。外国人雇用の問題は、採用の瞬間だけではなく、採用後の運用で起こります。
- 繁忙期だけ現場に入ってもらっている
- 本人の語学力を活かす予定だったが、今はほぼ単純作業
- 管理業務のはずが、実態は作業員と変わらない
こうした状態は、後から見れば非常に危険です。現場はどうしても人手不足になりやすく、「少し手伝ってもらう」が起きがちですが、外国人雇用ではその“少し”が命取りになることがあります。
紹介会社や派遣会社任せにしない
外部の会社が入っていても、受入企業の責任がなくなるわけではありません。最終的に、どの在留資格の人を、どの業務で受け入れているのかを把握するのは、受入れ側の重要な責任です。
「任せていたから分からなかった」では済まない場面があることを、あらかじめ理解しておく必要があります。
“たぶん大丈夫”で進めない
この分野で一番危険なのは、実は悪意よりも、根拠のない楽観です。「たぶんこの仕事でもいけるだろう」「みんなやっているらしい」「今までも問題なかった」など、こうした感覚で進めてしまうと、後で説明がつかなくなります。外国人雇用は、思いつきや場当たり対応ではなく、最初から適法運用を設計しておくことが大切です。
まとめ
外国人雇用における不法就労リスクは、もはや一部の悪質な会社だけの問題ではありません。在留資格があるから安心、紹介会社が間に入っているから安心、という時代ではなくなっています。添付資料でも、不法就労の実態、不法就労助長罪の重さ、「技人国」における業務適合性の重要性、そして対策強化の方向性がはっきり示されています。
特に「技人国」については、名前だけ立派でも中身が伴っていなければ意味がありません。実際の業務が、専門性を要するものなのか。単純作業に流れていないか。採用後も適法な運用が維持されているか。この視点が非常に重要です。
外国人雇用は、企業にとって大きな力になります。だからこそ、雑に扱ってはいけません。採れればよい、働いてもらえればよい、ではなく、適法に受け入れ、適法に働いてもらう。この基本を、改めて大切にしていただきたいと思います。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直

















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