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特定技能「物流倉庫」は、偽装技人国問題の受け皿になれるのか

特定技能

こんにちは。行政書士の稲福です。

特定技能の新分野として、物流倉庫が追加される流れになっています。物流倉庫分野は、EC市場の拡大、荷物の小口化、多頻度配送、倉庫内作業の増加などを背景に、慢性的な人手不足が続いている分野です。

政府資料や各種解説記事でも、物流倉庫分野について、特定技能1号外国人の受入れ見込み数が設定され、今後の制度開始に向けて受入れ準備が進んでいることが紹介されています。物流倉庫分野の特定技能1号外国人の受入れ見込み数については、11,400人と説明されています。

この制度については、多くの記事で、業務内容、受入れ要件、協議会、直接雇用、派遣禁止、DX要件などが解説されています。しかし、私がこの分野で特に注目しているのは、単に「新しい特定技能分野が増える」という点ではありません。むしろ重要なのは、これまで物流倉庫の現場で起きていた、不安定でグレーな外国人就労の受け皿が、制度上どのように整理されていくのかという点です。

今回は、特定技能「物流倉庫」について、制度の概要だけではなく、現場で起きてきた派遣、偽装技人国、技能実習のグレー運用、不法就労リスクという観点から考えてみたいと思います。

✅ この記事でわかること

  • 物流倉庫で外国人材を雇用する際に確認すべき在留資格
  • ピッキング・仕分け・梱包業務で注意すべき就労範囲
  • 派遣・請負・紹介会社に任せきりにするリスク
  • 物流現場で整えるべき外国人雇用の管理体制

物流倉庫は、以前から外国人労働者が多く働いている現場の一つです。ピッキング、仕分け、梱包、検品、ラベル貼り、入出荷作業、在庫管理補助など、倉庫内には多くの人手を必要とする作業があります。

これらの業務は、求人を出しても日本人がなかなか集まらないことがあります。特に大都市圏の物流倉庫では、EC需要の拡大により、慢性的に人手が足りない状況が続いており、物流倉庫分野はEC拡大や保管需要の増加を背景に、人材確保が大きな課題となっているされています。そのため、物流倉庫の現場では、これまでも多くの外国人が働いてきました。

ただし、その中には、永住者、日本人の配偶者等、定住者、永住者の配偶者等といった、いわゆる身分系の在留資格を持つ方もいれば、留学生の資格外活動として働く方もいます。これらの在留資格で、活動範囲や時間制限の範囲内で働くのであれば、当然問題ありません。

しかし、実務上注意すべきなのは、その一方で、物流倉庫の現場作業に本来適していない在留資格で働いているケースがあるのではないかという点です。特に問題になりやすいのが、技術・人文知識・国際業務、いわゆる技人国です。

技人国は、専門的な知識や技術を活かす業務を前提とする在留資格です。たとえば、通訳・翻訳、海外営業、貿易事務、システムエンジニア、設計、マーケティング、企画、経理、法務、その他専門的・事務的な業務などが典型です。

一方で、物流倉庫の現場で行われるピッキング、仕分け、梱包、検品、搬入・搬出、荷役、ラベル貼り、単純な入出荷作業などは、通常、技人国の対象業務とは言いにくいです。もちろん、物流会社の中でも、海外取引、貿易管理、システム管理、倉庫管理システムの開発・運用、国際物流の企画、法人営業などであれば、技人国に該当し得る場面はあります。

しかし、現場で荷物を仕分ける、商品を棚から取る、段ボールを運ぶ、検品する、梱包するという実態であれば、技人国として説明することは難しいです。つまり、物流倉庫で問題になるのは、職種名ではありません。「物流管理」「倉庫管理」「現場管理」「国際物流業務」という名称が付いていても、実態として倉庫内作業が中心であれば、在留資格上の問題が生じます。

ここを曖昧にしたまま外国人を雇用している会社や、派遣会社を通じて受け入れている会社は、今後かなり注意が必要になると思います。

物流倉庫で偽装技人国が起きやすかった背景には、いくつかの事情があります。まず、物流倉庫は人手不足が深刻です。求人を出しても人が集まらない。繁忙期には一気に人員が必要になる。EC需要や配送量の増加により、現場の作業量が増える。

その一方で、技能実習制度では、物流倉庫の一般的なピッキングや仕分け作業を正面から受け入れる職種が十分に整備されていたわけではありません。技能実習には「工業包装」など関連し得る職種がありますが、実態として物流倉庫のピッキングや仕分けに近い業務を行っているケースもあり、このあたりは以前からグレーな運用が起こりやすい領域だったと感じます。

技能実習の職種として認められている作業と、実際の物流倉庫の作業内容がどこまで一致しているのか。「包装」と説明しながら、実態としては倉庫内のピッキング、仕分け、入出荷作業になっていないか。この線引きは、現場ではかなり曖昧になりやすい部分です。

そのような中で、派遣会社や受入企業の一部では、技人国の名目で外国人を雇い、実際には倉庫内作業に従事させるような運用が行われてきた可能性があります。もちろん、すべての企業がそうだという意味ではありません。しかし、物流倉庫の現場において、技人国の在留資格で働いている外国人が相当数いる場合、その業務実態については、一度慎重に確認する必要があります。

物流倉庫では、派遣社員を活用している会社も多くあります。身分系の在留資格を持つ外国人や、資格外活動許可を受けた留学生が、法令の範囲内で派遣就労すること自体は、直ちに問題になるものではありません。

しかし、問題は、派遣会社が技人国の外国人を雇用し、派遣先の物流倉庫で倉庫内作業に従事させているようなケースです。技人国は、在留資格上、専門的・技術的な業務に従事することを前提としています。そのため、派遣会社が技人国の外国人を雇っているとしても、派遣先での実際の業務がピッキング、仕分け、梱包、検品、搬入・搬出などの現場作業であれば、在留資格上の活動内容と合わない可能性があります。

さらに問題なのは、派遣先企業がその実態を十分に把握していないケースです。派遣会社からは、単に「外国人スタッフを派遣します」とだけ説明され、在留資格の内容や就労可能な業務範囲について、派遣先に十分な説明がされていないこともあります。

派遣先企業としては、「派遣会社が雇っているのだから大丈夫だろう」と考えてしまうかもしれません。しかし、万が一、その派遣会社が偽装技人国や不適切な外国人雇用で調査・通報・摘発の対象となった場合、突然人が来なくなるリスクがあります。

物流倉庫の現場にとって、これは非常に大きなリスクです。単に法令違反の問題にとどまらず、現場の稼働、人員計画、納期、取引先対応に直結します。

このような現場実態を踏まえると、特定技能「物流倉庫」の新設には、一つ大きな意味があります。それは、これまでグレーな形で外国人が働いていた物流倉庫の現場に、正面から使える在留資格の選択肢ができるということです。

物流倉庫分野の特定技能では、物品の搬入・搬出、仕分け、流通加工、入出荷検品、積み卸し、在庫管理、物流機器の操作・点検・管理、作業全般の管理などが対象業務として説明されています。これまで、技人国で説明するには無理があった倉庫内作業について、制度上、一定の技能を有する外国人が正面から従事できる可能性が出てきたわけです。

この点は非常に重要です。派遣会社が技人国の外国人を使い、実態として倉庫内作業をさせている。技能実習の職種を利用しながら、実態として物流倉庫作業に近いことをさせている。

そのようなグレーな運用を続けるくらいであれば、特定技能「物流倉庫」を使い、正面から適法に受け入れる方が、企業にとっても、外国人本人にとっても、はるかに健全です。

もっとも、ここで重要な注意点があります。特定技能「物流倉庫」は、派遣で自由に人材を受け入れられる制度ではありません。特定技能制度は、原則として、受入企業と外国人本人が直接雇用契約を結び、フルタイムで雇用することが前提です。

物流倉庫分野についても、労働者派遣を前提とした受入れは認められず、直接雇用が基本となる方向で整理されています。これは、物流倉庫業界にとって非常に大きな意味を持ちます。なぜなら、物流倉庫の現場ではこれまで、派遣、請負、外注などを活用し、繁忙期や業務量の変動に応じて柔軟に人員を調整してきた会社が多いからです。

しかし、特定技能で外国人材を受け入れる場合には、単に「必要なときに人を入れる」という発想ではなく、自社の雇用責任のもとで受け入れる必要があります。つまり、特定技能「物流倉庫」を活用するには、従来の派遣依存型の人員配置から、直接雇用を前提とした受入体制へと発想を切り替える必要があります。

これは、現場の人手不足対策であると同時に、外国人雇用の適正化という意味でも重要なポイントです。

ここも実務上、非常に重要です。特定技能「物流倉庫」ができたからといって、これまで技人国で倉庫内作業をさせていた会社が、すぐに特定技能へ移行するとは限りません。

なぜなら、会社側から見ると、技人国の方が「楽」に見えてしまうからです。技人国であれば、登録支援機関との契約も不要です。支援計画も不要です。定期面談や支援記録も不要です。協議会加入もありません。日本語や生活支援の仕組みも、特定技能ほど制度化されていません。一度、技人国の名目で外国人を使う運用に慣れてしまった会社は、特定技能の手続や支援義務を面倒に感じる可能性があります。

これは、かなり危険な感覚です。

本来、在留資格は「楽だから選ぶ」ものではありません。実際の業務内容に合った在留資格を選ぶ必要があります。物流倉庫の現場作業であれば、技人国ではなく、今後は特定技能「物流倉庫」を正面から検討すべき場面が増えるはずです。

会社側が「これまで大丈夫だったから」と考え、麻痺した状態で偽装技人国を続けることは、今後より大きなリスクになると思います。

物流倉庫分野の特定技能は、単に人手不足を補う制度ではありません。私は、物流倉庫業界における外国人雇用の実態を見直すきっかけになる制度だと考えています。

特に確認すべきなのは、次の点です。

現在、倉庫内で働いている外国人の在留資格は何か。技人国の外国人がいる場合、実際の業務内容は専門的業務なのか。派遣会社から来ている外国人の在留資格を確認しているか。派遣会社が技人国の外国人を倉庫内作業に従事させていないか。技能実習生が、実習計画と異なる倉庫作業をしていないか。留学生が資格外活動の時間制限を超えて働いていないか。身分系以外の外国人について、在留資格と業務内容が一致しているか。これらを確認せずに現場を回している場合、かなり危険です。

派遣会社任せにしている会社ほど、一度点検した方がよいと思います。仮に派遣会社側で問題が発覚した場合、派遣先企業も無関係ではいられません。少なくとも、突然人が来なくなるリスク、現場が止まるリスク、取引先への影響は避けられません。

物流倉庫は、人員が一気に抜けると現場が回らなくなります。だからこそ、法令上問題のある人員供給に依存すること自体が、事業リスクになります。

特定技能「物流倉庫」を使う場合でも、何でも自由に任せられるわけではありません。対象となる業務は、物流倉庫分野として認められる主たる業務や関連業務の範囲内で設計する必要があります。

主たる業務として挙げられるのが、搬入・搬出、仕分け、流通加工、入出荷検品、積み卸し、在庫管理、物流機器の操作・点検・管理、作業全般の管理などが挙げられています。また、関連業務は付随的に行うことができる一方で、専ら関連業務だけに従事させることは認められないと説明されています。この考え方は、今後の実務でも重要になると思います。

たとえば、単に段ボールを運ぶだけ、単純な荷物移動だけ、清掃だけ、付随作業だけに従事させるような形では、特定技能の趣旨に合わない可能性があります。物流倉庫分野の特定技能は、単純作業だけを低賃金で任せる制度ではありません。検品、仕分け、在庫管理、機器操作、安全衛生、システム利用など、物流倉庫の実務に必要な一定の技能を前提にした制度として運用されるべきです。

また、フォークリフトなどの物流機器を扱う場合には、在留資格上の業務範囲だけでなく、労働安全衛生法上の資格や講習、安全教育も別途必要になります。

特定技能「物流倉庫」が始まることで、物流倉庫業界では企業の対応が分かれると思います。

一つは、これを機に、外国人雇用を適正化する企業です。派遣依存を見直し、自社で直接雇用する。登録支援機関と連携し、支援体制を整える。業務内容を整理し、特定技能として適正に申請する。本人の日本語力、安全教育、労務管理、定着支援まで含めて受入体制を整える。こうした企業にとって、特定技能「物流倉庫」は大きなチャンスになると思います。

一方で、これまでのグレーな運用を続けようとする企業も出てくるかもしれません。派遣会社から来る外国人の在留資格を確認しない。技人国の名目で現場作業を続ける。技能実習の計画と違う業務をさせる。本人の在留資格や労働時間を十分に管理しない。このような会社は、今後、リスクが高まると思います。

物流倉庫分野が特定技能に追加されるということは、行政側から見ても「この分野は制度上、正面から受入れルールを作った」ということです。そうなると、今後は「物流倉庫で働かせるなら、なぜ特定技能ではなく技人国なのか」という視点で見られる場面も出てくる可能性があります。

物流倉庫の受入企業が特に注意すべきなのは、派遣会社任せの外国人雇用です。派遣会社から人が来ている。現場は助かっている。でも、その外国人の在留資格を確認していない。何の在留資格で、どの業務ができるのかを把握していない。派遣会社がどのような説明で入管申請をしているのか知らない。このような状態は、かなり危険です。

特に、派遣会社が技人国の外国人を雇い、派遣先の物流倉庫で実質的に現場作業をさせている場合、そのリスクは派遣会社だけにとどまりません。派遣先企業としても、少なくとも次のようなリスクがあります。突然、人員供給が止まるリスク。行政調査時に説明できないリスク。取引先からコンプライアンス体制を問われるリスク。現場の稼働が止まるリスク。不適切な外国人雇用に依存していたと見られるリスク。

これから物流倉庫分野で特定技能が使えるようになる以上、受入企業は、派遣会社任せではなく、自社の現場で誰がどの在留資格で働いているのかを確認する必要があります。

私は、特定技能「物流倉庫」は、単なる人手不足対策ではなく、物流倉庫業界の外国人雇用を適正化するチャンスだと考えています。これまで、物流倉庫の現場では、身分系、留学生、派遣、技能実習、技人国など、さまざまな形で外国人が働いてきました。その中には適正なものもあります。

一方で、在留資格と実際の業務内容が合っていないケースもあったと思います。特定技能「物流倉庫」が制度として整備されることで、今後は、倉庫内作業に従事する外国人を、より正面から、適法に受け入れる道ができます。

ただし、そのためには、企業側も覚悟が必要です。直接雇用すること。支援体制を整えること。労務管理を適正に行うこと。日本人と同等以上の報酬を確保すること。安全衛生教育を行うこと。業務内容を制度に合わせて整理すること。派遣会社任せにしないこと。これらが求められます。

特定技能は、便利な労働力を安く確保する制度ではありません。適正な雇用責任を負ったうえで、人手不足分野において外国人材に活躍してもらう制度です。物流倉庫分野でも、この原則を外してはいけないと思います。

特定技能「物流倉庫」は、物流倉庫業界にとって大きな制度変更です。これまで物流倉庫の現場では、多くの外国人が働いてきました。身分系の在留資格や、留学生の資格外活動で適正に働いている方もいます。

一方で、技人国の名目で倉庫内作業に従事しているケース、技能実習の職種と実態がずれているケース、派遣会社任せで在留資格の確認が不十分なケースもあったのではないかと思います。物流倉庫分野が特定技能に追加されることで、これまでグレーになりやすかった倉庫内作業について、正面から受け入れる道ができます。

しかし、その一方で、特定技能は派遣では使えません。原則として直接雇用が必要です。受入企業には、雇用責任、支援体制、労務管理、安全衛生、業務設計が求められます。つまり、特定技能「物流倉庫」は、単に人手不足を補う制度ではありません。これまでの派遣依存、偽装技人国、技能実習のグレー運用、不法就労リスクを見直すきっかけになる制度です。

派遣会社が技人国を使って倉庫内作業をさせている。受入企業がその実態を知らない。技能実習の計画と違う倉庫作業をさせている。求人しても人が集まらないから、多少グレーでも仕方がない。このような感覚は、今後ますます危険になります。物流倉庫分野で特定技能が始まる以上、企業は一度、自社の現場で働く外国人の在留資格と業務内容を確認すべきです。

そして、今後も物流倉庫で外国人材を安定的に受け入れていくのであれば、グレーな運用ではなく、特定技能を含めた適正な制度設計に切り替えていく必要があります。人が足りないからこそ、適正に受け入れる。現場が回らないからこそ、リスクのある人員供給に依存しない。物流倉庫の特定技能は、そうした転換点になるのではないかと思います。

出入国在留管理庁申請取次申請取次行政書士
稲福 正直


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この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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