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韓国に介護人材を奪われる時代が来るのか—介護人材獲得競争から見る日本の課題

各国事情

こんにちは。行政書士の稲福です。

今回は、介護分野における外国人材の受入れについて、韓国の動向にも触れながら、私見を交えて解説していきたいと思います。日本では、介護分野の人手不足が深刻化しており、特定技能、技能実習、在留資格「介護」など、複数のルートで外国人介護人材の受入れが進められています。

一方で、外国人材の獲得競争は、もはや日本国内だけの話ではありません。韓国、台湾、中東、東欧など、アジアの若者を受け入れようとする国は増えており、介護分野においても、日本だけが選ばれる時代ではなくなっています。

特に近年、韓国は、K-POP、韓国ドラマ、美容、ファッションなど、いわゆる「Kカルチャー」の影響力を背景に、東南アジアの若者にとって非常に魅力的な国になっています。韓国では、Kカルチャーを学ぶためのビザ、いわゆる「Kカルチャートレーニングビザ」も注目されています。報道では、韓国国内の文化アカデミー等に登録した外国人が、最長2年程度滞在できる制度として紹介されています。

つまり、韓国は単に「働きに来る国」ではなく、若者にとって「憧れの文化を学びながら滞在できる国」になりつつあります。この流れは、将来的に介護人材の獲得競争にも影響してくる可能性があります。

✅ この記事でわかること

  • 介護人材が日本・韓国などで取り合いになっている背景
  • 韓国人気やKカルチャーが人材獲得に与える影響
  • 日本の特定技能介護が持つ強みと課題
  • 日本の介護施設が外国人材に選ばれるために必要な視点

介護人材の不足は、日本だけの問題ではありません。高齢化が進む国では、どこも介護・看護・生活支援を担う人材の確保に苦労しています。これまで、アジアの介護人材は、中東や東欧に流れるケースも少なくありませんでした。

理由は単純です。入国が比較的しやすく、手続きが早いからです。日本の場合、特定技能で介護人材を受け入れるには、日本語試験、介護技能評価試験、介護日本語評価試験、雇用契約、支援体制、在留資格申請など、多くの手続きが必要になります。

もちろん、これは制度の透明性や本人保護の観点から重要な仕組みです。しかし、外国人本人から見ると、「日本は行くまでに時間がかかる国」と見られやすい側面があります。一方で、中東や一部の国では、職種によっては比較的早く渡航できるケースがあります。そのため、手っ取り早く海外で働きたい若者にとっては、日本よりも他国が選ばれやすい場合があります。

では、日本には魅力がないのかというと、決してそうではありません。送り出し機関や現地関係者と話をしていると、日本が選ばれる理由としてよく出てくるのが、安心・安全という点です。

治安がよい。生活環境が安定している。労働条件が比較的明確である。制度が厳しい分、適正に運用されれば本人保護につながる。このような点は、日本の大きな強みです。

特に介護分野では、単に給与だけでなく、長く安心して働けるかどうかが重要になります。本人だけでなく、送り出す家族にとっても、「安全な国で働ける」という点は大きな判断材料になります。

ただし、この日本の強みだけで、今後も外国人材に選ばれ続けるとは限りません。なぜなら、韓国がかなり強力な競争相手になってきているからです。

各国の送り出し機関に話を聞くと、やはり韓国は人気があります。

その理由は、単に「韓国の方が額面給与が高い」というだけではありません。韓国で働く外国人労働者も、原則として国民年金、健康保険、雇用保険、所得税などの控除を受けます。したがって、「韓国では年金や保険料が引かれない」というわけではありません。

ただし、日本と比較すると、韓国は最低賃金や月額給与が高く見えやすく、控除後の手取り額、残業代、宿舎費、生活費などを含めた実質的な送金可能額が大きくなるケースがあります。

たとえば、韓国で月給300万ウォン程度の場合、国民年金、健康保険、雇用保険、所得税などは控除されますが、手取りはおおむね270万ウォン台、条件によっては280万ウォン前後になることもあります。

一方、日本で月給30万円程度の場合、厚生年金、健康保険、雇用保険、所得税、住民税などが控除され、手取りはおおむね24万円台になることがあります。

もちろん、実際には為替、勤務時間、残業代、宿舎費、食費、社会保険料、税金、住民税の有無などを総合的に比較する必要があります。しかし、外国人本人にとって重要なのは、額面給与ではなく、最終的に母国へいくら送金できるかです。

そのため、候補者本人や送り出し機関から見ると、韓国は「手取りが残りやすい」「短期間で稼ぎやすい」「母国へ送金しやすい」国として認識されやすいのが実情です。「少し待ってでも韓国に行きたい」「手っ取り早く稼ぐなら韓国がよい」という感覚を持つ若者が出てくるのは、自然な流れだと思います。

この手取り感・送金可能額の差は、今後の介護人材獲得競争において、日本にとって大きな課題になると感じます。

韓国の強さは、給与だけではありません。K-POP、韓国ドラマ、韓国語、美容、ファッション、食文化など、Kカルチャーそのものが、東南アジアの若者にとって大きな憧れになっています。

これは、日本が外国人材を受け入れるうえで、非常に意識すべき点です。韓国は、国家戦略としてKカルチャーを世界に発信してきました。その結果、韓国語を学びたい、韓国で生活してみたい、韓国で働いてみたいという若者が増えています。

Kカルチャートレーニングビザのような制度は、単なる観光施策ではありません。韓国に関心を持つ若者を韓国国内に呼び込み、韓国語や韓国社会への適応を進め、その後の就労につなげる入口にもなり得ます。

たとえば、韓国でエンタメや美容を学びながら滞在し、資格外活動の範囲で働き、韓国語を覚える。その後、条件が整えば、E-9ビザなどの就労系在留資格で韓国に残る。このような流れが広がれば、日本にとっては大きな脅威になります。

日本にもアニメ、漫画、食文化、観光地などの魅力はあります。しかし、外国人人材の採用という観点では、その文化的魅力を、就労・教育・定着の導線に十分つなげられているかというと、まだ課題があるように感じます。

日本の特定技能に近い制度として、韓国にはE-9ビザがあります。E-9ビザは、韓国の雇用許可制、いわゆるEPSに基づく非専門就業ビザです。

韓国政府は2024年にE-9の受入枠を16万5,000人まで拡大しましたが、2025年は13万人に引き下げています。OECDも、2025年のE-9枠が2024年より3万5,000人減少した背景として、景気要因だけでなく、E-7やE-8など他制度の活用が影響していると整理しています。

ここだけを見ると、韓国の外国人労働者受入れが縮小しているように見えるかもしれません。しかし、単純に「韓国が外国人材を減らしている」と見るのは少し違うと思います。むしろ、韓国では、E-9だけではなく、E-7、E-8など、複数の制度を使い分けながら外国人材を受け入れる方向に進んでいます。

つまり、韓国もまた、日本と同じように、単純労働者の受入れから、より定着性のある人材確保へ移行しようとしているのではないかと感じます。

韓国でも、介護人材不足は深刻です。韓国では、2024年時点で介護分野に従事する約65万7,000人のうち、約66%が60歳以上とされています。さらに、2028年までに約11万人の高齢者介護人材が不足する可能性があるとの報道もあります。

これは、日本にとっても無視できない数字です。日本でも介護人材の高齢化は進んでいますが、韓国の介護現場では、より高齢の労働力に大きく依存している構造が見えます。日本の介護職員の平均年齢は40代後半とされることが多いですが、韓国では介護現場で働く人材の6割以上が60代以上という状況です。

つまり、韓国も日本と同じく、介護分野で外国人材に頼らざるを得ない局面に入っています。そして韓国は、賃金、文化的魅力、制度改革を組み合わせながら、人材獲得に動いています。これは、日本の介護施設にとっても、今後かなり大きな競争環境になると思います。

韓国の介護分野で注目すべきなのは、外国人介護人材の在留資格変更の要件緩和です。これまで、韓国で介護関係の在留資格に変更するには、母国で関連する教育を受けていることや、一定の資格・経験、年収要件などが問題になりやすい構造がありました。

しかし近年は、韓国に来てから必要な教育を受ければよい、雇用主の推薦があれば変更を認める、といった方向で、要件を緩和する動きが出ています。韓国のE-7系ビザでは、職種ごとに細かい要件が設けられており、介護人材についてもE-7-2のような枠組みで扱われることがあります。また、2025年にはE-7系ビザの年収要件について、区分ごとに一定の緩和が行われています。

これは、日本でいえば、特定技能で介護現場に入り、その後、在留資格「介護」など、より安定した在留資格につなげていく発想に近いものがあります。つまり韓国も、外国人介護人材を単なる短期労働力として見るのではなく、国内で学ばせ、働かせ、定着させる方向に制度を動かし始めていると考えられます。

この点は、日本にとって非常に大きな脅威です。

一方で、韓国がすべての面で日本より有利かというと、そうとも言い切れません。韓国の雇用許可制が一見縮小しているように見える背景には、単純労働の仕事が減ったからというより、受入れ現場側が、外国人材を受け入れるために必要な体制を整えきれていないという問題もあるように思います。

外国人材を受け入れるには、単に雇用契約を結べばよいわけではありません。住居の確保。生活支援。韓国語教育。相談体制。権利保護。地域定着。こうした受入れ後の管理コストが発生します。EPSは単なる採用制度ではなく、受入れ後の管理負担が重い制度です。

受入れ企業側や地域側にその運営能力が不足すると、採用枠があっても、現場で受け入れきれないという問題が起きます。その結果、制度上は枠があっても、実際の受入れが鈍る。これは韓国だけの問題ではありません。日本の特定技能制度も同じです。

日本の特定技能制度では、受入企業に支援義務があります。ただし、その支援を登録支援機関に委託することができます。これは、日本の制度の大きな特徴です。

韓国では、現場の宿舎、生活、相談、定着の負担が受入企業側に重くのしかかりやすい一方、日本では、登録支援機関を活用することで、受入企業の負担を一定程度分散できます。もちろん、登録支援機関に丸投げすればよいという話ではありません。

受入企業自身も、労務管理、職場環境、教育体制、ハラスメント防止、定着支援に責任を持つ必要があります。しかし、制度運用の柔軟性という意味では、日本の特定技能制度には強みがあります。

問題は、その強みを活かしきれているかどうかです。登録支援機関に委託しているから安心、ではありません。本人が介護現場で長く働けるように、職場全体で受け入れる体制を作れているか。日本語教育を継続できているか。介護福祉士を目指せる道筋を示せているか。ここが問われています。

日本でも、介護分野で外国人材の存在感は高まっています。介護分野では、技能実習、特定技能、在留資格「介護」など、複数のルートで外国人材が働いています。

近年は、介護福祉士養成施設でも外国人留学生の割合が高まっており、介護分野における外国人材の重要性はさらに増しています。現場感覚としても、外国人人材を受け入れている介護施設は珍しくありません。都市部だけでなく、地方の介護施設でも、外国人材の採用を検討することは、もはや特別なことではなくなっています。

ただし、日本の介護施設が今後も外国人人材に選ばれるためには、単に「人が足りないから採用する」という考え方では限界があります。韓国のように、給与、文化的魅力、在留資格の将来性を示してくる国がある中で、日本側も、外国人本人にとって魅力のあるキャリアパスを提示する必要があります。

日本が韓国に介護人材を奪われないためには、単に給与だけで勝負するのは難しいと思います。韓国の方が給与水準で魅力的に見える場面は、今後も出てくるでしょう。

その中で日本が打ち出すべきなのは、安心・安全、制度の安定性、長期的なキャリア形成です。具体的には、次のような視点が重要です。

まず、介護福祉士への道筋を明確にすることです。特定技能で来日した後、介護福祉士を目指し、在留資格「介護」へつなげる。その後、長期的に日本で生活できる可能性を示す。この流れを本人に分かりやすく伝える必要があります。

次に、日本語教育を採用後も継続することです。介護現場では、日本語能力が定着に直結します。入国前の日本語だけでは不十分です。入国後も、現場で使う日本語、記録、申し送り、利用者との会話を継続的に支援する必要があります。

さらに、生活面の安心を整えることです。住居、相談窓口、職場内の人間関係、休日、宗教・食文化への配慮など、給与以外の安心感が、日本を選ぶ理由になります。韓国がKカルチャーと高賃金で人材を惹きつけるのであれば、日本は、安心して長く働ける国としての価値を、もっと明確に伝える必要があります。

これからの介護人材採用は、日本国内の施設同士の競争ではありません。韓国、台湾、中東、東欧など、他国との人材獲得競争です。

韓国や台湾は、外国人材受入れのために、さまざまな在留資格や制度を設けています。韓国は、Kカルチャー、賃金、E-9、E-7などを組み合わせながら、外国人人材の受入れを進めています。

台湾も、介護・家事支援分野で外国人材を受け入れてきた歴史があります。中東などは、入国の早さや給与面で、今も一定の魅力があります。

その中で、日本が選ばれるためには、制度があるだけでは足りません。本人にとって、日本で働く意味がある。日本で学ぶ意味がある。日本で長く暮らす可能性がある。そう思ってもらえる設計が必要です。

介護分野における外国人人材の獲得競争は、今後さらに激しくなると思います。韓国は、Kカルチャーという強力な入口を持っています。賃金水準も高く、東南アジアの若者にとって憧れの国になっています。さらに、E-9、E-7などの在留資格を活用し、外国人材を受け入れる制度も整えつつあります。

特に介護分野では、韓国自身も深刻な人手不足と高齢化を抱えており、外国人介護人材の確保に本格的に動く可能性があります。これは、日本にとって明確な脅威です。

ただし、日本にも強みがあります。安心・安全な生活環境。制度の安定性。登録支援機関を活用した支援体制。介護福祉士、在留資格「介護」へつながるキャリアパス。これらをしっかり示すことができれば、日本はまだ十分に選ばれる国であり続けることができます。

重要なのは、外国人材を「労働力」として見るのではなく、長く働き、生活し、キャリアを築いていく人材として受け入れることです。韓国との比較は、日本の弱点を見せつけられる話でもあります。しかし同時に、日本の介護現場が何を改善すべきかを考える重要な材料でもあります。

今後も介護分野における外国人材の受入れについて、制度面・実務面の両方から情報発信を続けていきたいと思います。

出入国在留管理局申請取次行政書士
稲福 正直


【PR】当事務所グループでは、外国人人材の採用相談から、各種在留資格許可申請、受入れ後の適正運用まで、必要に応じて一貫してサポートしております。外国人材紹介に関するご相談は、有料職業紹介事業者であるアソシエイツ国際人材サポート合同会社にて、在留資格申請・入管手続きに関するご相談はアソシエイツ稲福国際行政書士事務所にて承ります。

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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