こんにちは、行政書士の稲福です。
今回は、特定技能外国人の受入れにおいて、登録支援機関が在留資格申請書類を作成している場合のリスクについて解説したいと思います。
特定技能制度では、登録支援機関が外国人本人の支援、受入企業との連絡調整、必要書類の案内、生活支援などに深く関与することが少なくありません。そのため、実務上、登録支援機関が在留資格申請に関する書類作成まで対応しているケースも見受けられます。
「登録支援機関が無料でビザ申請書類を作ってくれる」
「支援委託費の中に申請書類作成も含まれている」
「行政書士に頼まなくても、支援機関が全部やってくれる」
「無料なら問題ないのではないか」
このように考えている受入企業もあるかもしれません。しかし、2026年1月1日より施行された改正行政書士法により、このような運用は、これまで以上に慎重な確認が必要になりました。
行政書士法では、行政書士又は行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、報酬を得て、官公署に提出する書類を業として作成することは制限されています。入管に提出する在留資格申請書類も、官公署に提出する書類に該当します。
そして、今回の改正では、行政書士又は行政書士法人でない者による業務制限について、「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加えられました。日本行政書士会連合会も、会費、手数料、コンサルタント料、商品代金など、どのような名目であっても、対価を受領して官公署提出書類等を業として作成することは行政書士法第19条第1項に違反することが明確化されたと説明しています。
つまり、今後は「申請書類作成費は無料です」「支援業務の一環です」「支援委託費の中に含まれています」という説明だけでは、行政書士法上のリスクを回避できなくなりました。
この記事では、登録支援機関による在留資格申請書類作成の問題点、改正行政書士法の影響、そして受入企業側に生じ得るコンプライアンスリスクについて整理していきます。
- 登録支援機関が在留資格申請書類を作成する場合の法的リスク
- 「無料書類作成」や「支援委託費込み」が問題になり得る理由
- 申請取次と申請書類作成の違い
- 受入企業にもコンプライアンスリスクが及ぶ可能性
- 無資格者による書類作成に関与しないための確認ポイント
- 登録支援機関と行政書士の適切な役割分担
- 「無料だから安い」ではなく「適法だから安心」を選ぶべき理由

登録支援機関が申請書類を作成してきた実状について
特定技能の現場に携わっている立場として申し上げると、これまで登録支援機関が在留資格申請書類の作成に深く関与してきたことは、決して珍しいことではありません。
もちろん、すべてが悪意によるものだったとは思いません。むしろ、背景には次のような事情があったと考えています。
☑ 特定技能制度が複雑で、現場対応が先行してきた
☑ 受入企業が、採用・支援・申請を一体のものとして認識していた
☑ 登録支援機関側が、支援業務の一環として書類作成を行っていた
☑ 行政書士が十分に特定技能実務に対応できていなかった
☑ 登録支援機関に申請取次の承認が付与されていた
☑ これまで入管実務上、明確に問題化されにくかった
特定技能制度では、雇用条件、支援計画、協議会、分野別運用要領、労務管理、本人の在留状況など、確認すべき事項が多くあります。そのため、現場をよく知る登録支援機関が、受入企業の代わりに書類を整え、入管への申請まで進めてきたというケースもあったと思います。
しかし、これまで問題にならなかったことと、法律上問題がないことは別です。
特に、2026年1月1日施行の改正行政書士法により、今後は「誰が書類を作成したのか」「どのような名目で報酬を受け取っていたのか」「申請書類作成が支援業務の対価に含まれていないか」という点が、より厳しく見られることになります。
「無料で作成します」が本当に無料なのか
登録支援機関から、次のような説明を受けたことはないでしょうか。
「ビザ申請書類は無料で作成します」
「行政書士費用は不要です」
「支援委託費に含まれています」
「サービスで申請書類まで対応します」
「これまでも当社で全部やっています」
一見すると、受入企業にとっては非常に便利に見えます。特定技能外国人の受入れには、採用費、支援委託費、渡航費、住居準備費、在留資格申請費用など、さまざまな費用がかかります。そのため、申請書類作成を無料で対応してもらえるのであれば、企業側としてはありがたいと感じるかもしれません。
しかし、ここで重要なのは、「無料」という名目ではなく、実態です。
登録支援機関が、毎月の支援委託費、管理費、コンサルティング料、紹介料、事務手数料など、何らかの対価を受け取っている場合、その対価の中に申請書類作成の実質的な報酬が含まれていると評価されます。
改正行政書士法のポイントは、まさにここにあります。
「申請書類作成費」という名目で請求していないから問題ない、という話ではありません。会費、手数料、コンサルタント料、商品代金など、どのような名目であっても、対価を受けて官公署提出書類等を作成することは行政書士法第19条第1項に違反することが明確化されたとされています。
つまり、支援委託費を受領している登録支援機関が、在留資格申請書類の作成まで行っている場合、「書類作成は無料です」という説明が通用しなくなったということです。
申請取次ができることと、書類作成ができることは別問題
ここで誤解されやすいのが、申請取次の制度です。登録支援機関の中には、申請取次の承認を受けているところもあります。そのため、「申請取次ができるのだから、申請書類の作成もできるのではないか」と考えている方もいます。
しかし、申請取次ができることと、在留資格申請書類を作成できることは別問題です。
申請取次とは、申請人本人の意思に基づき、作成済みの申請書類を、本人に代わって入管へ提出することです。一方、申請書類の作成は、本人の在留資格該当性、雇用条件、業務内容、受入企業の体制、支援計画、法令遵守状況などを踏まえ、官公署に提出する書類を作成する行為です。
これは、単なる事務作業ではありません。
在留資格申請書類の作成には、入管法、行政書士法、労働関係法令、特定技能の運用要領、分野別基準などを踏まえた専門的判断が伴います。したがって、申請取次の承認を受けているからといって、行政書士でない登録支援機関が報酬を得て在留資格申請書類を作成してよい、ということにはなりません。
ここを混同してしまうと、登録支援機関側だけでなく、受入企業側も不適切な運用に巻き込まれる可能性があります。
受入企業にもリスクが及ぶ可能性について
この問題で特に注意すべきなのは、登録支援機関だけの問題では終わらないという点です。
受入企業が、
「登録支援機関が無料でやってくれると言った」
「行政書士法のことは知らなかった」
「支援委託費の中に含まれていると思っていた」
「他の企業も同じようにやっていると聞いた」
という認識で、登録支援機関に在留資格申請書類の作成を任せていた場合でも、企業側のコンプライアンス上の問題になる可能性があります。
特定技能制度において、受入企業は単なる依頼者ではありません。外国人本人を雇用し、適正な雇用条件を整え、支援体制を確保し、入管に対して適正な受入れであることを説明する主体です。その受入企業が、無資格者による申請書類作成を前提に特定技能外国人を受け入れていたとすれば、今後の更新申請や追加の受入れにおいて、企業の法令遵守体制が問われる可能性があります。
特に、特定技能外国人との間でトラブルが発生した場合には注意が必要です。
たとえば、
● 労働条件に関するトラブル
● 支援義務の不履行
● 住居費・生活費の負担に関するトラブル
● 業務内容の逸脱
● 退職・転職時の紛争
● 申請書類と実態の不一致
こうした問題をきっかけに、入管、労働基準監督署、関係機関から確認が入ることがあります。その際に、「この申請書類は誰が作成したのか」「誰が内容を判断したのか」という点が確認される可能性があります。
その結果、登録支援機関が実質的に申請書類を作成していたことが判明すれば、受入企業としても、無資格者による書類作成に関与していた、またはそれを前提に申請を進めていたと見られるリスクがあります。
これは単なる形式論ではありません。外国人雇用における企業のコンプライアンス体制そのものが問われる問題です。
「無資格者への加担」と見られないために確認すべきこと
受入企業としては、まず、誰が在留資格申請書類を作成しているのかを確認する必要があります。
確認すべきポイントは、次のとおりです。
☑ 在留資格申請書類を作成しているのは誰か
☑ その者は行政書士又は行政書士法人か
☑ 登録支援機関のスタッフが申請書を作成していないか
☑ 「無料」と言われているが、支援委託費等に実質的に含まれていないか
☑ 行政書士が関与している場合、名義だけではなく実際に確認・作成しているか
☑ 登録支援機関と行政書士の役割分担は明確か
☑ 申請取次と書類作成を混同していないか
☑ 入管から追加資料を求められた場合、誰が責任を持って対応するのか
特に注意すべきなのは、「行政書士が関与しています」という説明だけで安心しないことです。行政書士の名前だけを借りて、実際の書類作成や内容判断は登録支援機関が行っているような運用であれば、適正とはいえません。
行政書士が関与しているのであれば、どの行政書士が、どの範囲で、どの責任において書類を作成・確認しているのかを明確にする必要があります。
受入企業としても、「誰が責任者なのか」を確認しておくことが重要です。
登録支援機関と行政書士は対立する関係ではない
ここで誤解していただきたくないのは、登録支援機関と行政書士が連携すること自体は、まったく問題ないということです。むしろ、特定技能制度では、登録支援機関と行政書士が適切に連携することが非常に重要です。
登録支援機関は、外国人本人に対する生活支援、相談対応、定期面談、日本語学習機会の提供、行政手続への同行支援、受入企業との連絡調整など、現場に近い支援を担います。
一方、行政書士は、在留資格申請書類の作成、申請取次、入管法上の確認、受入企業の書類整理、追加資料対応、在留資格上のリスク確認などを担います。
つまり、両者の役割は本来異なります。
登録支援機関が現場支援を担い、行政書士が在留資格申請と法的判断を担う。この役割分担が明確であれば、受入企業にとっても、外国人本人にとっても、安心して特定技能制度を運用することができます。問題なのは、登録支援機関が「支援業務の一環」として在留資格申請書類まで作成し、その対価が支援委託費等に含まれているような曖昧な運用です。
今後は、この曖昧さを残したまま特定技能外国人を受け入れること自体が、受入企業にとっても大きなリスクになります。
「無料だから安い」ではなく「適法だから安心」を選ぶべき
特定技能外国人の受入れには、多くの費用がかかります。採用費、支援委託費、在留資格申請費用、渡航費、住居準備費、教育費など、企業にとって決して小さな負担ではありません。そのため、「申請書類作成は無料です」と言われると、費用面では魅力的に感じるかもしれません。しかし、在留資格申請については、安さだけで判断すべきではありません。
もし、その無料対応が行政書士法に抵触する可能性のある運用であれば、結果として企業側のリスクになります。在留資格申請は、単なる書類作成ではありません。外国人本人の在留、企業の雇用、今後の更新、追加受入れ、入管からの信用に関わる重要な手続きです。
だからこそ、受入企業としては、費用の安さよりも、誰が責任を持って書類を作成しているのか、法令上問題のない体制で進めているのかを重視すべきです。「無料だから大丈夫」ではなく、
「適法に進めているから安心」という考え方が必要です。
行政書士法違反が顕在化するきっかけについて
行政書士法違反の問題は、申請時にすぐ表面化するとは限りません。むしろ、後から別のトラブルをきっかけに明らかになることがあります。
たとえば、次のような場面です。
● 外国人本人が退職・転職をきっかけに、過去の申請内容や支援実態について入管・専門家に相談した
● 労働条件についてトラブルになった
● 支援義務の不履行を本人が入管に相談した
● 受入企業に対して入管から確認が入った
● 登録支援機関に対する調査が行われた
● 更新申請時に過去の申請書類との整合性が問題になった
● 行政書士が関与していないことが後から判明した
このような場合に、過去の申請書類について「誰が作成したのか」が確認される可能性があります。
そして、登録支援機関が書類を作成していたにもかかわらず、「無料」「支援業務の一環」「支援委託費に含まれる」という説明で済ませていた場合、その運用が問題視される可能性があります。「今まで問題なかった」「他社も同じようにやっている」「入管から指摘されたことがない」このような説明は、今後のリスク管理としては十分ではありません。
法改正後は、これまで黙認されていたように見えた運用であっても、行政書士法違反として可視化される可能性があります。
受入企業が今すぐ確認すべきチェックポイント
特定技能外国人を受け入れている企業、またはこれから受け入れる企業は、以下の点を確認しておくことをおすすめします。
☑ 現在の在留資格申請書類は誰が作成しているか
☑ 登録支援機関が申請書・理由書・支援計画書等を作成していないか
☑ 行政書士又は行政書士法人が正式に関与しているか
☑ 行政書士の名前だけを借りた運用になっていないか
☑ 支援委託費の中に申請書類作成の対価が実質的に含まれていないか
☑ 登録支援契約と申請書類作成業務の契約が明確に分かれているか
☑ 入管から追加資料を求められた場合の対応責任者は誰か
☑ 今後の更新申請でも同じ運用を続けて問題ないか
☑ 社内で、外国人雇用に関するコンプライアンス確認ができているか
これらを確認せずに、「登録支援機関が全部やってくれるから大丈夫」と考えていると、後になって問題が表面化する可能性があります。特定技能外国人の受入れでは、採用時だけでなく、更新、支援、届出、定着までを見据えた適正な運用が必要です。
さいごに~受入企業にも求められる適法な体制づくり~
特定技能制度は、外国人材の採用、在留資格申請、支援、労務管理が密接に関係する制度です。そのため、登録支援機関が受入企業にとって重要なパートナーであることは間違いありません。
しかし、登録支援機関ができる業務と、行政書士が行うべき業務は分けて考える必要があります。特に、在留資格申請書類の作成については、「無料」「サービス」「支援費に含まれる」といった説明だけで安易に任せるべきではありません。
2026年1月1日施行の改正行政書士法により、報酬の名目を問わず、無資格者による官公署提出書類の作成に対する規制は、より明確になりました。また、改正により、違反行為者だけでなく、その者が所属する法人にも100万円以下の罰金刑が科されることがあると日本行政書士会連合会は説明しています。
受入企業としても、無資格者による申請書類作成に関与してしまえば、コンプライアンス上のリスクを抱えることになります。大切なのは、安く見える方法を選ぶことではありません。適法で、責任の所在が明確で、将来の更新や受入れ継続にも耐えられる方法を選ぶことです。
登録支援機関に任せている在留資格申請書類についても、今一度、誰が、どの資格で、どの責任において作成しているのかを確認しておくことをおすすめします。登録支援機関、行政書士、受入企業がそれぞれの役割を明確にし、適法な協業体制を整えること。それこそが、特定技能外国人本人を守り、受入企業を守り、登録支援機関の信用を守ることにつながると考えています。
出入国在留管理局申請取次行政書士
稲福 正直


















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