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沖縄で外食特定技能が伸びた理由 ―ネパール人留学生・観光産業・人手不足がつくった受入構造ー

特定技能

こんにちは。行政書士の稲福です。

2026年4月13日から、特定技能1号「外食業分野」の新規受入れが一時停止されました。外食業分野の在留者数が、受入れ上限である5万人に達する見込みとなったためです。出入国在留管理庁も、2026年2月末時点で外食業分野の特定技能1号在留者数が約4万6千人となり、5月頃には受入れ見込数に達する見込みであることを示していました。

この影響を大きく受ける地域の一つが沖縄県です。琉球新報は、沖縄県内の外食業分野の特定技能外国人が1,010人に上り、人口10万人当たりでは68.9人と全国最多であると報じています。つまり沖縄は、人口規模に対して外食特定技能への依存度が非常に高い地域だったといえます。

では、なぜ沖縄では、外食業分野の特定技能外国人がここまで増えていたのでしょうか。沖縄は、全国的に見て賃金水準が高い地域ではありません。それにもかかわらず、外食業分野では多くの外国人材が働いてきました。そこには、単なる「沖縄人気」や「南国で暮らしやすいから」だけでは説明できない、沖縄特有の構造があります。

今回は、ネパール人留学生の多さ、観光産業の人手不足、外国人コミュニティ、そして「日本で働き始めやすい地域性」という観点から、沖縄で外食特定技能が伸びていた理由を考えてみたいと思います。

✅ この記事でわかること

  • 沖縄で外食分野の特定技能人材が増えた背景
  • ネパール人留学生と外食・観光産業の関係
  • 外食特定技能の新規受入れ停止が沖縄に与える影響
  • 受入企業が今後考えるべき定着支援と在留資格の注意点

まず、沖縄県では外国人労働者そのものが大きく増えています。

沖縄労働局によれば、2025年10月末時点の沖縄県内の外国人労働者数は20,354人。前年から3,115人増加し、増加率は18.1%でした。外国人を雇用する事業所数も3,697か所で、こちらも前年から12.6%増加しています。いずれも、届出が義務化された2007年以降で過去最多です。

沖縄では、人口全体の伸びが大きいわけではありません。その一方で、外国人労働者は毎年大きく増えています。つまり、沖縄の人手不足の現場では、外国人人材の存在感が年々高まっているということです。

沖縄の外国人雇用の特徴は、観光産業との結びつきが非常に強い点にあります。

沖縄労働局の資料では、産業別に見た外国人労働者数は、宿泊業・飲食サービス業が4,720人で、全体の23.2%を占めています。外国人を雇用する事業所数でも、宿泊業・飲食サービス業が686事業所、全体の18.6%で最多です。

これは、沖縄の外国人労働者が、観光地の表側だけでなく、ホテル、レストラン、居酒屋、カフェ、調理補助、洗い場、清掃、バックヤードなど、観光経済を支える現場に広く入っていることを示しています。

沖縄の外食業の人手不足は、単なる人手不足ではありません。観光シーズン、週末、連休、インバウンド需要、ホテル稼働率、クルーズ船、イベントなどに左右される、観光地型の慢性人手不足です。そのため、フルタイムで働ける特定技能外国人は、外食現場にとって非常に重要な戦力になっていました。

沖縄の外国人労働者で最も多い国籍は、ネパールです。2025年10月末時点で、沖縄県内のネパール人労働者は5,384人。外国人労働者全体の26.5%を占めています。次いで、インドネシアが3,942人、ベトナムが2,374人です。

さらに重要なのは、ネパール人労働者の在留資格の内訳です。沖縄労働局によれば、ネパール人労働者のうち、資格外活動が65.5%、そのうち留学が58.3%を占めています。県内で働く留学生全体は4,038人であり、沖縄では留学生、とりわけネパール人留学生が、飲食・宿泊・小売などの現場を支える大きな存在になっています。

この点が、沖縄で外食特定技能が伸びた理由を考えるうえで非常に重要です。

外食業では、まず留学生として来日し、飲食店でアルバイトをする。その後、職場に慣れ、日本語力や勤務態度を企業が把握したうえで、特定技能1号へ変更する。このような流れが生まれやすい環境が、沖縄にはありました。

沖縄の外食業では、次のようなルートが一定程度機能していたと考えられます。

留学生として来日する。飲食店やホテルレストランでアルバイトをする。職場に慣れる。企業が本人の勤務態度・日本語力・人柄を把握する。外食業の特定技能評価試験に合格する。特定技能1号へ変更する。この流れは、企業側にとっても本人側にとっても合理的です。

企業からすれば、まったく知らない海外人材を採用するより、すでにアルバイトとして働いている人材を特定技能として雇用する方が安心です。本人からしても、すでに職場や地域に慣れているため、特定技能へ移行しやすい。

つまり沖縄では、ネパール人留学生を中心とする外国人アルバイトの蓄積があり、その一部が外食業分野の特定技能へつながっていたと考えられます。外食特定技能が突然増えたのではなく、その前段階として、留学生アルバイトという大きな土台があったのです。

沖縄県は、全国的に見て賃金水準が高い地域ではありません。それにもかかわらず、外食業分野で特定技能人材が集まっていた理由は、沖縄が外国人人材にとって採用されやすい地域だったからです。

東京、大阪、名古屋などの大都市圏は、賃金水準が高い一方で、求職者の競争も激しくなります。日本語能力や経験、接客力をより強く求められることもあります。一方、沖縄では、外食・宿泊・観光関連の人手不足が深刻です。飲食店、ホテル、リゾート施設、観光客向け店舗など、外国人人材が働ける現場が多くあります。

そのため、外国人人材にとって沖縄は、必ずしも高収入を狙う地域ではなく、日本で働き始めやすい地域だったといえます。言い換えれば、沖縄は外国人人材にとって「日本で働く入口」になっていたのです。

今回の外食業分野の新規受入れ停止は、すでに外食業で働いている特定技能外国人が直ちに働けなくなるという意味ではありません。しかし、海外から新たに外食業分野の特定技能1号として呼び寄せるルートは、現時点では選択肢として無くなりました。

これまでのように、海外で外食特定技能評価試験に合格した人材を探す。日本語試験に合格した人材を面接する。内定後、在留資格認定証明書交付申請を行う。日本へ呼び寄せる。という採用ルートが使えなくなるということです。

琉球新報も、外食業分野の受入れ停止について、沖縄の外食現場では「死活問題」と受け止められていること、さらに首都圏への人材流出が懸念されていることを報じています。

沖縄は、人口比で外食特定技能への依存度が高い地域です。そのため、全国一律の制度変更であっても、沖縄の現場にはより大きな影響が出やすいのです。

海外から新たに外食業分野の特定技能外国人を呼び寄せることが難しくなっただけでなく、国内にいる留学生や他の在留資格の外国人を、これから外食業分野の特定技能1号へ変更することも、原則として難しくなりました。

そのため、企業がこれまでのように、海外から新たに外食人材を呼び寄せる、留学生を外食特定技能へ変更して採用する、他の在留資格の外国人を外食特定技能へ切り替えるといった方法で人材を増やすことは、当面できなくなることを意味します。

一方で、すでに外食業分野の特定技能1号として在留している外国人の在留期間更新や、同じ外食業分野内での転職に伴う手続きについては、引き続き審査の対象となります。つまり、今後の沖縄の外食業では、新たに外食特定技能人材を増やすことよりも、すでに外食分野で働いている人材に長く働いてもらうこと が、より重要になります。

人材確保の中心は、「新規受入れ」から「既存人材の定着」と「同分野内での転職人材の確保」へ移っていくと考えられます。

ただし、同分野内の転職人材を採用できたとしても、それは県内外の限られた人材を企業同士で取り合う形になります。沖縄で経験を積んだ特定技能が、より賃金の高い福岡、大阪、東京、名古屋などへ移る可能性もあり、沖縄の外食業にとっては、これまで以上に定着支援と待遇改善が重要になります。

沖縄はこれまで「入り口」として選ばれていたかもしれません。しかし、今後は「長く働き続ける場所」として選ばれる必要があります。

ここで、受入企業が注意すべき点があります。外食業分野の特定技能1号で新規受入れが難しくなったからといって、安易に「では、技術・人文知識・国際業務で採用すればよい」と考えるべきではありません。

技術・人文知識・国際業務は、いわゆるホールスタッフ、調理補助、洗い場、配膳、レジ、清掃、店舗作業などの現場業務を行うための在留資格ではありません。

たとえば、ホテルや飲食店であっても、通訳、翻訳、海外取引、マーケティング、広報、外国人客対応の企画、店舗運営に関する専門的な管理業務など、本人の学歴・職歴と関連する専門的業務に従事する場合でなければ、技人国での許可は難しくなります。

特に注意すべきなのは、実態としては外食現場の人手不足を補う目的であるにもかかわらず、書類上だけ「通訳」「海外マーケティング」「店舗管理」などと記載するケースです。これは非常に危険です。

在留資格の名称だけを変えても、実際の業務内容が外食業の現場作業であれば、在留資格該当性に問題が生じます。許可後であっても、更新時や入管の調査、本人からの相談、退職・転職時の確認などで実態が明らかになれば、企業側にも大きなリスクが及びます。

外食特定技能の新規受入れが難しくなった今後、企業としては人手不足への対応を急ぎたいところです。しかし、だからといって、本来は特定技能で受け入れるべき人材を、技人国で無理に採用する流れになってはいけません。重要なのは、在留資格ありきで人材を当てはめることではなく、実際の業務内容に合った在留資格を正しく選ぶことです。

外食の現場業務であれば、技人国ではなく、外食業分野の特定技能が本来の受け皿でした。その受入れが制限されたからこそ、企業は制度の抜け道を探すのではなく、既存人材の定着、待遇改善、業務効率化、他分野人材との業務整理など、適法な範囲で対応を考える必要があります。

外食業分野の特定技能1号で新規受入れが難しくなると、企業の中には、留学生アルバイトで人手不足を補おうと考えるところも出てくるかもしれません。しかし、留学生アルバイトにも注意が必要です。留学生は、あくまで「留学」の在留資格で日本に在留している人です。資格外活動許可を受けている場合でも、原則として週28時間以内の範囲でしか働くことができません。

また、留学生の本来の目的は就労ではなく学業です。人手不足を理由に、学業に支障が出るような勤務をさせたり、複数店舗で実態管理が不十分なまま働かせたりすることは、企業側にとっても大きなリスクになります。特に注意すべきなのは、「本人が働きたいと言っているから大丈夫」という考え方です。

資格外活動の時間制限を超えて働かせた場合、本人の在留状況に影響が出るだけでなく、企業側にも不法就労助長のリスクが生じます。知らなかった、本人に任せていた、という説明だけでは済まない可能性があります。

また、留学生を雇用する場合には、企業側だけでなく、日本語学校などの教育機関との関係にも注意が必要です。日本語学校には、留学生の在籍状況、出席率、学業状況、資格外活動の状況などを一定程度確認・管理する役割があります。企業としても、採用時に在留カードや資格外活動許可の有無を確認するだけでなく、必要に応じて、本人の在籍状況や通学実態について学校側への確認を行うことが望ましい場面があります。

たとえば、

・本当にその日本語学校に在籍しているのか
・出席状況に問題はないか
・卒業予定時期はいつか
・すでに他社でアルバイトをしていないか
・週28時間の範囲内で勤務管理できるか

といった点です。

もちろん、個人情報の取扱いには注意が必要ですが、少なくとも企業側は、留学生を「便利な労働力」として扱うのではなく、学業と在留資格を前提にした適正な雇用管理を行う必要があります。外食特定技能の新規受入れが難しくなったからといって、留学生アルバイトに過度に依存することは危険です。

今後、沖縄の外食業では、留学生アルバイトの存在がこれまで以上に重要になる可能性があります。しかし、その分だけ、勤務時間管理、在留資格確認、学校との連携、学業への配慮といったコンプライアンス対応がより強く求められます。

留学生アルバイトは、特定技能人材の代替ではありません。あくまで学業を本分とする留学生が、許可された範囲内で行う補助的な就労です。この前提を誤ると、企業も本人も大きなリスクを負うことになります。

外食特定技能の新規受入れが難しくなったからといって、技人国で無理に代替したり、留学生アルバイトに過度に依存したりすることは適切ではありません。これから沖縄の外食業に必要なのは、制度の抜け道を探して人材を確保することではなく、今いる特定技能人材に長く働いてもらうための環境を整えることです。

その意味で注目されるのが、那覇市の動きです。

那覇市は、令和8年度に「なはし外国人材受入環境整備支援助成金」を設けました。対象事業には、外国人材と日本人従業員等との交流イベント、異文化理解ワークショップ、文化交流、語学講座などが含まれます。助成率は総事業費の3分の2以内で、上限額は単独実施で10万円、複数事業者の共同実施で20万円、地域住民等も参加する事業では30万円とされています。

これは、沖縄における外国人雇用が、単に「人手不足を埋める段階」から、「地域でどう定着してもらうか」という段階に移りつつあることを示しているように思います。

特定技能人材の定着は、賃金だけで決まるものではありません。もちろん、賃金は非常に重要です。しかし、それだけではありません。

職場で孤立していないか。
日本人従業員と円滑にコミュニケーションが取れているか。
困ったときに相談できる人がいるか。
地域社会との接点があるか。
自分が単なる労働力ではなく、地域の一員として受け入れられていると感じられるか。

こうした点も、特定技能人材がその地域に残るかどうかに大きく関わります。

もっとも、ここで注意すべき点があります。交流イベントやワークショップは大切です。しかし、それだけで外国人人材が定着するわけではありません。

賃金が低すぎる。残業代が適切に支払われていない。休みが取れない。雇用条件の説明と実態が違う。職場で相談しても改善されない。登録支援機関に丸投げされている。支援記録や面談が形だけになっている。このような状況であれば、どれだけ交流イベントを行っても、外国人人材は定着しません。

定着支援には順番があります。まず、適正な雇用条件。次に、適正な労務管理。そのうえで、生活支援、相談体制、異文化理解、地域交流です。順番を間違えてはいけません。

特定技能人材の定着支援は、単なるイベントではなく、雇用条件、職場環境、支援体制、地域とのつながりを含めた総合的な受入環境の整備です。

沖縄の外食業の受入企業は、これから採用戦略を見直す必要があります。

まず重要なのは、すでに雇用している特定技能外国人を大切にすることです。新規採用が難しくなる局面では、既存人材の流出防止が最優先になります。給与、勤務時間、休日、住居、相談体制、人間関係、昇給制度、キャリアアップ、日本語学習支援。これらを見直す必要があります。

特に、特定技能人材が不満を抱きやすいのは、給与だけではありません。説明不足。約束と実態の違い。シフトの不公平。日本人スタッフとの扱いの差。相談しても対応されない。将来像が見えない。こうした小さな不満が積み重なると、転職や退職につながります。

今後は、「採用できるか」よりも、「今いる人材に選ばれ続ける会社になれるか」が重要になります。

沖縄で外食特定技能外国人が伸びていた理由は、単に沖縄が人気だからではありません。その背景には、宿泊業・飲食サービス業が外国人労働者の最大の受け皿になっていること、ネパール人労働者が5,384人と最多で留学生を中心とした資格外活動の層が厚いこと、留学生アルバイトから特定技能へ移行しやすい流れがあったこと。こうした沖縄特有の構造があります。

沖縄は、特定技能人材にとって「高賃金の地域」というより、働き始めやすく、コミュニティがあり、外食・宿泊の仕事につながりやすい地域として選ばれていたのだと思います。

しかし、外食分野の新規受入れ停止により、この構造は大きく変わろうとしています。これからの沖縄の外食業に求められるのは、特定技能人材を採用する力だけではありません。今いる特定技能人材に長く働いてもらう力。外国人人材から選ばれ続ける職場をつくる力。そして、地域として外国人人材を受け入れ、定着を支える力です。

特定技能人材を単なる人手不足の穴埋めとして見るのではなく、地域で暮らし、働き、長く活躍してもらう人材として受け入れること。これが、これからの沖縄の外食業にとって、最も重要な課題になると思います。

出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直


【PR】当事務所グループでは、外国人人材の採用相談から、各種在留資格許可申請、受入れ後の適正運用まで、必要に応じて一貫してサポートしております。外国人人材紹介に関するご相談は、有料職業紹介事業者であるアソシエイツ国際人材サポート合同会社にて、在留資格申請・入管手続きに関するご相談はアソシエイツ稲福国際行政書士事務所にて承ります。

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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