こんにちは、行政書士の稲福です。
熊本県では、外国人人材の雇用が年々広がっています。
熊本労働局が公表した令和7年10月末時点の外国人雇用状況によれば、熊本県内の外国人労働者数は24,076人となり、過去最高を更新しました。外国人を雇用する事業所数も増加しており、熊本県内の企業にとって、外国人材の採用はもはや一部の大企業だけの話ではなくなっています。
特に近年の熊本では、TSMCの進出をきっかけに、半導体関連産業への注目が高まっています。熊本県も、TSMCを含む県内半導体関連企業における人材育成・確保を喫緊の課題と位置づけ、産学官が連携する「熊本県半導体人材育成会議」を設置しています。
しかし、熊本の人材不足は半導体分野だけの問題ではありません。農業、介護、宿泊、外食、製造、建設、物流など、地域を支える多くの産業で人材確保が重要な経営課題となっています。
これからの熊本県における外国人材採用では、単に「人手が足りないから外国人を採用する」という考え方では不十分です。大切なのは、地域の産業構造に合った在留資格を選び、適正な雇用条件を整え、採用後も長く働いてもらえる体制をつくることです。
- 熊本で外国人材・特定技能人材の需要が高まっている背景
- 半導体関連産業の集積が周辺産業の人手不足に与える影響
- 農業・介護・宿泊観光分野で特定技能人材が期待される理由
- ホテル・観光業で「特定技能」と「技人国」を使い分けるポイント
- 製造・建設・物流分野で外国人材を活用する際の注意点
- 熊本企業が外国人材採用を成功させるための実務準備
熊本の人材不足は「半導体」だけではない
熊本県の人材採用を考えるうえで、半導体関連産業の拡大は大きな要素です。TSMCの進出により、菊陽町周辺を中心に、製造業、建設業、設備工事、物流、宿泊、飲食、生活サービスなど、さまざまな分野に波及効果が生まれています。
半導体工場ができれば、そこで働く人材だけでなく、工場を建設する人材、設備を保守する人材、部品や資材を運ぶ人材、周辺で生活を支える人材も必要になります。つまり、熊本の人材不足は、半導体企業だけの問題ではありません。地域全体で人材需要が高まり、地元企業にも採用競争の影響が広がっていく可能性があります。
このような環境では、今までどおり日本人採用だけに頼るのではなく、外国人人材の採用も含めた人材戦略を早めに検討することが重要です。
農業分野では、特定技能「農業」の活用が現実的
熊本県は、全国的にも農業が盛んな地域です。トマト、いちご、すいか、畜産、施設園芸など、熊本の農業は地域経済を支える重要な産業です。一方で、農業分野では高齢化や担い手不足が進み、繁忙期の人手確保に悩む事業者も少なくありません。
このような農業分野では、特定技能「農業」による特定人材の採用が有力な選択肢となります。ただし、農業で特定技能人材を受け入れる場合には、次のような点を事前に整理する必要があります。
・どの作業に従事してもらうのか
・農繁期・農閑期の業務量をどう説明するか
・雇用条件が安定しているか
・住居や通勤手段をどう確保するか
・農作業中の安全教育をどう行うか
・地域で孤立しない生活支援を用意できるか
農業分野では、現場での作業だけでなく、生活環境の整備も非常に重要です。
熊本県内でも、公共交通機関が限られる地域では、住居から職場までの移動手段が課題になることがあります。外国人人材を採用する際には、給与や仕事内容だけでなく、生活全体を見据えた受入れ体制を整えることが必要です。
介護分野では、外国人人材の定着支援が重要
熊本県では高齢化も進んでいます。熊本県の資料によれば、令和6年10月時点の高齢化率は32.6%で、県民のおよそ3人に1人が高齢者という状況です。また、2040年度には熊本県内で介護職員が9,554人不足する見込みとされています。このような状況を考えると、介護分野における外国人材の活用は、今後ますます重要になると考えられます。
介護分野では、特定技能「介護」、技能実習、EPA、留学生からの就職、介護福祉士ルートなど、複数の制度が関係します。特定技能「介護」で採用する場合には、介護技能評価試験や日本語能力などの要件がありますが、採用後に本当に大切になるのは、現場で長く働いてもらうための支援です。特に介護現場では、利用者との会話、申し送り、記録、職員間の連携が欠かせません。
熊本県では、外国人材向けに「くまもと方言ハンドブック」を作成するなど、地域で働く外国人材が現場の言葉や生活に馴染めるような取組みも行われています。介護施設で外国人材を受け入れる場合には、単に人手不足を補うだけでなく、次のような視点が重要です。
現場で使う日本語をどう教えるか、方言や高齢者との会話をどうサポートするか、夜勤やシフト勤務への理解をどう深めるか、日本人職員との関係づくりをどう支援するか、将来的な介護福祉士取得やキャリア形成をどう考えるか
外国人人材が安心して働ける環境を整えることは、結果として日本人職員にとっても働きやすい職場づくりにつながります。
宿泊・観光分野では、特定技能と技人国の使い分けが重要
熊本には、阿蘇、黒川温泉、熊本城、天草など、国内外から観光客を呼び込める地域資源があります。観光需要が高まれば、宿泊施設、飲食店、清掃、送迎、観光サービスなど、幅広い分野で人材需要が発生します。
宿泊分野では、特定技能「宿泊」の活用が考えられます。一方で、ホテルフロントやインバウンド対応など、業務内容によっては「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる技人国での採用を検討できる場合もあります。
たとえば、次のような業務が含まれる場合です。
・外国人宿泊客への多言語対応
・海外予約サイトへの対応
・海外旅行会社との連絡調整
・インバウンド向けの企画
・SNSや広告での外国語発信
・外国人顧客向けサービス改善
ただし、ホテルや旅館で働くからといって、すべて技人国で許可されるわけではありません。客室清掃、配膳、ベッドメイク、単純な接客が中心となる場合には、特定技能など別の在留資格との整理が必要です。
熊本の観光業で外国人人材を採用する場合には、実際の業務内容と在留資格が合っているかを最初に確認することが重要です。
製造・建設・物流分野でも外国人材の活用余地は広がる
半導体関連産業の拡大により、熊本では製造、建設、物流分野の人材需要も高まりやすくなっています。工場の新設や関連企業の進出が進めば、製造ライン、部品供給、設備工事、倉庫管理、配送、建設現場など、周辺分野にも人材不足が波及します。こうした分野では、特定技能、技能実習からの移行、技人国など、業務内容に応じて複数の在留資格を検討することになります。
特に注意すべきなのは、現場作業と専門業務の区別です。
たとえば、製造業で外国人材を採用する場合でも、単純作業が中心なのか、設計、品質管理、生産管理、海外取引、通訳、技術サポートなどを含むのかによって、選択すべき在留資格は異なります。建設分野でも、特定技能「建設」を活用する場合には、分野別の要件や受入体制の整備が必要です。
外国人人材の採用では、「とりあえず申請する」のではなく、最初の段階で制度設計を誤らないことが重要です。
熊本企業が外国人材採用で注意すべき3つのポイント
外国人人材採用は、人手不足への有効な選択肢です。しかし、制度を正しく理解しないまま進めてしまうと、後からトラブルになることもあります。熊本県内の受入企業が特に注意すべきポイントは、次の3つです。
在留資格と仕事内容を一致させること
外国人材採用で最も重要なのは、在留資格と実際の仕事内容を一致させることです。「技人国で採用したい」と考えていても、実際の業務が現場作業や単純労働中心であれば、許可が難しくなる可能性があります。
また、特定技能で採用する場合でも、対象分野、業務区分、試験合格状況、雇用条件、支援体制などを確認する必要があります。外国人材採用では、採用したい人がいるかどうかだけでなく、その人をどの在留資格で、どの業務に従事させるのかを整理することが出発点です。
登録支援機関に丸投げしないこと
特定技能では、登録支援機関に支援業務を委託することができます。しかし、受入れの責任を負うのは、あくまで所属機関である受入企業です。
支援計画、雇用条件、賃金、労働時間、相談体制、届出義務などを企業側が理解していなければ、後から問題が生じる可能性があります。「登録支援機関に任せているから大丈夫」という考え方は危険です。企業自身も制度の基本を理解し、申請書類や支援内容を確認する姿勢が必要です。
特に、申請書類の作成や在留資格手続きについては、行政書士法との関係も問題になります。誰が書類を作成しているのか、どのような責任体制で進めているのかを確認しておくことが重要です。
採用後の生活支援まで考えること
外国人人材採用は、内定や在留資格許可で終わりではありません。むしろ本当に大切なのは、入社後に長く働いてもらえるかどうかです。
熊本県内では、地域によって交通事情や生活環境が大きく異なります。
職場の近くに住居があるか。通勤手段は確保できるか。買い物や病院に行けるか。日本人従業員とコミュニケーションが取れるか。困ったときに相談できる人がいるか。こうした生活面の支援が不十分だと、早期退職や転職につながる可能性があります。
熊本県も、外国人人材を受け入れる企業向けに、異文化間コミュニケーションや「やさしい日本語」、受入れ準備に関する研修教材を作成しています。外国人人材の定着には、給与だけでなく、安心して暮らせる環境づくりが欠かせません。
熊本で外国人人材を採用するなら、早めの準備が重要です
外国人人材採用では、思い立ってすぐに働き始めてもらえるわけではありません。候補者の選定、雇用条件の整理、在留資格の確認、必要書類の準備、申請、審査、入社準備など、一定の時間がかかります。
特に海外から呼び寄せる場合には、在留資格認定証明書交付申請、査証申請、入国準備なども必要になります。また、すでに日本にいる外国人人材を採用する場合でも、現在の在留資格でその業務に従事できるのか、変更申請が必要なのか、転職後の届出が必要なのかを確認しなければなりません。
そのため、外国人材採用を検討している企業は、求人を出す前の段階で、次の点を整理しておくことをおすすめします。
・採用したい職種
・実際に担当してもらう業務内容
・必要な日本語レベル
・雇用条件、給与、勤務時間
・住居や通勤手段
・採用したい時期
・受入れ後の支援体制
・どの在留資格が使える可能性があるか
この整理をせずに採用を進めると、候補者が見つかった後に「この在留資格では働けない」「申請に必要な条件が整っていない」という事態になることがあります。
外国人材採用は、熊本企業の成長戦略になる
熊本では、半導体関連産業の拡大を背景に、今後も人材需要が高まることが予想されます。一方で、農業、介護、宿泊、外食、製造、建設、物流など、地域を支える多くの産業でも人材不足は続いています。
外国人人材の採用は、単なる人手不足対策ではありません。適切に受け入れれば、企業にとって次のようなメリットがあります。
・採用の選択肢が広がる
・若い人材を確保しやすくなる
・海外対応や多言語対応に強くなる
・職場の多様性が高まる
・長期的な人材育成につながる
・地域産業の維持につながる
ただし、そのためには、制度を正しく理解し、適法に、そして丁寧に受け入れることが必要です。
外国人人材採用は、単に「人を連れてくる」ことではありません。採用前の制度設計、在留資格申請、雇用条件の整備、支援体制の構築、入社後の定着支援まで含めて考える必要があります。
まとめ
熊本県では、外国人人材の雇用が着実に広がっています。半導体関連産業の拡大により、製造、建設、物流、宿泊、飲食などの周辺産業でも人材需要が高まることが予想されます。また、農業、介護、観光といった熊本の地域産業でも、外国人材の活用は今後ますます重要になります。
しかし、外国人人材採用では、在留資格と業務内容の整合性、雇用条件、支援体制、生活環境、コンプライアンスを正しく整えることが欠かせません。熊本で外国人材の採用を検討している企業は、早い段階から制度を確認し、自社に合った受入れ方法を検討することが大切です。
当事務所では、特定技能、技術・人文知識・国際業務、高度専門職、経営・管理など、外国人雇用に関する在留資格申請や受入体制の整備をサポートしております。熊本県内にも現地スタッフ常駐しております。
熊本県で外国人材の採用を検討されている企業様は、まずはお気軽にご相談ください。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直





















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