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在留資格許可申請は手数料10倍時代へ、負担増の根拠はどこにあるのか

社会

こんにちは、行政書士の稲福です。

外国人が在留資格を更新・変更する際の手数料を大幅に引き上げる入管法改正案が、国会で審議されています。

報道によれば、在留期間更新許可や在留資格変更許可の手数料について、現在の法定上限1万円を10万円へ、永住許可については1万円を30万円へ引き上げる内容とされています。実際の手数料額は今後、政令で定められる見込みですが、5年の在留期間であれば7万円程度が目安とされるなど、現行の6,000円から見れば大きな負担増となります。年間延べ約230万人に影響するとの見方もあります。

もちろん、手数料の見直し自体をすべて否定するつもりはありません。現在の手数料水準は長く据え置かれてきました。物価上昇、人件費の増加、審査体制の強化、オンライン申請システムの整備などを考えれば、一定の見直しが必要だという説明には理解できる部分もあります。

実際、出入国在留管理庁は、2025年4月1日から在留手続等に関する手数料を改定し、オンライン申請の場合の手数料も新たに定めています。入管行政のデジタル化や審査体制の維持に費用がかかることは事実でしょう。

しかし、今回多くの人が違和感を覚えているのは、単に「高い」という点だけではありません。問題は、なぜその金額なのか、そして集めた手数料を具体的に何に使うのかが、十分に説明されていない点にあります。

✅ この記事でわかること
  • 在留資格の更新・変更手数料が大幅に引き上げられる背景
  • 「受益者負担」だけでは説明しきれない理由
  • 手数料引き上げが外国人本人・家族・受入企業に与える影響
  • 外国人政策の厳格化と、制度の適正化を分けて考えるべき理由
  • 手数料の根拠・使い道に求められる透明性と説明責任
  • 外国人人材を「労働力」ではなく地域の担い手として考える視点
  • 負担増よりも、制度への信頼を高めることが重要である理由

政府側は、外国人本人が在留資格の許可という行政サービスを受ける以上、一定の受益者負担は必要だという考え方を示すでしょう。しかし、在留資格の更新や変更は、単なる個人的利益のためだけの手続ではありません。

外国人本人は、日本で働き、学び、生活し、税金や社会保険料を負担しています。企業にとっても、外国人人材はすでに人手不足を補う重要な存在です。介護、外食、宿泊、建設、農業、製造など、外国人人材なしでは現場が回らない業種も少なくありません。

つまり、在留資格制度は、外国人本人だけが利益を受ける仕組みではなく、日本社会全体の労働力、地域経済、生活インフラを支える制度でもあります。そのため、単に「外国人が使う制度だから外国人が負担すべきだ」という説明だけでは不十分です。

本当に必要なのは、どの手続にどれだけの行政コストがかかっているのか、オンライン化によってどの程度効率化されるのか、手数料収入がどの分野に充てられるのかを、具体的に示すことです。

たとえば、

  • 審査官の増員に使うのか
  • オンライン申請システムの改善に使うのか
  • 相談窓口や多言語対応に使うのか
  • 日本語教育や生活支援に使うのか
  • 不法就労や虚偽申請への調査体制強化に使うのか

こうした使途が明確であれば、負担増に対する理解はまだ得られやすいはずです。しかし、使い道が曖昧なまま金額だけが大きく上がれば、「結局は各省庁の財源として扱われるのではないか」という疑念が出るのも自然です。

ここ数年、外国人政策は明らかに「拡大」だけでなく「適正化」「厳格化」の方向へ進んでいます。

在留資格「経営・管理」については、ペーパーカンパニーや実体の乏しい起業を防ぐ観点から要件見直しが議論され、審査も厳しくなっています。

高度人材、技術・人文知識・国際業務、特定技能などの分野でも、書類上の整合性だけでなく、活動実態、雇用実態、支援体制、報酬水準、過去の申請内容との一貫性がより重視される流れにあります。

この流れ自体は、必ずしも悪いことではありません。

虚偽申請、不法就労、名ばかり雇用、実態のない経営、支援義務の不履行などを放置すれば、制度そのものへの信頼が失われます。真面目に働く外国人、適正に雇用する企業、正しく手続を行う専門家が不利益を受けることにもなります。

したがって、制度の適正化は必要です。しかし、適正化と負担増は同じではありません。適正化とは、本来、不正な申請や不適切な受入れを排除し、制度を正しく利用する人が安心して使えるようにすることです。

一方で、手数料の大幅引き上げは、制度を正しく利用している外国人や企業にも一律に負担を課すものです。ここを混同してはいけません。

今回の手数料引き上げで影響を受けるのは、不正をしている人だけではありません。むしろ、多くは真面目に働き、在留期限ごとにきちんと更新申請をしている外国人です。留学生、家族滞在者、特定技能外国人、技術・人文知識・国際業務で働く人、永住を目指す人など、幅広い層に影響します。

特に問題になるのは、在留期間が短く、更新頻度が高い人たちです。在留期間が1年しか出ない人は、毎年更新が必要になります。家族を帯同している場合、本人だけでなく家族分の手数料もかかります。

企業側にとっても無関係ではありません。特定技能外国人を多数雇用している企業では、更新時の費用負担を誰が負うのかという問題が出てきます。本人負担とするのか、企業が一部または全部を負担するのか。雇用条件、福利厚生、採用競争力にも関わります。

日本で働く外国人にとって、在留資格の更新は「日本で働き続けられるかどうか」に直結する手続です。その手数料が大幅に上がるということは、単なる行政手続費用の問題ではなく、日本で働き続けることのハードルが上がるということでもあります。

在留資格の審査や制度運用を厳格化すること自体は、主権国家として当然必要なことだと思います。誰を、どの条件で受け入れるのか。どのような場合に在留を認め、どのような場合に認めないのか。これは、国家が自国の制度として判断すべき重要な問題です。

虚偽申請、不法就労、実態のない雇用、名ばかりの経営、支援義務を果たさない受入れなどを放置すれば、制度そのものへの信頼が失われます。そうなれば、結果として不利益を受けるのは、真面目に働く外国人であり、適正に雇用する企業です。

その意味で、「外国人に厳しくすると日本に来なくなる」という単純な議論には、私はやや違和感があります。

世界を見れば、在留資格や就労許可の審査が厳しい国は少なくありません。シンガポールのように、外国人労働者や高度人材の受入れについて厳格な制度運用を行いながら、それでも国際的に選ばれている国もあります。

つまり、本質的な問題は、厳格化そのものではありません。問題は、誰を、どの条件で受け入れ、手数料や企業負担の根拠をどこに求めるのか。行政コストや社会統合コストを、誰が、どのように負担するのか。その説明が十分に尽くされているかという点です。

この説明を抜きにして、「日本は外国人に冷たい国だ」と感情的に批判するだけでも、「主権国家だから当然だ」と一言で片付けるだけでも、本質的な議論にはなりません。

今回問われているのは、外国人受入れの問題ではありません。在留手数料を大幅に引き上げるのであれば、その金額の根拠は何なのか。集めた手数料は何に使われるのか。オンライン化によって本来下がるはずの行政コストとの関係をどう説明するのか。企業や本人にどこまで負担を求めるのか。

こうした制度設計の透明性と公平性こそが、問われているのだと思います。

厳格な制度であっても、基準が明確で、説明が丁寧で、負担の根拠が合理的であれば、制度への信頼は保たれます。しかし、根拠や使途が曖昧なまま負担だけが増えれば、それは「適正化」ではなく、不信感を生む制度変更になってしまいます。

外国人政策の厳格化は、政治的には打ち出しやすいテーマです。日本人有権者から大きな反発が起きにくく、「不正対策」「適正化」「公平な負担」といった言葉で説明しやすいからです。

しかし、ここに危うさがあります。外国人は選挙権を持たない人が多く、政策決定の場で声が届きにくい立場にあります。だからこそ、負担を求める場合には、日本人以上に丁寧な説明が必要です。

外国人に対してだけ説明が粗くてもよい、ということにはなりません。むしろ、日本社会が本当に「選ばれる国」でありたいなら、外国人に対しても、なぜ負担を求めるのか、その負担がどのように制度改善につながるのかを、誠実に示す必要があります。

人手不足の現場では、すでに外国人人材は一時的な補助労働力ではありません。地域の介護施設、飲食店、ホテル、工場、建設現場、農業現場では、外国人人材が日常的に日本社会を支えています。にもかかわらず、制度の入り口や更新のたびに「負担だけが増え、説明は不十分」という印象が広がれば、日本は外国人人材から選ばれにくくなります。

ここで忘れてはいけないのは、外国人材は単なる「労働力」や「人手不足を補う存在」ではないということです。特定技能、技術・人文知識・国際業務、技能実習、留学からの就職など、在留資格の形はさまざまですが、日本で働く外国人の多くは、すでに地域社会の一員として生活しています。

地域の介護施設で高齢者を支える人。飲食店やホテルで観光客や地域住民にサービスを提供する人。工場、農業、建設現場で地域産業を支える人。子どもを保育園や学校に通わせ、地域のスーパーで買い物をし、税金や社会保険料を負担している人もいます。

つまり、外国人人材は「一時的に働きに来る人」ではなく、地域の生活、産業、福祉、消費を支える担い手でもあります。だからこそ、在留手数料の問題も、単に外国人本人の負担だけで考えるべきではありません。

更新や変更の手数料が大幅に上がれば、本人の生活設計に影響します。家族を帯同している場合は、家計への負担も大きくなります。企業側が一部を負担する場合には、採用コストや福利厚生の設計にも影響します。

そして、地方にとっては、外国人材がその地域に定着してくれるかどうかにも関わります。これから地方自治体や受入企業に求められるのは、単に「外国人を採用すること」ではありません。採用した外国人人材が、その地域で安心して暮らし、働き続けられる仕組みを作ることです。

たとえば、地方自治体であれば、生活相談、多言語情報の提供、日本語学習機会、地域住民との交流、子育て・教育支援、医療・防災情報へのアクセスなどを整える必要があります。

受入企業であれば、適正な賃金、明確な雇用条件、キャリア形成、住居支援、相談体制、職場内の日本人従業員との関係づくりなどが重要になります。

外国人人材を「来てもらって終わり」にするのではなく、「地域で働き、暮らし、定着してもらう」ための仕組みが必要です。その意味で、在留手数料の大幅引き上げを議論するのであれば、国だけでなく、地方自治体や受入企業も含めて、外国人人材の地域定着をどう支えるのかという視点が欠かせません。

行政コストを誰が負担するのか。企業はどこまで負担するのか。地方自治体はどのような支援を行うのか。本人にどこまで自己負担を求めるのか。これらを整理しないまま、手数料だけを引き上げれば、外国人材の定着支援はむしろ弱くなりかねません。

外国人人材を地域の担い手として見るなら、必要なのは単なる負担増ではなく、負担と支援のバランスです。国は制度の透明性を示し、地方自治体は生活基盤を支え、受入企業は雇用と定着に責任を持つ。その役割分担を明確にしてこそ、外国人人材は日本で安心して働き続けることができます。

在留資格制度は、入口管理の制度であると同時に、日本社会にどのように人を受け入れ、地域で共に暮らしていくのかを問う制度でもあります。だからこそ、手数料の議論は、単なる行政手続の金額論にとどめるべきではありません。外国人材を地域の担い手としてどう位置づけ、どのように定着を支えるのか。その視点まで含めて議論する必要があります。

私は、在留手数料の引き上げそのものに絶対反対という立場ではありません。行政コストが増えているのであれば、一定の負担を求めることはあり得ます。審査体制を強化し、不正申請を排除し、オンライン申請を使いやすくし、相談体制を整えるために費用が必要だというなら、その議論は正面から行うべきです。

しかし、そのためには順番があります。まず、現在の審査にどれだけのコストがかかっているのかを示すこと。次に、手数料収入をどの分野に使うのかを明確にすること。そして、経済的に困難な人、短期の在留期間しか与えられず更新を繰り返さざるを得ない人、家族単位で大きな負担を負う人に対する配慮を検討することです。

その説明がないまま、「受益者負担」という言葉だけで大幅な引き上げが進められれば、制度への信頼はむしろ損なわれます。外国人政策に必要なのは、単なる厳格化ではありません。必要なのは、正しく働く外国人、適正に雇用する企業、地域で共に暮らす住民が、納得して制度を利用できる透明性です。

在留資格許可申請手数料の大幅引き上げは、単なる金額の問題ではありません。これは、日本が外国人人材をどのような存在として見ているのかを映し出す政策です。

一時的な労働力として見るのか。社会を共に支える生活者として見るのか。それとも、財源確保の対象として見るのか。もちろん、不正な申請や不適切な受入れは厳しく排除されるべきです。しかし、真面目に働き、税金を納め、日本社会を支えている外国人に対してまで、十分な説明のないまま大きな負担だけを求めるのであれば、それは「適正化」ではなく、制度への不信を生むだけです。

在留手数料10倍時代に問われているのは、外国人がいくら負担すべきかだけではありません。

その根拠は誰のためにあるのか。
そのお金は何のために使われるのか。
そして、日本はこれからも外国人材に選ばれる国であり続けるのか。

政府には、負担を求める前に、まずその説明責任を果たすことが求められています。

出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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