こんにちは。行政書士の稲福です。
特定技能制度では、外国人人材の受入れが広がる一方で、単に「人手不足を補うために外国人を雇用する」という考え方だけでは、十分とはいえない時代になってきています。
特定技能外国人は、職場で働く労働者であると同時に、地域で生活する一人の生活者でもあります。住居、ゴミ出し、交通ルール、医療、防災、日本語学習、地域イベント、近隣住民との関係など、日々の生活は自治体や地域社会と密接に関わっています。そのため、特定技能外国人の受入れにおいては、企業内での雇用管理や支援だけでなく、地域社会の中で安心して生活できる環境づくりも重要になります。
近年は、国としても、外国人材を「受け入れる」だけでなく、地域社会の一員として共に生活していくための仕組みづくりを重視する方向にあります。その流れの中で、特定技能制度においても、受入企業が自治体の共生施策にどのように協力していくのかが、実務上の新たな確認事項となっています。
その具体的な手続の一つが、自治体へ提出する「協力確認書」です。
- 特定技能制度における「共生施策」とは何か
- 受入企業が自治体へ提出する「協力確認書」の意味
- 協力確認書を提出するだけで終わらせてはいけない理由
- 自治体の共生施策が今後どのように運用される可能性があるか
- 受入企業が確認しておくべき実務対応
- 登録支援機関が注意すべき支援上のポイント
- 共生施策が法令遵守と外国人材の定着支援に関わる理由

特定技能における「共生施策」とは
共生施策とは、外国人が地域社会の一員として安心して生活できるように、自治体が実施する各種の取組みを指します。
たとえば、次のようなものが考えられます。
・外国人向けの生活情報の提供
・日本語教室の案内
・防災訓練や災害時の情報提供
・ゴミ出しルールや生活マナーの周知
・医療・福祉・子育てに関する案内
・地域イベントへの参加促進
・多文化共生に関する相談窓口の整備
これらは、外国人本人だけのためではありません。外国人を受け入れる企業、地域住民、自治体が互いに理解しながら、トラブルを未然に防ぎ、安心して暮らせる地域をつくるための取組みです。
特定技能制度では、今後、特定技能外国人の増加が見込まれることを踏まえ、特定技能所属機関、つまり受入企業が、地域における外国人との共生社会の実現に寄与する責務を負うことが明確にされています。出入国在留管理庁も、特定技能制度における地域の共生施策との連携について案内しています。
協力確認書とは何か
協力確認書とは、特定技能外国人を受け入れる企業が、自治体から共生施策への協力を求められた場合には、その要請に応じて必要な協力を行うことを確認する書面です。簡単にいえば、受入企業が自治体に対して、「当社は、特定技能外国人を受け入れるにあたり、自治体の共生施策に必要な協力をします」と表明するものです。
協力確認書は、原則として、特定技能外国人が働く事業所の所在地と、本人の住居地が属する市区町村に提出することになります。つまり、勤務先の市区町村と住居地の市区町村が異なる場合には、それぞれの自治体に提出が必要となる場合があります。
各自治体でも、協力確認書の提出方法について案内が始まっており、オンライン申請、郵送、窓口、FAXなど、自治体ごとに提出方法が異なる場合があります。たとえば足立区では、郵便・持参・FAX・オンライン申請による提出方法が案内されています。
協力確認書は「提出して終わり」ではない
ここで注意すべきなのは、協力確認書は単なる形式的な書類ではないという点です。たしかに、実務上は、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請の前に、協力確認書の提出日や提出先を確認する作業が必要になります。
しかし、本来の目的は、書類を提出すること自体ではありません。重要なのは、受入企業が地域の共生施策を確認し、それを踏まえて特定技能外国人の支援や雇用管理を行うことです。
たとえば、自治体が外国人向けの日本語教室を実施しているのであれば、本人に案内する。防災訓練や災害時の情報提供があるのであれば、会社として本人に周知する。ゴミ出しや生活ルールに関する資料があるのであれば、入居時や生活オリエンテーションで説明する。
このような具体的な支援につなげてこそ、協力確認書の意味があります。
骨抜きになってはいけない制度
この制度が形だけになってしまうと、非常にもったいないと感じます。受入企業が、ただ書類をダウンロードして、会社名を書いて、自治体に提出するだけ。自治体側も、ただ受け取って保管するだけ。登録支援機関も、申請書類の一部として機械的に処理するだけ。
これでは、制度の趣旨が骨抜きになってしまいます。本来、共生施策は、特定技能外国人を地域社会から孤立させないための仕組みです。職場では問題がなくても、生活面で孤立すれば、退職、転職、失踪、近隣トラブル、メンタル不調などにつながる可能性があります。
外国人本人が困っていても、どこに相談すればよいかわからない。企業も、どこまで支援すればよいかわからない。自治体も、どの企業がどの地域で外国人を受け入れているのか十分に把握できない。
このような状況を放置しないために、協力確認書と共生施策の連携が設けられたと考えるべきです。
今後、自治体ではどのように運用されるか
今後の運用としては、自治体によって対応に差が出る可能性があります。一部の自治体では、協力確認書の提出を受け付けるだけにとどまるかもしれません。
一方で、外国人住民が多い自治体や、特定技能外国人の受入れが増えている地域では、より実質的な運用が進む可能性があります。
たとえば、次のような運用が考えられます。
・受入企業に対する多文化共生施策の案内
・外国人本人向け生活ガイドの提供
・日本語教室や相談窓口の周知
・防災訓練・地域イベントへの参加案内
・企業向けセミナーの実施
・外国人住民に関する地域課題の共有
・災害時の連絡体制の整備
特に、地方部や人手不足が深刻な地域では、外国人人材は単なる労働力ではなく、地域を支える生活者でもあります。そのため、自治体としても、受入企業や登録支援機関と連携しながら、外国人が地域に定着できる環境を整える必要があります。
受入企業が行うべきこと
受入企業は、協力確認書を提出するだけでなく、少なくとも次の点を確認しておくべきです。
まず、特定技能外国人が勤務する事業所の所在地と、本人の住居地を確認します。
次に、それぞれの市区町村が協力確認書の提出をどのように受け付けているかを確認します。
さらに、自治体のホームページで、多文化共生、日本語教室、防災、生活相談、外国人向け生活情報などのページを確認します。
そして、確認した情報を、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、定期面談などに反映させることが重要です。
特定技能外国人本人に対しても、「困ったときは会社だけでなく、自治体にも相談窓口があります」「日本語教室や生活相談の情報があります」「災害時にはこのような情報を確認してください」
と伝えておくことが大切です。
登録支援機関が注意すべきこと
登録支援機関にとっても、共生施策は重要なテーマです。
登録支援機関は、1号特定技能外国人に対する支援を行う立場にあります。そのため、支援計画の作成や実施にあたって、自治体の共生施策をまったく確認していないという対応は望ましくありません。
今後は、登録支援機関にも、単なる定期面談や生活支援だけではなく、地域との接続を意識した支援が求められます。
たとえば、
・本人の住居地の自治体が実施している日本語教室を案内する。
・防災情報や相談窓口を共有する。
・ゴミ出しルールや生活マナーについて、自治体資料を活用して説明する。
・企業に対して、協力確認書の提出状況や自治体施策の確認状況を助言する。
このような対応が、今後の登録支援機関の質を分けるポイントになると思います。
共生施策は「法令遵守」と「定着支援」の両方に関わる
共生施策への対応は、単なる行政手続ではありません。法令遵守の問題であると同時に、外国人人材の定着支援の問題でもあります。外国人本人が地域で安心して生活できれば、職場にも定着しやすくなります。
反対に、生活面の不安や孤立が大きくなれば、どれだけ職場環境が良くても、長期就労は難しくなります。特定技能制度では、これからますます「採用して終わり」ではなく、「受け入れた後にどう支えるか」が問われます。
協力確認書は、その入り口にすぎません。大切なのは、自治体の共生施策を確認し、本人の生活支援や職場定着に実際に活かしていくことです。
まとめ
特定技能制度における共生施策は、今後の外国人雇用において非常に重要なテーマです。受入企業は、自治体へ協力確認書を提出する必要があります。
しかし、それは単なる書類提出ではありません。外国人材を地域社会の一員として受け入れ、安心して働き、生活できる環境を整えるための出発点です。制度が骨抜きにならないためには、企業、登録支援機関、自治体がそれぞれの役割を理解し、実際の支援につなげる必要があります。
特定技能外国人は、会社の中だけで生きているわけではありません。地域で暮らし、地域のルールを学び、地域の人たちと関わりながら、日本で生活しています。
だからこそ、共生施策への対応は、これからの特定技能制度において、避けて通れない実務課題になるといえます。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直















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