こんにちは。行政書士の稲福です。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる「技人国ビザ」について、よくあるご相談の一つに、「大学を卒業していない外国人でも、技人国で働くことはできますか?」というものがあります。
結論からいうと、大学卒業などの学歴要件を満たしていなくても、これまでの実務経験によって技人国が認められる可能性があります。ここで重要なのが、「技術・人文知識」と「国際業務」では、必要とされる実務経験の考え方が異なるという点です。
「技術」または「人文知識」に該当する専門的な業務に従事する場合、学歴要件を満たしていないときは、原則として、その業務に関連する10年以上の実務経験が必要です。
例えば、ITエンジニア、機械設計、技術開発、経理、貿易、マーケティングなどの専門業務について、学歴ではなく職歴によって要件を満たそうとする場合には、これまでの勤務先でどのような専門業務に従事してきたのかを確認し、原則10年以上の関連する実務経験を立証していくことになります。
一方、技人国の中でも、「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務」、いわゆる「国際業務」については、原則として3年以上の関連実務経験があれば、学歴要件を満たしていなくても認められる可能性があります。代表的な国際業務としては、翻訳・通訳、語学指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾や室内装飾に関するデザイン、商品開発などが挙げられます。
ただし、ここには注意が必要です。単に、「外国人だから外国語を話せる」「外国人のお客様が来たときに通訳する」「現場で外国人スタッフに説明する」といった程度では、それだけで主たる業務が「国際業務」に該当するとは限りません。国際業務として認められるためには、外国語を使うというだけではなく、外国の文化・言語・商習慣・感性などを背景とした専門的な能力を必要とする業務であることが重要です。
さらに、学歴ではなく実務経験によって要件を満たす場合には、過去の職歴と日本で従事する予定の仕事との関連性も確認されます。例えば、海外で3年以上にわたって貿易・海外営業に従事してきた人が、日本企業で海外取引業務を担当するケースであれば、これまでの経験と日本で行う業務との関連性を説明しやすくなります。
反対に、過去の仕事と日本で予定している仕事にほとんど関連性がない場合には、「3年以上働いていた」という事実だけで国際業務の実務経験要件を満たすわけではありません。つまり、学歴がない場合の技人国では、まず次のように整理すると分かりやすいでしょう。
・「技術・人文知識」については、原則10年以上の関連実務経験
・「国際業務」については、原則3年以上の関連実務経験
そして、どちらの場合も重要なのは、単なる勤続年数ではなく、これまでどのような仕事をしてきたのか、その経験が日本で担当する専門業務とどのように関連しているのかを客観的な資料で立証できるかという点です。なお、大学を卒業した方が翻訳・通訳・語学指導の業務に従事する場合には、国際業務についての3年以上の実務経験は求められません。
この記事では、学歴要件を満たしていない外国人が「技術・人文知識・国際業務」で働く場合の実務経験要件について、10年以上の実務経験が必要となるケースと、国際業務として3年以上の実務経験で認められるケースの違いを整理したうえで、具体的な仕事内容や実務経験の立証方法、申請時の注意点をわかりやすく解説します。
- 技人国の「国際業務」とは何か
- 学歴がなくても実務経験3年以上で可能性があるケース
- 国際業務で認められやすい仕事内容
- 「外国語対応あり」だけでは危ない理由
- 飲食店・ホテル・工場などで危ない職務内容
- 2026年4月15日改正後の言語能力証明の注意点

技人国の「国際業務」とは何か
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、大きく分けると次の3つの分野があります。
たとえば、システムエンジニア、機械設計、建築設計、研究開発などが典型例です。
たとえば、経理、総務、人事、企画、マーケティング、貿易事務などが考えられます。
たとえば、翻訳、通訳、語学指導、海外取引業務、広報、宣伝、商品開発、デザインなどが代表例です。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」について、 対象となる業務や在留資格該当性、上陸許可基準、 実際の許可・不許可事例などを示した 出入国在留管理庁の公式資料です。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について|出入国在留管理庁このうち、今回のテーマは「国際業務」です。
国際業務は、学歴だけでなく、実務経験によって要件を満たすことができます。特に、大学を卒業していない方や、専攻内容と職務内容の関連性を説明しにくい方でも、過去の職歴を丁寧に整理することで、申請の可能性が出てくる場合があります。
学歴がなくても、3年以上の実務経験で可能性がある
国際業務の場合、原則として、これから従事する業務に関連する業務について、3年以上の実務経験が必要です。ここで重要なのは、単に「3年間働いていた」だけでは足りないという点です。
必要なのは、これから日本で行う仕事と、過去の実務経験との関連性です。
たとえば、これから日本で海外顧客対応や商談通訳、海外向け営業を行うのであれば、過去に母国や第三国で、営業、顧客対応、翻訳、通訳、海外取引、マーケティングなどの経験があるかどうかが重要になります。
反対に、過去3年間の職歴が飲食店のホールスタッフ、工場作業、倉庫作業、清掃、介護補助などであり、これからの仕事も現場作業中心である場合には、国際業務として組み立てることは難しくなります。
実務経験は、単なる勤務期間ではなく、業務内容の中身で判断されます。
国際業務で認められやすい仕事
国際業務として比較的組み立てやすいのは、次のような仕事です。
たとえば、次のように説明できる業務であれば、国際業務として検討しやすくなります。
☑海外顧客からの問い合わせ対応
☑外国語による商品説明
☑海外取引先との連絡調整
☑商談時の通訳
☑契約書、商品資料、営業資料の翻訳
☑海外向け販促企画
☑外国人向けマーケティング
☑越境ECサイトの運営
☑外国語でのカスタマーサポート
☑外国文化を踏まえた商品企画や店舗企画
このように、職務内容の中心が、外国語能力、外国文化への理解、海外顧客対応、海外取引、外国人向け企画などに置かれている場合は、国際業務として整理しやすくなります。
危ない仕事|現場労務が中心だと難しい
一方で、次のような業務は注意が必要です。
- ホール、配膳、レジ、清掃
- 調理補助、洗い場
- 工場ライン作業
- 倉庫作業、ピッキング
- 介護現場業務
- ホテルの単純なフロント補助
- 外国人がいるから通訳もします、程度の業務
これらの仕事は、原則として技人国ではなく、現場労務と見られやすい業務です。もちろん、飲食店、ホテル、工場、介護施設、物流会社などであっても、必ず技人国が使えないという意味ではありません。
問題は、本人が実際に何をするのかです。
たとえば、飲食店であっても、海外展開に向けた市場調査、外国人向けメニュー開発、海外SNS広報、インバウンド向け企画、外国語での予約対応、海外取引先との連絡調整などが中心であれば、国際業務として検討できる余地があります。
しかし、実態がホール、配膳、レジ、洗い場、調理補助であり、外国人客が来たときだけ通訳する程度であれば、危険です。
「通訳も少しやる」では弱い
実務上、非常に多いのが、
「外国人のお客様が来たときに通訳します」
「外国人スタッフに説明することがあります」
「外国語ができるので採用したいです」
という相談です。
しかし、これだけでは技人国の国際業務としては弱いです。
技人国では、在留期間中の活動を全体として見て判断されます。入管庁の明確化資料でも、技人国に該当する活動が全体のごく一部であり、それ以外の大部分が専門的な技術や知識を要しない業務、反復訓練で従事可能な業務である場合には、技人国には該当しないとされています。
つまり、通訳や外国語対応が少し含まれていても、仕事の中心が現場労務であれば危険です。
重要なのは、職務内容の中心が、海外取引、外国人顧客対応、翻訳通訳、外国語を使う企画営業などであることです。
比較的組み立てやすい職務内容の書き方
実務上は、職務内容を次のように具体的に整理できるかが重要です。
☑海外顧客対応
☑商談時の通訳
☑契約書・商品資料の翻訳
☑外国語による問い合わせ対応
☑海外向け販促企画
☑海外取引先との連絡調整
☑外国人向けSNS・広告運用
☑越境ECサイトの商品説明作成
☑外国人顧客向けカスタマーサポート
☑外国文化を踏まえた商品企画
このように書ける仕事であれば、比較的組み立てやすくなります。反対に、次のような説明だけでは危険です。
・飲食店で外国人客が来たときに通訳する
・ホテルで外国語対応もする
・工場で外国人従業員に説明する
・介護施設で外国人職員に声かけをする
・現場作業をしながら、必要に応じて通訳する
これらは、主たる業務が現場労務と見られやすく、技人国の国際業務としては慎重な検討が必要です。
実務経験3年をどう証明するか
学歴ではなく実務経験で申請する場合、実務経験の証明が非常に重要です。
一般的には、過去の勤務先から発行された在職証明書、職務内容証明書、雇用契約書、給与明細、社会保険・税務関係資料などを用いて、実際にその業務に従事していたことを説明します。
特に大切なのは、在職期間だけでなく、職務内容です。単に、「〇〇会社に3年間勤務していました」だけでは足りません。どの部署で、どのような業務を、どの程度担当していたのか。外国語を使う業務だったのか。
海外顧客対応や海外取引に関わっていたのか。翻訳、通訳、営業、企画、マーケティングとの関連性があるのか。
このあたりを具体的に証明する必要があります。
2026年4月15日改正後は、言語能力証明にも注意
2026年4月15日以降、技人国の提出資料の取扱いにも注意が必要です。特に、言語能力を用いて対人業務に従事する場合には、業務上使用する言語について、CEFR B2相当の言語能力を有することを証する資料が求められる場面があります。日本語については、JLPT N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上などが代表的な資料として扱われています。
ここで誤解してはいけないのは、技人国のすべての申請で一律に日本語N2が必要になった、という単純な話ではないことです。問題になるのは、言語能力を用いて対人業務に従事する場合です。
たとえば、通訳、外国語での接客、営業、顧客対応、カスタマーサポート、ホテルフロント、外国語を用いた対外折衝などでは、言語能力の証明が重要になる可能性があります。
そのため、今後は、どの言語を使うのか、誰に対して使うのか、業務上どの程度必要なのか、本人がその言語能力を客観的に証明できるのかという点も、申請前に確認しておく必要があります。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」における、 翻訳・通訳などの言語能力を用いる対人業務について、 在留資格該当性や審査上の考え方を示した 出入国在留管理庁の公式資料です。
翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務について|出入国在留管理庁飲食店・ホテル・工場で特に注意すべきこと
飲食店、ホテル、工場などでは、技人国の国際業務として申請する際に特に注意が必要です。なぜなら、これらの業種では、現場労務と国際業務の境界があいまいになりやすいからです。
たとえば、飲食店で、外国人客の接客、外国語メニューの作成、海外SNSでの広報、インバウンド向け企画、外国料理や外国文化を踏まえた商品開発などを行う場合には、国際業務として検討できる余地があります。
しかし、実態として、ホール業務、レジ、配膳、清掃、洗い場、調理補助が中心であれば、技人国ではなく現場労務と見られやすくなります。
ホテルでも同じです。外国語を使う予約対応、海外旅行会社との連絡、インバウンド向け企画、外国人顧客対応が中心であれば検討の余地があります。一方で、客室清掃、配膳、単純なフロント補助、荷物運搬などが中心であれば危険です。
工場でも、海外取引先との調整、外国語による品質資料の翻訳、海外顧客対応、輸出入関連業務などが中心であれば可能性がありますが、ライン作業、検品、梱包、ピッキングが中心であれば難しくなります。
ホテル・旅館等で外国人が就労する場合について、 在留資格「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務や、 実際の許可・不許可事例などを示した 出入国在留管理庁の公式資料です。
ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について|出入国在留管理庁申請前に確認すべきポイント
技人国の国際業務を実務経験で組み立てる場合、少なくとも次の点を確認する必要があります。
特に、職務内容説明書は重要です。「海外営業」「通訳」「外国人対応」といった抽象的な書き方だけではなく、実際にどのような業務を担当するのかを具体的に記載する必要があります。
まとめー国際業務は「外国語ができる」だけでは足りない
技人国の国際業務は、学歴がなくても、関連する実務経験が3年以上あれば可能性があります。ただし、重要なのは、単に外国人であることや、外国語が話せることではありません。
必要なのは、
☑外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務であること
☑本人の過去3年以上の実務経験と、これから行う業務に関連性があること
☑職務内容の中心が、海外取引、翻訳通訳、外国人顧客対応、外国語を用いた企画営業などであること
☑現場労務が中心ではないこと
です。「通訳も少しやります」「外国人のお客様が来たら対応します」「外国人スタッフに説明します」という程度では、技人国の国際業務としては弱いです。
一方で、海外顧客対応、商談通訳、契約書や商品資料の翻訳、外国語による問い合わせ対応、海外向け販促企画、海外取引先との連絡調整などを中心業務として具体的に説明できる場合には、実務経験ルートで申請を検討できる可能性があります。
技人国の国際業務は、職務内容の作り方ひとつで大きく判断が変わります。外国人材を採用する企業は、採用前の段階で、本人の学歴、職歴、言語能力、予定業務、現場業務の有無を丁寧に確認しておくことが重要です。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直



















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