こんにちは。行政書士の稲福です。
特定技能外国人の受入れが広がる中で、「登録支援機関になりたい」「人材紹介とあわせて支援業務も行いたい」「登録支援機関として外国人支援ビジネスを始めたい」という相談を受けることがあります。
登録支援機関とは、特定技能1号外国人に対する支援を、受入れ企業から委託を受けて実施する機関です。一見すると、申請をして登録番号を取得すれば始められるように見えるかもしれません。
しかし、今後の制度運用を考えると、登録支援機関は、これまで以上に厳しく見られることになります。
特に重要になってくるのが、支援担当者の人数です。
今後は、支援担当者1人で何百人もの外国人や多数の受入れ企業を担当するような運用は難しくなる方向で、支援担当者1人あたり、支援対象となる特定技能外国人は50人程度まで、特定技能所属機関は10社程度までという考え方が示されています。
さらに、支援担当者については常勤性、支援責任者については講習修了など、より実務能力を重視する方向に進んでいます。
つまり、これから登録支援機関を目指す場合は、単に「登録できるか」ではなく、「厳格化後も継続して運営できる体制があるか」を考える必要があります。
- 登録支援機関とは何をする機関なのか
- 登録支援機関になるための基本的な手続き
- 支援責任者・支援担当者に求められる要件
- 支援担当者1人あたり外国人50人・所属機関10社という考え方
- 今後、登録支援機関の要件が厳しくなる理由
- 登録支援機関が人材紹介会社を兼ねる場合の注意点
- これから登録支援機関を目指す事業者が準備すべき体制

登録支援機関とは何か
登録支援機関とは、特定技能1号外国人に対する支援業務を、受入れ企業から委託を受けて行う機関です。特定技能1号外国人を受け入れる企業は、外国人に対して「1号特定技能外国人支援計画」に基づく支援を行う必要があります。
ただし、受入れ企業が自社で支援体制を整えることが難しい場合は、その支援業務の全部を登録支援機関に委託することができます。登録支援機関は、外国人本人の生活支援、相談対応、定期面談、行政手続きの案内、日本語学習支援、転職支援などを行います。
つまり、登録支援機関は単なる連絡係ではありません。外国人本人が日本で安定して働き、生活するための支援を行う専門機関です。
登録支援機関は「登録番号を取れば終わり」ではない
登録支援機関について、よくある誤解があります。それは、「登録番号を取ればビジネスとして始められる」という考え方です。もちろん、登録を受けなければ登録支援機関として支援業務を行うことはできません。
しかし、重要なのは登録後です。
登録支援機関は、外国人本人と定期的に面談し、生活状況や就労状況を確認し、相談や苦情に対応し、必要に応じて受入れ企業や行政機関と連携しなければなりません。支援を形式的に行っているだけでは、登録支援機関としての責任を果たしているとはいえません。
今後は、登録しているだけで実態がない機関、名義貸しに近い機関、支援記録が残っていない機関は、より厳しく見られる可能性があります。
登録支援機関になるための基本的な手続き
登録支援機関になるためには、出入国在留管理庁に登録申請を行います。
主な流れは、次のとおりです。
登録申請では、登録支援機関登録申請書、登録支援機関概要書、支援責任者・支援担当者に関する書類、誓約書、法人の場合は登記事項証明書、納税証明書などを準備します。
登録の有効期間は5年間です。そのため、登録後も継続して登録支援機関として業務を行う場合は、更新申請が必要です。
今後の厳格化で重要になる「支援担当者の人数」
今後の登録支援機関で特に重要になるのが、支援担当者の人数です。これまでは、登録支援機関の中には、少人数で多数の外国人や多数の受入れ企業を担当しているケースもありました。
しかし、支援担当者が少なすぎると、定期面談、相談対応、生活支援、緊急時対応、記録管理を十分に行うことが難しくなります。
そのため、今後は、支援担当者1人あたりが担当できる範囲に上限を設ける方向です。実務上、特に押さえるべきなのは、次の考え方です。
50人程度まで
10社程度まで
から選任
実務能力・適格性
がより重視される方向
パブリックコメント関係でも、支援担当者1名につき、特定技能所属機関が10機関未満、特定技能外国人が50人未満という要件が示されており、その趣旨は支援の質を確保するためとされています。
したがって、今後は、登録支援機関の規模を拡大する場合、単に契約企業や支援人数を増やすだけでは不十分です。
支援人数や委託先企業数に応じて、常勤の支援担当者を確保する必要があります。
「20社に1人」ではなく「10社に1人」と見ておくべき
ご相談の中で、「20社に対して1人」という話を聞くことがあります。
しかし、現時点で出ている情報を踏まえると、より厳しく、支援担当者1人あたり特定技能所属機関10社程度までと見ておくべきです。
たとえば、次のように考えます。
ポイントは、特定技能外国人の数だけではないということです。特定技能外国人が50人以下でも、委託先の受入れ企業が多ければ、支援担当者を増やす必要があります。
たとえば、外国人40人であっても、所属機関が15社ある場合、1人の支援担当者では足りない可能性があります。逆に、所属機関が5社でも、外国人が80人いれば、支援担当者は複数必要になります。
つまり、今後は、特定技能外国人の人数 × 所属機関数の両方で支援体制を考える必要があります。
支援担当者は「常勤」が前提になる
今後の厳格化では、支援担当者の常勤性も重要になります。これまでのように、外部の協力者や非常勤の人材を形式的に支援担当者として置くような運用は難しくなる可能性があります。
支援担当者は、外国人本人からの相談や緊急時対応、定期面談、受入れ企業との連絡、記録管理などを実際に行う立場です。そのため、常勤の役職員として、日常的に支援業務に関与できる体制が求められます。
これは、登録支援機関にとってかなり大きな影響があります。なぜなら、支援人数が増えれば、常勤の支援担当者を増やさなければならないからです。
登録支援機関ビジネスは、今後、少人数で大量に受託して利益を出すモデルから、一定の人件費をかけて支援品質を確保するモデルへ変わっていくと考えられます。
支援責任者の要件も厳しくなる方向
支援担当者だけでなく、支援責任者の要件も厳しくなる方向です。支援責任者は、登録支援機関の支援業務全体を管理する立場です。
支援担当者が現場で面談や相談対応を行うのに対し、支援責任者は、支援計画全体の管理、支援状況の確認、担当者の指導、届出・記録管理、法令遵守体制の整備などを担います。
今後は、支援責任者についても、単に名前だけ置けばよいという運用は難しくなります。特に、次の点が重視されると考えられます。
支援責任者について、過去3年以内に法務大臣が告示で定める講習を修了した者に限るという整理をしている実務情報も出ています。
つまり、今後の支援責任者は、単なる管理者ではなく、登録支援機関の法令遵守と支援品質を担保する責任者として見られることになります。
講習修了が重要になる
今後、支援責任者や支援担当者については、講習修了の有無が重要になると考えられます。
登録支援機関の支援業務は、外国人の生活支援だけではなく、入管法、労働法令、社会保険、雇用契約、転職支援、届出、記録管理など、多くの制度知識を必要とします。
そのため、実務経験だけではなく、制度を正しく理解していることが求められます。
特に、育成就労制度との接続が進む中で、外国人材受入れ制度全体は、より「適正な受入れ」「支援の質」「人材育成」を重視する方向に進んでいます。
この流れを踏まえると、登録支援機関の支援責任者・支援担当者についても、講習修了や継続的な研修が重要になっていくと考えられます。
受入れ企業数が多い登録支援機関ほど注意が必要
今後の厳格化で影響が大きいのは、少人数で多くの企業から支援委託を受けている登録支援機関です。
特に、次のような運用をしている場合は注意が必要です。
・1人の担当者が多数の受入れ企業を担当している。
・外国人の人数は少ないが、委託先企業数が多い。
・地方や遠方の企業を多数担当している。
・定期面談をオンライン中心で形式的に行っている。
・相談記録や面談記録が十分に残っていない。
・支援担当者が非常勤や外部委託に近い形になっている。
・通訳者はいるが、支援担当者として常勤ではない。
このような体制では、今後の基準に対応できない可能性があります。
登録支援機関は、受託件数を増やす前に、支援担当者の配置、人員計画、面談体制、記録管理体制を見直す必要があります。
人材紹介会社が登録支援機関になる場合の注意点
人材紹介会社が登録支援機関になるケースも多いです。しかし、今後の厳格化を踏まえると、人材紹介会社が登録支援機関を兼ねる場合は、より慎重な運用が必要です。
人材紹介会社は、企業に人材を紹介して紹介手数料を得る立場です。一方、登録支援機関は、特定技能外国人本人の生活や就労を支援する立場です。
この2つの立場が混ざると、利益相反が起きやすくなります。
たとえば、特定技能外国人本人が職場の問題を相談しているのに、受入れ企業との関係を優先して十分に対応しない。外国人が転職を希望しているのに、企業側に配慮して本人の意思を抑える。労働条件の違反やハラスメントを把握しているのに、届出や通報をしない。
このような対応は非常に危険です。
今後は、登録支援機関としての支援品質がより厳しく見られるため、人材紹介と登録支援を一体で行う場合ほど、業務範囲、費用負担、相談対応、記録管理、転職支援のルールを明確にしておく必要があります。
行政書士法との関係にも注意が必要
登録支援機関の実務では、在留資格申請に関する相談を受けることがあります。しかし、登録支援機関であることと、在留資格申請書類を作成できることは別問題です。
登録支援機関は、特定技能外国人の支援業務を行う機関です。一方、在留資格申請書類の作成は、行政書士法との関係で注意が必要です。
「無料だから問題ない」「支援業務の一部だから問題ない」という感覚で、登録支援機関が在留資格申請書類を作成してしまうと、行政書士法上の問題が生じる可能性があります。
今後は、登録支援機関の適正性がより厳しく見られるため、在留資格申請書類の作成業務との線引きも重要になります。登録支援機関は支援業務を行う機関であって、当然に申請書類作成業務を行える機関ではありません。
これから登録支援機関を目指す事業者が準備すべきこと
これから登録支援機関を目指す場合、まず考えるべきことは、登録番号を取れるかどうかではありません。
本当に考えるべきなのは、厳格化後も継続して運営できるかどうかです。少なくとも、次の準備が必要です。
このような体制がなければ、登録後に支援業務が回らなくなる可能性があります。
今後は「少人数で大量受託」のモデルは難しくなる
これまでの登録支援機関の中には、少人数で多くの支援委託契約を受けるモデルもありました。しかし、今後はこのようなモデルは難しくなると考えられます。
支援担当者1人あたり外国人50人、所属機関10社という基準が実務上重視されるようになれば、支援人数や委託先企業数が増えるほど、常勤の支援担当者を増やさなければなりません。
つまり、登録支援機関の運営には、これまで以上に人件費がかかります。そのため、低価格で大量に受託するモデルでは、支援品質を維持できなくなる可能性があります。
今後求められるのは、安さではなく、支援の実態がある登録支援機関です。
定期面談を行っているか。
相談対応をしているか。
記録を残しているか。
届出をしているか。
外国人本人の生活状況を把握しているか。
受入れ企業に問題がある場合に適切に対応しているか。
これらが問われる時代になります。
登録支援機関は「支援の質」で選ばれる時代へ
登録支援機関は、今後、数ではなく質で選ばれる時代になります。
特定技能制度が拡大し、育成就労制度との接続も進む中で、特定技能人材の受入れは、単なる労働力確保ではなく、人材育成と定着支援を重視する方向に進んでいます。
その中で、登録支援機関には、次のような役割が求められます。
これらを実際に行える機関でなければ、今後の制度運用には対応できません。
さいごに
登録支援機関になること自体は、制度上、一定の要件を満たして申請すれば可能です。
しかし、これからの登録支援機関は、登録番号を取得するだけでは不十分です。今後は、支援担当者1人あたりの担当人数や担当企業数が厳しく見られるようになります。
特に、外国人50人に対して支援担当者1人、特定技能所属機関10社に対して支援担当者1人という考え方は、今後の運営を考えるうえで非常に重要です。
また、支援担当者の常勤性、支援責任者の講習修了、支援実務の理解、記録管理、届出管理、行政書士法との線引きなども、これまで以上に重要になります。
これから登録支援機関を目指す事業者は、「登録できるか」ではなく、「厳格化後も適正に支援を継続できるか」という視点で準備する必要があります。
登録支援機関は、特定技能人材ビジネスの付属業務ではありません。特定技能外国人の生活と就労を支える、責任ある実務機関です。
今後求められるのは、登録しているだけの機関ではなく、実際に支援できる登録支援機関です。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直


















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