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「借金をなくす」は本当に可能か――育成就労制度に残る送出費用と監理構造の矛盾

育成就労

こんにちは、行政書士の稲福です。

技能実習制度は、今後廃止され、新たに「育成就労制度」へ移行していくことが予定されています。

これまで技能実習制度については、国際貢献や技能移転という制度目的と、実際の日本国内における人手不足への対応という現実との間に、大きなずれがあると指摘されてきました。

その中でも、特に問題とされてきたのが、外国人本人が母国で多額の費用を支払い、借金を背負って来日する構造です。育成就労制度では、この問題を改善するため、外国人本人が送出機関に支払う費用について、一定の上限を設ける方向が示されています。

しかし、ここで考えなければならないのは、単に「本人負担に上限を設ければ問題が解決するのか」という点です。

本稿では、育成就労制度における送出費用の問題と、監理団体・監理支援機関の構造的な課題について、実務的な視点から整理してみたいと思います。

✅ この記事でわかること
  • 技能実習制度が廃止され、育成就労制度へ移行する背景
  • 育成就労制度で問題となる「借金」ではなく「送出費用」の考え方
  • 外国人本人が送出機関に支払える費用の上限
  • 上限を超えた場合の計画認定・取消しリスク
  • 本人負担を下げた場合に企業側へ移る費用負担
  • 本人意向転籍が認められても、主要分野では2年間動けない問題
  • 転籍先企業にも発生し得る受入れコスト
  • 監理団体から監理支援機関へ変わっても残る構造的な矛盾

技能実習制度は、国際貢献や技能移転を目的とした制度として創設されました。しかし、実際には多くの業種で、人手不足を補うための制度として利用されてきました。このため、制度の建前である「技能移転」と、現場の実態である「労働力確保」との間に大きなずれがありました。

また、技能実習では、本人意向による転籍が原則として認められていなかったため、職場環境に問題があっても、簡単に勤務先を変更できないという問題がありました。

さらに、母国で送出機関や仲介者に高額な費用を支払い、借金をして来日する実習生も少なくありませんでした。育成就労制度では、こうした問題を改善するため、本人意向による転籍が一定の要件のもとで認められる方向です。

ただし、ここで注意すべきなのは、育成就労になれば自由にすぐ転職できるわけではないという点です。本人意向による転籍には、同一の受入企業で一定期間就労していることが必要とされ、分野によってその期間は異なります。

特に、外食、建設、介護、飲食料品製造業、自動車整備、工業製品製造業、造船・舶用工業、資源循環などの主要分野では、原則として2年間は同一企業で就労し、その後、技能・日本語能力・転籍先企業の要件などを満たした場合に転籍できる制度設計になると考えられます。つまり、育成就労制度は、技能実習制度と比べれば転籍の道が開かれる制度です。しかし、主要分野では、最初の2年間は本人都合で自由に転職できるわけではありません。

一方で、企業側から見ると、3年間必ず在籍してくれる制度でもありません。主要分野であっても、2年を経過すれば、要件を満たした外国人が本人意向で転籍する可能性があります。このため、育成就労制度では、外国人本人の保護を進める一方で、受入企業にとっては、2年経過後の人材流出リスクも現実的な課題になります。

このような問題を踏まえ、技能実習制度は発展的に解消され、人材育成と人材確保を目的とする育成就労制度へ移行することになります。

育成就労制度は、原則として3年間の就労を通じて人材を育成し、その後、特定技能1号へ移行することを想定した制度です。運用要領でも、育成就労の期間は原則3年以内とされています。

育成就労制度について、「借金はいくらまでならよいのか」「20万円までなのか」といった話が出ることがあります。しかし、制度上の論点は、借金額そのものではありません。

問題となるのは、外国人本人が送出機関に支払った費用の額です。

育成就労制度では、外国の送出機関から取次ぎを受ける場合、本人が送出機関に支払った費用の額が、育成就労外国人の保護の観点から適正な基準に適合していることが、育成就労計画の認定基準とされています。

つまり、「借金があるかどうか」だけを見るのでは不十分です。本人が、誰に、何の名目で、いくら支払ったのか。ここが、育成就労制度では非常に重要になります。

育成就労制度では、外国人本人が送出機関に支払う費用の上限は、育成就労計画に記載された報酬月額の2か月分とされています。

たとえば、月給20万円であれば、上限は40万円です。月給22万円であれば、上限は44万円です。月給25万円であれば、上限は50万円です。したがって、「借金20万円まで」という一律の基準ではありません。正確には、外国人本人が送出機関に支払う費用は、所定内賃金月額の2か月分を超えてはならないという考え方です。

また、この上限は、本人に費用負担を積極的に認める趣旨ではありません。運用要領でも、この規定は本人の経済的負担を軽減することを目的としており、本人が送出機関に支払う費用は最小限に抑えることが望ましいとされています。

育成就労制度では、規制対象となる費用は、単なる「紹介手数料」だけではありません。送出しの過程で、外国人本人が送出機関に支払った一切の費用が対象になります。

運用要領では、例として、送出手数料、職業紹介費、医療費、保険費、健康診断費用、技能・資格検定費、職業訓練・研修・日本語講習費、国内移動費、渡航費、旅券・査証申請費用、一般管理費などが挙げられています。

さらに重要なのは、本人が送出機関に直接支払っていない費用でも、送出機関と実質的に一体となって活動する教育機関や仲介人に支払った費用は、送出機関への支払いと同視される場合がある点です。

つまり、名目を変えればよいという話ではありません。

「日本語学校費用」「研修費」「ブローカーへの紹介料」「現地教育機関への支払い」などであっても、実質的に送出機関への支払いと同じであれば、上限規制の対象になります。

ここは、企業や監理支援機関が特に注意すべき点です。

外国人本人が送出機関に支払った費用が、月給2か月分を超えている場合、育成就労計画の認定に影響します。

制度上、送出機関に支払った費用の額が基準に適合していることは、育成就労計画の認定基準です。したがって、上限を超えている場合には、育成就労計画の認定を受けられない可能性があります。

また、認定時点では費用を支払っていなかったとしても、認定後に基準に違反する費用を外国人本人が支払った場合には、育成就労計画の認定取消しの対象になります。つまり、申請時だけ整えておけばよいという話ではありません。

入国前、入国後を問わず、本人や家族が送出機関や実質的に一体の関係にある機関へ上限を超える費用を支払っていないかを確認する必要があります。

企業側としても、「現地の送出機関が勝手にやったことだから知らない」では済まされない場面が出てくる可能性があります。

ここで制度上の矛盾が出てきます。

育成就労制度では、本人が送出機関に支払える費用は月給2か月分までとされています。しかし、現行の技能実習では、技能実習生が送出機関に支払っている費用の平均額が、全体平均で約52万円とされています。

国別では、ベトナム約66万円、中国約58万円、カンボジア約57万円、ミャンマー約29万円、インドネシア約23万円、フィリピン約9万円という数字も示されています。

たとえば、月給20万円の育成就労外国人であれば、本人が送出機関に支払える費用の上限は40万円です。しかし、現行技能実習の全体平均が約52万円であることを踏まえると、従来の送出構造をそのまま育成就労制度へ移すことは難しくなります。

ここに、制度上の大きな衝突があります。

育成就労制度で本人負担を下げることは、外国人保護の観点から重要です。しかし、本人負担を下げても、採用や送出にかかる費用そのものが消えるわけではありません。

外国人を日本へ送り出すまでには、募集、面接、日本語教育、職業訓練、書類作成、健康診断、査証申請、渡航準備、入国後講習、住居準備など、さまざまな費用が発生します。本人が負担できる費用に上限を設けるなら、その上限を超える部分は、別の誰かが負担することになります。

運用要領でも、送出しに要した費用が法定上限を超える場合には、超過分を受入れ側が負担することにより、外国人本人の経済的負担を軽減する趣旨が示されています。

つまり、育成就労制度は、費用を消す制度ではありません。実態としては、これまで外国人本人に寄せられていた費用負担を、受入企業側にも移していく制度です。

育成就労制度では、企業側に次のような費用負担が生じる可能性があります。

・送出機関に関する費用
・職業紹介費
・日本語教育費

・職業訓練・研修費
・入国前講習費
・入国後講習費
・渡航費
・健康診断費
・旅券・査証申請に関する費用
・翻訳・書類作成費
・住居準備費
・生活立ち上げ費用

・監理支援機関への監理支援費
・試験受験に関する費用
・日本語講習に関する費用

特に、育成就労制度では、日本語能力や技能の向上が制度上の前提になります。運用要領でも、講習費用等の負担や、講習受講のための環境整備が求められる場面が示されています。

また、技能試験等の受験に要する費用についても、本人に負担させるのではなく、育成就労実施者または監理支援機関が負担しなければならないとされています。

したがって、企業は育成就労を「安価な労働力の確保」と考えるべきではありません。むしろ、3年間かけて人材を育成し、その後、特定技能1号へつなげるための人材投資として考える必要があります。

育成就労制度では、本人の意向による転籍が一定の要件のもとで認められます。この点だけを見ると、技能実習制度よりも自由度が高まったように見えます。

しかし、実際には、いつでも自由に転籍できるわけではありません。本人意向転籍には、転籍制限期間があります。運用要領では、転籍制限期間は育成就労産業分野ごとに、1年以上2年以下の範囲で定められるものとされています。

また、本人意向転籍をするためには、従前の育成就労実施者のもとで、分野別運用方針で定める転籍制限期間を超えていることが必要です。特に重要なのは、外食、建設、介護、飲食料品製造業、自動車整備、工業製品製造業、造船・舶用工業、資源循環などの主要分野では、転籍制限期間を2年とする案が示されている点です。

つまり、育成就労が3年間の制度であることを考えると、主要分野では、最初の2年間は本人都合で動けない制度設計になります。ここは、制度の欠陥として明確に指摘すべきです。「転籍を認める」と言いながら、実務上は主要分野で2年間動けない。

技能実習制度より改善される部分はありますが、外国人本人から見れば、なお長期間の拘束感が残る可能性があります。

本人意向転籍は、単に期間を経過すれば当然に認められるものではありません。運用要領では、本人意向転籍の要件として、一定の技能試験および日本語能力試験に合格している必要があるとされています。

つまり、2年経てば自動的に転籍できるわけではありません。本人が試験に合格していること。転籍先企業が適正な受入れ機関であること。同一業務区分内での転籍であること。転籍先でも育成就労計画が認定されること。これらの要件が関係してきます。

また、育成就労実施者が転籍を妨害するために試験を受けさせない、受験を妨害するなどの行為は、育成就労計画の認定取消事由となり得るとされています。この点は、企業側も慎重に理解する必要があります。

育成就労制度では、転籍先企業にとっても負担が生じます。転籍だからといって、単なる中途採用のように簡単に受け入れられるわけではありません。転籍先企業では、新たな育成就労計画の認定、雇用契約、監理支援機関との調整、住居変更、生活支援、日本語教育、技能習得支援などが必要になります。

また、転籍前の企業で一部の講習を終えていた場合でも、残りの講習を転籍先企業側で実施する必要があります。運用要領でも、たとえば転籍元で30時間の対象講習を終えている場合、転籍先では70時間以上の対象講習を行う必要がある例が示されています。

つまり、転籍先企業は、すでに日本にいる人材を採用する場合でも、次のような負担を見込む必要があります。

・新たな育成就労計画の作成・認定手続
・雇用契約・雇用条件書の作成
・監理支援機関との調整
・住居変更・生活立ち上げ支援
・未実施分の日本語講習・教育費用
・技能試験・日本語試験の受験支援
・試験費用・交通費・材料費等の負担
・転籍後の定着支援
・特定技能1号移行を見据えた育成コスト

このように、育成就労の転籍は、通常の中途採用とは異なります。転籍先企業にも、制度上・実務上の受入れコストが発生します。

育成就労制度では、本人意向転籍を認める一方で、転籍元企業が負担した初期費用をどう扱うかという問題があります。

転籍元企業は、採用、送出、講習、渡航、住居準備、日本語教育、生活支援などに費用をかけています。そのため、本人意向で転籍が行われた場合、転籍元企業から見ると、「費用をかけて育成した人材が途中で他社へ移る」という問題が生じます。

一方で、転籍先企業に補填負担を重く課しすぎると、転籍先企業は受入れをためらいます。その結果、制度上は本人意向転籍を認めていても、実際には転籍しにくくなる可能性があります。

ここに、育成就労制度の大きな矛盾があります。外国人本人の転籍の自由を認める一方で、企業側の初期費用負担をどう守るのか。

このバランスが取れなければ、育成就労制度は、外国人本人にとっても、受入企業にとっても使いにくい制度になりかねません。

育成就労制度では、現在の監理団体に代わり、「監理支援機関」が制度上の役割を担います。監理支援機関については、独立性・中立性の担保、職員配置、母国語相談体制、監理支援費の公表、キックバック禁止など、要件が厳格化されています。

運用要領でも、監理支援機関について、母国語相談・支援の実施方法や手順を定めたマニュアルの策定、夜間・休日を含む母国語相談対応、監理支援事業に従事する職員数2人以上、監理支援費のホームページ公表、送出機関からのキックバック禁止などが示されています。これは、技能実習制度で批判されてきた監理団体の問題を改善するためのものです。

しかし、ここにも構造的な問題があります。

監理支援機関は、制度上は受入企業を監理・支援する立場です。一方で、その収入源は、基本的には受入企業から支払われる監理支援費になると考えられます。つまり、受入企業からお金をもらう機関が、その受入企業を厳しく監理するという構造は残ります。

名称が「監理団体」から「監理支援機関」に変わっても、この根本構造が変わらなければ、実務上の中立性には限界があります。

育成就労制度は、技能実習制度の問題点を改善しようとする制度です。

・本人負担の上限。
・送出費用の透明化。
・本人意向転籍。
・監理支援機関の要件厳格化。
・特定技能1号への接続。

これらは、制度として前進している部分です。しかし、それでも制度上の欠陥は残ります。最大の問題は、次の点です。

外国人本人に高額な借金を負わせない制度を目指しながら、送出国側の費用構造、受入企業の採用コスト、転籍制限、転籍先企業の負担、監理支援機関の収益構造が互いに衝突していることです。

本人負担を下げれば、企業負担が増えます。
企業負担が増えれば、企業は転籍を嫌がります。
転籍を自由にしすぎれば、企業は初期費用を回収できません。
転籍を制限しすぎれば、外国人本人の自由が損なわれます。
転籍先企業にも費用負担が重くなれば、転籍の実効性は下がります。
監理支援機関を厳格化しても、受入企業から費用を受け取る構造は残ります。
送出費用に上限を設けても、現地の教育機関、仲介人、ブローカーへの支払いを完全に排除できるとは限りません。

ここに、育成就労制度の本質的な難しさがあります。

育成就労制度は、外国人を3年間かけて育成し、その後、特定技能1号へつなげることを想定した制度です。そのため、これまで技能実習制度を利用してきた企業にとっては、育成就労制度が新たな受入れの中心になるようにも見えます。

しかし、実務上は、すべての企業が育成就労から受け入れるべきとは限りません。むしろ、業種や採用目的によっては、最初から特定技能での受入れを検討した方がよい場合があります。

その理由は、育成就労制度には、本人負担の上限、送出費用の確認、監理支援機関との関係、転籍制限、転籍時の費用負担など、企業側にとって新たな管理コストが多く発生するためです。特に、すでに一定の技能や日本語能力を持つ外国人を採用できるのであれば、育成就労で3年間かけて育成するよりも、特定技能1号で受け入れる方が、制度設計としてシンプルな場合があります。

特定技能は、一定の技能試験と日本語能力を満たした外国人を受け入れる制度です。つまり、入国時点または在留資格変更時点で、すでに一定水準の技能と日本語能力が確認されていることになります。

これに対して、育成就労は、あくまで「これから育成する」制度です。そのため、企業側には、育成計画、日本語教育、技能向上、試験合格支援、特定技能への移行管理など、長期的な育成責任が求められます。

もちろん、海外から若い人材を計画的に育成し、将来的に特定技能1号、さらに特定技能2号へつなげていくのであれば、育成就労制度には一定の意味があります。

しかし、すでに日本国内にいる特定技能外国人、技能試験に合格済みの外国人、留学生から特定技能へ移行できる人材、または海外で特定技能評価試験に合格している人材を採用できるのであれば、最初から特定技能で受け入れる選択肢も十分に検討すべきです。

特に企業側から見ると、特定技能には次のようなメリットがあります。

・すでに一定の技能水準が確認されている
・日本語能力も一定程度確認されている
・育成就労のような3年間の育成計画を前提としない
・本人負担の送出費用上限や育成就労計画認定の論点が少ない
・転籍制限期間を前提とした制度設計ではない
・即戦力または準即戦力として採用しやすい
・特定技能2号へのキャリア形成を最初から見据えやすい

一方で、特定技能にも支援義務、定期届出、報酬水準、雇用契約の適正性、分野別協議会、業務区分との適合性など、注意すべき点はあります。

したがって、「育成就労か、特定技能か」という二者択一ではなく、企業の採用目的に応じて制度を使い分けることが重要です。たとえば、海外から若年層を受け入れ、3年間かけて育成したい場合は、育成就労が候補になります。

一方で、すでに一定の技能を持つ人材を採用したい場合、国内転職者を採用したい場合、早期に現場で戦力化したい場合には、特定技能を優先して検討する方が現実的です。

育成就労制度は、技能実習制度の後継として注目されています。しかし、企業にとって本当に重要なのは、制度の名称ではありません。重要なのは、採用する外国人材の能力、受入れコスト、定着可能性、転籍リスク、将来的な在留資格の見通しを踏まえ、自社にとって最も適した制度を選ぶことです。

育成就労制度が始まるからといって、必ず育成就労を使わなければならないわけではありません。むしろ、これからの外国人雇用では、育成就労で育てるのか、特定技能で採用するのかを、受入れ前の段階で慎重に判断することが重要になります。

育成就労制度を見据える企業は、今後、単に「外国人を採用できるか」だけではなく、費用と責任の所在を明確にする必要があります。

特に確認すべき点は、次のとおりです。

外国人本人が送出機関に支払った費用はいくらか。
☑その額が、所定内賃金月額の2か月分を超えていないか。
☑費用の名目が明細化されているか。
☑本人や家族が、別途ブローカーや仲介人に支払っていないか。
☑送出機関と実質的に一体の教育機関・研修機関への支払いがないか。
☑領収書や申告書で確認できるか。
☑送出機関が外国政府認定送出機関リストに掲載されているか。
☑監理支援費が明確に公表されているか。
☑企業側がどこまで初期費用を負担するのか。
☑本人意向転籍が起きた場合に、未実施の講習や教育費用を誰が負担するのか。
☑転籍先企業として受け入れる場合の追加コストをどう見るのか。
☑3年後に特定技能1号へ移行できる育成計画になっているか。

制度開始後は、送出費用や本人負担を曖昧にしたまま受け入れることは大きなリスクになります。企業側にも、これまで以上に費用管理とコンプライアンス意識が求められます。

育成就労制度は、技能実習制度の問題点を踏まえた新しい制度です。外国人本人の高額な借金を防ぎ、特定技能1号への移行を見据えて人材を育成するという方向性は重要です。

しかし、「借金をなくす」という理念だけで制度がうまく回るわけではありません。育成就労制度で問題となるのは、借金額そのものではなく、外国人本人が送出機関に支払う費用です。

その上限は、育成就労計画に記載された報酬月額の2か月分です。この上限を超える金額は、本人に負担させることはできません。そして、上限を超える費用が発生する場合、その超過分は受入れ側が負担することになります。

つまり、育成就労制度は、単に外国人本人の負担を減らす制度ではなく、採用・送出・教育にかかる費用を、企業側も含めて再配分する制度です。

さらに、本人意向転籍が認められるとはいえ、主要分野では2年間動けない制度設計です。転籍先企業にも、未実施の講習、日本語教育、技能試験支援、生活支援、計画認定手続などの負担が生じます。

そのため、育成就労制度は、技能実習制度より改善される部分がある一方で、次のような矛盾を抱えています。

外国人本人の負担を下げれば、企業負担が増える。
・企業負担が増えれば、転籍を嫌がる企業が増える。
・転籍を認めても、主要分野では2年間動けない。
・転籍先企業にも費用負担が生じれば、転籍の実効性は下がる。
・監理支援機関を厳格化しても、受入企業から費用を受け取る構造は残る。

「借金をなくす」という理念は正しいです。しかし、その実現には、送出費用の透明化、企業負担の明確化、転籍制度の実効性、監理支援機関の中立性が不可欠です。

育成就労制度が、技能実習制度の看板を掛け替えただけの制度になるのか。それとも、外国人本人と受入企業の双方にとって、より持続可能な制度になるのか。

その分かれ道は、制度開始前の今から、費用と責任の所在をどこまで明確にできるかにかかっていると思います。

出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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