こんにちは。行政書士の稲福です。
外国人雇用の相談のなかで、最近非常に増えているのが、
「技人国で業務委託契約はできますか?」
「契約社員でもビザは取れますか?」
「正社員じゃないとダメですよね?」
というご質問です。
結論から言うと、
契約社員(有期雇用)は原則可能です。一方で、業務委託契約も法律上は可能ですが、実務上はかなり慎重な審査になります。ここを誤解している企業や外国人本人が非常に多いため、今回は実務目線でわかりやすく解説します。
- 技人国が「正社員限定」の在留資格ではない理由
- 契約社員・有期雇用契約でも技人国が認められるケース
- 契約社員で申請する際に見られる雇用の安定性・待遇・業務内容
- 業務委託契約でも法律上は技人国の申請余地がある理由
- 業務委託契約で審査が慎重になりやすいポイント
- 偽装業務委託と判断されないために整理すべき事項
- 日中アーティストの橋渡し業務が技人国に該当し得るケース
- 技人国・芸術ビザ・興行ビザの基本的な違い
- 契約書の名称よりも「実際の業務内容」が重要になる理由

技人国は「正社員限定」の在留資格ではない
まず前提として、在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」は、法律上、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う活動」と定められています。つまり、条文上は「雇用契約」とは定められておりません。 (法務省)
そのため、
・正社員
・契約社員(有期雇用)
・委任契約
・請負契約
・業務委託契約
など、契約形態そのものは必ずしも限定されていません。 (法務省)
ただし――ここからが非常に重要です。
「契約形態は自由」=「何でも許可される」ではありません。実際の審査では、契約書のタイトルではなく、“実態” が見られます。
契約社員(有期雇用)は原則問題ない
まず、契約社員については、比較的シンプルに考えることができます。技術・人文知識・国際業務、いわゆる「技人国」は、必ずしも正社員でなければ認められない在留資格ではありません。
そのため、
・1年更新の有期雇用契約
・契約社員
・嘱託社員
といった雇用形態であっても、許可されるケースはあります。
もっとも、実務上重要になるのは、雇用形態の名称そのものではなく、雇用の安定性、待遇、業務内容です。例えば、契約期間が3か月程度と短い場合や、更新の有無が明確でない場合には、雇用の継続性に不安があると見られる可能性があります。
一方で、1年契約であり、更新予定があることや、継続雇用を前提としていることを説明できる場合には、比較的整理しやすくなります。
また、給与や待遇についても、日本人と同等以上であることが必要です。外国人であることを理由に、日本人より不当に低い賃金を設定することは認められません。
さらに重要なのが、担当する業務内容です。
ITエンジニア、経理・会計、海外営業、マーケティング、通訳・翻訳、インバウンド企画など、本人の学歴や職歴と関連する専門的な業務であれば、技人国との適合性を説明しやすくなります。
これに対して、接客のみ、工場ライン作業のみ、倉庫作業のみといった業務は、たとえ契約社員であっても正社員であっても、技人国としては慎重に判断されます。
つまり、契約社員だから直ちに不許可になるわけではありません。重要なのは、契約期間や更新見込み、給与水準、そして業務内容が技人国の活動内容に合っているかどうかです。
業務委託契約はできるのか?
ここが、最も誤解されやすいポイントです。結論から言えば、技人国で業務委託契約に基づいて活動することは、法律上は可能です。
技人国の要件は、あくまで「本邦の公私の機関との契約」に基づいて活動することです。そのため、契約の形式は必ずしも雇用契約に限定されておらず、委任契約、請負契約、業務委託契約であっても、申請の余地はあります。つまり、「雇用契約でなければ技人国は絶対に認められない」という理解は、正確ではありません。
ただし、ここで注意しなければならないのは、法律上可能であることと、実務上許可されやすいことは別問題だという点です。業務委託契約の場合、入管審査では通常の雇用契約以上に、活動内容や契約実態が慎重に確認される傾向があります。
特に重要になるのは、次のような点です。
まず、本当に専門職としての業務なのかという点です。例えば、「エンジニアの業務委託」として契約している場合でも、
・出勤時間が固定されている
・会社から具体的な指揮命令を受けている
・特定の会社に常駐している
・毎月固定報酬で支払われている
・他の案件を受けていない
といった実態がある場合、形式上は業務委託であっても、実質的には雇用に近いと見られる可能性があります。この場合に問題となるのが、いわゆる偽装業務委託です。入管は、契約書のタイトルだけを見て判断するわけではありません。「業務委託契約書」と書かれていても、実際の働き方が雇用に近ければ、その実態を踏まえて審査されます。
次に、契約の安定性・継続性も重要です。
技人国は、日本で一定期間、継続して専門的な活動を行うことを前提とする在留資格です。そのため、業務委託であっても、
といった点が確認されます。
単発案件や短期契約のみで、「来月以降の仕事があるか分からない」という状態では、在留活動の安定性に疑問を持たれる可能性があります。
さらに、業務内容が単なる現場補助になっていないかも非常に重要です。
技人国で認められるのは、大学等で学んだ知識や実務経験、外国文化に基づく専門的能力を活かす業務です。そのため、業務委託という形式を取っていても、実際の内容が、
・単なるアテンド
・送迎
・荷物運び
・現場作業の補助
・単純な受付や案内
・マニュアルどおりの作業
にとどまる場合、技人国の専門性が弱いと判断される可能性があります。
重要なのは、契約形式ではなく、実際に行う業務が技人国に該当する専門的業務であるかどうかです。したがって、業務委託契約で技人国を検討する場合には、単に契約書を作成するだけでは不十分です。
契約内容、業務範囲、報酬、契約期間、指揮命令関係の有無、成果物、業務遂行方法などを整理し、実態としても専門職として独立性・継続性のある活動であることを説明できるようにしておく必要があります。
まとめると、技人国で業務委託契約が絶対に認められないわけではありません。しかし、雇用契約に比べると、審査上の説明負担は大きくなります。特に、
この4点は、必ず整理しておくべき重要なポイントです。
【実例】日中アーティストの橋渡し業務はどうか?
例えば、中国人クリエイターやアーティストが、日本の芸能プロダクションや企業と連携し、
・日中アーティストのコーディネート
・中国側との交渉
・通訳翻訳
・イベント企画
・プロダクト企画
・IPビジネスの創出
・中国市場向けマーケティング
・制作進行管理
などを行うケースはどうでしょうか。
例えば、日本の芸能プロダクション(大手事務所等)との継続的な契約があり、「中国語能力 × 中国市場理解 × 芸術・エンタメ知識」を使う専門的な国際業務であれば、技人国(国際業務・人文知識)の範囲として説明できる余地があります。 (法務省)
一方で、
・空港送迎
・単なる同行
・身の回りの世話
・雑務
が中心であれば、専門職としての説明は難しくなります。
つまり、“アテンド”という言葉だけでは判断できず、何をしているかが重要なのです。
芸術ビザ・興行ビザとの違い
ここも、実務上かなり誤解が多いポイントです。
中国人クリエイターやアーティストが日本企業と関わる場合でも、本人が実際にどの立場で活動するのかによって、検討すべき在留資格は変わります。
たとえば、本人自身が、
・舞台やイベントで演奏する
・歌手、俳優、ダンサー、モデル等として出演する
・自ら絵画、音楽、映像、作品などを創作し、その活動によって報酬を得る
といった場合には、単に「中国語を使う」「日本企業と契約している」という理由だけで、技人国として整理するのは難しくなります。このようなケースでは、活動内容に応じて、「芸術」や「興行」といった在留資格を検討する必要があります。
一方で、本人がアーティストや出演者として表に立つのではなく、裏方・企画側・ビジネス側の立場で関与する場合は、技人国として説明できる可能性があります。
たとえば、
・日中アーティストのコーディネート
・中国側企業やクリエイターとの交渉
・通訳翻訳
・イベントやコンテンツの企画
・IPビジネスや商品企画
・中国市場向けマーケティング
・制作進行管理
・海外展開に関する事業推進
などを行う場合です。
この場合、ポイントになるのは、本人が「プレイヤー」として出演・演奏・創作活動をしているのか、それとも「企画・交渉・制作・マーケティング等の専門職」として業務を行っているのか、という点です。
つまり、中国人アーティストやクリエイターに関わる業務であっても、
・本人が表現者として報酬を得るのか
・専門的な国際業務・企画業務として関与するのか
によって、在留資格の考え方は大きく変わります。
そのため、申請上は「アーティスト関係の仕事です」と大きく説明するのではなく、本人の具体的な担当業務、契約内容、報酬の性質、出演・創作の有無を丁寧に整理することが重要です。
まとめ
結論として、
契約社員 → 原則可能
業務委託 → 法律上可能だが実務上ハードル高め
という整理になります。
特に最近は、「通訳」「海外営業」「国際業務」としながら、実態が単純労働になっている、いわゆる“偽装技人国”への審査が厳格化しています。
そのため、契約書の名称ではなく、“実際に何をしているか”が最重要です。
技人国で業務委託や契約社員を検討している場合は、申請前に職務内容・契約内容を整理したうえで専門家へ相談することをおすすめします。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直















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