こんにちは。行政書士の稲福です。
日本では、少子高齢化と生産年齢人口の減少を背景に、外国人人材の受入れが年々重要になっています。介護、外食、宿泊、建設、ビルクリーニング、飲食料品製造、運輸、農業など、多くの分野では、すでに外国人材なしでは現場を維持することが難しくなりつつあります。
一方で、外国人の受入れが拡大するなかで、単に、「人手不足だから外国人を採用する」という考え方だけでは、制度としても、企業経営としても限界が見え始めています。
この点について、日本商工会議所・東京商工会議所は、2026年5月14日付で、総合政策委員会提言「外国人との秩序ある共生と受入れ」の戦略的な推進に向けてを公表しました。この提言で重要なのは、外国人を単なる労働力として見るのではなく、日本人と外国人が「経済社会を共に支え合う存在」であると位置づけている点です。
つまり、外国人材の受入れは、単なる雇用対策ではありません。日本で働く外国人は、同時に、地域で暮らし、消費し、税金や社会保険を負担し、地域社会の一員として生活していく存在でもあります。
だからこそ、これからの外国人政策では、
・誰を
・どのような目的で
・どの在留資格で
・どのような管理体制のもとで
・どのように地域社会に受け入れるのか
を、国、自治体、企業、支援機関、地域住民、外国人本人がそれぞれの役割を理解したうえで考える必要があります。
- 日本商工会議所・東京商工会議所の提言内容を踏まえ、外国人受入れ政策の方向性を整理できます。
- 外国人材を単なる「労働力」ではなく、地域社会の一員として受け入れる視点を理解できます。
- 特定技能1号、特定技能2号、技人国、高度人材、留学生など、在留資格ごとに考えるべき違いを把握できます。
- 受入企業・登録支援機関・自治体・国に求められる役割分担を確認できます。
- 日本語教育、生活支援、家族帯同、外国人児童の教育、災害時対応など、受入れ後に必要となる支援を整理できます。
- 不法就労、不法滞在、虚偽申請など、制度の不適正利用を防ぐための注意点を確認できます。
- 外国人材から「選ばれる企業」になるために、採用後の定着支援や職場づくりのポイントを理解できます。
- 自社で外国人材を受け入れる際に、どのような体制整備が必要かを検討できます。

- 外国人受入れは、もはや一時的な人手不足対策ではない
- 「秩序ある共生と受入れ」とは何か
- 特定技能1号と、長期定着を見据える人材は分けて考える必要がある
- 企業と支援機関に求められる役割
- 日本語教育は、在留管理と共生の基盤になる
- 家族帯同と外国人児童の教育は避けて通れない
- 災害時の外国人支援も、受入体制の一部である
- ルールを守る外国人を支え、ルール違反には厳格に対応する
- 外国人材から「選ばれる国」「選ばれる企業」になる必要がある
- 特定技能制度で企業が注意すべきこと
- 技人国でも「実態」と「職務内容」の整合性が重要になる
- 登録支援機関に丸投げしてはいけない
- 日本が繰り返してはいけないこと
- まとめ――外国人雇用は「採用」から「定着と共生」の時代へ
外国人受入れは、もはや一時的な人手不足対策ではない
これまで外国人人材の受入れは、現場の人手不足を補う手段として語られることが多くありました。
もちろん、企業側から見れば、
・日本人の若手人材が採用できない
・地方で人が集まらない
・現場を維持するために人手が足りない
・採用してもすぐに離職してしまう
・サービス提供を継続するために外国人材が必要
という切実な事情があります。
特に、医療、介護、建設、運輸、飲食、宿泊、設備管理などの分野では、外国人材の協力なしには事業やサービスの維持が難しくなっている地域もあります。
しかし、外国人材を受け入れるということは、単に「職場に人を入れる」という話ではありません。外国人は、職場で働くだけでなく、日本で生活します。住居を借り、地域で買い物をし、病院に行き、行政手続を行い、場合によっては家族を呼び寄せ、子どもが学校に通うこともあります。
つまり、外国人人材の受入れは、「雇用の問題」であると同時に、
「生活の問題」
「教育の問題」
「地域社会の問題」
「社会保障の問題」
「治安やルール遵守の問題」
でもあるということです。
この視点を欠いたまま、人数だけを増やしてしまうと、企業側では早期離職や職場トラブルが生じ、地域側では生活ルールや文化の違いによる摩擦が起こりやすくなります。
だからこそ、これからの外国人雇用では、「採用できるか」だけでなく、「受け入れた後に、どう定着してもらうか」まで考える必要があります。
「秩序ある共生と受入れ」とは何か
今回の提言で使われている「秩序ある共生と受入れ」という言葉は、非常に重要です。
これは、外国人を排除するという意味ではありません。むしろ、日本社会に必要な人材として外国人を受け入れるために、在留資格制度、雇用管理、生活支援、地域との接点、法令遵守をきちんと整えるという考え方です。
外国人を受け入れる以上、
・どのような人材を受け入れるのか
・どのような目的で受け入れるのか
・どの在留資格で受け入れるのか
・どの程度の期間、日本で働き、暮らすことを想定するのか
・家族帯同を認めるのか
・地域社会にどうつなぐのか
・法制度やルールを守らない場合にどう対応するのか
を整理する必要があります。
これまでの外国人受入れは、制度ごと、現場ごと、自治体ごとに対症療法的に対応してきた面があります。しかし、在留外国人が増加し、家族帯同や定住希望も増えていくなかで、場当たり的な対応では限界があります。
これからは、国としての将来像を示し、そのうえで、国、自治体、企業、支援機関、地域住民、外国人本人の役割を明確にしていく必要があります。
特定技能1号と、長期定着を見据える人材は分けて考える必要がある
今回の提言で実務上重要なのは、外国人を一括りにしていない点です。外国人といっても、在留資格や滞在目的によって、日本社会との関わり方は大きく異なります。
たとえば、
・留学生
・特定技能1号
・育成就労
・技術・人文知識・国際業務
・高度専門職
・特定技能2号
・永住者
・家族帯同者
・将来的に帰化を希望する人
では、それぞれ制度目的も、滞在期間も、必要な支援も異なります。特定技能1号は、制度上は一定期間の就労を前提とする在留資格です。
一方で、高度人材や特定技能2号などは、家族帯同や長期定着を見据えるケースもあります。つまり、同じ外国人雇用であっても、「数年間働いて帰国する人材」と、「家族とともに日本で長く暮らす可能性がある人材」では、企業や自治体が考えるべき支援内容が変わります。
特定技能1号であっても、日本で生活する以上、生活支援や相談体制は必要です。しかし、家族帯同や長期定着を見据える人材については、本人だけでなく、配偶者の就労、子どもの教育、住居、地域参加まで含めた視点がより重要になります。
外国人政策を考えるうえでは、この違いを整理しないまま、すべてを同じ制度設計で考えてしまうと、現場に無理が生じます。
企業と支援機関に求められる役割
今回の提言では、企業や支援機関の役割についても触れられています。企業や支援機関には、単に外国人を採用するだけでなく、
・地元自治体や支援機関との連携
・働き手としての外国人の適正な管理
・職場で必要な日本語教育
・技能教育
・安全教育
・相談体制の整備
・育成就労制度における受入機関や支援団体との連携
などが求められます。
これは、特定技能制度における支援計画だけの話ではありません。
技人国で外国人を雇用する場合であっても、企業側には、在留資格と業務内容の整合性を確認し、適正な雇用管理を行う責任があります。
特定技能であれば、支援計画、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談対応、日本語学習機会の提供などが重要になります。
育成就労制度では、単に労働力として受け入れるのではなく、人材育成と転籍の在り方、支援団体との連携、本人のキャリア形成も重要になります。
つまり、企業はこれから、「採用したら終わり」ではなく、「受け入れた後に、どう育て、どう定着してもらうか」まで考える必要があります。
日本語教育は、在留管理と共生の基盤になる
外国人人材の受入れで、最も重要な要素の一つが日本語です。
日本語能力は、職場での指示理解や安全管理だけでなく、生活、医療、行政手続、災害時の避難、地域との関係づくりにも直結します。
今回の提言でも、日本語教育は、在留管理と共生基盤の両方に関わる重要なテーマとして位置づけられています。
特に、今後は単に試験に合格するための日本語ではなく、
・現場で使える日本語
・安全教育に必要な日本語
・生活に必要な日本語
・行政手続や医療で困らない日本語
・地域社会と関わるための日本語
が重要になります。
たとえば、特定技能や育成就労では、日本語試験の合格が制度上の要件になっています。しかし、試験に合格していても、実際の職場で使われる日本語、方言、指示のニュアンス、安全確認の言葉が十分に理解できないことがあります。
そのため、企業側も、「試験に合格しているから大丈夫」ではなく、「自社の現場で本当に必要な日本語は何か」を整理する必要があります。
これは、離職防止だけでなく、労災防止や職場の安全管理にも関わります。
家族帯同と外国人児童の教育は避けて通れない
外国人人材の受入れが進むと、本人だけでなく、家族の問題も重要になります。
高度人材や特定技能2号、技人国などでは、家族帯同が認められるケースがあります。家族が日本で生活する場合、配偶者の就労、子どもの教育、日本語学習、地域との接点、孤立防止などが課題になります。
特に、外国人児童の不就学は、将来的に大きな社会問題になりかねません。子どもが学校につながらず、日本語も十分に習得できず、地域社会から孤立してしまえば、本人や家族だけでなく、地域全体にとっても深刻な問題になります。
外国人人材を長期的に受け入れるのであれば、本人の就労だけでなく、
・家族が地域で生活できるか
・子どもが学校に通えるか
・保護者が教育制度を理解しているか
・日本語支援を受けられるか
・地域で相談できる場所があるか
まで考える必要があります。
これは、企業だけで解決できる問題ではありません。国、自治体、学校、地域団体、企業、支援機関が連携する必要があります。
災害時の外国人支援も、受入体制の一部である
日本は自然災害の多い国です。地震、台風、大雨、洪水、土砂災害などが発生した際、日本語が十分に分からない外国人は、情報を得られず孤立しやすくなります。
災害時に、
・避難情報が読めない
・避難所の場所が分からない
・何を持って逃げればよいか分からない
・避難所でのルールが分からない
・母国語で相談できる人がいない
という状況になれば、外国人本人だけでなく、地域全体の防災にも影響します。
外国人の受入れを進めるのであれば、平時から、
・多言語での情報提供
・やさしい日本語による案内
・避難訓練への参加
・外国人コミュニティとの連携
・企業内での災害時対応マニュアル
・緊急連絡先の整備
を行う必要があります。
これは、特定技能外国人や技能実習生、育成就労外国人だけの問題ではありません。外国人を雇用する企業であれば、災害時に本人をどう守るのか、地域とどう連携するのかを考えておくべきです。
ルールを守る外国人を支え、ルール違反には厳格に対応する
外国人との共生を考えるうえで、もう一つ重要なのが、ルール遵守です。外国人材を受け入れる以上、日本の法制度、在留資格制度、労働法令、税金、社会保険、地域の生活ルールを理解してもらう必要があります。
一方で、ルールを守って真面目に働き、地域社会に貢献している外国人が、不公平な扱いを受けることがあってはなりません。
大切なのは、ルールを守る外国人を正当に評価し、支えること。そして、不法滞在、不法就労、虚偽申請、ブローカーによる搾取、制度の不適正利用には厳格に対応すること。この両方です。
単に厳しくするだけでは、日本は外国人人材から選ばれなくなります。逆に、管理が甘いまま受入れを拡大すれば、制度への信頼が失われ、真面目に働く外国人にも悪影響が出ます。
だからこそ、これからの外国人政策では、「管理の徹底」と、「共生のための支援」を両立させる必要があります。
外国人材から「選ばれる国」「選ばれる企業」になる必要がある
今後、外国人材の受入れで重要になるのは、日本が選ばれる国であり続けられるかという点です。
かつては、「日本で働きたい外国人は多い」という前提で考えることができました。しかし、現在は、アジア各国でも賃金水準が上がり、韓国、台湾、シンガポール、オーストラリア、カナダ、欧州などとの人材獲得競争も激しくなっています。
円安の影響もあり、日本で働く経済的な魅力が以前より低下していると感じる外国人もいます。そのような中で、外国人材から選ばれるためには、単に求人を出すだけでは足りません。
外国人人材は、
・給与水準
・職場環境
・日本語学習支援
・生活支援
・キャリアアップ
・家族帯同の可能性
・長期的な在留の見通し
・相談できる体制
・地域で安心して暮らせる環境
を見ています。
企業側も、「外国人を雇ってあげる」という発想ではなく、「外国人材から選ばれる職場をつくる」という発想に切り替える必要があります。
これは、単なる福利厚生の問題ではありません。外国人人材が安心して働ける環境を整えることは、離職防止、採用コストの削減、生産性向上、職場の安定につながります。
特定技能制度で企業が注意すべきこと
特定技能制度では、受入企業に多くの確認事項があります。
雇用契約、報酬、日本人との同等性、支援計画、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談対応など、制度上の要件を満たす必要があります。
しかし、実務上は、書類を整えて許可を取ることだけがゴールではありません。
許可後に、
・仕事内容が事前説明と違わないか
・日本語で業務指示が伝わっているか
・住居や生活面で困っていないか
・相談できる人がいるか
・職場内で孤立していないか
・転職や退職の兆候がないか
・支援計画が実際に機能しているか
を継続的に確認する必要があります。
特定技能外国人は、単に現場で働く人材ではありません。日本で生活し、地域で暮らす一人の生活者です。
この視点を欠いたまま、「人手不足だから採用する」という発想だけで受け入れると、早期離職、職場トラブル、支援不履行、地域との摩擦につながる可能性があります。
技人国でも「実態」と「職務内容」の整合性が重要になる
技術・人文知識・国際業務、いわゆる技人国についても、同じことが言えます。技人国は、専門的・技術的な業務に従事するための在留資格です。
そのため、形式上は、
・海外営業
・通訳翻訳
・マーケティング
・システム開発
・設計
・貿易業務
・企画業務
などと記載されていても、実態として単純作業や現場作業が中心であれば、在留資格上問題になる可能性があります。
特に、近年は、
・名目だけの通訳
・実態は接客や配膳
・実態は工場内作業
・実態は清掃や運搬
・実態は人手不足を補うための現場要員
といったケースには注意が必要です。
在留資格制度の管理が重視される流れの中では、申請書類上の説明だけでなく、実際の職務内容、組織体制、業務量、本人の学歴・職歴との関連性がより重要になります。
企業側は、採用前の段階で、
・その業務は本当に技人国に該当するのか
・本人の専攻や職歴と関連性があるのか
・現場作業と専門業務が混在していないか
・将来の配置転換で在留資格上の問題が生じないか
を確認しておく必要があります。
登録支援機関に丸投げしてはいけない
特定技能制度では、登録支援機関に支援業務を委託することがあります。もちろん、専門的な知識や多言語対応を持つ登録支援機関の存在は重要です。
しかし、登録支援機関に委託しているからといって、受入企業の責任がなくなるわけではありません。外国人本人が実際に働くのは、受入企業の職場です。日々の業務指示、職場環境、人間関係、安全教育、評価、キャリア形成は、企業側の責任です。
登録支援機関は、あくまで支援の一部を担う存在であり、雇用主としての責任を代替するものではありません。
企業側は、
・支援機関と情報共有できているか
・本人の相談内容を把握しているか
・支援計画が実際に実施されているか
・職場内の問題を放置していないか
・生活面の問題が就労に影響していないか
を確認する必要があります。
外国人人材を長く定着させるためには、企業と登録支援機関が連携し、本人の就労面と生活面を一体的に支えることが重要です。
日本が繰り返してはいけないこと
外国人人材の受入れで避けなければならないのは、「人手不足だから、とにかく人数を増やす」という発想です。
人数を増やすこと自体が悪いわけではありません。問題は、受入れ後の設計が追いつかないまま、数だけを増やしてしまうことです。
たとえば、
・日本語教育が不十分
・生活相談体制がない
・地域との接点がない
・職場で孤立している
・家族や子どもの支援がない
・災害時の対応が考えられていない
・在留資格と業務内容がずれている
・不適正なブローカーが介在している
という状態では、いずれ問題が表面化します。
外国人人材の受入れは、入口だけでなく、出口まで考える必要があります。
採用、在留資格申請、入社、定着、キャリア形成、転職、帰国、長期在留、家族帯同、地域参加。この一連の流れを設計できる企業と地域が、これから外国人材から選ばれていくと考えられます。
まとめ――外国人雇用は「採用」から「定着と共生」の時代へ
日本商工会議所・東京商工会議所の提言は、外国人材の受入れについて、非常に重要な方向性を示しています。
これからの外国人雇用では、
・外国人を単なる労働力として見ないこと
・在留資格ごとの制度目的を理解すること
・特定技能1号と長期定着人材を分けて考えること
・企業、支援機関、自治体、国の役割を整理すること
・日本語教育を職場と生活の両面から考えること
・家族帯同や外国人児童の教育にも目を向けること
・災害時の支援体制を整えること
・ルールを守る外国人を支え、不適正な事案には厳格に対応すること
・外国人人材から選ばれる企業になること
が重要になります。
外国人人材の受入れは、日本の人手不足を補うためだけのものではありません。日本人と外国人が共に働き、暮らし、地域社会を支えていくための制度設計そのものが問われています。企業にとっても、外国人雇用は単なる採用手段ではなく、経営戦略の一部です。
今後は、適正な在留資格管理、雇用管理、生活支援、地域連携を行える企業が、外国人材から選ばれ、長期的に人材を確保できる企業になっていくと考えられます。
外国人材の採用、在留資格申請、特定技能の受入れ、登録支援機関との連携、受入れ後の運用体制に不安がある場合は、早い段階で制度面と実務面の両方から整理しておくことをおすすめします。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直























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