こんにちは。行政書士の稲福です。
外国人が日本に来る場合、「ビザが必要かどうか」「どの在留資格に該当するのか」は、来日目的によって変わります。
その中でも、観光、親族訪問、短期の商談、会議参加などで日本に来る場合に関係するのが、在留資格「短期滞在」です。
短期滞在は、比較的よく使われる在留資格ですが、実務上は誤解も多いです。特に、
「ビザ免除の国だから何をしても大丈夫」
「短期なら日本で仕事をしても問題ない」
「商談と言えば、現場作業もできる」
「報酬を海外で受け取れば、日本で働いてもよい」
といった誤解には注意が必要です。
短期滞在は、あくまで短期間、日本に滞在して一定の活動を行うための在留資格です。日本で報酬を受けて働く場合や、実質的に就労にあたる活動を行う場合には、原則として短期滞在ではなく、活動内容に応じた別の在留資格を検討する必要があります。
今回は、短期滞在とは何か、どのような活動ができるのか、できないことは何か、企業や招聘機関が注意すべきポイントについて、わかりやすく整理します。
- 短期滞在とは何か
- 短期滞在でできる主な活動
- 観光・親族訪問・短期商用の違い
- 短期滞在でできない活動
- ビザ免除と短期滞在の違い
- 短期滞在と就労系在留資格の違い
- 企業や招聘機関が注意すべきポイント
- 短期滞在で来日させる前に確認すべきこと

短期滞在とは
短期滞在とは、日本に短期間滞在して、観光、保養、スポーツ、親族訪問、見学、講習・会合への参加、業務連絡などを行うための在留資格です。
出入国在留管理庁も、短期滞在について、日本に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族訪問、見学、講習または会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動と説明しています。該当例としては、観光客や会議参加者などが挙げられています。
簡単にいうと、短期滞在は「日本に一時的に来るための在留資格」です。たとえば、次のようなケースが典型例です。
・日本を観光する
・日本にいる家族や知人を訪問する
・短期間、日本で商談や会議に参加する
・展示会や見本市を視察する
・工場や施設を見学する
・短期の講習や説明会に参加する
ただし、短期滞在は「短期間なら何でもできる」という在留資格ではありません。特に、日本で報酬を受ける活動や、実質的な就労にあたる活動は、短期滞在では原則として認められません。
短期滞在の在留期間
短期滞在の在留期間は、一般的に、90日、30日、15日以内の日を単位とする期間とされています。つまり、短期滞在だからといって、必ず90日滞在できるわけではありません。来日目的、滞在予定、国籍・地域、過去の入国歴、提出資料の内容などによって、認められる期間が変わることがあります。
実務上は、予定している活動内容に対して、滞在日数が長すぎないかも確認されます。たとえば、数日の商談だけであれば、滞在予定が長すぎると、目的や滞在内容について疑問を持たれる可能性があります。
一方で、親族訪問や観光を兼ねる場合には、その日程や滞在先を合理的に説明できるかが重要になります。
短期滞在でできること
短期滞在でできる活動は、主に「観光」「親族・知人訪問」「短期商用」「会議・講習参加」「見学・視察」などです。
具体的には、次のような活動が考えられます。
・観光、旅行、買い物
・親族や知人の訪問
・結婚式や葬儀への参列
・短期間の商談
・契約交渉、契約調印
・会議、打合せ、業務連絡
・市場調査
・展示会、見本市の視察
・工場や施設の見学
・講習会、説明会、セミナーへの参加
JETROも、短期滞在の商用に関連する活動として、見学・視察、講習・説明会参加、会議参加、業務連絡、商談、契約調印、アフターサービス、宣伝、市場調査などを挙げています。
ここで大切なのは、短期商用は「商談や会議などの準備的・連絡的な活動」が中心であるという点です。短期滞在で来日した外国人が、日本の会社の指揮命令を受けて、実際に業務を行う場合には、短期滞在の範囲を超える可能性があります。
観光・親族訪問・短期商用の違い
短期滞在といっても、来日目的によって確認すべきポイントは異なります。観光の場合は、旅行日程、宿泊先、帰国予定、旅費の支弁能力などが重要になります。親族訪問の場合は、日本にいる親族との関係、訪問理由、滞在先、滞在期間などが確認されます。
短期商用の場合は、日本で行う活動内容が就労にあたらないか、報酬の有無、招聘する企業との関係、商談や会議の日程などが重要になります。
特に短期商用では、「商談」と「就労」の線引きが重要です。単なる打合せや契約交渉であれば短期滞在で整理できる場合がありますが、日本国内で実作業を行う場合や、日本の会社の業務を継続的に担当する場合には、就労系の在留資格を検討する必要があります。
短期滞在でできないこと
短期滞在で特に注意が必要なのは、就労活動です。短期滞在では、原則として、日本で報酬を受ける活動や、収入を伴う事業を運営する活動はできません。
JETROも、短期滞在の在留資格では、報酬を受け取ることや収入を伴う事業を運営する活動はできないと説明しています。たとえば、次のような活動は注意が必要です。
・日本の店舗、工場、事務所、現場で作業する
・日本企業の指揮命令を受けて業務を行う
・日本で報酬を受けて講演、出演、指導を行う
・試用期間として働く
・インターンとして実務に従事する
・短期間だけ日本の会社で勤務する
・リモートワーク名目で日本国内の業務に従事する
・販売、接客、調理、清掃、施工、運転などの現場作業を行う
ここで問題になるのは、「滞在期間が短いかどうか」だけではありません。たとえ数日間であっても、実際の活動が就労にあたる場合には、短期滞在では認められない可能性があります。
ビザ免除と短期滞在の違い
短期滞在でよく混同されるのが、「ビザ免除」と「短期滞在」です。ビザ免除とは、一定の国・地域の外国人について、日本に短期滞在で来る場合に、事前に日本大使館や領事館でビザを取得しなくてもよいという制度です。
一方、短期滞在は、日本に入国した後に付与される在留資格です。つまり、ビザ免除国の人であっても、日本に入国した後は、通常「短期滞在」という在留資格で滞在することになります。
ここを混同すると、「ビザがいらないから、日本で何をしてもよい」という誤解につながります。ビザ免除は、あくまで事前の査証取得が不要という意味であり、日本で就労できるという意味ではありません。
短期滞在と在留資格認定証明書の関係
日本で中長期の在留資格を取得する場合、在留資格認定証明書を取得してからビザ申請を行うケースがあります。しかし、短期滞在については、在留資格認定証明書の制度の対象ではありません。
出入国在留管理庁のQ&Aでも、観光、親族訪問、短期商用などの渡航目的が該当する短期滞在は、在留資格認定証明書制度の対象となっていないとされています。
そのため、短期滞在で来日する場合は、国籍・地域によって、ビザ免除で来日するか在外公館で短期滞在ビザを申請するという整理になります。
企業や招聘機関が外国人を呼ぶ場合には、相手の国籍・地域がビザ免除の対象かどうかを確認する必要があります。
短期商用で注意すべきポイント
短期商用は、実務上もっとも誤解が起こりやすい分野です。たとえば、海外の取引先や本社担当者が日本に来て、商談、会議、契約調印、視察などを行う場合は、短期滞在で整理できることがあります。
しかし、次のような場合は注意が必要です。
・日本の顧客先で作業を行う
・日本法人の業務を代行する
・店舗や工場の現場に入って作業する
・日本で研修を受けるだけでなく、実務に従事する
・日本側から日当、報酬、給与を受け取る
・短期間とはいえ、実質的に日本で勤務している
「短期商用」といえるためには、日本での活動が、商談、会議、業務連絡、視察、市場調査などの範囲に収まっていることが重要です。
実作業や役務提供がある場合には、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、技能、興行、特定技能など、別の在留資格を検討する必要があります。
報酬が海外払いなら大丈夫なのか
短期滞在の相談でよくあるのが、「報酬は海外の会社から支払われるので、日本で活動しても問題ないのではないか」という質問です。
たしかに、日本側から直接報酬が支払われるかどうかは重要な要素です。しかし、報酬の支払場所だけで判断できるわけではありません。
日本で行う活動内容が、実質的に日本国内での就労や役務提供にあたる場合には、短期滞在では問題になる可能性があります。つまり、確認すべきなのは、
・誰から報酬を受けるのか
・どこで活動するのか
・誰の指揮命令を受けるのか
・日本で何をするのか
・その活動が実作業や役務提供にあたらないか
という点です。
短期滞在でよいかどうかは、「お金の支払元」だけでなく、実際の活動内容を見て判断する必要があります。
日本企業から海外企業へ報酬が支払われる場合も注意
また、外国人本人に日本企業から直接報酬が支払われない場合でも、日本企業から本人が所属する海外企業へ報酬が支払われるケースがあります。
たとえば、
・海外企業の社員が日本に来て作業を行う
・日本企業が海外企業へ業務委託料を支払う
・その海外企業から本人に給与が支払われる
・日本国内で技術指導、設置作業、修理、運用支援などを行う
といった場合です。
このようなケースでは、形式上は「本人への直接報酬」ではなくても、実質的には日本国内で役務提供を行い、その対価が海外企業に支払われていると評価される可能性があります。つまり、
「本人に日本側から直接お金を払っていない」
「給与は海外法人から出ている」
「契約先は海外企業だから大丈夫」
という理由だけで、短期滞在で問題ないとはいえません。重要なのは、日本で行う活動が、単なる商談・会議・視察・業務連絡の範囲にとどまるのか、それとも日本国内での実作業や役務提供にあたるのかという点です。
たとえば、海外メーカーの担当者が日本に来て、製品の説明や商談を行うだけであれば、短期商用として整理できる場合があります。
一方で、日本の顧客先で機械の設置、調整、修理、システム構築、現場作業、技術指導などを行う場合には、短期滞在の範囲を超える可能性があります。この場合、活動内容によっては、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、技能、興行など、別の在留資格を検討すべきケースもあります。
したがって、報酬が海外払いであっても、日本企業から海外企業へ業務委託料や対価が支払われ、その対価に対応する活動を外国人本人が日本国内で行う場合には、慎重な確認が必要です。
短期滞在でよいかどうかは、報酬の支払先だけでなく、契約関係、活動内容、指揮命令の有無、日本国内での作業性、滞在期間などを総合的に見て判断する必要があります。
短期滞在から他の在留資格へ変更できるのか
短期滞在で日本に入国した後に、
「日本で就職先が見つかったので、そのまま就労ビザに変更したい」
「日本人と結婚することになったので、配偶者ビザに変更したい」
「会社を設立するので、経営・管理へ変更したい」
といった相談を受けることがあります。
しかし、短期滞在から他の在留資格への変更は、原則として簡単に認められるものではありません。短期滞在は、そもそも観光、親族訪問、短期商用、会議参加、見学などを目的として、日本に一時的に滞在するための在留資格です。
そのため、入国時点では「日本に一時的に滞在し、期間内に帰国すること」が前提になっています。したがって、最初から日本で働く予定がある場合や、中長期的に日本に滞在する予定がある場合には、短期滞在で入国してから変更を考えるのではなく、来日前に適切な在留資格の手続きを検討するべきです。
特に、就労目的の場合は注意が必要です。たとえば、日本企業で働く予定がある場合には、通常は来日前に在留資格認定証明書交付申請を行い、認定証明書の交付を受けたうえで、在外公館でビザ申請を行い、日本に入国する流れになります。
短期滞在で入国してから、
「採用が決まったので、そのまま技術・人文知識・国際業務に変更したい」
「店舗で働くことになったので、特定技能に変更したい」
「会社を設立するので、経営・管理に変更したい」
という流れは、入管上、慎重に見られる可能性があります。なぜなら、短期滞在で入国した時点の目的と、その後に希望する活動内容が大きく変わるためです。
もちろん、短期滞在からの変更が絶対に認められないという意味ではありません。たとえば、日本人との婚姻、出産、家族関係の変化、人道上の事情など、やむを得ない事情がある場合には、短期滞在から他の在留資格への変更が認められる可能性もあります。
しかし、単に、
「日本に来てから就職先を探したい」
「日本に来てから会社を作りたい」
「短期滞在で入国して、そのまま働きたい」
という考え方は、リスクがあります。特に企業側は、外国人を採用する場合に、短期滞在で来日している人をそのまま働かせることはできません。就労可能な在留資格への変更許可を受ける前に働かせてしまうと、不法就労や不法就労助長の問題になる可能性があります。
そのため、就労目的で日本に来る場合には、原則として、短期滞在ではなく、来日前に適切な在留資格を検討することが重要です。
実務上は、
・本当に短期滞在で入国してよいケースなのか
・来日後に活動内容が変わる予定はないか
・就労予定があるなら、事前に認定証明書を取得すべきではないか
・短期滞在から変更する必要性や理由を説明できるか
・変更申請が不許可になった場合に帰国できるか
といった点を、事前に確認しておく必要があります。
短期滞在は便利な在留資格ですが、中長期滞在や就労を前提とする場合には、使い方を誤ると大きなリスクになります。
最初から日本で働く予定がある場合や、長期間日本に滞在する予定がある場合には、短期滞在で入国してから考えるのではなく、来日前の段階で、適切な在留資格の手続きを進めることが大切です。
企業や招聘機関が注意すべきこと
短期滞在は、外国人本人だけでなく、日本側の企業や招聘機関にとっても重要です。海外から外国人を呼ぶ場合、企業側は次の点を確認しておく必要があります。
・来日目的は何か
・日本での活動内容は何か
・報酬や日当の支払いはあるか
・滞在予定期間は合理的か
・滞在先は明確か
・誰が旅費や滞在費を負担するのか
・過去の来日歴や在留状況に問題はないか
・ビザ免除で来日できる国籍・地域か
・短期滞在で足りるのか、それとも就労系在留資格が必要か
特に、短期商用で外国人を呼ぶ場合は、「商談」「視察」「研修」という言葉だけで判断するのではなく、実際に日本で何をするのかを具体的に確認することが重要です。
実務上は「短期滞在で大丈夫か」の確認が重要
実務上、短期滞在で一番大切なのは、「短期滞在で大丈夫か」を事前に確認することです。
たとえば、次のようなケースでは注意が必要です。
・商談だけでなく、日本国内で作業も行う
・短期の研修といいながら、実務に入る
・日本側から日当や報酬が出る
・頻繁に短期滞在で出入国を繰り返している
・滞在期間が活動内容に比べて長い
・本当は就労目的なのに、観光や商談として入国しようとしている
短期滞在は便利な在留資格ですが、使い方を誤ると、不法就労や入国目的の虚偽と判断されるリスクがあります。
外国人を日本に呼ぶ場合には、来日目的、活動内容、報酬、滞在期間を事前に整理し、必要に応じて専門家に確認することが大切です。
まとめ
短期滞在は、観光、親族訪問、短期商用、会議参加、見学、講習参加などを目的として、日本に短期間滞在するための在留資格です。在留期間は、90日、30日、15日以内の日を単位とする期間が一般的です。
一方で、短期滞在は就労のための在留資格ではありません。日本で報酬を受ける活動や、実質的に就労にあたる活動を行う場合には、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、特定技能など、別の在留資格を検討する必要があります。
また、ビザ免除国の人であっても、日本で自由に働けるわけではありません。ビザ免除は、事前の査証取得が不要という意味であり、入国後の在留資格や活動範囲とは別の問題です。企業や招聘機関が外国人を日本に呼ぶ場合には、来日目的、活動内容、報酬の有無、滞在期間、国籍・地域、過去の入国歴などを事前に確認することが重要です。
当事務所では、短期滞在、興行、技術・人文知識・国際業務、経営・管理、特定技能など、外国人の来日目的に応じた在留資格のご相談を承っております。
外国人の来日手続きや在留資格についてご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直
















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