こんにちは。行政書士の稲福です。
特定技能人材を受け入れている企業や、これから特定技能人材を採用しようとする企業から、よくご相談をいただくものの一つに「指定書」があります。
特に多いのが、
「在留カードに特定技能と書いてあれば働かせてよいのか」
「指定書には何が書かれているのか」
「転職者を採用するとき、前職の指定書のままで働けるのか」
「同じ分野なら、在留資格変更申請をしなくてもよいのか」
「新しい在留カードを受け取る前に、転職先で働き始めてよいのか」
というご相談です。
特定技能は、在留カードだけを確認すれば足りる在留資格ではありません。特定技能外国人は、受入れ機関、特定産業分野、業務内容、雇用条件、支援体制などを前提として審査されています。そのため、実務上は、在留カードだけでなく、パスポートに添付される「指定書」の内容を確認することが非常に重要です。
出入国在留管理庁も、特定技能で上陸許可を受けた場合には「特定技能」の在留カードと指定書が交付されると説明しています。特定技能は、法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用契約に基づき、特定産業分野に属する業務に従事する活動として整理されています。
この記事では、特定技能の指定書とは何か、在留カードとの違い、企業が確認すべきポイント、転職時に指定書が問題になる場面、前職の指定書のまま新しい会社で働けるのか、新しい在留カード・指定書を受け取る前後の注意点について解説します。
当事務所では、特定技能人材の在留資格変更許可申請、転職時の受入れ機関側の書類整備、指定書の確認、退職日・入社日・在留カード受領日の実務調整まで、必要に応じてサポートしております。
- 特定技能の指定書とは何か
- 在留カードと指定書の違い
- 指定書に記載される主な内容
- 企業が指定書を確認すべき理由
- 指定書と実際の業務内容が違う場合のリスク
- 特定技能人材が転職するときの注意点
- 前職の指定書のまま新しい会社で働けるか
- 許可連絡後、在留カード受領前の扱い
- 在留カードを受領する前に元の会社で働けるか
- 新しい会社で働き始めるタイミング
- 退職日、入社日、在留カード受領日の考え方
- 受入れ企業が採用前に確認すべき実務ポイント

特定技能の指定書とは
特定技能の指定書とは、簡単にいうと、特定技能外国人が「どの受入れ機関で、どの分野の、どの業務に従事することが認められているか」を示す書類です。在留カードには、在留資格として「特定技能1号」または「特定技能2号」と記載されます。
しかし、在留カードだけを見ても、その人が外食業で働けるのか、介護分野で働けるのか、ビルクリーニング分野で働けるのか、宿泊分野で働けるのかまでは分かりません。
そこで重要になるのが、パスポートに添付される指定書です。
指定書には、特定技能外国人が行うことのできる活動内容が記載されます。実務上は、この指定書を見ることで、受入れ機関、特定産業分野、業務内容などを確認することになります。
つまり、在留カードが「特定技能という在留資格で日本に在留できること」を示すものであるのに対し、指定書は「具体的にどの会社で、どの分野・業務で働けるのか」を確認するための書類と考えると分かりやすいです。
在留カードだけでは不十分
特定技能人材を採用するとき、企業が在留カードだけを確認して安心してしまうことがあります。
しかし、特定技能の場合、在留カードに「特定技能1号」と記載されていても、それだけで自社で働かせてよいとは判断できません。なぜなら、特定技能は、受入れ機関との雇用契約、業務内容、報酬、支援体制、受入れ機関の適格性などを前提として許可される在留資格だからです。
たとえば、外食業分野の特定技能1号としてA社で働いていた外国人が、B社へ転職する場合を考えます。この場合、本人の在留カードに「特定技能1号」と記載されていたとしても、前職であるA社を前提とした指定書のまま、B社で働き始めることはできません。
B社で働くためには、B社を新しい受入れ機関として、在留資格変更許可申請を行い、許可を受ける必要があります。つまり、特定技能では、「在留カードに特定技能と書いてあるか」だけでなく、「指定書の内容が現在の勤務先・業務内容と一致しているか」が重要になります。
指定書に記載される主な内容
特定技能の指定書には、通常、次のような内容が記載されます。
指定書を見ることで、その外国人が、どの会社との雇用契約に基づいて、どの分野の業務に従事することを認められているのかを確認できます。特定技能人材の採用時には、在留カードの表面・裏面だけでなく、パスポートに添付されている指定書も必ず確認する必要があります。
指定書と実際の業務内容が違う場合のリスク
特定技能人材を受け入れる際に、指定書の内容と実際の業務内容がずれている場合、実務上大きなリスクがあります。たとえば、指定書上は外食業分野で許可されているにもかかわらず、実際には対象外の業務に従事させている場合、特定技能として認められた活動の範囲を超えていると評価される可能性があります。
また、指定書上の受入れ機関が前職の会社であるにもかかわらず、新しい会社で働かせてしまうと、転職先での受入れについて入管の審査を受けていない状態で就労していることになります。このような状態は、不適切な就労と評価されるおそれがあります。
企業側としても、不法就労助長や受入れ機関としての信用低下につながる可能性があります。特定技能人材本人だけでなく、受入れ企業側にも大きなリスクがあるため、指定書の確認は形式的な作業ではなく、実務上非常に重要な確認事項です。
特定技能人材が転職するときの基本的な考え方
特定技能人材は、一定の条件を満たせば転職することができます。ただし、特定技能は、どの会社でも自由に働ける在留資格ではありません。
特定技能は、受入れ機関、雇用条件、業務内容、支援体制などを前提に許可されています。そのため、勤務先が変わる場合には、新しい受入れ機関を前提として、あらためて在留資格変更許可申請を行う必要があります。
ここで注意すべきなのは、同じ「特定技能1号」から「特定技能1号」への転職であっても、在留資格変更許可申請が必要になるという点です。一般的な感覚では、「特定技能1号のままなのに、なぜ変更申請が必要なのか」と思われるかもしれません。
しかし、特定技能は、単なる資格名ではなく、具体的な受入れ機関との雇用契約や支援体制を前提として認められる活動です。そのため、同じ分野への転職であっても、受入れ機関が変わる以上、新しい会社での活動について、あらためて審査を受ける必要があります。
前職の指定書のまま新しい会社で働けるのか
結論として、前職の指定書のまま、新しい会社で働き始めることはできません。前職の指定書には、前職の受入れ機関や業務内容が記載されています。新しい会社は、その指定書で認められた受入れ機関ではありません。
そのため、転職先で特定技能人材として働くためには、新しい受入れ機関を前提とした在留資格変更許可申請を行い、新しい内容の許可を受ける必要があります。
たとえば、次のようなケースです。
この点を誤解して、在留カードだけを確認して採用してしまうと、転職先企業にとっても大きなリスクになります。
企業が採用前に確認すべきポイント
特定技能の転職者を採用する場合、転職先企業は、少なくとも次の点を確認する必要があります。
- 現在の在留カードの在留資格・在留期限
- 現在の指定書に記載された受入れ機関
- 現在の指定書に記載された分野・業務内容
- 本人の技能試験、日本語試験、技能実習修了歴
- 転職先の業務内容が特定技能の対象業務に該当するか
- 報酬が日本人と同等以上であるか
- 雇用条件書の内容に問題がないか
- 必要な協議会加入や分野別要件に問題がないか
- 支援計画を適切に作成できるか
- 登録支援機関に委託する場合、支援委託契約が整っているか
- 在留資格変更許可申請に必要な書類を準備できるか
- 本人が自由意思で転職を希望しているか
- 退職日、最終勤務日、入社日、在留カード・指定書受領日の調整ができているか
- 許可連絡後であっても、新しい在留カード・指定書を受領する前に勤務開始しない運用になっているか
- 新しい在留カード・指定書を受領した後は、前職での勤務を続けず、転職先での勤務開始へ切り替える流れになっているか
特に、本人の指定書を確認せずに採用手続を進めることは危険です。指定書を見ることで、現在どの会社で、どの分野・業務に従事することが認められているのかを確認できます。
採用前の段階で、在留カードと指定書のコピーを確認し、転職先で必要となる在留資格変更許可申請の準備を進めることが重要です。
本人が注意すべきポイント
特定技能人材本人にも、転職時には注意すべき点があります。まず、前の会社の指定書のまま、新しい会社で働き始めてはいけません。
また、在留カードに「特定技能」と書いてあるからといって、どの会社でも自由に働けるわけではありません。会社を変える場合には、新しい会社での許可を受ける必要があります。
さらに、退職後にすぐ新しい会社で働けるとは限りません。申請準備や審査に時間がかかることがあります。そのため、退職してから申請準備を始めるのではなく、転職先が決まった段階で、早めに書類準備を進めることが重要です。
また、退職、契約終了、新しい契約の開始などがあった場合には、必要な届出も忘れないようにする必要があります。
元の受入れ機関が注意すべきポイント
元の受入れ機関も、本人が転職する場合には、適切に対応する必要があります。特定技能人材であっても、労働者である以上、退職の自由があります。会社側が不当に転職を妨害したり、パスポートや在留カードを預かったりすることは避けなければなりません。
一方で、元の受入れ機関には、特定技能雇用契約の終了や受入れ困難に関する届出など、必要な手続があります。また、給与、残業代、有給休暇、社会保険、雇用保険、退職証明書などの労務上の精算も重要です。
感情的な対応ではなく、退職日、最終勤務日、届出、書類発行を冷静に整理することが、後のトラブル防止につながります。
指定書確認を怠ると、企業のリスクになる
特定技能人材の採用では、どうしても「人手不足を早く解消したい」という事情が先に立ちがちです。しかし、指定書を確認しないまま勤務を開始させてしまうと、後から大きな問題になる可能性があります。
特に、
・前職の指定書のまま新しい会社で勤務させた
・指定書と異なる業務に従事させた
・許可連絡だけで新しい会社で勤務を開始させた
・新しい在留カード受領後も元の会社で勤務させた
・退職日、入社日、在留カード受領日の整合が取れていない
といったケースは、実務上注意が必要です。
特定技能の転職では、単に人材紹介や採用手続だけを進めるのではなく、在留資格、指定書、雇用契約、支援体制、届出、勤務開始日の整合性を確認する必要があります。
まとめ
特定技能の指定書は、在留カードだけでは分からない「受入れ機関・分野・業務内容」を確認するための重要な書類です。在留カードに「特定技能1号」と記載されていても、それだけで自社で働かせてよいとは限りません。
特定技能人材を採用する際は、在留カードだけでなく、必ず指定書を確認し、指定書の内容と実際の勤務先・業務内容が一致しているかを確認する必要があります。
特に転職時には、前職の指定書のまま新しい会社で働き始めることはできません。転職先で働くためには、新しい受入れ機関を前提とした在留資格変更許可申請を行い、新しい在留カードと指定書を受領した後に勤務を開始するのが安全です。
また、許可連絡後であっても、新しい在留カードを受領する前に転職先で勤務を開始することは避けるべきです。一方で、新しい在留カードを受領する前であれば、元の会社との雇用契約が継続している限り、元の会社で勤務を続けることは基本的に可能と考えられます。
実務上は、
- 退職日、最終勤務日、入社日、在留カード・指定書受領日の流れを事前に整理する
- 許可連絡後であっても、新しい在留カード・指定書を受領する前は、原則として元の会社での勤務を継続する
- 新しい在留カード・指定書を受領した後は、速やかに転職先での勤務へ切り替える
- 新しい在留カード・指定書を受領した後は、元の会社で勤務を続けないよう注意する
新しい在留カード受領後:転職先で勤務開始。元の会社では勤務しない
という整理が分かりやすく、安全です。
特定技能人材の転職では、指定書を確認することが、本人を守ることにも、企業を守ることにもつながります。
当事務所では、特定技能人材の転職に伴う在留資格変更許可申請、指定書の確認、受入れ機関側の書類整備、登録支援機関との連携、退職日・入社日の実務調整まで、必要に応じてサポートしております。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直
















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