こんにちは、行政書士の稲福です。
この記事では、外国人材が特定技能のビザ(在留資格)を取得するために合格しなければならない『建設分野特定技能評価試験』についてわかりやすく解説します。
特定技能のビザ(在留資格)を取得するための要件は、技能実習の経験者と未経験者とで異なります。
技能実習経験者の場合、技能実習2号を良好に修了(同一区分内の限る)していれば、特定技能になることができますが、技能実習未経験者(技能実習修了者であっても業務区分が異なる場合を含む)の場合は技能検定3級の水準に相当する『建設分野特定技能評価試験』と『日本語能力試験』の両方に合格する必要があります。

この記事では、技能実習未経験者が特定技能になるために必要な2つの要件について詳しく説明していきたいと思います。
技能評価試験に合格すること(要件①)

技能評価試験とは
技能評価試験『建設分野特定技能1号評価試験』とは、は建設作業の基本的な技能を評価する試験です。
この試験では、建設図面の読解力や指導者からの指示や監督を受けて適切で安全な作業を行う能力が求められており、日本の建設業界で働くために必要な能力を備えているかを判定することを目的としています。
なお、建設分野における特定技能外国人の受入れ制度は、平成31年4月より開始されており、現在、3区分(土木/建築/ライフライン・設備)において特定技能評価試験の実施が行われています。
そして、『技能検定3級』または一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)が実施する『技能検定3級』の水準に相当する『建設分野特定技能1号評価試験』に合格することが要件のひとつとなっております。
つまり、建設分野特定技能1号評価試験(JAC主催)の評価レベルは技能検定3級と同じくらいの水準となっており、技能試験においては、各分野で即戦力となれるレベルを基準として定められているとうことになります。
業務区分について
これまでの建設分野の特定技能1号は、19業務区分(18試験区分)に分かれていました。
旧制度では、ある区分で特定技能の資格を取得しても、その業務以外に携わることができませんでした。
また、技能実習対象なのに特定技能にない職種があるなどの不整合もありました。
そこで、技能実習対象職種を含め、 建設業に係る全ての作業を大きく3つの特定技能業務区分、業務区分【土木】、業務区分【建築】、業務区分【ライフライン・設備】に再編しました。
1.土木区分(コンクリート圧送、とび、建設機械施工、塗装など)
2.建築部門(建築大工、鉄筋施工、屋根ふき、左官、内装仕上げ、塗装、防水施工など)
3.ライフライン・設備区分(配管、保温保冷、電気通信、電気工事など)
これにより、特定技能外国人が従事可能な業務範囲が拡大、柔軟に仕事ができるようになりました。
現在所持している特定技能の資格については、その職種が分類された区分で引き続き業務を行えます。
さらに、その業務が分類されている区分の他の業務も行うことが可能になります。
区分統合により、従来可能であった作業ができなくなることはありません。
各業務区分における業務内容の名称は以下の通りとなります。
業務区分 | 業務内容 |
土木分野 | 【主として土木施設に係る作業】 さく井工事業/舗装工事業/しゅんせつ工事業/造園工事業/大工工事業/とび・土工工事業/鋼構造物工事業/鉄筋工事業/塗装工事業/防水工事業/石工事業/機械器具設置工事業 |
建築分野 | 【主として建築物に係る作業】 大工工事業/とび・土工工事業/鋼構造物工事業/鉄筋工事業/塗装工事業/防水工事業/石工事業/機械器具設置工事業/内装仕上工事業/建具工事業/左官工事業/タイル・れんが・ブロック工事業/清掃施設工事業/屋根工事業/ガラス工事業/解体工事業/板金工事業/熱絶縁工事業/管工事業 |
ライフライン・設備分野 | 【主としてライフライン・設備に係る作業】 板金工事業/熱絶縁工事業/管工事業/電気工事業/電気通信工事業/水道施設工事業/消防施設工事業 |
また、再編に伴い、特定技能1号技能評価試験も業務区分【土木】、業務区分【建築】、業務区分【ライフライン・設備】の3つの試験区分に統合されました。
例えば、業務区分【土木】の技能評価試験に合格すると、土木工事に携わる仕事に、業務区分【建築】の技能評価試験に合格すると建築工事に携わる仕事に就くことができるようになります。
更に、業務区分【ライフライン・設備】の技能評価試験に合格するとライフライン・設備に携わる仕事に就くことができるようになります。以下、それぞれの業務区分について解説していきます。
業務区分【土木】について
業務区分【土木】においては、特定技能外国人は指導者の指導・監督を受けながら、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業等、その他、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業に従事します。
主な業務内容は下記の通りです。
☑型枠施工
☑コンクリート圧送
☑トンネル推進工
☑建設機械施工
☑土 工
☑鉄筋施工
☑と び
☑海洋土木工
なお、想定される関連業務としては以下のような業務があります。
☑原材料・部品の調達・搬送
☑機器・装置・工具等の保守管理
☑足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業
☑足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業
☑清掃・保守管理作業
その他、主たる業務に付随して行う作業
業務区分【建築】について
業務区分【建築】においては、特定技能外国人は指導者の指導・監督を受けながら、建築物の新築、増築、改築、若しくは移転又修繕若しくは模様替えに係る作業等、その他、建築物の新築、増築、改築若しくは移転、修繕、模様替又は係る作業に従事します。
主な業務内容は下記の通りです。
☑型枠施工
☑左 官
☑コンクリート圧送
☑屋根ふき
☑土 工
☑鉄筋施工
☑鉄筋継手
☑内装仕上げ
☑表 装
☑と び
☑建築大工
☑建築板金
☑吹付ウレタン断熱
なお、想定される関連業務としては以下のような業務があります。
☑原材料・部品の調達・搬送
☑機器・装置・工具等の保守管理
☑足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業
☑足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業
☑清掃・保守管理作業
☑その他、主たる業務に付随して行う作業
業務区分【ライフライン・設備】について
業務区分【ライフライン・設備】においては、特定技能外国人は、指導者の指示・監督を受けながら、電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業等、その他、ライフライン・設備の整備・設置、変更又は修理に係る作業に従事します。
主な業務内容は下記の通りです。
☑電気通信
☑配 管
☑建築板金
☑保温保冷
なお、想定される関連業務としては以下のような業務があります。
☑原材料・部品の調達・搬送
☑機器・装置・工具等の保守管理
☑足場の組立て、設備の掘り起こしその他の後工程の準備作業
☑足場の解体、設備の埋め戻しその他の前工程の片付け作業
☑清掃・保守管理作業
☑その他、主たる業務に付随して行う作業
試験の概要
主催者について
主催者団体は前出の一般社団法人 建設技能人材機構になります。
日程と会場について
試験は国内では毎月7~8回実施しています。
試験は月に1~4回実施されており、令和6年実施の日本国内の試験においては2024年4月時点では、大阪、東京、北海道、宮城、新潟、愛知、福井、福岡、熊本にて実施されています。
開催スケジュールは、JACのホームページにて掲載されています。
なお、約2カ月先までの試験実施日が決まっていますので申し込みの前に確認しておくことをお勧めします。
海外での受験について
試験は、海外でも実施されています。実施国は下記の通りです。
バングラデシュ、カンボジア、インド(ゴウハティを除く)、インドネシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、ウズベキスタン
詳しい試験日程は下記のリンクからご確認いただけます。
試験情報
試験情報に関する詳細は以下の通りです。
試験名称 | 建設分野特定技能評価試験(土木) 建設分野特定技能評価試験(建築) 建設分野特定技能評価試験(ライフライン・設備) |
受験可能な言語 | 日本語 |
受験資格 | 試験に合格した場合、日本国内で建設分野に就業する意思のある者 年齢制限 本試験を受験するには、試験日に満17歳以上であること。 インドネシア国籍の人は、試験日に満18歳以上であること。 国籍制限 日本国籍の方は受験できません |
実施形式 | CBT(Computer Based Testing) |
問題数 | 50問 (学科 30問+実技 20問) |
試験時間 | 100分 (学科 60分+実技 40分) |
予約受付期間 | 2024年4月10日~2025年3月5日 |
試験実施期間 | 2024年4月17日~2025年3月10日 |
出題形式 | 真偽法(〇×)および2~4択式 |
合格基準 | 合計点の65%以上 |
受験料 | 2,000円 |
試験範囲
学科試験の試験範囲は、下記の通りです。
なお、学科試験は土木、建築、ライフライン・設備とも共通の試験範囲から出題されます。
☑日本の現場で大切にしていること
⇒日本の建設工事の施工体制やチームワークなどについて
☑日本の現場で働くうえで守らなければならない法令
⇒労働法、建設法などの法律について
☑建設工事の種類と業種
⇒建設工事の種類と主な専門工事の業務の内容について
☑建設現場で使われるあいさつ・用語・共同生活上の注意
⇒あいさつ・緊急時の呼びかけや建設現場で使われる用語について

実技試験の試験範囲は下記の通りです。
実技試験においては土木、建築、ライフライン・設備それぞれの分野について上記の知識が問われます。
☑工事現場で使われる工具、機械、材料、計測器の知識
⇒職種ごとの工具、機械、材料、計測器について
☑建設現場の施工に関する知識
⇒建設現場に共通する知っておきたい知識や施工知識について
☑建設工事の安全
⇒建設現場で行う安全活動について

日本語能力試験に合格すること(要件②)

建設分野で特定技能になるための2つ目の要件が日本語能力を測る試験への合格です。
特定技能1号の在留資格を取得するためには、特定技能1号評価試験に合格することに加えて、日本語試験に合格することが必要です。
この日本語試験には、日本国際教育支援協会(JLPT)の運営する『日本語能力試験』と国際交流基金の運営する『日本語基礎テスト』があり、『日本語能力試験』においては『N4』レベル、または『日本語基礎テスト』においては『A2』レベルの基準を満たす必要があります。
そして、双方の日本語試験に合格するには、業務をこなすのに必要な日常会話レベルの日本語力が必要で、日本語試験の合格は日本で生活したり、就労したりする上で必要な日本語能力を有していることの証明となります。
なお、N4の難易度として、JLPTでは『基本的な語彙や漢字を使って書かれた身近な文章を読んで理解できる』、『ややゆっくりと話される会話であれば内容がほぼ理解できる』と定義しています。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
特定技能の資格を取得するための要件は、技能実習の経験者と未経験者とで異なり、技能実習未経験者の場合は技能検定3級の水準に相当する技能評価試験と日本語能力を測る試験の両方に合格する必要があります。
技能実習未経験者を特定技能外国人として雇い入れる際には注意が必要となりますので、ご不明な点がございましたらお気軽にご相談下さい。
さいごに
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所では、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をサポートしております。
また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。
お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。



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