こんにちは。行政書士の稲福です。
外国人を雇用する企業にとって、在留資格や就労可能な業務の確認は、採用時に必ず行わなければならない重要な手続です。
これまでも、外国人に認められていない仕事をさせたり、就労資格のない外国人を雇用したりした場合には、雇用した企業や事業主が「不法就労助長罪」に問われる可能性がありました。
さらに今後は、不法就労助長罪によって有罪となった事業者について、刑事罰を科すだけではなく、事業の許認可を受けられない「欠格事由」に該当させる方向で、規制が強化される可能性があります。
「不法就労助長罪とは、どのような場合に成立するのか」
「外国人本人が働けると言っていた場合でも、会社に責任があるのか」
「罰金刑だけでも、事業許可を失う可能性があるのか」
「すでに許可を持っている事業者は、許可を取り消されるのか」
「有料職業紹介会社や派遣会社だけが対象なのか」
「外国人を採用するとき、会社は何を確認すればよいのか」
という質問が今後は増えてくることが想定されます。
今回の見直しが実現すれば、不法就労の問題は、単に罰金を支払えば終わるものではなくなります。事業許可の更新や新規取得ができなくなり、場合によっては、事業の継続そのものが難しくなる可能性があります。
今回は、不法就労助長罪の基本から、欠格事由への追加が検討されている背景、許認可事業者への影響、外国人を雇用する企業が今から確認すべきポイントまで、わかりやすく解説します。
- 不法就労助長罪がどのような場合に成立するのか
- 外国人本人が「働ける」と説明していた場合の会社の責任
- 不法就労助長罪の法定刑と罰則強化の内容
- 欠格事由への追加が検討されている背景
- 罰金刑が事業許可の取得・更新・取消しに与える影響
- 有料職業紹介会社、派遣会社、許認可事業者が注意すべき点
- 外国人採用時に企業が確認すべき在留資格・業務内容・勤務条件
- 不法就労を防止するために整備すべき社内管理体制

今回の方針のポイント
今回検討されている対策のポイントは、次のとおりです。
●不法就労助長罪の処分歴を、各業種の許認可における欠格事由へ追加する
●不法就労助長罪で罰金刑を受けた場合も対象とする
●一定期間、同じ業種の許可を取得できない仕組みを検討する
●不法就労の事例が多い業種について実態調査を行う
●関係省庁と協議し、各業法の改正を進める
現在のところ、すべての対象業種、欠格期間、許可取消しの条件、施行時期などが確定したわけではなく、出入国在留管理庁が関係省庁に対し、各業法の欠格事由へ不法就労助長罪を盛り込むことを提案する方針が示されている段階です。
したがって、「不法就労助長罪に該当すれば、すべての事業許可が直ちに取り消される」と決まったわけではありません。
もっとも、今後の法改正によっては、外国人雇用に関する法令違反が、事業許可そのものに影響する可能性があるため、許認可事業者は早い段階から注意しておく必要があります。
不法就労助長罪とは
不法就労助長罪とは、外国人に不法就労活動をさせたり、不法就労をあっせんしたりした者を処罰するため、出入国管理及び難民認定法に定められている犯罪です。
主に、次のような行為が対象となります。
●事業活動に関して、外国人に不法就労活動をさせること
●外国人を自己の支配下に置いて、不法就労活動をさせること
●業として、外国人に不法就労活動をさせる行為をあっせんすること
対象となるのは、外国人を直接雇用した企業だけではありません。不法就労をあっせんした人材紹介会社、仲介者、派遣会社、ブローカーなどについても、不法就労助長罪が成立する可能性があります。
外国人本人が「働ける」と言っていても会社の責任はなくならない
外国人を採用する際、本人から、
「この在留資格なら働けます」
「前の会社でも同じ仕事をしていました」
「資格外活動許可を持っています」
「在留カードがあるので問題ありません」
と言われることがあります。
しかし、外国人本人の説明だけを信用して雇用するのは危険です。企業には、在留カード、在留期限、就労制限、資格外活動許可、指定書、実際の業務内容などを確認する責任があります。
不法就労であることを知らなかった場合でも、在留カードを確認していなかったなど、企業側に確認不足や過失があれば、不法就労助長罪の責任を免れない可能性があります。
「本人が大丈夫と言ったから」
「紹介会社から問題ないと言われたから」
「前の会社でも働いていたから」
という事情だけで、企業の確認責任がなくなるわけではありません。
不法就労助長罪の法定刑も引き上げられる
不法就労助長罪については、2024年に成立した改正入管法により、法定刑の引上げが決定しています。
2026年7月現在の法定刑は、
〇3年以下の拘禁刑
〇300万円以下の罰金
のいずれか、またはその両方です。
改正法が施行される2027年4月1日以降は、
●5年以下の拘禁刑
●500万円以下の罰金
のいずれか、またはその両方へ引き上げられます。
したがって、「法定刑の引上げが予定されている」というよりも、すでに改正法は成立しており、2027年4月1日の施行が予定されているというのが正確です。
この改正により、外国人に不法就労をさせた事業主や、不法就労をあっせんした仲介者などに対する刑事責任は、従来よりも重くなります。
さらに、出入国在留管理庁は、不法就労助長罪による処分歴を、各業種の許認可における欠格事由へ追加するよう、関係省庁に働きかける方針を示しています。
もっとも、欠格事由への追加については、現時点ですべての業種で法改正が成立しているわけではありません。今後、対象業種の実態調査や関係省庁との協議を経て、各業法の改正が行われた場合には、刑事罰に加えて、許可の新規取得、更新、事業継続などにも影響が及ぶ可能性があります。
「欠格事由」とは
欠格事由とは、法律上、許可や登録を受けることができない一定の事情をいいます。
許認可が必要な事業では、申請者や法人の役員などが欠格事由に該当していないことが、許可を受けるための条件とされています。
例えば、業種によっては、
☑一定の刑に処せられてから所定の期間を経過していない
☑許可を取り消されてから一定期間を経過していない
☑暴力団員等に該当する
☑法人の役員に欠格事由該当者がいる
☑業務を適正に行うことができない
といった事情が欠格事由として定められています。
欠格事由に該当すると、新規の許可を受けられないだけでなく、更新が認められなかったり、既存の許可が取り消されたりする可能性があります。
ただし、実際にどのような効果が生じるかは、それぞれの業法の規定によって異なります。
現在は業種によって扱いが異なる
現在、労働者派遣事業や有料職業紹介事業では、不法就労助長罪によって罰金刑を受けたことが、すでに許可の欠格事由として定められています。
そのため、派遣会社や有料職業紹介会社が不法就労助長罪で罰金刑を受けた場合には、刑の執行を終えた日などから一定期間、許可を受けられない可能性があります。
一方、その他の許認可事業では、「拘禁刑以上の刑に処せられたこと」を欠格事由としているものもあります。このような規定では、不法就労助長罪で罰金刑だけが科された場合、欠格事由に該当せず、再び同じ業種で事業を行える場合があります。
今回の検討は、この業種ごとの違いを見直し、不法就労助長罪による罰金刑についても、幅広い業種で欠格事由に含めようとするものです。
なぜ欠格事由への追加が検討されているのか
背景には、不法就労を繰り返す事業者に対し、刑事罰だけでは十分な抑止力になっていないという問題があります。
不法就労助長罪で罰金刑を受けても、その業種の法律上の欠格事由に該当しなければ、同じ事業を再開できる場合があります。
そのため、
「罰金を支払った後、再び同じ事業を始める」
「法人や事業形態を変えて事業を継続する」
「外国人を不適正に雇用する状態が繰り返される」
といった問題が生じる可能性があります。
そこで、不法就労助長罪の処分歴を各業法の欠格事由に加え、一定期間は同じ業種の許可を受けられない仕組みとすることで、不法就労を抑止しようとしているのです。
「不法滞在者ゼロプラン」の一環
今回の方針は、出入国在留管理庁が進める「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」の施策の一つと位置付けられています。
同プランでは、不法滞在者に対する摘発や送還を強化するだけでなく、不法就労を発生させる雇用主、仲介者、関係事業者に対する取締りも重視されています。
不法就労をなくすためには、外国人本人だけを取り締まるのでは不十分です。不法就労者を安価な労働力として利用する事業者や、不法就労をあっせんする仲介者への対策も同時に進めなければ、不法就労の構造そのものを解消できないためです。
ヤード、廃棄物処理、自動車解体、古物営業などが対象となる可能性
近年は、自動車や部品を解体・保管する、いわゆる「ヤード」と呼ばれる作業場などが、不法就労の温床となっているとの指摘があります。
ヤードに関連する事業には、次のような法律や許認可が関係します。
●廃棄物処理法に基づく廃棄物処理業の許可
●自動車リサイクル法に基づく解体業等の許可
●古物営業法に基づく古物商の許可
それぞれの法律を所管する省庁が異なるため、出入国在留管理庁だけで欠格事由を変更することはできません。
入管庁は今後、不法就労の事例が多い業種について実態調査を行い、環境省、経済産業省、警察庁などの関係省庁と協議することを検討しています。
もっとも、現時点では、廃棄物処理業や古物営業などについて、具体的な法改正の内容が確定しているわけではありません。今後の調査や関係省庁との協議によって、対象業種や欠格事由の内容が決められることになります。
許認可事業者にはどのような影響があるのか
各業法に不法就労助長罪が欠格事由として追加された場合、事業者には次のような影響が生じる可能性があります。
ただし、許可取消しや更新拒否がどのような場合に行われるかは、今後改正される各業法の内容によって異なります。欠格事由に追加されることと、すべてのケースで直ちに許可が取り消されることは同じではありません。
それでも、許認可が事業継続の前提となっている企業にとっては、許可を失うことが事実上の廃業につながる可能性があります。
不法就労の問題は、「罰金を支払えば終わり」というものではなく、企業の存続に関わる重大なコンプライアンスリスクになりつつあります。
有料職業紹介会社や派遣会社は特に注意が必要
有料職業紹介事業と労働者派遣事業では、すでに不法就労助長罪が許可の欠格事由に含まれています。
外国人人材を取り扱う紹介会社や派遣会社は、求人企業から伝えられた情報だけで判断するのではなく、少なくとも次の事項を確認する必要があります。
☑外国人本人の在留資格
☑在留期限
☑就労制限の有無
☑資格外活動許可の有無と範囲
☑実際に従事する業務内容
☑就業場所
☑直接雇用、派遣、請負などの契約形態
☑転職に伴う在留資格変更の必要性
☑求人企業が提示する業務と現場の実態が一致しているか
求人票上は通訳、翻訳、営業、海外取引などと記載されていても、実際には工場のライン作業、清掃、調理補助、仕分けなどに従事させるケースがあります。
名目上の業務と実際の業務が異なれば、紹介会社や派遣会社も、不法就労をあっせんしたとして責任を問われる可能性があります。
登録支援機関に任せておけばよいわけではない
特定技能外国人の受入れでは、登録支援機関が関与していることがあります。しかし、登録支援機関に支援業務を委託しているからといって、受入れ企業の責任がなくなるわけではありません。
登録支援機関が担当するのは、特定技能1号外国人に対する支援計画の実施などです。外国人をどの業務に従事させるか、雇用条件が適正か、特定技能の対象業務に該当するか、勤務実態が申請内容と一致しているかについては、受入れ企業自身も確認しなければなりません。
また、登録支援機関も、支援先企業に明らかな不適正就労があることを把握しながら放置すれば、登録支援機関としての適格性や登録更新等に影響する可能性があります。
「受入れ企業の問題だから関係ない」
「行政書士が申請したから問題ない」
「登録支援機関に任せているから大丈夫」
とは考えないことが重要です。
在留カードを確認するだけでは不十分
外国人を雇用する際には、まず在留カードを確認する必要があります。しかし、在留カードが有効であることだけを確認しても、十分とはいえません。
在留カードには、主に次の事項が記載されています。
■氏名
■生年月日
■国籍
■住居地
■在留資格
■在留期間
■在留期限
■就労制限の有無
■資格外活動許可の内容
企業は、これらの記載を確認した上で、実際に行わせる業務が在留資格で認められているかを判断する必要があります。
指定書の確認が必要な場合もある
「特定技能」「特定活動」「高度専門職」など、一部の在留資格では、在留カードだけでは具体的な活動内容を判断できないことがあります。
その場合は、パスポートに添付されている指定書も確認する必要があります。
例えば、特定技能外国人が転職する場合、在留カードに「特定技能1号」と記載されていても、以前の受入れ機関を指定した指定書のまま、新しい会社で働くことはできません。
新しい受入れ機関を前提とした在留資格変更許可を受けた上で、就労を開始する必要があります。
外国人を雇用する企業が確認すべきポイント
外国人の採用や就労開始前には、少なくとも次の事項を確認してください。
採用後も定期的な確認が必要
在留資格の確認は、採用時に一度行えば終わりではありません。採用後に、次のような変化が生じることがあります。
■在留期限が近づく
■在留資格の更新申請中となる
■担当業務が変更される
■別の店舗や事業所へ異動する
■労働時間が増加する
■資格外活動許可の範囲を超える
■休学や退学によって留学生としての活動実態がなくなる
■在留資格変更申請中に新しい業務を始める
外国人本人の在留状況と、実際の勤務内容を定期的に確認する仕組みが必要です。特に複数店舗を運営している企業では、本社の人事担当者が適法な雇用条件を理解していても、現場の店長や責任者が知らないまま、認められていない業務や長時間労働をさせてしまうことがあります。
経営者、人事担当者、現場責任者の間で情報を共有し、外国人雇用に関する社内ルールを統一することが重要です。
不法就労を防ぐための社内体制
不法就労を防止するためには、担当者個人の知識だけに依存しない体制づくりが必要です。具体的には、次のような対応が考えられます。
特に重要なのは、確認した事実を記録として残すことです。
万一、不法就労の疑いを指摘された場合、企業がどのような確認を行い、どのような資料を基に採用を判断したのかを説明できるようにしておく必要があります。
今後の法改正で注目すべき点
今後は、次の点に注目する必要があります。
現時点では、具体的な対象業種や施行時期までは確定していません。
報道の見出しだけを見て、「すでにすべての業種で許可取消しが始まった」と誤解しないよう注意が必要です。一方で、政府が不法就労を発生させる雇用主や仲介者への対策を強化する方向性は明確になっています。
法改正が決まってから対応するのではなく、今のうちに外国人雇用の管理体制を見直しておくことが重要です。
まとめ
出入国在留管理庁は、不法就労対策を強化するため、不法就労助長罪の処分歴を、より幅広い業種の許認可における欠格事由へ追加するよう、関係省庁に提案する方針を示しています。
現時点では、対象業種、欠格期間、許可取消しの条件、施行時期などがすべて決まったわけではありません。しかし、今後の法改正によっては、不法就労助長罪で罰金刑を受けただけでも、一定期間、同じ業種の許可を取得できなくなる可能性があります。
許認可が必要な事業者にとっては、刑事罰だけではなく、許可の更新、新規取得、事業継続にまで影響が及ぶ可能性があります。外国人を雇用する際は、在留カードの有無だけで判断してはいけません。在留資格、在留期限、就労制限、資格外活動許可、指定書、実際の業務内容、勤務時間、雇用形態、就業場所などを総合的に確認する必要があります。
また、人材紹介会社、派遣会社、登録支援機関、行政書士などが関与している場合でも、実際に外国人を雇用し、業務に従事させる企業の確認責任がなくなるわけではありません。不法就労の問題は、外国人本人だけの問題ではなく、雇用企業の事業存続にも関わる重大なリスクです。
外国人雇用について少しでも判断に迷う点がある場合には、実際に働き始める前に、在留資格と業務内容の適合性を確認することが重要です。
※本記事は、2026年7月時点で公表・報道されている内容を基に作成しています。対象業種、欠格期間、許可取消しの条件、施行時期などは、今後の関係省庁との協議や法改正によって変更・決定される可能性があります。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直


















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