こんにちは。行政書士の稲福です。
特定技能制度では、各分野について一定期間の「受入れ見込数」が定められています。この受入れ見込数は、単なる目標人数ではなく、原則として特定技能1号外国人の受入れ上限として運用されます。
これまで、企業の採用実務では、外国人本人が技能試験や日本語試験に合格しているか、受入れ企業が分野別の要件を満たしているかといった、個別の申請要件が主に注目されてきました。
しかし、2026年4月、外食業分野では、受入れ上限への到達が見込まれることを理由に、在留資格認定証明書の交付停止措置が開始されました。国内から外食業分野の特定技能1号へ変更する申請についても、一定の例外を除き、原則として不許可とする運用が始まっています。
この措置により、今後の特定技能人材の採用では、個別の申請要件だけでなく、分野全体の受入れ人数と最新の審査運用を確認する必要があることが明確になりました。
- 特定技能制度における「受入れ見込数」と「受入れ上限」の意味
- 外食業で新規受入れが制限された理由
- 外食業、飲食料品製造業、建設、介護、農業の受入れ状況
- 飲食料品製造業や建設が、受入れ上限間近といえる状況なのか
- 介護と農業に、現時点でどの程度の受入れ余地があるのか
- 現在の充足率だけでは、上限到達リスクを判断できない理由
- 受入れ企業が今後の採用計画で注意すべきポイント

特定技能の「受入れ見込数」とは
特定技能制度では、人手不足が深刻な産業分野について、政府が分野ごとの受入れ見込数を設定しています。受入れ見込数は、各分野における人手不足の程度、生産性向上の取組み、国内人材の確保状況などを踏まえて設定されます。
そして、大きな経済情勢の変化がない限り、特定技能1号外国人の受入れ上限として運用されます。
受入れ見込数は「努力目標」ではない
外食業で実際に交付停止措置が取られたことからも分かるとおり、 受入れ見込数は、単に 「この程度の人数を受け入れたい」という政策目標 ではありません。
在留者数が受入れ見込数を超えることが見込まれる場合には、 新たな在留資格認定証明書の交付停止や、 在留資格変更許可申請の取扱い変更につながる可能性があります。
原則として特定技能1号の人数を見る
分野別の上限と比較する際は、原則として 特定技能1号の在留者数 を確認します。
特定技能2号の人数まで単純に合算すると、 上限への充足率を正確に把握できません。
例えば、建設、飲食料品製造業、農業などでは、 特定技能2号への移行者も増えています。
1号から2号への移行が進めば、 特定技能1号の人数増加を一定程度抑える要素となります。
外食業で初めて受入れ上限が現実に運用された
出入国在留管理庁によると、外食業分野の特定技能1号在留者数は、2026年2月末時点で約4万6,000人となりました。
当時の受入れ上限は5万人であり、同年5月頃には上限を超えることが見込まれたため、2026年4月13日から在留資格認定証明書の交付停止措置が開始されました。
外食業分野が全面的に停止したわけではありません。同じ外食業分野内での転職や在留期間更新は、原則として通常どおり審査されています。
「海外からの新規受入れ」「他の在留資格からの変更」「外食業内での転職」「在留期間更新」では取扱いが異なるため、申請区分ごとに確認する必要があります。
主要5分野の受入れ上限と充足状況
ここでは、外食業、飲食料品製造業、建設、介護、農業の5分野について比較します。
※外食業は2026年2月末の速報値です。その他の4分野は2025年12月末の速報値であり、基準日が異なるため、単純比較には注意が必要です。
主要5分野の受入れ上限に対する参考充足率
主要5分野における受入れ見込数に対する充足率の目安です。制度運用や今後の受入れ動向を把握するための参考指標としてご覧ください。
なお、数値は公表資料等を基に算出した参考値であり、最新の在留状況によって変動します。
飲食料品製造業は上限間近なのか
飲食料品製造業は、2025年12月末時点で特定技能1号在留者が9万3,393人となっており、全分野の中で最も人数が多い分野です。2025年6月末の8万4,071人から半年間で9,322人増加しており、在留者数の規模と増加人数の双方から、今後を特に注視すべき分野といえます。
一方、受入れ上限は13万9,000人であり、参考充足率は約67.2%です。現時点で、外食業と同程度に切迫しているとはいえません。飲食料品製造業は「上限間近」と断定できる段階ではありません。ただし、在留者数が最大で、半年間の増加人数も大きいため、外食業の次に動向を注視すべき分野の一つです。
飲食料品製造業では、技能実習から特定技能への移行が多いこと、全国各地に受入れ事業所があること、人手不足が継続していることなどから、今後も一定の増加が見込まれます。
ただし、現在の増加ペースを単純に延長し、「何年何月に必ず上限へ達する」と予測することは適切ではありません。受入れ上限自体の見直し、特定技能2号への移行、景気や雇用情勢の変化なども考慮する必要があります。
建設は上限到達が迫っているのか
建設分野の特定技能1号在留者数は、2025年12月末時点で4万9,323人です。受入れ上限8万人に対する参考充足率は約61.7%となります。
2025年6月末の4万3,599人から半年間で5,724人増加しており、着実な増加が続いています。建設業では、技能実習から特定技能への移行に加え、インフラ更新、再開発、物流施設や工場建設など、全国的に人材需要が続いています。
一方、建設分野は特定技能2号への移行が可能です。熟練した外国人が1号から2号へ移行することで、特定技能1号の人数がそのまま積み上がり続けるとは限りません。
建設分野も「すぐに停止する」といえる状況ではありません。ただし、すでに約5万人が在留し、半年間で5,000人以上増加しているため、中長期的な確認が必要です。
介護は充足率よりも増加速度に注意
介護分野の特定技能1号在留者数は、2025年12月末時点で6万7,871人です。受入れ上限13万5,000人に対する参考充足率は約50.3%であり、数字上はまだ半分程度です。
しかし、2025年6月末の5万4,916人から半年間で1万2,955人増加しています。主要5分野の中では、最も大きな増加人数となっており、増加率も23.6%と高い水準です。
2025年6月末から12月末までの増加人数
介護は、現時点の充足率だけを見れば、外食業や飲食料品製造業より余裕があります。しかし、最近の増加速度が非常に速いため、今後も同じ傾向が続くかを確認する必要があります。
なお、介護福祉士国家試験に合格して在留資格「介護」へ移行する方もいるため、特定技能1号の人数が同じ速度で増え続けるとは限りません。これは介護分野独自の事情です。
農業は比較的余裕があるが、地域差に注意
農業分野の特定技能1号在留者数は、2025年12月末時点で3万7,952人です。受入れ上限7万8,000人に対する参考充足率は約48.7%となっています。
2025年6月末からの半年間の増加人数は3,017人、増加率は8.6%であり、主要5分野の中では比較的緩やかです。したがって、全国合計で見る限り、現時点で受入れ上限が目前という状況ではありません。
もっとも、農業は、地域、作物、季節、耕種農業と畜産農業の違いによって、人手不足の程度が大きく異なります。全国の充足率に余裕があっても、一部地域や特定の繁忙期では、外国人材への依存度が非常に高い場合があります。
「上限間近」は充足率だけでは判断できない
分野別の受入れリスクを判断する際、現在の充足率だけを見るのは十分ではありません。
外食業でも、実際に5万人を超えてから措置が取られたのではありません。2026年2月末時点で約4万6,000人となり、数か月後に上限を超える見込みとなった段階で、交付停止方針が示されました。
つまり、企業が確認すべきなのは、現在の人数だけではなく、今後の増加見込みと行政の対応です。
受入れ企業が今後注意すべきこと
求人を開始した時点では受入れ可能であっても、実際に在留資格申請を行う時点で、分野別の運用が変更されている可能性があります。
海外から外国人を呼び寄せる場合は、面接、内定、雇用契約、協議会加入、在留資格認定証明書交付申請、査証申請、入国まで、長い期間を要します。
そのため、採用計画を進めている途中で運用が変更される可能性も考慮し、採用決定前だけでなく、申請直前にも最新情報を確認することが重要です。
交付停止や新規受入れ停止が発表された場合でも、すべての外国人の就労や在留期間更新が停止されるとは限りません。
在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、同一分野内の転職、在留期間更新では、それぞれ取扱いが異なる場合があります。
外食業の事例でも、海外からの新規受入れなどに制限が行われる一方、在留期間更新や同一分野内の転職については、通常どおり審査されています。
外国人本人と受入れ企業が申請要件を満たしていても、分野全体の受入れ上限や制度運用の変更により、予定どおり許可を得られない可能性があります。
採用時には、「申請すれば必ず予定どおり入社できる」と断定せず、制度変更、審査期間、受入れ上限などによるリスクを、本人と企業の双方へ事前に説明することが重要です。
外食業の受入れ制限は、特定技能制度の運用が新しい段階に入ったことを示しています。これまでは、外国人本人が試験に合格し、企業が受入れ要件を満たし、必要書類をそろえれば申請できるという、個別審査の視点が中心でした。
しかし今後は、本人と企業の要件だけでなく、分野全体の在留者数や受入れ政策によって、申請時期や許可の見通しが左右される可能性があります。
これからの特定技能人材の採用では、「個別の申請要件」と「分野全体の受入れ状況」の両方を確認することが不可欠です。
まとめ
☑外食業は受入れ上限への到達が見込まれ、2026年4月から新規受入れが制限されました。
☑飲食料品製造業は在留者数が最も多く、今後を特に注視すべき分野です。
☑建設は約6割まで進んでいますが、直ちに停止が迫っていると断定できる状況ではありません。
☑介護は充足率が約5割である一方、半年間の増加人数が非常に多くなっています。
☑農業は現時点で比較的余裕がありますが、地域や季節による人手不足の差に注意が必要です。
☑上限到達リスクは、充足率だけでなく、増加人数、増加率、他の在留資格への移行、政府の運用を含めて判断する必要があります。
特定技能外国人の採用を検討する企業は、採用を決定する前に、対象分野の最新の在留者数、受入れ上限、申請の取扱いを確認することが重要です。
※本記事は、2026年7月時点で公表されている資料および制度運用に基づいて作成しています。今後、受入れ見込数や申請の取扱いが変更される可能性があるため、実際の申請にあたっては最新情報をご確認ください。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直















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