こんにちは、行政書士の稲福です。
近年、日本国内でも、海外のプロ選手やプロチームを招へいして開催するeスポーツ大会、エキシビションマッチ、ファンイベントなどが増えています。日本のeスポーツ市場は継続的に成長しており、2024年の国内市場規模は約161億円、前年比9.9%増となりました。2020年以降は年平均10%前後で成長しており、2026年には200億円を超えると予測されています。
一方、海外選手の来日が決まった際に、主催者やチーム運営会社が注意しなければならないのが、外国人選手の在留資格、いわゆる「ビザ」の問題です。
海外選手が日本で大会に出場する場合、「数日間の滞在だから短期滞在でよい」「賞金を受け取るだけなので就労には当たらない」「海外のプロ選手なので、そのまま大会に参加できる」と判断できるとは限りません。外国人選手の活動内容、日本側から支払われる報酬、大会の開催方法、契約関係、滞在期間などによって、必要となる手続きが異なる可能性があります。
大会直前になってから在留資格の問題が判明すると、選手の来日や大会運営、スポンサー対応に大きな影響が生じかねません。本記事では、海外eスポーツ選手を日本へ招へいする企業・団体の皆様に向けて、興行ビザを検討すべきケース、短期滞在との違い、招へい側が準備する書類やスケジュールについて解説します。
- 日本国内のeスポーツ市場が、今後どの程度成長すると予測されているのか
- 海外のeスポーツ選手やプロチームを日本へ招へいする際に検討される在留資格
- eスポーツ選手の来日に「興行ビザ」が必要となる可能性があるケース
- 短期間の大会参加であれば、必ず「短期滞在」で入国できるのか
- 大会の賞金、出場料、出演料、日当、渡航費などをどのように整理すべきか
- 大会出場以外に、配信、広告撮影、商品PR、ファンイベントなどを行う場合の注意点
- 選手に同行するコーチ、監督、実況者、ストリーマー、撮影スタッフなどの取扱い
- 大会主催者、ゲーム会社、イベント運営会社が準備すべき契約書や大会資料
- 海外選手の招へいから、在留資格認定証明書・査証申請、来日までのスケジュール
- ビザの確認が遅れた場合に、大会運営、スポンサー、航空券、ホテルなどへ生じるリスク
- 海外eスポーツ選手の招へいについて、行政書士へ相談する適切なタイミング

日本のeスポーツ市場は継続的に成長している
日本国内のeスポーツ市場は、一時的なブームではなく、継続的な成長段階に入っています。日本eスポーツ協会の公表情報によると、2024年の国内eスポーツ市場規模は約161億円です。
2020年以降、国内市場は年平均10%前後で成長しており、2026年には200億円を超えると予測されています。
国内eスポーツ市場規模の推移
日本のeスポーツ市場は、ここ数年で着実な成長を続けています。2019年には約61億円だった市場規模は、2024年には約161億円と約2.6倍に拡大しました。エンターテインメント産業の中でも高い成長率を維持している分野の一つです。
※2025年以降は日本eスポーツ協会が公表する予測を含みます。
市場の中でも大きな割合を占めているのが、イベント運営とスポンサー関連です。2024年の市場構成では、オンライン・オフラインを含む「イベント運営」が全体の37.3%を占めています。
また、大会やチームに対するスポンサー費用も35%以上を占めています。つまり、日本のeスポーツ市場では、ゲームの販売だけでなく、大会の開催・会場の運営・選手やチームの招へい・スポンサーイベント・配信コンテンツ・ファンミーティング・自治体との連携事業といった、イベントを中心とする事業領域が大きく成長しているということです。
2024年の主な市場構成
イベント運営とスポンサーが市場全体の大部分を占めています。そのため、今後、市場が成長するほど、海外選手や海外チームを日本へ招へいする機会も増えていくと考えられます。
eスポーツは国際競技としても拡大している
eスポーツは、企業が開催する民間大会だけでなく、国際的な競技大会においても存在感を高めています。2023年に中国・杭州で開催されたアジア競技大会では、eスポーツが正式なメダル競技として採用されました。
また、2026年の愛知・名古屋アジア競技大会でも、eスポーツが正式競技として実施されます。さらに、2024年に開催されたEsports World Cupでは、約500チーム、約1,500人の選手が参加し、賞金総額は6,000万ドルを超えました。
このように、eスポーツ大会は、参加国の増加・賞金額の高額化・プロチームの国際化・スポンサー企業の増加・長期間開催される国際大会の増加という方向に進んでいます。
今後、日本でも国際大会や海外選手を招いたイベントが増えれば、外国人選手の在留資格に関する確認は、大会運営における重要な業務の一つになります。
海外eスポーツ選手はどの在留資格で来日するのか
外国人が日本で活動する場合は、その活動内容に適合する在留資格を持っている必要があります。出入国在留管理庁は、在留資格「興行」について、次の活動を対象として掲げています。
演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動またはその他の芸能活動
代表例として、俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手などが示されています。eスポーツ選手については、来日する選手全員が一律に「興行」に該当すると断定できるものではありません。
しかし、プロ選手が日本で開催される大会やイベントに出場し、日本側から出演料、参加報酬、契約報酬などを受ける場合には、在留資格「興行」の該当性を検討する必要があります。
一方で、活動内容や報酬の性質によっては、短期滞在など別の整理が検討される場合もあります。重要なのは、選手の肩書きだけで判断するのではなく、日本で実際に何をするのかを確認することです。
「eスポーツ選手だから興行ビザ」とは限らない
在留資格を判断する際には、単に「プロ選手であるか」だけでなく、次のような事情を総合的に確認します。
例えば、同じ大会参加でも、次の2つでは判断材料が異なります。
大会主催者、所属チーム、代理店との情報共有を早い段階から進め、選手を招へいできる体制を整える必要があります。
短期滞在と興行ビザの違い
大会主催者から特に多いのが、「滞在が数日間だけなら、短期滞在でよいのではないか」というご質問です。しかし、滞在期間が短いことだけで、短期滞在が認められるとは限りません。
判断の中心になるのは、滞在日数ではなく、日本で行う活動の内容です。
「3日間しか日本にいない」という場合でも、日本で報酬を受けて興行活動を行うのであれば、興行ビザの検討が必要になる可能性があります。
反対に、単に大会へ参加するという事実だけで、必ず興行ビザになるわけでもありません。実際の判断には、大会概要、契約内容、報酬の性質などの確認が必要です。
賞金付き大会なら必ず興行ビザになるのか
賞金が設定されている大会だからといって、それだけで一律に興行ビザが必要になるとは限りません。確認すべきなのは、その金銭が何に対して支払われるものかという点です。
例えば、順位に応じて支払われる賞金と、大会への出場を条件として必ず支払われる出演料では、性質が異なります。また、賞金だけを確認するのでは不十分です。選手が大会の前後に、
●スポンサー企業の広告撮影
●商品PR
●ファンミーティング
●トークイベント
●配信番組への出演
●ゲーム会社のプロモーション
●店舗イベントへの出演
などを行う場合は、それぞれの活動内容も含めて在留資格を確認する必要があります。
選手以外のスタッフも確認が必要
海外チームを招へいする場合、来日するのは選手だけとは限りません。一般的には、次のような関係者が同行します。
この場合、全員に同じ在留資格を当てはめるのではなく、それぞれが日本で行う活動を確認します。関係者別の主な確認事項は以下のとおりです。
選手のビザだけを準備し、同行スタッフの確認が漏れてしまうこともあります。招へい者全員について、氏名、役割、活動内容、報酬、滞在期間を一覧化することが重要です。
招へい側が準備すべき資料
興行ビザを申請する場合、外国人本人に関する資料だけでなく、日本側の招へい企業や大会主催者に関する資料も必要になります。
具体的な必要書類は、活動内容、興行の形態、申請人の実績などによって異なりますが、一般的には次のような資料を整理します。
大会名や選手名だけではなく、誰が、誰と契約し、誰が報酬を支払い、選手が日本でどのような活動を行うのかを明確に説明する必要があります。
契約書と実際の運営内容を一致させる
ビザ申請では、契約書の記載内容と実際の大会運営が一致していることが重要です。例えば、契約書には「大会出場のみ」と記載されている一方で、実際には、商品の広告撮影・スポンサー企業のイベント出演・有料ファンミーティング・ライブ配信への出演・店舗でのPR活動を予定している場合、申請内容と実際の活動内容にずれが生じます。
また、報酬についても、契約書では無報酬とされているにもかかわらず、別名目で出演料を支払うことは避けなければなりません。ビザ申請のためだけに形式的な契約書を作るのではなく、実際の取引内容を正確に反映した契約書を作成することが重要です。
大会開催までのスケジュール
海外選手の招へいでは、大会直前にビザの準備を始めても間に合わない可能性があります。
特に、在留資格認定証明書の交付申請を行い、その後、外国人本人が現地の日本大使館・総領事館で査証申請を行う場合は、一定の準備期間が必要です。
これは一般的な目安であり、申請内容、選手の国籍、開催時期、入管の審査状況などによって異なります。
招へい選手が多数いる場合や、複数の国・地域から選手を招へいする場合は、さらに早い段階から準備することをおすすめします。
大会直前に相談すると何が起きるのか
在留資格の確認が遅れた場合、単に「ビザが間に合わない」という問題だけでは済まない可能性があります。
想定される主な影響は以下のとおりです。
海外の著名選手を大会の目玉として招へいする場合、その選手が入国できないことによる影響は非常に大きくなります。そのため、ビザは大会開催直前に処理する付随的な手続きではなく、大会企画の一部として管理すべき事項です。
よくある誤解
eスポーツは新しい分野であるため、「興行ビザは不要では?」「短期間なら観光ビザで大丈夫?」といった誤解も少なくありません。まずは、よくある勘違いについて確認していきましょう。
eスポーツ市場の拡大に伴い、海外のプロ選手やチームを日本へ招聘する機会は今後さらに増えていくことが予想されます。
一方で、活動内容によっては「興行」の在留資格が必要となるケースも多く、誤った在留資格で来日するとイベントの中止や入国トラブルにつながるおそれがあります。海外選手の招聘をご検討の際は、企画段階から在留資格の要否を確認し、適切な手続きを進めることが重要です。
招へい前のチェックリスト
海外eスポーツ選手の来日が決まった場合は、少なくとも次の事項を確認してください。
当事務所がサポートできること
当事務所では、海外eスポーツ選手、プロチーム、コーチ、実況者、ストリーマーなどを日本へ招へいする企業・団体に対し、在留資格に関するサポートを行います。
単発の申請だけでなく、今後も継続して海外選手を招へいする主催者・ゲーム会社に対しては、社内で確認すべき事項や申請準備の標準化についてもご相談いただけます。
企画段階でのご相談が重要です
海外eスポーツ選手の招へいでは、選手が決定してからビザを検討するのではなく、大会の企画段階から在留資格を確認することが理想です。
特に、次のような場合は早めの確認をおすすめします。
☑海外のプロ選手を指名して招待する
☑出演料や参加報酬を支払う
☑賞金付き大会を開催する
☑スポンサーイベントにも出演してもらう
☑配信や広告撮影を予定している
☑海外チームをまとめて招へいする
☑複数国から選手が来日する
☑大会開催日が既に決まっている
☑航空券やホテルを先に予約する予定がある
☑著名選手を大会の目玉として告知する
契約内容が確定した後に在留資格上の問題が判明すると、契約や大会内容を変更しなければならない場合があります。早い段階で確認することで、ビザ手続きに合わせた契約書や大会スケジュールを設計できます。
まとめ
日本のeスポーツ市場は継続的に成長しており、2024年の市場規模は約161億円、2026年には200億円を超えると予測されています。また、イベント運営とスポンサー関連が市場の大きな部分を占めていることから、今後、日本で海外選手を招へいする大会やイベントはさらに増えていくと考えられます。
一方、海外eスポーツ選手が日本の大会に参加する場合、すべてのケースで同じ在留資格になるわけではありません。判断するためには、大会の内容・選手の活動内容・出演料や賞金・日本側との契約関係・滞在期間・大会以外の出演予定・同行スタッフの役割などを総合的に確認する必要があります。
「数日間だから短期滞在でよい」「賞金だけなので報酬には当たらない」「海外から給与を受けているので問題ない」と自己判断することは避け、大会の企画段階から専門家に確認することが重要です。
海外eスポーツ選手やプロチームの日本への招へい、興行ビザの申請、招へいスケジュールについてお困りの企業・団体様は、アソシエイツ稲福国際行政書士事務所までご相談ください。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直
















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