日本で働く外国人は、2025年10月末時点で257万1,037人と過去最多。 一方、2025年中に退去強制手続等を受けた1万8,442人のうち、 不法就労が確認された外国人は1万3,435人でした。
国籍別ではベトナム5,872人、タイ3,267人、インドネシア1,409人が上位。 ただし、母数や在留資格、地域、産業などを合わせて見ると、 不法就労は国籍だけでは説明できない構造的な問題です。
2026年1月1日現在の不法残留者は6万8,488人で、前年比8.5%減。 外国人労働者が増える一方、不法残留者は減少しており、 「外国人が増える=不法滞在も増える」という単純な関係ではありません。
就労場所別では茨城県が3,518人で最多。 関東1都6県で1万268人、全体の76.4%を占めています。
職種別では農業5,227人、建設4,011人で、この2職種だけで68.8%。 タイ人3,267人のうち茨城県1,681人、千葉県880人と、 特定地域への集中も目立ちます。
国籍 × 地域 × 産業 × 在留資格 × 雇用ルート
まで見ることが重要です。
こんにちは。行政書士の稲福です。
外国人材に関するニュースやSNSを見ていると、「外国人労働者が増えている」「不法滞在者が増えている」「不法就労をもっと厳しく取り締まるべきだ」といった議論を目にする機会が増えました。
確かに、日本で働く外国人は急速に増えています。厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人。前年から26万8,450人増加し、過去最多となりました。
しかし、不法就労や不法残留の問題を考えるときに、単純に「外国人が何人いるのか」だけを見ても実態は分かりません。例えば、不法就労が確認された外国人を見ると、国籍だけでなく、働いている地域や職種にかなり大きな偏りがあります。
一方、不法残留者については、外国人労働者が増加しているにもかかわらず、直近では減少しています。今回は、出入国在留管理庁や厚生労働省が公表している統計をもとに、「日本では、どのような外国人の不法就労・不法残留が起きているのか」をデータから見ていきたいと思います。
- 日本ではどれくらいの不法就労が確認されているのか
- 不法就労が確認された外国人が多い国籍はどこか
- 外国人雇用人数と比較すると何が見えるのか
- なぜタイの数字が目立つのか
- 不法残留者は増えているのか、減っているのか
- 国籍別の不法残留者数はどう変化しているのか
- 不法就労はどの地域・産業に集中しているのか
- 外国人を雇用する企業が注意すべきこと

- まず「不法就労」と「不法残留」は同じではない
- 在留外国人全体で見れば、不法残留・不法就労はごく一部
- 日本で働く外国人は257万人を超えた
- 不法就労が確認された外国人は1万3,435人
- 国籍別ではベトナムが最多
- 外国人雇用人数と比較すると見え方が変わる
- 「タイ人の7.88%が不法就労している」という意味ではない
- それでもタイの数字は特徴的
- 不法就労の約7割が「農業」と「建設」
- 不法残留者は現在6万8,488人
- 国籍別に見ると動きは大きく異なる
- ベトナムは2024年をピークに減少
- タイは不法残留者数でも第2位
- スリランカは増加が続いている
- カンボジアは一時14倍以上に増加
- 不法残留者で圧倒的に多いのは「短期滞在」
- 不法滞在・不法就労への対応は厳格化へ
- 日本側の企業も注意が必要
- 「外国人を厳しくする」だけでは解決しない
- 不法就労は「外国人雇用の構造問題」でもある
- 専門家としての立場から
- まとめ
まず「不法就労」と「不法残留」は同じではない
最初に整理しておきたいのが、「不法就労」と「不法残留」は同じ意味ではないということです。不法残留とは、在留期限を過ぎても日本に在留している、いわゆるオーバーステイの状態です。
一方、不法就労には、不法残留者が働いているケースだけでなく、
・就労することが認められていない外国人が働く
・現在の在留資格で認められた範囲を超えて働く
・資格外活動許可を受けずに働く
・留学生などが資格外活動許可で認められた時間を超えて働く
といったケースも含まれます。
例えば、留学生が資格外活動許可を受けずにアルバイトをしたり、原則週28時間の範囲を超えて働いたりするケースも不法就労になり得ます。したがって、「不法残留者数=不法就労者数」ではありません。この二つを分けて数字を見ることが、不法就労問題を理解する最初のポイントです。
在留外国人全体で見れば、不法残留・不法就労はごく一部
まず大前提として押さえておきたいのは、不法残留者や不法就労者は、在留外国人全体から見ればごく一部にすぎないということです。
2025年末の在留外国人数は412万5,395人です。一方、2026年1月1日現在の不法残留者は6万8,488人。在留外国人数と単純比較すると約1.66%に相当します。また、2025年中に不法就労が確認された外国人は1万3,435人で、在留外国人数との単純比較では約0.33%です。
ただし、これらは集計時点や対象が異なるため、「不法残留率」「不法就労率」を示す数字ではありません。あくまで全体の規模感を把握するための参考値です。重要なのは、400万人を超える在留外国人の大多数は適法に在留しているということです。
| 区分 | 人数 | 在留外国人数との参考比較 |
|---|---|---|
| 在留外国人 | 4,125,395人 | 基準 |
| 不法残留者 | 68,488人 | 約1.66% |
| 不法就労確認者 | 13,435人 | 約0.33% |
※不法残留者は在留外国人数の内数ではありません。
※不法就労確認者13,435人は、2025年中に退去強制手続等を受けた外国人のうち、不法就労の事実が確認された人数です。
※したがって、これらの数字は「不法残留率」「不法就労率」を示すものではありません。
出典:出入国在留管理庁
不法就労や不法残留には厳格に対応する。一方で、一部の違反事例を外国人全体の問題として捉えない。この点を大前提として、ここから不法就労・不法残留の実態をデータで見ていきます。
日本で働く外国人は257万人を超えた
2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人となりました。前年から26万8,450人増加しています。国籍別では、
| 順位 | 国籍 | 外国人労働者数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | ベトナム | 605,906人 | 23.6% |
| 2 | 中国 | 431,949人 | 16.8% |
| 3 | フィリピン | 260,869人 | 10.1% |
| 4 | ネパール | 235,874人 | 9.2% |
| 5 | インドネシア | 228,118人 | 8.9% |
| 6 | ミャンマー | 163,311人 | 6.4% |
| 7 | ブラジル | 134,645人 | 5.2% |
| 8 | 韓国 | 80,193人 | 3.1% |
| 9 | スリランカ | 50,427人 | 2.0% |
| 10 | タイ | 41,468人 | 1.6% |
※TOP10合計は2,232,760人、その他は338,277人です。
※割合は小数第2位を四捨五入しているため、表示値の合計が100%と一致しない場合があります。
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)
なんと、ベトナム人だけで60万人を超えております。
外国人雇用は、もはや一部の企業だけに関係する話ではありません。製造、建設、介護、外食、宿泊、農業、物流など、日本全国のさまざまな産業を外国人材が支えるようになっています。
外国人労働者の増加と同時に、企業側の適正な在留・就労管理もこれまで以上に重要になっています。
| 国籍 | 総数 | 専門的・技術的 | うち技人国 | うち特定技能 | 特定活動 | 技能実習 | 資格外活動 | 身分系 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ベトナム | 605,906 | 229,983 | 112,301 | 109,967 | 31,080 | 218,600 | 102,475 | 23,768 |
| 中国 | 431,949 | 185,337 | 136,474 | 15,697 | 5,768 | 30,521 | 63,944 | 146,378 |
| フィリピン | 260,869 | 46,262 | 11,419 | 26,634 | 6,414 | 47,019 | 3,751 | 157,421 |
| ネパール | 235,874 | 62,625 | 43,249 | 10,271 | 3,843 | 4,414 | 157,546 | 7,445 |
| インドネシア | 228,118 | 83,053 | 9,887 | 69,465 | 10,677 | 119,980 | 6,646 | 7,762 |
| ミャンマー | 163,311 | 55,093 | 15,835 | 37,619 | 31,882 | 36,986 | 34,809 | 4,540 |
| ブラジル | 134,645 | 1,247 | 819 | 26 | 214 | 46 | 578 | 132,560 |
| 韓国 | 80,193 | 35,524 | 30,656 | 402 | 3,738 | 16 | 6,893 | 34,021 |
| スリランカ | 50,427 | 17,072 | 13,287 | 3,118 | 2,843 | 2,855 | 24,095 | 3,562 |
| タイ | 41,468 | 11,141 | 3,696 | 4,526 | 1,034 | 13,663 | 1,772 | 13,858 |
※「技人国」「特定技能」は「専門的・技術的分野」の内数です。
※構成比グラフは各国籍の外国人労働者総数を100%として表示しています。
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)
不法就労が確認された外国人は1万3,435人
2025年中に入管法違反によって退去強制手続等を受けた外国人は1万8,442人でした。そのうち、不法就労の事実が確認された外国人は1万3,435人です。
| 年 | 不法就労確認人数 |
|---|---|
| 2018年 | 10,086人 |
| 2019年 | 12,816人 |
| 2020年 | 10,993人 |
| 2021年 | 13,255人 |
| 2022年 | 6,355人 |
| 2023年 | 12,384人 |
| 2024年 | 14,453人 |
| 2025年 | 13,435人 |
※日本国内に存在するすべての不法就労者数を示すものではありません。
出典:出入国在留管理庁「入管法違反事件について」各年公表資料
近年の推移を見ると、2022年には6,355人まで減少しましたが、その後再び増加し、2024年には1万4,453人となりました。2025年は前年より1,018人減少したものの、依然として1万人を大きく超えています。
国籍別ではベトナムが最多
2025年の不法就労確認人数を国籍別に見ると、
| 順位 | 国籍 | 不法就労確認人数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | ベトナム | 5,872人 | 43.7% |
| 2 | タイ | 3,267人 | 24.3% |
| 3 | インドネシア | 1,409人 | 10.5% |
| 4 | 中国 | 997人 | 7.4% |
| 5 | フィリピン | 453人 | 3.4% |
| 6 | カンボジア | 445人 | 3.3% |
| 7 | スリランカ | 297人 | 2.2% |
| 8 | ネパール | 209人 | 1.6% |
| 9 | ウズベキスタン | 84人 | 0.6% |
| 10 | 韓国 | 79人 | 0.6% |
となっています。最も多いのはベトナムで5,872人。全体の43.7%を占めています。
数字だけを見ると、ベトナム人の不法就労が突出しているようにも見えます。しかし、ベトナムは日本で働く外国人そのものが60万人を超えています。
外国人雇用人数と比較すると見え方が変わる
そこで、外国人雇用人数と比較してみます。
| 国籍 | 外国人雇用人数 | 不法就労確認人数 | 参考比率 |
|---|---|---|---|
| ベトナム | 605,906人 | 5,872人 | 0.97% |
| タイ | 41,468人 | 3,267人 | 7.88% |
| インドネシア | 228,118人 | 1,409人 | 0.62% |
| 中国 | 431,949人 | 997人 | 0.23% |
| フィリピン | 260,869人 | 453人 | 0.17% |
| スリランカ | 50,427人 | 297人 | 0.59% |
| ネパール | 235,874人 | 209人 | 0.09% |
| 韓国 | 80,193人 | 79人 | 0.10% |
※参考比率は国籍間の数字を比較するための参考値であり、不法就労率を示すものではありません。
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ、出入国在留管理庁「入管法違反事件について」
ここで特に目立つのがタイです。日本で雇用されているタイ人は約4万1,000人ですが、2025年中に不法就労の事実が確認されたタイ人は3,267人。単純に割り算すると7.88%となります。
「タイ人の7.88%が不法就労している」という意味ではない
ここは非常に重要です。この7.88%を、「日本で働くタイ人の7.88%が不法就労している」と読むことはできません。外国人雇用人数は、2025年10月末という一時点で雇用されていた外国人労働者数です。
一方、不法就労確認人数は、2025年の1年間に退去強制手続等を受けた外国人のうち、不法就労が確認された人数です。つまり、一時点の外国人雇用人数と1年間に確認された不法就労者数という、性質の異なる数字を比較しています。
さらに、不法残留しながら働いている外国人が、外国人雇用状況届出に適正に含まれているとは限りません。したがって、この数字は「不法就労率」ではありません。あくまで、国籍ごとの雇用規模と不法就労確認人数の大きさを比較するための参考値として見るべきです。
それでもタイの数字は特徴的
それでも、タイの数字には非常に特徴があります。2025年に不法就労が確認されたタイ人3,267人のうち、茨城県 1,681人、千葉県 880人となっています。なんと、この2県だけで2,561人です。タイ人の不法就労確認人数全体の約78%が、茨城県と千葉県に集中しています。
ここまで地域的な偏りがあるのであれば、「タイ人だから不法就労が多い」と考えるだけでは実態を捉えられません。むしろ、「特定の地域、産業、入国経路、雇用ルートなどに問題が集中しているのではないか」という視点で見る必要があります。
不法就労の約7割が「農業」と「建設」
2025年に不法就労が確認された1万3,435人を職種別に見ると、
・農業従事者 5,227人(38.9%)
・建設作業者 4,011人(29.9%)
となっています。この2職種だけで9,238人。全体の68.8%を占めています。
さらに就労場所別では、茨城県が3,518人で全国最多。関東1都6県だけで1万268人となり、全国の76.4%を占めています。ここまで数字が偏っている以上、不法就労問題を「外国人全体の問題」としてだけ捉えるべきではありません。国籍×地域×産業まで見ていく必要があります。
タイ人の不法就労確認人数が茨城県・千葉県に集中している背景を考えるうえでは、 国籍だけでなく、地域、産業、在留資格、入国経路、雇用ルートまで見ることが重要です。 以下の資料・記事が参考になります。
2025年の不法就労確認人数、国籍別・都道府県別・職種別の公式統計。 茨城県3,518人、関東1都6県76.4%、農業・建設で68.8%などを確認できます。
公式資料を見る →2024年の茨城県内の不法就労者は3,452人。 就労先の75%が農業で、国籍別ではタイが1,487人で最多と報じられています。 「タイ × 茨城 × 農業」という集中を考えるうえで参考になります。
記事を見る →鉾田地域の事例を紹介した記事。 不法就労先について、ブローカー、SNS、既に働いている技能実習生からの紹介などのケースがあると報じられています。 入国後の雇用ルートまで見る必要性を考えるうえで参考になります。
記事を見る →不法残留者は現在6万8,488人
次に、不法就労と関係の深い「不法残留」を見てみます。日本の不法残留者は、1993年5月1日時点で29万8,646人に達していました。約30万人です。その後、大幅に減少し、2014年1月1日には5万9,061人となりました。
| 年 | 不法残留者数 |
|---|---|
| 2020年 | 82,892人 |
| 2021年 | 82,868人 |
| 2022年 | 66,759人 |
| 2023年 | 70,491人 |
| 2024年 | 79,113人 |
| 2025年 | 74,863人 |
| 2026年 | 68,488人 |
出典:出入国在留管理庁「本邦における不法残留者数について」各年公表資料
2024年には7万9,113人まで増加しましたが、2025年に74,863人、2026年に68,488人と2年連続で減少しました。2026年は前年から6,375人、8.5%の減少です。
外国人労働者数は過去最多を更新しています。その一方で、不法残留者数は直近では減っています。この点は、外国人政策を考えるうえで非常に重要だと思います。
国籍別に見ると動きは大きく異なる
2026年1月1日現在の不法残留者を国籍別に見てみましょう。
| 順位 | 国籍 | 不法残留者数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | ベトナム | 11,601人 | 16.9% |
| 2 | タイ | 10,907人 | 15.9% |
| 3 | 韓国 | 10,020人 | 14.6% |
| 4 | 中国 | 5,827人 | 8.5% |
| 5 | フィリピン | 4,393人 | 6.4% |
| 6 | インドネシア | 4,248人 | 6.2% |
| 7 | 台湾 | 2,601人 | 3.8% |
| 8 | スリランカ | 2,091人 | 3.1% |
| 9 | トルコ | 1,228人 | 1.8% |
| 10 | カンボジア | 1,044人 | 1.5% |
※TOP10の合計は53,960人で、全体の約78.8%を占めます。
出典:出入国在留管理庁「本邦における不法残留者数について(令和8年1月1日現在)」
ここでも、国籍によって動きが大きく異なります。
ベトナムは2024年をピークに減少
ベトナム人の不法残留者は、2022年→7,148人、2023年→13,708人、2024年→15,806人と急増しました。
しかし、その後は、2025年→14,296人、2026年→11,601人と減少しています。2025年から2026年だけでも2,695人減少しました。それでも、国籍別では現在も最多です。
一方、日本で働くベトナム人は60万人を超えています。不法就労と同様、不法残留についても絶対数だけを見るのではなく、日本に在留・就労する人数全体との関係を見る必要があります。
ベトナム政府は、2026年9月10日から施行される政令283/2026/NĐ-CPにより、 契約終了後などに自ら海外へ違法に残留するベトナム人労働者について、 一定の場合に8,000万~1億ドンの罰金を科す規定を設けました。
日本などで不法に滞在するベトナム人への罰則強化と、 施行を前に日本の入管へ出頭するベトナム人が増えている状況を報じています。
記事を見る →政令第53条について、日本で生活・就労するベトナム国民向けに総領事館が注意喚起。 契約終了後などに自ら海外へ違法に残留する一定のケースでは、 8,000万~1億ドンの罰金が科されると説明しています。
総領事館の公式情報を見る →※罰金はベトナム法によるもので、日本の入管法上の処分とは別の制度です。
タイは不法残留者数でも第2位
タイ人の不法残留者は2026年1月1日現在で1万907人です。ベトナムに次いで第2位となっています。
2022年→7,783人、2023年→9,549人、2024年→11,494人と増加した後、2025年→11,337人、2026年→10,907人と減少に転じています。タイは、不法就労確認人数でも第2位、不法残留者数でも第2位です。
さらに、不法就労確認者の約78%が茨城県と千葉県に集中しています。単純な国籍別対策だけではなく、地域、産業、入国経路、雇用ルートを組み合わせて分析する必要がありそうです。
スリランカは増加が続いている
スリランカの不法残留者は、下記グラフのように推移しております。
2020年と比較すると、ほぼ2倍です。
人数そのものはベトナムやタイより少ないものの、継続的に増加している点では注目したい数字です。実際、2026年1月1日現在の上位10か国・地域の中で、前年から増加したのはスリランカだけでした。
カンボジアは一時14倍以上に増加
カンボジアの不法残留者は2020年には121人でした。それが、2021年→266人、2022年→491人、2023年→1,185人、2024年→1,731人まで増加しました。2020年から2024年までの4年間で14倍以上です。
その後は、2025年→1,380人、2026年→1,044人と減少しています。
このように、不法残留については現在の人数だけを見るのではなく、数年間の推移を見ることが重要です。
不法残留者で圧倒的に多いのは「短期滞在」
2026年1月1日現在の不法残留者6万8,488人を、不法残留となった時点の在留資格別に見ると、
・短期滞在 41,607人
・技能実習 9,323人
・特定活動 7,306人
・留学 2,173人
・日本人の配偶者等 1,724人
となっています。
圧倒的に多いのが短期滞在です。4万1,607人で、不法残留者全体の6割を超えています。
外国人の不法就労や不法残留というと、技能実習生や留学生に目が向きがちです。しかし、不法残留という観点で見ると、短期滞在が圧倒的に多いことが分かります。
ただし、短期滞在の不法残留者4万1,607人全員が不法就労しているという意味ではありません。ここでも、不法残留と不法就労は分けて考える必要があります。
不法滞在・不法就労への対応は厳格化へ
2025年5月23日、出入国在留管理庁は「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を公表しました。さらに2026年には、「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」が示されています。
出入国在留管理庁は、不法滞在者への対応を強化しています。 2025年5月に「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を公表し、 2026年5月には、さらに「摘発の強化」などを加えた 「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」を公表しました。
「入国管理」「在留管理・難民審査」「出国・送還」の3段階に分け、 ルールを守らない外国人への対応や速やかな送還などの具体策をまとめたものです。
2025年 ゼロプランを見る →2025年のゼロプランをさらに強力に推進するため、 約6万8千人の不法残留者を確実に減少させる観点から、 「摘発の強化」を新たな施策として加えるなど、重点的な対策をまとめています。
2026年 強力推進パッケージを見る →入国管理、在留管理・難民審査、出国・送還など、それぞれの段階で不法滞在者を増やさない、そして減らすための対策を進める方針です。
今後の外国人政策は、適法に在留・就労する外国人材の受入れは進める一方で、不法滞在・不法就労には厳格に対応するという方向性が、より明確になっていくと考えられます。
日本側の企業も注意が必要
不法就労は、外国人本人だけの問題ではありません。外国人を不法就労させたり、不法就労をあっせんしたりした場合には、企業や雇用主側も不法就労助長罪に問われる可能性があります。
警視庁は、外国人を雇用する事業主に対し、 在留カードや旅券を確認し、 在留資格・在留期間・就労制限・資格外活動許可の有無などを確認したうえで、 その外国人を適法に雇用できるか確認すること を求めています。
・在留資格と在留期限
・表面の「就労制限の有無」
・裏面の「資格外活動許可欄」
・実際に担当させる業務が在留資格の範囲内か
そして重要なのが、「不法就労者だとは知らなかった」というだけで、必ず責任を免れるわけではないという点です。外国人を雇用するときに在留カードを確認していないなど、企業側に過失がある場合には、処罰を免れない可能性があります。
現在の法定刑は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。さらに、2027年4月1日からは、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金へ引き上げられます。
2024年6月21日に公布された改正法では、 入管法第73条の2第1項について、 「三年」を「五年」に、「三百万円」を「五百万円」に改める と明記されています。
したがって、外国人を雇用する企業にとって、 不法就労の防止や在留資格・就労可能範囲の確認は、 これまで以上に重要なコンプライアンス事項となります。
外国人を採用する際には、 在留カードの有効性だけでなく、 在留資格、就労制限の有無、資格外活動許可、 さらに 実際に担当させる業務がその在留資格で認められているか まで確認することが重要です。
▶ 衆議院「改正法」の条文を確認する外国人を採用する企業には、在留カードの確認、在留期限の確認、就労制限の有無、在留資格の確認、仕事内容と在留資格の整合性、資格外活動許可の有無、留学生等の就労時間などを適切に確認することが求められます。
厚生労働省も、外国人雇用状況の届出にあたり、在留カードや旅券等によって在留資格・在留期間などを確認するよう事業主に求めています。
「外国人を厳しくする」だけでは解決しない
ここまでデータを見てくると、不法就労の問題は単純な「外国人問題」ではないことが分かります。2025年の不法就労確認者を見ると、関東1都6県に76.4%が集中、農業・建設に68.8%が集中、タイ人不法就労確認者の約78%が茨城県と千葉県に集中しています。
ここまでデータを見てくると、不法就労の問題は、 単純な「外国人問題」ではないことが分かります。 2025年の不法就労確認者を見ると、地域・産業・国籍ごとに 非常に大きな偏りが確認できます。
ここまで偏りがあるのであれば、「外国人全体をどうするか」という議論だけでは十分ではありません。
・なぜ、その地域や産業で不法就労が発生するのか
・人手不足が背景にあるのか
・適法な外国人材を採用するルートが不足していないか
・ブローカーや違法な職業紹介が介在していないか
・企業側が在留資格を理解しないまま外国人を雇用していないか
・外国人本人が日本の在留・就労制度を十分理解できているか。
こうしたところまで見なければ、根本的な解決にはならないと思います。
不法就労は「外国人雇用の構造問題」でもある
外国人労働者は257万人を超えました。日本の人口減少が進む中で、外国人材を雇用する企業は今後さらに増えていくでしょう。その一方で、不法就労や不法残留については、より厳格な管理が求められる方向にあります。
だからこそ必要なのは、「外国人を増やすのか、減らすのか」という二択の議論だけではありません。見るべきなのは、
・どの国籍が増えているのか
・どの在留資格で入国しているのか
・どの産業で働いているのか
・どの地域で問題が発生しているのか
・どのようなルートで就職しているのか
・企業側は適正な雇用管理を行っているのか
という構造です。
不法就労問題は、外国人本人だけの問題ではありません。外国人を採用し、働いてもらう日本社会側の制度、企業、紹介ルート、労働市場のあり方も同時に映し出している数字だと思います。
専門家としての立場から
行政書士として外国人の在留資格や外国人雇用に関わっていると、私は「外国人の数が増えた」という数字だけでは判断しないことが大切だと感じます。
実際、外国人労働者は過去最多の257万人を超えています。しかし、不法残留者は1993年の約30万人から大幅に減少し、2026年1月1日現在では6万8,488人です。そして2025年、2026年と2年連続で減少しています。
一方、不法就労を見ると、農業や建設、関東の一部地域などに大きく集中しています。つまり、外国人が増えているから問題が増えているというより、どのような在留資格で日本に入り、どの地域で、どの産業で、誰を通じて就職し、企業がどのように雇用管理しているのかを見る必要があります。
また、不法就労対策を厳しくすること自体は必要だと思います。しかし同時に、人手不足の企業が適法に外国人材を採用できるルートを整えなければ、根本的な解決にはつながりません。
違法な雇用を取り締まる。適法な外国人雇用を増やす。この二つを同時に進めていくことが重要だと考えています。
まとめ
2025年に不法就労の事実が確認された外国人は1万3,435人でした。国籍別では、ベトナム 5,872人、タイ 3,267人、インドネシア 1,409人が上位となっています。
一方、2026年1月1日現在の不法残留者は6万8,488人で、前年から8.5%減少しています。データを詳しく見ると、
・不法就労の68.8%が農業・建設
・76.4%が関東1都6県
・タイ人不法就労確認者の約78%が茨城県・千葉県
・不法残留者の6割超が短期滞在
・国籍によって不法残留者数の増減傾向が大きく異なる
という特徴があります。
つまり、「外国人が増えたから不法就労が増えた」「この国籍だから不法就労が多い」という単純な見方だけでは、実態を正しく捉えることはできません。重要なのは、国籍 × 在留資格 × 地域 × 産業 × 雇用企業という複数の視点を組み合わせて考えることです。
今後、日本は人手不足を背景として外国人材の受入れをさらに進めていくことになります。その一方で、不法就労助長罪の厳罰化や不法滞在者対策の強化など、ルールを守らない在留・雇用に対しては、これまで以上に厳格な対応が行われていくでしょう。
だからこそ外国人材を受け入れる企業側にも、「外国人を採用できるか」だけではなく、「適法に採用し、適法に働き続けてもらう仕組みをつくれるか」という視点が求められます。
外国人材の受入れ拡大と、適正な在留・就労管理。この二つを同時に進めていくことが、これからの外国人政策には必要なのだと思います。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直
<参考資料>
・出入国在留管理庁
「令和7年における入管法違反事件について」
・出入国在留管理庁
「本邦における不法残留者数について(令和8年1月1日現在)」
・出入国在留管理庁
「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」
・出入国在留管理庁
「不法滞在者ゼロプラン~強力推進パッケージ~」
・厚生労働省
「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」
参考資料の公式ページはこちらです。
入管庁|令和7年における入管法違反事件について
入管庁|令和8年1月1日現在の不法残留者数
厚生労働省|外国人雇用状況(令和7年10月末時点)















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