高度専門職1号の指定書には、審査の結果、 複数の契約機関・活動機関が記載される場合があります。 そのため、「高度専門職1号は必ず1社でしか働けない」 という説明は正確ではありません。
出入国在留管理庁の資料は、高度専門職1号イ・ロについて 「契約機関が複数ある場合」、 1号ハについて 「活動機関が複数ある場合」 を明示的に想定しています。
複数の会社で自由に副業できるという意味ではありません。 新たな勤務先で活動する場合は、 複数機関を指定対象とする在留資格変更許可、 個別の資格外活動許可、または現在の在留資格の範囲内の活動 のいずれに当たるかを、活動開始前に確認する必要があります。
こんにちは。行政書士の稲福です。
高度専門職1号について、次のような質問を受けることがあります。
「本業を続けながら、別の会社でも専門業務を行うことはできますか」
「2社目は資格外活動許可を取ればよいのでしょうか」
結論からいうと、高度専門職1号の指定書に複数の所属機関が記載される場合はあります。ただし、複数社勤務、資格外活動、転職は、それぞれ別の問題です。
この記事では、高度専門職1号の指定書に複数の勤務先を記載できる場合、資格外活動許可との違い、新たな勤務先を追加するときの手続、企業側の確認事項を整理します。
高度専門職の基本、ポイント制、技人国との違い、永住申請の優遇については、次の記事で詳しく解説しています。
- 高度専門職1号の指定書に複数の勤務先が記載される場合
- 「複数の勤務先」と「複数の就労場所」の違い
- 高度専門職1号イ・ロ・ハによる活動範囲の違い
- 複数指定と資格外活動許可の使い分け
- 新たな勤務先を追加するときに必要となる手続
- 資格外活動による収入と高度人材ポイントの関係
- 採用企業が在留カードと指定書で確認すべき事項

高度専門職とは
在留資格「高度専門職」は、学歴、職歴、年収、年齢、日本語能力などをポイント化し、一定以上の評価を受けた高度外国人材を対象とする在留資格です。
活動内容によって、次の3つに分かれます。
原則として70ポイント以上が必要で、高度専門職1号には5年の在留期間や、永住許可要件の緩和、配偶者の就労、一定の場合の親・家事使用人の帯同などの優遇措置があります。
一方で、高度専門職1号は、指定された機関や活動内容との結び付きが強い在留資格です。そのため、転職や複数の会社での勤務を考える場合は、パスポートに添付された「指定書」の確認が重要になります。
高度専門職1号は複数の会社で働ける
高度専門職1号では、法務大臣が指定した機関や活動内容が、パスポートに添付される「指定書」に記載されており、原則として、外国人本人は指定書に記載された機関と活動の範囲内で就労しなければなりません。
ただし、指定される機関が必ず1社に限定されるわけではありません。複数の企業、大学、研究機関などと契約し、それぞれで行う活動が高度専門職の活動に該当する場合には、個別の審査を受けたうえで、複数の契約機関・活動機関が指定の対象となる場合があります。
出入国在留管理庁の「所属(活動・契約)機関とは?」という資料でも、次のケースが明記されています。
出入国在留管理庁の資料でも、高度専門職について 複数の契約機関・活動機関がある場合が想定されており、 該当する場合には全ての機関について届出が必要となるケースが示されています。
所属(活動・契約)機関とは?|出入国在留管理庁「複数の勤務先」と「複数の就労場所」は異なる
実務では、「勤務先」という言葉の意味を整理する必要があります。
指定書との関係で特に重要なのは、単なる作業場所ではなく、誰と契約し、どの機関で、どのような活動を行うのかという点です。「働く場所が2か所ある」ことと、「所属機関が2社ある」ことは同じではありません。
高度専門職1号イ・ロ・ハで取扱いが異なる
高度専門職1号は、活動内容によってイ・ロ・ハの3類型に分かれています。複数の機関で活動できるかを判断するときも、どの類型に該当するかが重要です。
高度専門職1号イでは、指定された機関での主たる研究・教育活動を継続しながら、他の機関で研究・研究指導・教育を行う活動が、法律上の活動範囲に含まれる場合があります。
一方、高度専門職1号ロ・ハで認められている複合的活動の中心は、主たる活動と関連する事業を自ら経営する活動です。別会社に雇用されて働くことが、無条件に認められるわけではありません。
高度外国人材の活動は、 「高度学術研究活動(1号イ)」「高度専門・技術活動(1号ロ)」「高度経営・管理活動(1号ハ)」 の3つに分類されています。
高度人材ポイント制とは?|出入国在留管理庁複数の会社で活動する場合は3つに整理する
新たな勤務先で活動するときは、次の3つのうち、どの取扱いになるのかを確認します。
1.複数の機関を指定書に記載する
新たな会社でも継続的に高度専門職としての活動を行い、2社以上を正式な所属機関として位置付ける場合です。最初から複数の機関で活動する予定であれば、各機関との契約書、職務内容、報酬、勤務時間、会社資料などを提出し、複数の機関を指定の対象として審査を受けます。
すでに高度専門職1号で在留している方が、新たな機関を指定対象に加える場合は、原則として、追加後の活動全体について在留資格変更許可申請を行います。出入国在留管理庁も、高度専門職1号の活動内容を変更する場合には、所属機関の変更を含め、在留資格変更許可申請が必要と案内しています。
2.個別の資格外活動許可を受ける
現在の指定書に記載された機関での本業を継続しながら、指定された活動の範囲外で、従たる副業を行う場合です。この場合、資格外活動許可で対応できる可能性があります。
ただし、高度専門職1号などの就労資格で副業を行う場合は、留学生や家族滞在の外国人に認められる「週28時間以内」の包括許可と同じではありません。
通常は、勤務先、活動内容、契約期間、活動時間、報酬などを明らかにして審査を受ける個別許可となります。本来の高度専門職としての活動を妨げないことや、資格外活動として相当な内容であることも確認されます。
資格外活動許可を申請すれば、必ず副業が認められるわけではありません。許可を受ける前に活動を開始することもできません。
3.現在の高度専門職の活動範囲内で行う
新しい活動が、もともと高度専門職1号に認められている複合的活動に含まれる場合です。例えば、高度専門職1号イの方が、指定された機関での主たる活動と併せて、別の大学や研究機関で研究・教育活動を行う場合が考えられます。また、高度専門職1号イ・ロ・ハでは、主たる活動と関連する事業を自ら経営する活動が認められる場合があります。
もっとも、「本業と関連している」「副業だから問題ない」と本人が判断するだけでは危険です。活動内容、契約関係、主たる活動との関係などを具体的に確認する必要があります。
新しい勤務先で活動するときは、次の3つのうち、どの取扱いになるのかを確認します。
新たな会社でも継続的に高度専門職として活動し、 2社以上を正式な所属機関として位置付ける場合 です。各機関との契約書、職務内容、報酬、勤務時間、会社資料などを提出し、 複数の機関を指定の対象として審査を受けます。
現在の本業を継続しながら、指定された活動の範囲外で 従たる副業 を行う場合です。勤務先、活動内容、契約期間、活動時間、報酬などを明らかにして、 個別に審査を受けます。
新しい活動が、もともと高度専門職1号に認められている 複合的活動の範囲内 に含まれる場合です。高度専門職1号イの他機関での研究・教育活動や、 主たる活動と関連する事業を自ら経営する場合などが考えられます。
複数指定と資格外活動許可の違い
両者は、次のように整理すると分かりやすくなります。
本格的かつ継続的な複数社勤務であれば、複数の機関を指定対象とする方法が基本的な検討対象になります。
一方、本業に付随する限定的な活動であれば、個別の資格外活動許可を検討します。
新たな勤務先を追加するときの手順
高度専門職1号の方が勤務先を追加するときは、次の順番で確認します。
ただし、この届出は就労を許可する手続ではありません。「14日以内に届出をすれば新しい会社で働ける」という意味ではない点に注意してください。
資格外活動による収入は年収ポイントに含まれるのか
高度人材ポイント制では、年収が重要な評価項目になります。
ここでいう年収は、単に本人の年間総収入を合計した金額ではありません。出入国在留管理庁のポイント計算表では、申請に係る高度専門職としての活動に従事することにより、契約機関や外国所属機関から受ける報酬の年額を基準としています。
年収ポイントの対象となるのは、単なる年間総収入ではありません。 申請に係る高度専門職としての活動により、契約機関や外国所属機関から受ける予定報酬 を基準として審査されます。
ポイント計算表の疎明資料|出入国在留管理庁そのため、資格外活動で得る副業収入が、当然に高度人材ポイントの年収へ加算されるわけではありません。複数の機関から受ける報酬を年収ポイントに含める場合は、各機関が高度専門職としての契約機関・活動機関に当たるか、各契約が継続的なものか、予定報酬額を客観的資料で立証できるかを確認する必要があります。
また、永住申請の優遇を利用する場合は、申請時だけでなく、70ポイントの場合は3年前、80ポイントの場合は1年前の時点でも必要な点数を満たしていたことを立証します。勤務先の追加・変更や年収の変動がある場合は、過去時点の指定書、契約書、源泉徴収票、課税証明書などを保存しておくことが重要です。
企業が採用時に確認すべきこと
高度専門職1号の外国人を、現在の勤務先とは別の会社が採用する場合は、少なくとも次の事項を確認してください。
出入国在留管理庁は、高度専門職の指定書がパスポートに添付されていることを案内しています。企業は在留カードだけで判断せず、指定書まで確認することが重要です。
資格外活動許可によって採用する場合は、在留カード裏面だけでなく、証印シールまたは資格外活動許可書に記載された活動範囲も確認してください。
高度専門職でよくある誤解
高度専門職は一般の就労資格より活動の幅が広い一方、副業や複数社勤務が自由になるわけではありません。 実務で特に多い誤解を整理します。
複数社で働く場合は、指定書・資格外活動許可・現在の活動範囲のどれに当たるのかを、活動開始前に確認することが重要です。
高度専門職1号で複数の会社に関わるケース
高度専門職1号で複数の会社・大学などに関わる場合は、働き方によって必要な手続が異なります。代表的なケースを見てみましょう。
実務では、「どこで働くか」だけでなく、「誰と契約し、どの活動を、どの程度行うのか」まで確認することが重要です。
よくある質問
高度専門職1号で複数の会社に関わる場合は、「2社で働けるか」だけでなく、指定書、活動内容、資格外活動許可、届出の違いを整理して考える必要があります。ここでは、実務でよくある疑問をQ&A形式でまとめます。
高度専門職は柔軟な活動が認められる一方、勤務先を自由に追加できる制度ではありません。新たな会社で活動する場合は、現在の指定書と活動内容を確認し、必要な手続を終えてから活動を開始することが重要です。
まとめ
高度専門職1号の指定書には、審査の結果、複数の契約機関・活動機関が記載される場合があります。そのため、「高度専門職1号は必ず1社でしか働けない」という説明は正確ではありません。
一方で、「複数の勤務先を指定できる」ことと、「自由に副業できる」ことも同じではありません。新しい勤務先で活動するときは、次のどれに当たるのかを整理する必要があります。
・複数の所属機関を指定書に記載するための在留資格変更許可申請
・指定された活動の範囲外で行う従たる活動としての資格外活動許可申請
・高度専門職1号イの他機関での研究・教育など、現在の在留資格の範囲内で行える活動
雇用契約を締結したことや、所属機関に関する届出を行ったことだけで、新しい勤務先で働けるわけではありません。複数社勤務を検討するときは、指定書、活動類型、契約関係、職務内容、報酬、勤務時間、年収ポイント、将来の永住申請への影響まで含めて確認することが重要です。
当事務所では、高度専門職のポイント計算、複数勤務先を含む在留資格変更許可申請、資格外活動許可、転職、更新、永住申請について、個別事情に応じて確認いたします。高度専門職で複数の会社に勤務したい方、高度専門職の外国人を副業・兼業で採用したい企業様は、お気軽にご相談ください。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直
参考資料
● 在留資格「高度専門職」|出入国在留管理庁
● 在留資格一覧表|出入国在留管理庁
● 所属(活動・契約)機関とは?|出入国在留管理庁
● 資格外活動許可について|出入国在留管理庁
● 所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A|出入国在留管理庁
● 高度専門職ポイント計算表|出入国在留管理庁
※本記事は2026年8月28日現在の法令・公表資料を基に作成しています。在留資格の取扱いは、契約内容、活動実態、申請時期、各地方出入国在留管理局の審査等により異なる場合があります。















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