在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」は、 「店長」「施工管理」「ホテルフロント」「生産管理」「エンジニア」といった 職種名ではなく、実際にどのような業務に従事するのかで判断されます。
また、 「技人国に該当する専門業務が大部分を占めていれば、 残りは現場作業や付随業務でも問題ない」 と単純に考えることはできません。
現在、技人国で外国人を雇用している企業は、 主たる専門業務、付随業務、現場作業を一度棚卸しし、 実際の仕事内容と在留資格が一致しているか確認することが重要です。
技人国の要件を満たしていない場合は、 実際の業務内容を技人国に適合するよう見直すか、 仕事内容に応じて特定技能への在留資格変更も検討する必要があります。
2019年に特定技能制度が創設され、その後、対象分野や特定技能2号の範囲も拡大しました。 現場作業を担う外国人について、特定技能という明確な受入れルートが整備されています。
出入国在留管理庁も、宿泊・外食・工業製品製造・自動車整備・建設の5業種について、 「特定技能1号」「特定技能2号」「技人国」の業務内容を比較した資料を公表しています。
特に、特定技能2号では、自ら現場業務に従事しながら、 他の作業員への指導、工程管理、店舗管理・店舗経営などを担うことも想定されています。 そのため、「現場のリーダーになったから技人国」とは限りません。
また、接客、製造、施工、整備、清掃などの現場業務が 通常の勤務シフトに恒常的に組み込まれている場合は、 単なる「付随業務」として整理できない可能性があります。
研修についても、外国人だけを長期間現場に配置するような運用ではなく、 研修の必要性、期間、日本人社員との取扱い、 研修後に従事する専門業務まで具体的に設計することが重要です。
「実際の仕事内容に、どの在留資格が適しているか」で判断することが重要です。
こんにちは、行政書士の稲福です。
「最近、技人国の審査が厳しくなった」「以前なら許可されていたような申請が通らなくなった」「追加資料をかなり細かく求められるようになった」外国人材の採用現場では、このような声を聞くことが増えています。
まず前提として、全国的に「技人国の不許可件数が急増した」と断定できる公式統計が公表されているわけではありません。しかし、出入国在留管理庁は近年、「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる技人国について、仕事内容や活動実態をより明確に確認する方向を打ち出しています。
2026年4月15日には「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」が改定され、実務研修、ホテル・旅館、通訳・翻訳などについても考え方が整理されています。
また、2026年1月には、入管庁自身が、特定技能1号・特定技能2号・技人国の違いについて、宿泊業、外食業、工業製品製造業、自動車整備業、建設業の5業種を横並びにした比較表を公表しました。実務に携わっている立場から最近の相談を見ると、「それは不許可になっても仕方がないだろう」と思う案件も少なくありません。
技人国は、外国人を正社員として雇用するための万能ビザではありません。今回は、技人国で不許可が起きる典型的なパターン、特定技能との住み分け、現場作業・付随業務・研修の問題、そして企業が今後何を見直すべきなのかについて、行政書士の立場からわかりやすく解説します。
- 技人国ビザで不許可になる主な理由
- 技人国の「在留資格該当性」とは何か
- 職種名だけでは技人国と判断できない理由
- 現場作業・付随業務はどこまで認められるのか
- 「専門業務が大部分なら現場作業もOK」という考え方の注意点
- 2019年の特定技能創設で何が変わったのか
- 特定技能1号・特定技能2号・技人国の違い
- 宿泊業における特定技能と技人国の住み分け
- 外食業における「店長候補」と技人国の考え方
- 工業製品製造業の現場作業・工程管理と技人国の違い
- 自動車整備業で技人国を使う場合の注意点
- 建設業の施工管理・現場作業と技人国の境界
- 特定技能2号と技人国をどう使い分けるべきか
- 「現場研修」で現場作業をさせる場合の注意点
- 技人国で雇用中の企業が今後見直すべきポイント

- 技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザとは?
- 技人国の許可件数自体は過去最高水準に増加している
- 「技人国の仕事が少し入っていれば大丈夫」ではない
- 技人国で不許可が起きる典型的な類型
- 厳格化の背景ー技人国を使った「名ばかり専門職」の問題
- 特定技能制度創設で状況は大きく変わった
- 入管庁が5業種について「特定技能1号・2号・技人国」を比較
- 宿泊業|「ホテルフロントだから技人国」が通用しないケース
- 外食業|「店長候補だから技人国」はさらに慎重に考える
- 工業製品製造業「エンジニア」「生産管理」という肩書では足りない
- 自動車整備業ー「整備士だから技人国」とは限らない
- 建設業|施工管理のはずが現場作業員になっていないか
- 「主たる業務が技人国なら、付随業務は何でもOK」ではない
- 申請書に技人国の業務だけ書けばよい、では済まない
- 現場研修制度の悪用にも注意が必要
- 研修後に何をさせるのかまで設計する必要がある
- 特定技能2号と技人国の住み分けが今後の重要ポイント
- 今後の対策ーまず外国人社員の「職務内容」を棚卸しする
- 技人国の要件を満たしていない場合は2つの選択肢を検討する
- 更新直前では遅いー日常の雇用管理として確認する
- 行政書士として感じることー「不許可になった」ではなく、その前が重要
- まとめー無理な技人国申請をしないことが最大の不許可対策
- よくある質問
技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザとは?
まず前提から確認します。在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、自然科学や人文科学に属する技術・知識を必要とする業務、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務などに従事するための在留資格です。例えば、
などが代表的です。
「技術・人文知識・国際業務」の要件や審査上の考え方について、 申請者の予見可能性を高め、在留資格の決定に係る運用の明確化・透明性の向上を図るため、 出入国在留管理庁が公表している公式資料です。
2026年4月15日一部改正。実務研修、翻訳・通訳等の対人業務、 ホテル・旅館、クールジャパンなどについても具体的な考え方が示されています。
入管庁|運用明確化の公式ページ 最新版PDFを見るそのため、接客、販売、清掃、調理補助、工場ラインなどの現場業務を主たる業務として行わせることは、原則として技人国の活動には該当しません。
技人国の許可件数自体は過去最高水準に増加している
出入国在留管理庁の統計によると、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格認定証明書交付、在留期間更新、在留資格変更を合わせた許可件数は、2019年の168,899件から、2024年には263,034件まで増加しました。さらに、2025年の出入国管理統計を同じ方法で集計すると、年間の許可件数は約27.9万件となります。
在留資格認定証明書交付、在留期間更新許可、在留資格変更許可を 合計した「技術・人文知識・国際業務」の年間許可件数です。
※ 2025年は出入国管理統計の各手続の公表値を同一基準で集計。
出典:出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」に関する公表資料・出入国管理統計
一方で、この数字は「技人国の許可率」を示すものではありません。申請件数そのものが増加していることに加え、すでに技人国で在留している外国人の更新申請も多数含まれています。
したがって、許可件数が増えていることをもって、技人国の対象となる業務範囲が広がったと考えることはできません。許可件数の増加と業務範囲の拡大は別の話です。
「技人国の仕事が少し入っていれば大丈夫」ではない
結論から申し上げると、技人国で重要なのは、職種名ではなく、外国人本人が実際に何をしているのです。「店長」「ホテルフロント」「施工管理」「生産管理」「エンジニア」「自動車整備の管理者」という肩書きを付ければ、技人国になるわけではありません。
技人国は、自然科学や人文科学の分野に属する技術・知識を必要とする業務、または外国文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする国際業務に従事するための在留資格です。
そして最近、特に注意したいのが、「専門業務が主なら、残りの現場作業は関連業務として大丈夫」という考え方です。従来、実務の現場ではこのような理解が比較的根強くありました。
しかし、少なくとも現在の入管庁の公表資料には、「技人国業務が何%以上なら、残りは現場作業をしてよい」という一般的な割合基準はありません。在留資格該当性は、実際に行う活動全体を見て判断されます。
技人国として採用するのであれば、まずこの考え方から見直す必要があります。
技人国で不許可が起きる典型的な類型
技人国の不許可や更新時の問題を整理すると、大きく次のような類型があります。
1.そもそも技人国の「該当性」を満たしていない
最も基本的なケースは、そもそも実際の仕事内容が「技術・人文知識・国際業務」に該当していない場合です。
例えば、
・工場で製品の組立や加工を行う
・飲食店で調理や配膳を行う
・建設現場で実際の施工業務に従事する
・ホテルで客室清掃やベッドメイクを行う
・商品の仕分けや梱包を行う
といった業務が、日常的な主たる仕事となっているケースです。
もちろん、これらの業務に従事する外国人を雇用すること自体が問題なのではありません。重要なのは、その仕事内容に対して「技術・人文知識・国際業務」という在留資格が適切なのかという点です。
技人国は、大学等で学んだ専門的な知識や技術などを活用して働くことを前提とする在留資格です。そのため、業務の中心が製造、調理、接客、施工、清掃、梱包などの現場業務である場合には、まず技人国の在留資格該当性を満たしているのかを慎重に確認する必要があります。「正社員として採用するから」「将来は管理職にする予定だから」「職種名をエンジニアや生産管理にしているから」という理由だけで、現在行っている現場業務が技人国に変わるわけではありません。
実際、出入国在留管理庁が公表している不許可事例の中にも、電気部品の加工、組立、検査、梱包などを担当する予定で申請したケースについて、実際の業務内容が技能実習生とほぼ同一であり、専門的・技術的な知識を必要とする業務とは認められないとして、不許可となった事例が示されています。
つまり、技人国の申請では、まず「この外国人をどの職種名で採用するか」を考えるのではなく、「実際に毎日どのような仕事をしてもらうのか」を具体的に確認することが出発点になります。その業務自体が技人国に該当していないのであれば、職務内容説明書をどれだけ詳しく作成しても、根本的な問題は解決しません。
2.「技人国の該当性」を勘違いしている
こちらも、実務上非常によく見られるケースです。例えば、「店長だから管理職に当たる」「フロント業務だから国際業務に該当する」「施工管理という肩書きだから技人国で問題ない」「PCを使用する業務だからITエンジニアとして認められる」といったように、肩書きや職種名だけを見て在留資格への該当性を判断してしまうケースがあります。
しかし、在留資格の審査において重要なのは、肩書きや職種名そのものではなく、実際にどのような業務に従事するのかという活動内容です。
3.専門業務と現場作業が恒常的に混在している
本来の専門業務は存在しているものの、実際の勤務の中に、
・店舗での接客
・清掃
・梱包作業
・製造ラインでの作業
・資材の運搬
・実際の整備作業
・レストランでのサービス業務
などが、通常の勤務シフトの一部として組み込まれているケースも少なくありません。
こうした業務について、専門業務との関係性があるという理由だけで、すべてを「関連業務」や「付随業務」として整理できるわけではありません。
実際の審査では、専門業務との関連性だけでなく、それらの業務がどの程度の頻度・割合で行われているのか、通常の業務として恒常的に行われていないかといった点も含め、実態に即して判断されます。
4.本人の学歴・専攻・職歴と業務がつながっていない
「技術・人文知識・国際業務」では、実際の業務内容だけでなく、本人がこれまで学んできた内容や実務経験と、従事する業務との関連性も重要な審査ポイントとなります。
特に専門学校を卒業した方については、大学卒業者と比べても、専攻した分野と実際に担当する業務との関連性がより具体的に確認されるため、慎重な検討が必要です。
そのため、「専門学校を卒業しているから技人国で働ける」というだけでは足りず、履修内容や取得した専門士の分野と、実際の職務内容がどのようにつながっているのかを整理したうえで申請することが重要です。
5.「研修」という名前で現場作業を長期間させている
「最初の1年間は現場研修として従事します」と説明すれば、どのような業務であっても認められるわけではありません。研修という位置づけであっても、実際に従事する業務の内容や期間、専門業務との関係性などを踏まえて判断されます。
この「現場研修」と在留資格との関係については、後ほど詳しく解説します。
厳格化の背景ー技人国を使った「名ばかり専門職」の問題
なぜ、技人国の業務実態がこれほど重視されるようになっているのでしょうか。背景の一つに、日本の深刻な人手不足があります。本来、技人国は大学等で培った専門的知識・技術などを活用して働くことを前提とする在留資格です。
ところが実際の雇用現場では、名目上は専門職、実態は現場作業というケースが発生してきました。入管庁も、技人国で在留する外国人について、申請時に申告した専門業務とは異なり、専門的な技術・知識を必要としない現場業務等に従事していた事案が複数確認されたことを公表しています。
つまり、「制度上は専門職」でも、「会社としては人手不足だから現場にも入ってもらう」という運用が行われてきたということです。
特定技能制度創設で状況は大きく変わった
ここで非常に重要なのが、2019年の特定技能制度の創設です。以前は、外国人に現場業務を担当してもらいたいと思っても、正面から利用できる就労系在留資格が限られていました。そのため、実務の現場では技人国と現場業務との境界が曖昧なまま運用されるケースもありました。
もちろん、これは「昔は技人国で現場作業をしても法律上問題なかった」という意味ではありません。もともと技人国には明確な活動範囲があります。しかし、2019年に特定技能が創設され、その後対象分野や特定技能2号の範囲も拡大してきたことで、現場の技能を使う仕事は特定技能、専門的・技術的な仕事は技人国という住み分けを、より明確に考えられる制度環境が整ってきました。
そのため、現在は、「現場作業もあるけれど、とりあえず技人国で」という発想そのものを見直す必要があります。
入管庁が5業種について「特定技能1号・2号・技人国」を比較
この流れを象徴しているのが、2026年1月に出入国在留管理庁が公表した、「在留資格『技術・人文知識・国際業務』と『特定技能』の違いについて」という資料です。
出入国在留管理庁は、2026年1月現在の資料として、 在留資格「技術・人文知識・国際業務」と 「特定技能1号・特定技能2号」の違いを整理した比較資料を公表しています。
宿泊、外食、工業製品製造、自動車整備、建設の5分野について、 それぞれの在留資格で想定される主な業務が具体的に示されており、 現場業務と専門的・技術的業務の違いを確認するうえで参考になる資料です。
特に注目したいのは、分野によっては、現場作業だけでなく、 他の作業員への指導や工程管理まで特定技能2号の業務として整理されている点です。 一方、技人国では、設計、企画、技術開発、専門的な指導監督などが示されており、 「現場のリーダーになれば技人国」と単純に整理できるものではありません。
入管庁|比較資料を見る「在留資格『技術・人文知識・国際業務』と『特定技能』の違いについて」 (令和8年1月現在)
入管庁は、現場業務と技人国との境界が問題になりやすい5業種について、次のように整理しています。
※入管庁自身も、この表は対比のために概略を整理したものであり、個別申請は具体的な職務内容等によって判断されるとしています。
ここから先は、この5業種について具体的に見ていきます。
宿泊業|「ホテルフロントだから技人国」が通用しないケース
ホテル・旅館でよくあるのが、「フロントスタッフとして採用するので技人国です」というケースです。確かにホテルフロントは、技人国の対象となる可能性があります。
例えば、外国語による予約管理、海外顧客対応、、通訳・翻訳、インバウンド企画、海外向け広報、マーケティングなど、専門的な業務を中心としている場合です。しかし実際には、
・チェックイン・チェックアウト
・荷物運搬
・館内案内
・レストランサービス
・配膳
・客室清掃の応援
などを日常的に行っているケースがあります。
ここで問題になるのが、宿泊分野の特定技能です。入管庁の比較表では、特定技能1号でも、「フロント、企画・広報、接客、レストランサービス」が対象です。
さらに特定技能2号では、複数の従業員を指導しながらこれらの業務を行うことまで想定されています。つまり、「フロントだから技人国」「支配人候補だから技人国」「スタッフを指導するから技人国」とは限りません。
実際、入管庁の不許可事例にも、ホテルのフロントスタッフとして採用しながら、1年間レストラン配膳や客室清掃を研修として行わせる計画について不許可となった事例があります。
ホテル・旅館等で外国人が就労する場合について、 在留資格「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務や、 実際の許可・不許可事例などを示した 出入国在留管理庁の公式資料です。
ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について|出入国在留管理庁外食業|「店長候補だから技人国」はさらに慎重に考える
飲食店も典型的な業種です。よくあるのが、「将来は店長にします」「店舗管理をさせます」「マネージャー候補です」という申請です。しかし実際には、調理、ホール、配膳、レジ、仕込み、清掃、発注、シフト管理、など、一店舗の日常的な運営を担当しているケースがあります。
入管庁の比較表を見ると、
| 在留資格 | 外食業で想定される主な活動 |
|---|---|
| 特定技能1号 | 飲食物調理、接客、店舗管理 |
| 特定技能2号 | 飲食物調理、接客、店舗管理、店舗経営 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 複数店舗の店舗管理、店舗経営、企画業務 |
と整理されています。
もちろん、これだけを見て、「一店舗の管理は絶対に技人国では認められない」という意味ではありません。実際の店舗規模、組織体制、本人の活動内容、学歴・職歴、今後のキャリアパスなどを総合的に判断する必要があります。
しかし少なくとも、一店舗の現場に常駐し、自ら調理・接客を行いながら店舗を運営するのであれば、「店長だから技人国」と考えるより、外食分野の特定技能1号・2号を検討する方が制度の実態に合う場合があります。
工業製品製造業「エンジニア」「生産管理」という肩書では足りない
製造業も、今後特に注意すべき業種です。例えば、「生産技術」「生産管理」「製造エンジニア」として技人国で採用したものの、実際には、製品組立、加工、検査、梱包、ライン作業、部品供給などに日常的に従事しているケースです。
入管庁の比較表では、
| 在留資格 | 工業製品製造業で想定される主な活動 |
|---|---|
| 特定技能1号 | 製造工程・組立工程などの作業 |
| 特定技能2号 | 複数の作業員を指導しながら行う製造・組立工程、工程管理 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 設計、プログラミング、技術開発 |
と整理されています。
ここで重要なのは、「工程管理をするようになったから自動的に技人国」というわけでもないということです。特定技能2号でも、複数の作業員を指導しながら現場に入り、工程管理を行うことが想定されています。
一方、技人国であれば、製品設計、機械設計、生産設備の設計、プログラミング、技術開発、工程設計など、専門的・技術的な業務として実態があるかを確認する必要があります。
入管庁の不許可事例にも、部品加工・組立・検査・梱包について、技能実習生とほぼ同じ仕事であるとして不許可となった事例があります。
「工場で働いているけれど、肩書きはエンジニア」というだけでは足りません。
自動車整備業ー「整備士だから技人国」とは限らない
自動車整備も同じです。例えば、「自動車整備エンジニア」「整備技術者」として採用しているものの、実際には一般の整備スタッフと同様に、オイル交換、タイヤ交換、点検、部品交換、分解・組立、一般的な整備作業を中心に行っているケースです。
入管庁の比較表では、
| 在留資格 | 自動車整備分野で想定される主な活動 |
|---|---|
| 特定技能1号 | 自動車の日常点検整備等の基礎的な整備業務 |
| 特定技能2号 | 他の要員を指導しながら行う一般的な自動車整備 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 整備士・整備工に対する指導監督、自動車整備主任者としての業務 |
と整理されています。
つまり、自分自身が現場で整備業務を行いながら、後輩を指導する。このキャリアは、特定技能2号でも想定されています。技人国で説明するのであれば、単に「熟練した整備士だから」というだけではなく、専門的な技術・知識を用いた指導監督や技術管理としてどのような役割を担っているのかを明確にする必要があります。
建設業|施工管理のはずが現場作業員になっていないか
建設業は、技人国と現場作業との境界が最も問題になりやすい業種の一つです。施工管理担当者であれば、当然現場には行きます。例えば、工程管理、安全管理、品質管理、図面確認、写真管理、協力会社との調整、工事書類の作成などを行うために現場にいること自体は不自然ではありません。
問題なのは、現場にいることではなく、現場で実際に何をしているのかです。
例えば、
・資材運搬
・現場の片付け
・職人の手元作業
・型枠・鉄筋・内装・配管等の施工補助
・清掃
・道具の準備
などを日常的に行っているのであれば、技人国の施工管理として説明した内容と実態がずれてきます。これは既存記事でも詳しく整理しています。
さらに、入管庁の比較表では、
| 在留資格 | 建設分野で想定される主な活動 |
|---|---|
| 特定技能1号 | 指導者の指示・監督を受けながら行う、土木施設の新設・改築・維持・修繕等の作業 |
| 特定技能2号 | 複数の建設技能者を指導しながら行う土木作業等、工程管理 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 建築設計、設計監理、建築積算 |
と整理されています。
ここで誤解してはいけないのは、「工程管理という言葉が入っているから技人国」とは限らないという点です。自らも現場技能に従事しながら他の技能者を指導し、工程を管理するのであれば、特定技能2号として想定されている仕事と重なる場合があります。
一方、施工管理、設計、CAD・BIM、積算など、専門技術者としての業務実態が明確であれば、技人国として検討できます。
「主たる業務が技人国なら、付随業務は何でもOK」ではない
ここは今後、非常に重要な論点です。これまで、「主たる業務が技人国なら、関連業務もある程度やらせてよい」という考え方が広く見られました。
もちろん、実際の職場では専門職であっても、本来業務に伴う細かな作業が発生することはあります。しかし、「専門業務が70%なら、残り30%は現場作業でも問題ない」といった一般的な割合基準があるわけではありません。
特に注意したいのが、勤務シフトに現場業務が最初から組み込まれている場合です。例えば外食企業で、月・火・木 → 本部企画、水・金 → 店舗ホールという勤務が毎週予定されている。
ホテルで、週3日 → 海外予約対応、週2日 → レストランサービスという勤務になっている。このようなケースを、「レストラン業務は付随業務です」「ホールは関連業務です」と説明するのは難しくなります。
なぜなら、それは臨時的な対応ではなく、企業の通常の人員配置として現場業務が予定されているからです。
業務割合は確認すべき重要な材料ですが、割合だけではなく、その業務の性質と恒常性を見る必要があります。
申請書に技人国の業務だけ書けばよい、では済まない
さらに危険なのが、「現場業務を書くと不利になるから、申請書には専門業務だけ記載する」という考え方です。例えば実際には、企画70%、店舗接客30%で働かせる予定なのに、申請書では、「マーケティング・事業企画」のみを記載する。
これは在留資格対策ではありません。申請内容と実際の雇用内容の不一致です。
入管庁は、技人国の在留申請時に申告した仕事内容とは異なり、専門的な知識を要しない現場業務に従事していた事案が複数発生していると公表しています。
さらに、在留資格に該当しない業務に外国人を従事させた場合、企業側についても不法就労助長罪に該当し得ると明示しています。つまり、「許可を取るための仕事内容」と「許可後に実際にやらせる仕事」を分けて考えてはいけないということです。
警視庁は、外国人を雇用する事業主に対し、 在留カードや旅券を確認し、 在留資格・在留期間・就労制限・資格外活動許可の有無などを確認したうえで、 その外国人を適法に雇用できるか確認すること を求めています。
・在留資格と在留期限
・表面の「就労制限の有無」
・裏面の「資格外活動許可欄」
・実際に担当させる業務が在留資格の範囲内か
現場研修制度の悪用にも注意が必要
もう一つ注意したいのが、「研修だから大丈夫」という考え方です。技人国でも、一定の実務研修が認められる場合があります。
出入国在留管理庁は、例えば、
・飲食店での接客
・小売店での販売
・工場ラインでの作業
など、それだけを見れば技人国に該当しない業務であっても、日本人の大卒社員等にも同様に実施される研修であり、将来技人国に該当する専門業務に従事することが予定され、全体として相当性が認められる場合には、一定の実務研修として認める考え方を示しています。
しかし、「外国人だけ最初の1年間は現場です」となると話は変わります。例えば、
日本人大卒社員
→ 入社後3か月で企画部門へ
外国人社員
→ 1年間工場ライン
という研修制度であれば、なぜ外国人だけ長期間の現場研修が必要なのかという説明が必要になります。
研修後に何をさせるのかまで設計する必要がある
技人国で現場研修を取り入れるのであれば、「最初は現場を覚えてもらいます」だけでは不十分です。
企業側は、
・なぜ研修が必要なのか
・日本人社員にも同じ研修を行っているのか
・なぜその研修期間なのか
・研修で何を習得するのか
・研修終了後の配属部署
・研修後に担当する具体的な専門業務
・その専門業務が実際に社内に存在するか
・専門業務として十分な業務量があるか
まで設計する必要があります。
入管庁も、長期間の研修については研修計画等を求め、その合理性を確認する取扱いを示しています。研修後の仕事が決まっていない。専門部署も存在しない。当面は人手不足の現場に入ってもらう。これでは、「研修」という名前を付けた現場要員と判断されても仕方ありません。
採用から1年間を超えて実務研修に従事する場合には、 研修計画の提出を求め、実務研修期間の合理性を審査するとされています。
また、必要に応じて、 日本人社員を含めた入社後のキャリアステップや、 各段階における具体的な職務内容 を示す資料の提出が求められます。
特定技能2号と技人国の住み分けが今後の重要ポイント
今回の入管庁の5業種比較表を見るうえで、特に重要なのが特定技能2号です。これまで外国人材のキャリアアップについて、現場経験を積む→リーダーになる→技人国へ変更するという考え方をする企業が少なくありませんでした。
しかし、現在は必ずしもこのルートではありません。入管庁のQ&Aでも、特定技能制度におけるキャリアアップについては、基本的に、特定技能1号 → 特定技能2号への移行によって行うことが想定されていると明記されています。
例えば、
現場での熟練した技能を有し、 自らも現場業務に従事しながら、指導・管理を行う ことが基本となります。
- 後輩や他の作業員を指導する
- 複数の作業員を管理する
- 工程管理を行う
- 店舗を管理する
- 店舗経営に携わる
専門的・技術的な知識や学術上の素養を活用して業務を行う ことが前提となります。
- 設計
- 企画
- 技術開発
- プログラミング
- 専門的・技術的な指導監督
- 建築積算
- 経営・事業企画
大きな方向性としては、このような住み分けを意識することが重要です。
今後の対策ーまず外国人社員の「職務内容」を棚卸しする
では、現在技人国で外国人を雇用している企業は何をすべきでしょうか。まず行っていただきたいのが、職務内容の棚卸しです。申請書を見直すのではありません。実際の職場を確認します。
例えば、
を確認します。
ここでいう「業務割合」は、「70%を超えているから大丈夫」という判定をするためのものではありません。実態を把握するための材料として確認するものです。
技人国の要件を満たしていない場合は2つの選択肢を検討する
棚卸しをした結果、「現在の仕事内容は技人国としてかなり厳しい」と分かった場合、そのまま放置するべきではありません。
大きく2つの選択肢があります。
① 業務内容を見直し、技人国に適合するよう適正化する
本来、設計、企画、開発、海外マーケティング、経営分析、技術指導、専門的な管理業務などに従事してもらう予定で採用したのであれば、まずは現在の配置や勤務シフト、実際に担当している業務内容を改めて確認する必要があります。
重要なのは、申請上の説明だけを整えることではなく、実際の業務内容そのものを、在留資格に適合する形に見直すことです。申請時に予定していた職務内容と現在の実態にずれが生じているのであれば、その原因を確認したうえで、配置や業務分担、シフトなどを適正化していくことが重要です。
② 実際の仕事内容に合った特定技能へ変更する
一方、会社として本当にやってもらいたい仕事が、
・飲食店の調理・接客・店舗管理
・ホテルのフロント・接客・レストランサービス
・製造工程
・自動車整備
・建設現場の技能作業
なのであれば、無理に技人国を維持するのではなく、特定技能への在留資格変更を検討することも重要です。さらに対象分野で熟練した技能や指導・管理能力があるのであれば、将来的に特定技能2号を目指すキャリア設計も考えられます。
更新直前では遅いー日常の雇用管理として確認する
この見直しは、更新申請の1か月前になって慌てて行うものではありません。技人国として採用した当初は問題がなくても、現場では少しずつ仕事内容が変わります。
例えば、「企画職だったが、人手不足なので週2回店舗に入るようになった」「施工管理だったが、徐々に職人の手元作業が増えた」「ホテルの海外予約担当だったが、繁忙期のレストラン応援が常態化した」ということは実際に起こり得ます。
だからこそ企業は定期的に、現在の仕事内容と在留資格が一致しているかを確認する必要があります。
行政書士として感じることー「不許可になった」ではなく、その前が重要
技人国の不許可相談を見ていると、「入管が厳しくなった」という一言だけでは説明できないケースがあります。
職種名だけ専門職。実際には現場作業。専門業務の業務量も説明できない。学歴との関連性も弱い。現場作業が毎週シフトに入っている。研修と言いながら1年間現場に配置する。それでも申請書には、「企画」「管理」「エンジニア」「施工管理」だけを書く。
そして、「なぜ不許可なのでしょうか?」と言われる。少し厳しい言い方になりますが、「それはそうだろ」と思うケースもあります。
在留資格は、企業の人手不足を解消するために仕事内容を後から当てはめる制度ではありません。まず仕事内容があります。その仕事内容に合った在留資格を選びます。この順番です。
まとめー無理な技人国申請をしないことが最大の不許可対策
技人国の不許可を防ぐための特別な裏技はありません。一番重要なのは、無理な技人国申請をしないことです。入管庁は現在、宿泊・外食・工業製品製造・自動車整備・建設という、特定技能と技人国との境界が問題になりやすい5業種について、特定技能1号・特定技能2号・技人国の活動内容を比較する資料まで公表しています。
これは非常に重要な変化です。今後は、「店長だから技人国」「フロントだから技人国」「工程管理だから技人国」「リーダーだから技人国」「エンジニアという職種名だから技人国」という考え方ではなく、実際にどのような業務を行うのかを基準に判断することがますます重要になります。
そして、現在技人国で外国人を雇用している企業についても、一度、職務内容・業務割合・現場作業の有無・研修内容を棚卸しすることをおすすめします。その結果、技人国の要件と現在の業務がずれているのであれば、業務を技人国に合わせて適正化するのか。それとも、在留資格を実際の仕事に合わせて特定技能へ変更するのか。どちらかを検討する必要があります。
無理に技人国を維持することが正解ではありません。仕事に合った在留資格を選ぶ。結局のところ、それが企業にとっても、外国人本人にとっても、最も安全な外国人雇用につながります。
出入国在留管理庁申請取次行政書士
稲福 正直
よくある質問
業務割合だけではなく、その現場業務の内容、必要性、恒常性、 勤務シフトへの組込み状況などを含めて、実際の勤務実態を踏まえて判断する必要があります。
例えば、毎週の勤務シフトに現場作業が組み込まれているような場合には、 単なる臨時的な応援や付随的な業務とは説明しにくくなります。
入管庁の比較資料でも、特定技能2号について、 複数の作業員への指導、工程管理、店舗管理・店舗経営 などが想定されている分野があります。
特定技能制度では、熟練した技能を身につけた後のキャリアアップとして、 特定技能1号から特定技能2号への移行 が制度上想定されています。
技人国への変更は、単なる昇進ではなく、 実際の職務内容が専門的・技術的な業務へ変化し、 技人国の要件を満たす場合に検討するものです。
そのうえで、 技人国に該当する専門業務を中心とした配置・業務内容へ適正化するのか、 あるいは実際の仕事内容に合った特定技能への変更を検討するのか を判断する必要があります。
書類上の説明だけを整えるのではなく、 実際の配置、勤務シフト、担当業務そのものを在留資格に適合させることが重要です。
【参考資料】
・出入国在留管理庁
「在留資格『技術・人文知識・国際業務』と『特定技能』の違いについて(令和8年1月現在)」
・出入国在留管理庁
「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」
・出入国在留管理庁
「『技術・人文知識・国際業務』における労働者派遣等の現状と課題について」
























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