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本当はこわい『不法就労助長罪』

入管法

こんにちは。行政書士の稲福です。

私は、日々、外国人材を受け入れる企業や外国人本人と向き合い、在留資格の申請や制度対応の最前線に立っておりますが、その中で、「これは本当に危ない」と強く感じることの一つが、今回お話しする「不法就労助長罪」です。

「それは一部の悪質なブローカーの話でしょう。」
「うちは紹介会社を信じて雇っていただけです。」
「本人も就労できると言っていた。」

と多くの経営者の方が、そうおっしゃいます。

しかし、実際に摘発されている事例を見ていくと、それはごく普通の中小企業であり、善意で人手不足を補おうとした経営者であることがほとんどです。

「技人国で入っているが、少しくらいなら現場作業もOKでしょう。」「留学生だから少しくらい労働時間をオーバーしても大丈夫だろう。」「派遣会社・紹介会社が確認しているはず。」「本人が働けると言ったから大丈夫。」という“思い込み”。その一つひとつが積み重なり、結果として企業側が「不法就労を助長した」と評価され、刑事責任を問われるケースが現実に起きています。

知らなかったでは済まされない。悪意がなくても処罰の対象になる。それが、不法就労助長罪の本当の怖さなのです。

本稿では、なぜ普通の会社が摘発されるのか、どこに落とし穴があるのか、そして企業が最低限守るべきポイントについて現場の視点から分かりやすくお伝えしていきます。

不法就労助長罪とは、就労が認められていない外国人を働かせる、またはその状態を放置・管理することで、結果的に就労を助長した場合に成立する犯罪です。

対象となる行為は、直接雇用に限られません。紹介、あっせん、派遣、現場管理、名義貸し、黙認――これらもすべて含まれます。

不法就労助長罪のの怖さは、「悪意がなくても成立し得る」点にあります。

要件は大きく3つだけです。

① 外国人本人が不法就労状態にあること
② 雇用側がそれを「知っていた」または「注意すれば分かった」こと
③ 結果として就労を助長したこと

ここで重要なのは②です。在留カードを確認していない、資格内容を正確に理解していない、更新期限を見落とした――こうした管理の甘さそのものが「過失」と評価される可能性があります。つまり、「知らなかった」「担当者任せだった」「紹介会社に任せていた」という言い訳は、免責理由にならないことが多いのです。

実務上、不法就労助長罪は、人手不足の現場、短時間・副業的な就労、留学生や技能実習修了者の受入れといった場面で、特に発生しやすい傾向があります。一度摘発されれば、刑事責任だけでなく、企業名の公表、取引停止、ビザ関連業務への致命的な影響など、経営リスクとしてのダメージは計り知れません。

不法就労助長罪は、「知らなかった」では済まされない極めて現実的で、極めて身近なリスクなのです。

不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法(入管法)第73条の2に規定されている犯罪です。

対象となるのは、外国人を不法に就労させた者、あっせんした者、管理した者などで、企業の代表者や人事担当者、現場責任者が処罰されるケースも少なくありません。

法定刑は、「5年以下の懲役 または 500万円以下の罰金、もしくはその両方」とされています。ここで留意すべき点は、実刑・罰金のどちらか一方ではなく、「併科」される可能性がある点です。つまり、懲役刑と罰金刑の両方が科されることもあります。

また、法人の場合は、実際に指示・管理を行った個人が処罰されるだけでなく、法人自体にも罰金刑(両罰規定)が科される可能性があります。実務上は、「長期間にわたる不法就労」「人数が多い」「悪質性(名義貸し、偽装請負等)が高い」「指導後も改善がなされなかった」といった事情があると、処分は重くなる傾向があります。

一方で、「知らなかった」「確認していなかった」という事情は、原則として免責理由にはなりません。

さらに、不法就労助長罪で摘発された場合、刑事罰だけでなく、入管からの厳しい監督、各種許認可への影響、社会的信用の失墜といった二次的ダメージも極めて大きくなります。

不法就労助長罪は、「軽い違反」ではなく、企業の存続そのものを揺るがしかねない重大な犯罪であることを正しく認識しておく必要があります。

量刑が「5年・500万円」まで引き上げられたことは、不法就労助長罪がもはや軽微なコンプライアンス違反ではなく、企業犯罪として扱われているという強いメッセージでもあります。

在留資格「技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)」は、「ホワイトカラー向けの在留資格だから問題になりにくい」「技人国で許可が出ているなら大丈夫」そう受け止められがちです。

しかし、実務の現場では、その認識こそが最も危険だと感じる場面が少なくありません。

例えば、ITエンジニア名目で採用された外国人が、実際にはシステム開発にはほとんど関与せず、倉庫作業や製造ラインに常時従事しているケース。あるいは、通訳・営業名目で在留資格を取得しているにもかかわらず、実態は専門性のない単純作業が中心で、語学力や対外折衝能力がほとんど活かされていないケース。さらに多いのが、入社当初は在留資格に適合した業務を行っていたものの、業務内容が徐々に変化しているにもかかわらず、在留資格の見直しや変更申請が一切行われていないというケースです。

企業側に悪意があるとは限りません。人手不足の現場で、「とりあえず手伝ってもらった」「一時的な対応のつもりだった」という認識のまま、業務内容が固定化してしまうこともあります。

しかし、ここで忘れてはならない基本原則があります。

在留資格は、会社に与えられているものではなく、外国人本人が行う「職務内容」に紐づいて許可されているものであるということです。

肩書や雇用契約書の記載ではなく、日々実際に何をしているのか――その実態が審査・調査の基準になります。この基本が抜け落ちたまま運用が続けば、企業側は不法就労助長に、外国人本人は資格外活動・在留資格取消しのリスクに直面しかねません。

「技人国だから大丈夫」ではなく、「今の業務内容は、技人国に適合しているか」この視点を、常に持ち続けることが、これからの外国人雇用には不可欠だと言えるでしょう。

留学生の就労を巡る相談で、特に多く見られるのが、資格外活動に関する基本的なルールが守られていないケースです。

代表的なのが、週28時間の就労時間制限の超過です。

「繁忙期だけだから」「人手が足りない時期だけ」こうした説明は、現場ではよく耳にしますが、入管法上は理由になりません。1時間でも超過すれば、不法就労と評価される可能性があります。

次に多いのが、複数店舗・複数事業者での掛け持ちです。

それぞれの勤務先では「週28時間以内」でも、合算すると制限を超えてしまうケースは少なくありません。企業側が他の就労先を把握していないまま、結果的に違反に加担してしまうこともあります。

さらに、資格外活動許可を取得しないまま就労している例も後を絶ちません。「アルバイトはできると思っていた」「前の学校では問題なかった」こうした誤解が、重大な違反につながります。

業種によっては、深夜帯の就労が問題となる場合もあります。留学生本人だけでなく、雇用する側も業務内容や時間帯を正確に理解していなければ、リスクを見落としがちです。実務上、特に問題なのは、企業側が「本人が大丈夫だと言っていた」「シフトは自己申告だから」という感覚で関与しているケースです。

しかし、法令上の責任は、本人だけでなく雇用する企業側にも及びます。「知らなかった」「聞いていなかった」では済まされません。留学生の就労は、良心だけでは守れないルールの上に成り立っています。だからこそ、正確な知識と確認体制を持つことが、企業と留学生双方を守る唯一の方法だと言えるでしょう。

繰り返しになりますが、不法就労助長罪は、「わざと不法就労をさせた場合」に限って成立する犯罪ではありません。意図的でなくても、結果として就労を助長していれば成立し得る――これが、この罪が怖いと言われている所以です

実際の現場では、決して悪意があるとは言えないケースが多く見受けられます。

例えば、在留カードを一応確認はしているものの、有効期限や資格外活動の可否までは細かく見ていない。あるいは、在留期限が近い、あるいは切れている可能性に気づきながら、「今は人が足りないから」と判断を先送りにしてしまう。業務内容についても、「この仕事内容、在留資格と少しズレているかもしれない」と薄々感じつつ、明確に確認することなく現場に入れてしまう。

さらに、派遣会社や紹介会社に任せきりにし、実際にどのような業務に就いているのか、自社として十分に把握していないケースも少なくありません。こうした対応は、企業側としては「積極的に違反したつもりはない」という認識であることがほとんどです。

しかし、入管実務や摘発の現場では、これらの行為は「知らなかった」では済まされない消極的関与として評価され、結果的に不法就労を助長した行為=積極的助長と判断されるケースが増えています。

不法就労助長罪は、「やったか、やっていないか」ではなく、「防げたか、防ぐ努力をしていたか」が問われる犯罪です。だからこそ、人手不足であっても、外部業者を使っていても、最終的な責任は受入企業にあるという意識を持つことが不可欠です。

知らなかった、任せていた、忙しかった――その積み重ねが、ある日突然「刑事責任」という形で跳ね返ってくる。それが、不法就労助長罪の現実なのです。

不法就労助長罪というと、「罰金がある」「逮捕される可能性がある」といった刑罰の重さだけが注目されがちです。しかし、本当に深刻なのは、そこではありません。

まず第一に、刑事責任のリスクです。

不法就労助長罪は、法人だけでなく、代表取締役や事業主個人が処罰対象となる可能性があります。「会社としての判断だった」「現場任せだった」といった言い訳は通用せず、経営者自身が前科を負うリスクを伴う犯罪です。

次に、企業活動への致命的な影響です。

摘発後は、入管や関係行政機関からの監督が強化され、補助金の申請、許認可、各種届出に影響が出ることがあります。さらに、取引先や金融機関からの信用失墜は避けられず、事業継続そのものが困難になるケースも少なくありません。

そして、最も見落とされがちなのが、外国人本人への影響の大きさです。

不法就労と判断されれば、在留資格の取消しや強制退去、場合によっては長期間の再入国禁止が科されます。本人に悪意がなく、「会社からそう言われたから働いていた」というケースであっても、結果として人生設計を根底から覆されてしまうことがあります。

つまり、不法就労助長罪は、企業の判断ミス一つで、会社の信用、経営者の人生、そして外国人本人の将来を同時に壊しかねない犯罪なのです。

だからこそ、「知らなかった」「これくらいなら大丈夫」という安易な判断が、最も危険だと言えます。

近年の不法就労助長罪の摘発事例を見ていくと、対象となっているのは、いわゆる「悪質な企業」ばかりではありません。むしろ目立つのは、地方の中小企業や、慢性的な人手不足に直面している業界――具体的には、建設業、製造業、飲食業、宿泊業などです。

共通しているのは、「違法なことをしているつもりはなかった」「むしろ人手不足の中で、真面目に雇用していた」という企業側の認識です。

例えば、留学生のアルバイトについて、「週28時間以内」という原則は知っていたものの、長期休暇中の扱いや、複数店舗での勤務時間の通算を正確に理解しておらず、結果として法定時間を超えて就労させてしまったケース。

あるいは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で採用した外国人に対し、繁忙期の一時的な対応として、本来は認められていない現場作業や単純労働を任せてしまい、それが調査で問題視されたケースもあります。企業側としては、「本人も了承していた」「一時的な手伝いのつもりだった」という感覚であっても、法的には不法就労を助長したと判断されてしまいます。

特に近年は、労基署や入管による調査の中で、雇用契約書、勤務実態、指揮命令系統まで詳細に確認されるようになっており、「知らなかった」「悪意はなかった」という説明はほとんど通用しなくなっています。もはや、不法就労助長罪は、一部の悪質な企業だけの問題ではありません。制度を正確に理解しないまま、善意で雇った結果、気づかぬうちにリスクを抱えてしまう――そんな時代に入っているのです。

だからこそ、「真面目にやっているから大丈夫」ではなく、「真面目だからこそ、正確に理解する」姿勢が、これからの外国人雇用には不可欠だと言えるでしょう。

在留カードや在留期限の定期的な確認は、単なる形式的なチェックではありません。それは、企業が外国人を雇用するうえでの最低限のリスク管理です。

在留期限を把握していなかった、カードの更新状況を確認していなかった――その一つひとつが、不法就労助長罪という重大な法的リスクに直結します。

同様に重要なのが、職務内容と在留資格が実態として一致しているかという点です。書類上は問題がなくても、実際の業務が資格の範囲を逸脱していれば違反と判断される可能性は十分にあります。業務内容を変更する際には、「これくらいなら大丈夫だろう」と自己判断せず、必ず専門家に相談する。この一手間を惜しんだ結果、後から是正不能な問題に発展するケースは少なくありません。

留学生の雇用においては、労働時間管理の徹底が不可欠です。本人が申告した時間を鵜呑みにする、シフト管理を現場任せにする――そうした運用は、企業側の責任を免れません。

そして何より注意すべきなのが、「本人が分かっているはず」「紹介会社に任せているから大丈夫」という姿勢です。在留資格の管理責任は、最終的には雇用する企業自身にあります。誰かに任せていた、知らなかったという言い訳は、行政調査の場では通用しません。

これらの対応は、努力義務でも、理想論でもありません。企業が事業を守るために不可欠なリスク管理です。外国人雇用を続ける以上、「知らなかった」では済まされない時代に入っています。だからこそ、日常的な確認と、専門家を交えた適切な運用体制を整えることが、これからの企業に強く求められているのです。

不法就労助長罪は、「問題が起きてから相談すればよい」という性質のものではありません。むしろこの分野は、問題が顕在化した時点で、すでに手遅れになっているケースが少なくないのが現実です。

採用前の在留資格確認、業務内容と在留資格の整合性の検討、配置転換や職務内容の変更、さらには事業拡大や新規事業立ち上げのタイミング。こうした節目の段階で専門家が関与しているかどうかが、企業がリスクを回避できるか、あるいは意図せず違法状態に踏み込んでしまうかを分けます。

現場で起きる不法就労助長の多くは、悪意からではなく、「知らなかった」「これくらい大丈夫だと思った」という判断の積み重ねから生じています。だからこそ、事後対応ではなく、事前設計が何より重要なのです。

私は、外国人を無制限に受け入れるべきだとも、感情的に排除すべきだとも考えていません。大切なのは、制度を正しく理解し、その枠組みの中で、現実に即した形で共存していくことです。

ルールを守りながら外国人材を活用することは、企業にとってのリスク管理であると同時に、外国人本人の立場と将来を守ることにもつながります。そしてそれは、短期的な人手確保ではなく、企業の持続性を高め、日本社会全体の信頼を積み上げていく選択でもあります。

不法就労助長罪を「罰則の話」で終わらせず、経営と社会の持続性の問題として捉えること。そこにこそ、今、求められている視点があるのではないでしょうか。

最後に、もう一度お伝えしておきたいことがあります。

不法就労助長罪においては、「知らなかった」「悪気はなかった」という言い分は、通用しません。

外国人本人が不法就労であること、それを知っていた、あるいは注意すれば分かったこと、そして結果として就労を助長したこと。この三点がそろえば、企業側が処罰の対象となる可能性は現実に存在します。

人手不足が深刻化する中で、「今だけ」「この程度なら大丈夫だろう」そうした判断が積み重なった結果、取り返しのつかないリスクにつながるケースを、私は現場で見てきました。だからこそ、いま企業に求められているのは、“グレーで回す”発想ではなく、“制度の中でどう成立させるか”を考える姿勢です。

制度は厳しくなっていますが、決して使えなくなったわけではありません。正しく理解し、正しく使えば、外国人材の受入れは、今なお有効な経営戦略です。少しでも不安や違和感、「これで本当に大丈夫だろうか」と感じる点があれば、問題が表面化する前に、ぜひ専門家に相談してください。

早めの確認と軌道修正こそが、企業を守り、そして外国人材の人生やキャリアを守る、最も現実的で、最も誠実な選択です。制度を理解し、味方につけた企業と人材だけが、安心して前に進めると考えています。

本記事が、その第一歩となれば幸いです。

出入国在留管理局申請取次行政書士
稲福 正直

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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