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『技人国』の運用厳格化が必要な理由についてわかりやすく解説

入管法

こんにちは、行政書士の稲福です。

昨今、在留資格『技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)』を巡って、その審査基準や運用方法の在り方が改めて議論されています。

実務の現場では、制度の趣旨と実態との間に乖離が生じてきたことも事実であり、不法就労や不法就労の助長につながりかねない事例が散見されるようになっていました。背景には、制度理解が十分でないまま外国人を受け入れてきた企業側の事情や、悪質なブローカーの介在、さらには過去の運用における審査の緩さも指摘されています。

こうした状況の中で、審査基準の明確化や運用の見直しが進められていることは、企業・外国人の双方にとって、決して無関係な動きではありません。本稿では、技人国ビザを巡る現状と課題を整理しながら、今回の厳格化が持つ意味について、実務の立場から考えてみたいと思います。

まず、現実を直視する必要があります。

技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国ビザ)を巡っては、これまでの運用の中で、制度趣旨と実態が乖離したケースが少なからず積み重なってきました。

まず、技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザとは、大学等で培った専門知識や技能を業務に活かすことを前提に認められる在留資格です。そのため、業務内容は学歴・専攻と合理的な関連性が求められ、単純作業や補助的業務を主とする就労は認められていません。

しかし、実際の外国人人材の就労現場においては、名目上は「ホワイトカラー職」とされているものの、実際の業務内容は、マニュアル化された定型作業や補助的業務が中心であることが散見されます。例をあげると、専門的判断や裁量を伴わなず実質的には単純労働に近い業務が日常的に行われている、または業務内容と、本人の学歴・専攻分野との間に合理的な関連性を説明できないといったケースは、決して珍しいものではありません。

例えば、

☑ITエンジニアとして在留資格を取得しているものの、実際にはPCの初期設定、機器の搬入・設置、簡易なトラブル対応といった補助的・反復的作業が中心となっているケース

☑事務系職種として在留資格を得ていながら、日常業務の大半が書類の仕分け、ファイリング、郵送作業、備品管理など、専門性を伴わない定型作業に限定されているケース

☑国際業務を名目としつつ、実態としては接客補助、電話応対、簡易な受付業務など、日本語能力や専門知識を前提としない業務が中心となっているケース

☑企画・管理職として在留しているにもかかわらず、現場では清掃、商品の陳列、在庫管理、梱包作業など、現業的・肉体労働に近い業務が恒常的に含まれているケース

これらはいずれも、「補助的に一部行っている」というレベルを超え、業務の主たる内容そのものが単純労働化していると評価されやすい事例です。特に問題視されるのは、これらの業務が一時的・例外的ではなく、日常業務として恒常的に行われている点にあります。

そして、重要なのは、これが一部の例外的な悪質事例に限られた話ではないという点で、むしろ、日常的に企業や外国人本人から相談を受ける実務者ほど、「この業務内容で本当に技人国なのか」、「将来、調査が入った際に説明できるだろうか」といった違和感を、強く、そして繰り返し感じてきたのが実情です。

こうした積み重ねが、現在進められている在留資格審査の厳格化、とりわけ学歴・専攻と業務内容との整合性を強く求める方向性へとつながっていることは、現場感覚としても理解できる部分があります。

ここで重要なのは、この問題の本質が、外国人個人の資質やモラルの問題ではないという点です。

多くのケースにおいて、外国人本人は「与えられた業務をこなしている」に過ぎず、制度の線引きを正確に理解できる立場にはなく、その背景にあったのは、まず制度理解が不十分なまま採用を進めてしまう企業の存在です。

例えば、「技人国なら人手不足が解消できる」、「専門職として採用すれば現場作業も任せられる」といった、制度の趣旨を十分に確認しないままの判断が実態との乖離を生んできました。また、「採用できればそれでよい」という短期的な視点から、業務内容の整理や将来的な配置を十分に検討しないまま在留資格の許可申請が行われるケースも少なくありませんでした。

そこに介在したのが、悪質なブローカーや一部の仲介業者の存在です。

制度のグレーゾーンを熟知した業者が、「この内容でも通る」「これまでは問題になっていない」といった説明で申請を誘導し、形式だけを整えた案件が積み重ねられてきた側面も否定できません。さらに、こうした流れを結果的に助長してしまったのが、過去の入管審査の甘さでした。

一件一件は小さな例外であっても、それが積み重なることで、制度全体としての歪みが拡大していったのです。

特に強調しておきたいのは、この点です。

「知らなかった」「専門家に任せていた」という企業側の言い分は、現在の実務運用において通用しなくなっています。

業務内容が在留資格に適合していなければ、たとえ悪意がなくとも、結果として不法就労、さらには不法就労助長罪のリスクが企業側に直接及ぶことになります。

例えば、技人国ビザで採用した外国人に対し、慢性的な人手不足を理由に、現場作業や単純労働を恒常的に行わせていた場合において、企業側が「一時的な応援のつもりだった」と説明しても、実態として業務の中心が在留資格に適合していなければ、不法就労と評価される可能性は否定できません。

また、採用時には専門業務を想定していたものの、入社後に配置転換や業務内容の変更が行われ、
結果として資格外活動に近い状態が常態化していたケースでも、「当初は問題なかった」という主張は、責任を免れる理由にはなりません。

さらに、「行政書士や紹介会社が問題ないと言っていた」という説明も、企業の責任を否定する根拠にはなりません。在留資格に適合した業務を行わせる義務は、最終的には受入企業自身が負う責任だからです。

これは行政による脅しでも、過剰な解釈でもありません。入管法上、明確に定められた企業責任であり、調査や是正の場面では、「知っていたか」ではなく「適合していたか」という一点で判断されます。だからこそ、外国人材の受入れにおいては、制度理解を専門家任せにするのではなく、企業自身が業務内容と在留資格との適合性を常に確認し続ける姿勢が、これまで以上に求められています。

では、在留資格審査の厳格化は、外国人本人にとって不利になるのでしょうか。

私は、そうは思わず、むしろ、適切な厳格化は、外国人本人を守るために必要な側面が極めて大きいと考えています。

実際の就労現場では、在留資格で許されていない業務であるにもかかわらず、「会社の指示だから」「よく分からないまま」単純労働や現業作業に従事させられているケースが後を絶ちません。

例えば、技人国ビザで在留しているにもかかわらず、実態としては清掃、陳列、梱包、受付業務が日常化していたり、専門性を前提としない補助作業が主業務となっているケースです。こうした状況は、企業側の問題であると同時に、最終的には外国人本人の在留資格上のリスクとして跳ね返ってきます。

実際、在留資格の更新時や変更時、あるいは永住申請の場面で、「過去にどのような業務に従事していたか」が厳しく確認されるケースは少なくありません。その結果、本人に悪意がなかったとしても、「結果的に法令違反に関与していた」と評価され、不利な判断がなされることもあります。厳格化は、こうした「知らないうちに違反の当事者にされてしまう構造」を是正するための側面も持っています。

業務内容と在留資格の整合性が厳しく確認されることで、外国人本人も、「本来やるべきでない業務を断りやすくなる」また、「違法な指示に対して声を上げやすくなる」という効果が期待できます。そのような意味で、厳格化は排除のための制度ではなく、外国人本人の将来を守るための制度でもあると言えるでしょう。

このおようなグレーゾーンを許容してきた結果、結局のところ、誰も得をしない構造が生まれていました。

これまでの比較的緩やかな運用のもとでは、まず企業側が大きなリスクを抱えることになりました。業務実態が曖昧なまま技人国ビザで外国人を受け入れ、後になって調査や是正指導が入れば、配置転換や雇用継続の見直しを迫られる。最悪の場合、企業の管理体制そのものが問われることもあります。

さらに見過ごせないのが、この「グレーな運用」が、単なる是正指導にとどまらず、刑事責任に発展するケースも現実に存在するという点です。

在留資格で認められた範囲を明らかに逸脱した業務に従事させていた場合、企業側は 不法就労助長罪 に問われる可能性があります。これは、「不法就労をさせる意図があったかどうか」だけでなく、結果として資格外活動・不適合就労をさせていたかが問題とされます。

実際の現場では、

●技人国ビザで在留しているにもかかわらず、単純労働を恒常的に行わせていた
●「一時的」「補助的」という認識で配置していた業務が、実態としては主業務となっていた
●業務内容と在留資格の不整合を把握しながら、人手不足を理由に是正を先送りしていた

といったケースで、企業側の刑事責任が厳しく問われた事例も多数あります。

重要なのは、こうしたケースの多くが「悪質な意図があった企業」ではなく、「これくらいなら大丈夫だろう」と考えていた企業で起きている点です。つまり、グレーを許してきた結果、行政指導では済まず、逮捕・書類送検という最悪の形で表面化するという事態が、決して絵空事ではないということです。

一方で、外国人本人にとっても決して健全な状況ではありませんでした。

専門性を活かせない業務に従事し続けた結果、職歴として評価されず、更新や転職の際に説明がつかなくなる。日本でキャリアを築くつもりが、将来の選択肢を狭めてしまうケースも少なくありません。

さらに深刻なのは、真面目に制度を守ってきた企業ほど損をする構造が生まれていた点です。

業務内容と学歴・専攻の整合性を慎重に確認し、適正配置を行ってきた企業ほど、採用のハードルが高く、コストもかかる。一方で、グレーな運用を行う企業が人材確保の面で有利に見えてしまう場面もありました。

このように、企業も、外国人も、制度を守る事業者も、誰一人として報われない歪んだ構造が、長年にわたり放置されてきたと言えます。だからこそ、今回の厳格化は単なる締め付けではなく、この構造を是正するために不可欠なプロセスだと考えます。

今回の審査厳格化について、「外国人排除ではないか」「企業活動が萎縮するのではないか」
といった声が聞かれることがあります。しかし、こうした受け止め方は、必ずしも正確とは言えません。

今回の厳格化の本質は、外国人を排除することでも、企業活動を抑制することでもありません。あくまで、在留資格ごとの趣旨に合致した就労だけを認めるという、極めて当然の原則を徹底するものです。

例えば、技人国ビザで在留しながら、実態としてはデータ入力やファイリングなどの定型的な事務作業が業務の中心となっているケース。あるいは、国際業務を名目としつつ、翻訳・通訳とは言い難い定型文処理や補助業務に終始しているケース。これらは、「外国人だからダメ」なのではなく、在留資格の想定する業務内容と実態が合っていないという点が問題視されているに過ぎません。

同様に、経営・管理ビザにおいても、事業実体や経営関与が確認できないまま就労ビザの代替として利用されてきた事例が現場では少なからず存在してきました。

今回の厳格化は、そうした制度趣旨から乖離した利用を是正する動きであり、適正な事業活動や、本来想定されている外国人材の就労までを否定するものではありません。むしろ、制度の原則を明確にすることで、真に適法な企業活動と外国人雇用を守るための土台を整えるその意味合いが強いと言えるでしょう。

むしろ、審査・運用が厳格になることで、健全な企業だけが正当に評価される環境が整っていくと考えています。

例えば、業務内容を曖昧にせず、「どの業務に、どの専門性が必要なのか」を事前に整理できている企業は、職務内容と在留資格との整合性を、客観的に説明することができます。こうした企業は、審査が厳しくなったとしても、むしろ評価されやすくなるでしょう。

また、単に「人手が足りないから外国人を雇う」のではなく、中長期的な事業計画の中で、どのポジションに、どのような役割を担ってもらうのかを設計できている企業は、外国人材を「代替労働力」ではなく、事業を支える戦力として位置づけています。

例えば、IT分野であれば、単純なオペレーション業務ではなく、開発・設計・運用といった工程の中で、本人の専門性をどう活かすのかが明確になっている企業は、業務実態を問われても十分に説明が可能です。さらに、外国人雇用を短期的なコスト調整ではなく、育成・定着を前提とした投資と捉えている企業は、結果として職務内容の明確化や労務管理の高度化にもつながっています。

このように、審査や運用が厳格になることは、単に「門戸を狭める」ことを意味するのではなく、いい加減な運用を排除し、真面目に取り組む企業が報われる構造を作ることでもあります。それは結果として、外国人材にとっても、日本人労働者にとっても、健全で持続可能な雇用環境を形成することにつながります。

つまり、審査の厳格化は、日本の雇用市場全体の質を底上げする契機になり得るのです。

専門家としての立場から申し上げますと、私自身、日々の相談業務の中で、以前にも増して、あえて厳しい判断をお伝えする場面が増えています。

「この業務内容では、技術・人文知識・国際業務の在留資格では通りません」
「その業務実態であれば、特定技能として整理すべきです」
「その雇用形態のままでは、将来的に大きなリスクを抱えます」

こうした言葉は、決して軽々しく口にしているものではありません。

例えば、管理職を名目としながら、現場ではシフトに入り、清掃や商品陳列、在庫管理といった現業業務が恒常的に含まれているケース。さらに、専門職として雇用されているにもかかわらず、業務内容の大半が電話応対や来客対応など、専門性を前提としない補助的業務に偏っているケースも見受けられます。

こうした場合、「今回は通るかもしれない」という安易な期待のもとで申請を進めることは、結果として、企業にとっても、外国人本人にとっても、将来の調査や更新時に深刻なリスクを残すことになります。だからこそ、目先の許可だけを目的とするのではなく、数年先を見据えた制度適合性を優先する必要があります。

私が厳しい判断をお伝えするのは、企業の事業継続を守るためであり、外国人本人の在留の安定を守るためでもあります。制度に合わないものは合わない。その現実から目を背けず、適切な在留資格と雇用の形を選ぶことこそが、結果として双方を守る最善の道だと考えています。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」の審査基準および運用の厳格化について、私としては、不法就労の抑止、不法就労助長の防止、そして何よりも企業と外国人双方を守るための措置という観点から、全面的に賛成の立場です。

制度が緩やかに運用されてきた結果、専門性を前提としない業務で在留資格が取得され、結果的に外国人本人が「制度に合わない働き方」を強いられるケースや、企業側が意図せず不法就労助長と評価されるケースが現場では現実に生じてきました。

こうした構造は、本来守られるべき外国人労働者を不安定な立場に置くだけでなく、真面目に制度を遵守している企業との間に不公平感を生む要因ともなってきました。

審査や運用を厳格化することは、単に「門戸を狭める」ことではありません。制度の前提に立ち返り、適切な人材だけを選別することにほかなりません。大切なのは、「厳しくすること」そのものではなく、制度趣旨に沿って、正しく運用することです。

そのためには、企業が自社の業務内容を正確に理解し、在留資格との整合性を自ら説明できる体制を整えることが不可欠です。同時に、制度の境界線を熟知した専門家が早期から関与し、業務設計や採用段階での判断を支えることが、結果として企業と外国人双方を守ることにつながります。

審査基準の厳格化は、在留資格制度への信頼を回復するための重要な一歩です。その趣旨を正しく理解し、制度を「リスク」ではなく「仕組み」として活かせるかどうかが、今後の受入れの成否を左右すると言えるでしょう。

稿が、制度を正しく理解し、適法な外国人雇用を進めるうえでの参考となりましたら幸いです。


出入国在留管理局申請取次行政書士
稲福 正直

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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