こんにちは、行政書士の稲福です。
顧問をしている登録支援機関から、最近とくに多く寄せられる質問の一つが、
「登録支援機関が、所属機関(受入企業)の年1回の定期届出を作成しても問題ないのか?」
というものです。
結論から申し上げると、登録支援機関は所属機関の定期届出を作成することはできません。ただし、この点は非常に誤解が生じやすいため、理由と正しい役割分担を丁寧に整理していきたいと思います。
そもそも「年1回の定期届出」とは何か
特定技能制度では、特定技能外国人の受入企業(=所属機関)に対して、
●受入れ状況
●雇用状況
●支援の実施状況
●法令遵守状況
などを内容とする定期届出を年1回、入管に提出する義務が課されています。
この届出は、「支援状況の報告」ではなく、あくまで「所属機関としての責任に基づく報告」です。つまり、提出義務の主体は登録支援機関ではなく、受入企業そのものとなります。
登録支援機関の立場と権限
登録支援機関とは、特定技能外国人を受け入れる所属機関(受入企業)に代わって、特定技能外国人に対する生活支援・就労支援・相談対応・各種同行支援等の義務的支援(および任意的支援)を適切に実施するために、出入国在留管理庁に登録された機関をいいます。
そして、登録支援機関は、あくまで支援業務の実施主体であり、在留資格に関する申請・届出書類の作成主体ではない点が重要なポイントです。つまり、在留資格に関する申請書類や入管に提出する法定届出書類について、「作成権限」が付与されているわけではありません。
ここで重要なのは、支援業務と、入管提出書類の作成業務は、法的に別物だという点です。
登録支援機関については、別の記事でも解説しておりますので、是非参考にして下さい。
なぜ「作成できない」のか
年1回の定期届出は、法令に基づく「他人(=所属機関)のために官公署(入管)へ提出する書類」に該当します。そして、このような書類を、業として作成できるのは、原則として弁護士と行政書士のみです。
したがって、登録支援機関が所属機関に代わって定期届出書を作成するという行為は、明確に行政書士法違反として処罰の対象となります。
なお、2026年1月1日より施行された改正行政書士法により、これまで曖昧に運用されてきた入管への申請書類作成において「グレーゾーンの排除」と「責任主体の明確化」という明確なラインが引かれることにました。
今後は、本来は適法に外国人材を受け入れているはずの受入企業にまで、調査や是正指導、場合によっては入管からの厳しい確認が及ぶ可能性がありますので、十分注意が必要です。
詳しくは、別の記事で解説しておりますので、よろしければ参考にして下さい。
支援機関が一切関与してはいけないのか?
ここでよくある誤解が、「では、登録支援機関は一切関与してはいけないのか?」という点です。
答えは NO です。
登録支援機関は、「支援実績の事実関係を整理する」「必要な情報を所属機関に提供する」「内容の確認・説明を行う」といった『情報提供・補助』の立場で所属機関の定期届出に関与することは可能です。
ただし、「書類の文言を組み立てる」「届出書を完成させる」「形式的に作成者となる」といった行為は、役割分担を越えてしまうことになります。
実務上の正しい整理
実務的に安全なのは、次の形です。
所属機関(受入企業)
●届出義務の主体
●内容の最終責任者
行政書士
●定期届出書の作成
●法的観点からの確認
登録支援機関
●支援実績・事実関係の情報提供
●内容説明・資料提出
この三者の役割を分けることで、制度違反・法令違反のリスクを最小限に抑えることができます。
「良かれ」のつもりが一番危険
「良かれ」と思ってやったことが、後から振り返ると登録支援機関にとっても所属機関にとっても一番リスクが高かった――外国人雇用の現場では、そうした場面が少なくありません。
忙しい企業の代わりに書類を整えた。現場が回るよう、手続きを先回りした。制度に詳しいからこそ、つい踏み込み過ぎてしまった。
しかし、善意であっても、役割や権限を越えた瞬間に違法性をおびるのが入管実務や士業関連業務の怖いところです。「悪意はなかった」「助けたかった」では済まされない。だからこそ今、“良かれ”ではなく、“正しいかどうか”で判断する姿勢がこれまで以上に求められています。
さいごに
登録支援機関は、所属機関の年1回の定期届出について、
- 作成主体にはなれない
- 情報提供・補助にとどめるべき
というのが、大前提となります。
特定技能制度は、「支援」と「申請・届出」の線引きを誤ると、関係者全体にリスクが波及する制度でもあります。不安がある場合は、早めに専門家へ相談し、正しい役割分担のもとで制度を運用することが、結果として、企業・外国人・支援機関すべてを守ることにつながります。
制度を守ることは、誰かを縛るためではなく、関わるすべての人の事業と立場を守るためのものです。本稿が、登録支援機関・受入企業の皆さまにとって、制度を正しく理解し、安心して特定技能制度を運用するための一助となれば幸いです。
出入国在留管理局申請取次行政書士
稲福 正直












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