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改正行政書士法が登録支援機関の実務に与える影響とリスクについて

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こんにちは、行政書士の稲福です。

今回は
2026年1月1日より施行された行政書士法の改正が、登録支援機関の実務に与える影響について解説したいと思います。

今回の改正は、これまで曖昧に運用されてきた在留資格許可申請書類作成において「グレーゾーンの排除」と「責任主体の明確化」という明確なラインが引かれることになり、これらは登録支援機関の実務に確実に影響してきます。

そこでこの記事では、改正行政書士法において何がどう変わり、何に注意すべきなのかという点をかいつまんで解説したいと思います。

従来より行政書士法では、官公署に提出する書類の作成を業として行えるのは行政書士のみとされておりましたが、「それなら業としてではなく無償なら書類作成してよいのでは?」という登録支援機関側の言い分がこれまで通用していたという背景があります

例えば、「支援委託費はいただいていますが、書類作成については別途料金をもらっていません。無償で行っている支援業務の一環として書類を作成しただけで、書類作成代金は一切受け取っていません。したがって行政書士法違反には当たらないと考えています。」という典型的な言い分です。

しかし、今回の行政書士法改正によって、『行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第1条の3に規定する業務を行うことができない。』と明文化されました

これはつまり、書類作成について直接の報酬を受け取っていなくても、関連する業務から1円でも対価を受領していれば“有償”と評価されるという考え方が、法律上はっきりした、ということです。

登録支援機関の場合、支援委託費を受領している以上、実務上、書類作成は支援業務と切り離せないものと評価されます。そのため、「書類作成は無償でやっている」や「あくまで支援業務の一部にすぎない」という主張は、支援委託費という対価が存在する時点で成立しなくなります。

つまり、書類作成も、支援委託費の対価に含まれると評価されることになるため、今後は「書類作成は無償だから問題ない」「支援業務の一部」という理屈自体が否定されるということになります。

特定技能』の現場に携わっている立場として率直に申し上げますが、これまで、多くの登録支援機関が堂々と書類を作成してきたことは事実です。

しかし、(違法と知りながら有償で作成していた一部の登録支援機関を除き)それは決して悪意からではないと思います。

背景には、次のような理由があります。

☑制度が複雑で、現場対応が先行してきた
☑行政書士が十分に関与できていなかった
☑支援業務の一環という認識が広まっていた
☑登録支援機関に対し申請取次のライセンスが付与されていた。
☑実際に、入管から指摘されることがほとんどなかった

つまり、これまで制度上、どこまでが許され、どこからが問題になるのかが明確に示されることがなく、結果として現場で許容されている業務であるかのように受け止められ、黙認されてきたというのが実情です。

特定技能制度においては、登録支援機関に対して申請取次の権限が付与されておりますが、その結果として、登録支援機関が事実上、入管提出書類の作成や申請実務に深く関与するという運用が広がっていきました。

本来、申請取次とは、申請人の明確な意思に基づき、適法に作成された申請書類を、申請取次者として申請人に代わって入管へ提出する行為に限られるべきものです。

この点、登録支援機関は、特定技能外国人に対する生活支援・就労支援を担うことを制度上の役割とする存在であり、在留資格に関する申請書類を作成する権限は、法律上付与されていません。

にもかかわらず、申請取次の承認を受けたことを理由に、登録支援機関が申請書類の作成にまで関与する運用が生じていたとすれば、それは行政書士法との役割分担を逸脱したものと言わざるを得ません。

つまり問題は、個々の登録支援機関の運用姿勢のみではなく、「申請取次を付与した制度そのものが、書類作成主体の線引きを曖昧にしてしまった」点にあります。

制度上、「支援業務」「申請取次」「書類作成」の役割分担が明確に整理されていなかった結果、善意であっても違法性を帯びかねない運用が生まれてしまった。

その構造自体が、そもそも誤っていたといわざるをえません。

一方で、行政書士が十分に関与できていなかったという点に関しては、特定技能制度そのものを十分に理解している行政書士が必ずしも多くなかったという問題点もありました。

特定技能制度は、入管法だけでなく、労働法令、業界別告示、運用要領、協議会ルールなどが複雑に絡み合う制度であり、机上の知識だけでは対応できない実務が数多く存在します。

そのため実際の現場では、日々特定技能外国人や受入企業と向き合い、制度運用を担っている登録支援機関の方が、業務内容や実務の流れを深く理解しているというケースも少なくありません。

結果として、「制度理解が十分でない行政書士にわざわざ書類作成を依頼するより、自分たちで対応した方が早く、正確だ」と感じられる状況であったことは紛れもない事実です。

これは、制度が急速に拡大する中で生じた、実務と専門家の知識のギャップによるものであったともいえるでしょう。

しかし、これまで問題にならなかった=適法であったことを意味しているわけではなく、これまで見過ごされてきた業務が2026年の行政書士法改正で明確に線を引かれ、これまで問題にならなかった実務が、行政書士法違反として可視化されることになります。

どういうことかと申しますと、2026年以降は審査側の視点が一気に変わることになり、まず書類を「誰が作成したか」、「誰が内容を決めたか」、「誰が指示をしたか」が実態ベースで確認されることになり、今まで普通にやっていた業務がそのまま行政書士法違反として評価されるという事態が現実的に起こりえるということを意味します。

なお、今後想定される行政書士法違反の摘発リスクとして、特定技能外国人に関するトラブルの発生などがあげられます。例えば、労働条件トラブル、職務内容の逸脱、生活支援・義務的支援の不備、住居・費用負担トラブル、ハラスメント・人権問題などを契機に、入管・労基・監督署の調査が入り、支援体制・書類の確認後「この申請書類は誰が作ったのか?」となります。そして、登録支援機関が書類作成をしていた場合、その関与が判明することにより、後追いで行政書士法違反→行政処分および刑事責任へと波及するケースなどがあるでしょう。

これは余談ですが、あくまで登録支援機関の顧問をしている行政書士側の視点からの感じることですが、登録支援機関にとって一番危険なのは業務における「慣れ」であると常々感じております。例えば、一番多い言い分が「今までも問題なくやってきた」で、次に多いのが「他も同じことをしている」、「うちだけじゃない」です。そして、これら言い分は、法改正後には一切の免罪符になりません。

2026年(令和8年)1月1日から施行される改正行政書士法では、無資格者による行政書士業務の違反に対して、両罰規定が明確に整備されます。

これにより、違反行為を実際に行った個人だけでなくその行為を行わせた、あるいは業務として関与させていた法人(会社・組織)そのものにも、100万円以下の罰金刑が科される可能性が明文化されました。

また、「罰金刑のみ」の犯罪ですが、刑事事件である以上、形式的には逮捕の可能性はゼロではありません。例外的に逮捕が検討され得るケースとして

●悪質・反復的な無資格業務
●多額の報酬を長期間得ている
●指導・警告を無視して継続
●証拠隠滅・虚偽説明・逃亡のおそれ

こうした場合には、形式上は逮捕の要件を満たし得るという位置づけになります。

これまでの運用では、「現場の担当者が勝手にやった」「会社としての指示ではなかった」といった説明で、法人責任が曖昧に扱われる余地が残されていました。

しかし今回の改正により、従業員が業務として無資格の行政書士業務を行った場合、その会社自体が刑事責任を負うという構図が、はっきりと示されたことになります。

その結果、本来は適法に外国人材を受け入れているはずの受入企業にまで、調査や是正指導、場合によっては入管からの厳しい確認が及ぶことになります。とりわけ、登録支援機関の関与を前提に特定技能外国人を受け入れている企業にとっては、意図せず制度違反に巻き込まれ、事業運営そのものに支障が生じるリスクがある点は決して見過ごせません。

これは、単なる罰則強化ではありません。企業に対して、「誰が、どの業務を、どの資格に基づいて行っているのか」という業務分担と法令遵守体制そのものが問われるフェーズに入ったという意味を持ちます

今後、登録支援機関と行政書士が目指すべき方向性としては、両者が対立する関係になるのではなく、役割を分けて支え合う関係になることが大切だと考えております。言うまでもなく、登録支援機関がこれまで担ってきた現場支援や外国人対応は、制度上も非常に重要な業務です。ただし今後、書類作成や法的判断の部分は、行政書士が担うべき領域として整理する必要があります。

これらは、決して登録支援機関の仕事を奪うためではなく、登録支援機関の業務をルールに則った適法な形に戻すための試みです。これまで登録支援機関が、現場を回すためにやむを得ず行ってきた申請書類作成業務も、行政書士法改正により今後は「誰が申請書類を作成し、誰がその責任を持つのか」を明確にすることが求められることになります。

そして、登録支援機関が担う生活支援・相談対応・関係機関との調整といった本来業務を、行政書士が書類作成や法的判断の部分で支えることで、誰がどこまで責任を負うのかが明確になります。その結果、これまでグレーだった実務が法令に照らして整理され、登録支援機関はやってはいけないことを気にせず、支援業務そのものに専念できる体制が整います。やはり、法令を踏まえた役割分担のもとでこそ、登録支援機関は安心して支援業務を継続することができると思うのです。

最後になりますが、私たち行政書士は、登録支援機関の業務を制限する存在ではありません。現場に寄り添い、実務を適法な形に整え、事業がしっかり回していける体制をつくることが役割です。登録支援機関を法務の側面から支えことが私たちの使命であると考えております。

登録支援機関の業務を守るパートナーとして、現場に寄り添いながら登録支援機関の継続と信用を支える存在になれることを願ってやみません。



出入国在留管理局申請取次行政書士
稲福 正直



この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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