5
previous arrow
next arrow
言語切り替え
  • English
  • 日本語
  • 한국어
  • 简体中文
  • 繁體中文

『経営・管理』の要件厳格化~外国人材のスタートアップをどう評価すべきか~

入管法

こんにちは、行政書士の稲福です。

今回は、近年議論が進んでいる経営・管理ビザの要件厳格化、とりわけ経営経験のないスタートアップ企業に対する評価の在り方について、どのような基準で選別・評価すべきかという点を制度設計の観点から問題提起したいと思います。

名ばかり起業や実体のない法人を排除する必要性が叫ばれる一方で、その選別基準が過度に形式化し、学位や経歴といった分かりやすい指標に依存することで、将来的に納税者・雇用創出者となり得る人材まで入口段階で排除してしまっていないか。経営・管理ビザが本来担うべき役割と、日本の中長期的な国益の観点から、いま一度立ち止まって考える必要があると感じています。

まず前提として、経営・管理ビザの厳格化そのものには、一定の合理性があると考えています。実務の現場では、

● 事業実態のない「ペーパーカンパニー型」
● 自己資金の名義貸し・一時的な資金移動
●実質経営不在型
●業務内容と在留資格の乖離
● 法人スキームの使い回し

といったケースが、残念ながら実際に横行してきたのも事実です。

これらを排除し、「本当に事業を行う意思と能力のある外国人経営者」を選別する必要性は、現場に携わる実務者ほど強く感じています。

その意味で、審査の厳格化自体を一概に否定するものではありません。

しかし、今回示されている方向性――すなわち、一定の経営経験が認められない場合に、修士相当以上の学位や専攻分野による限定を主要な判断軸とすることについては、なお慎重な検討を要するのではないかと感じています。果たして、そのような基準が、将来的な事業継続性や経済効果を適切に見極める手段として、本当に日本の国益に資するものと言えるのでしょうか。

例えば、海外に目を向けると、多くの国がスタートアップ向けのビザ制度を設けていますが、審査に評価軸は日本とはやや異なります。例えば同じアジアの国であるシンガポールでは、学位を「入口条件」にはしておらず一貫して「事業性」を重視しております。

重要なのは、

●事業アイデアの独自性・市場性
●事業計画の実現可能性
●出資額・資金調達能力
●雇用創出や経済波及効果
●継続的な税収への寄与

●日本市場への適合性

であり、学位はあくまで補助的・加点的要素に留まっているケースが大半で「修士号を持っているかどうか」がスタートアップの成否を直接左右することはありません。

ちなみに、シンガポールでは入口ではなく「更新」でふるいにかける制度設計になっており、入口は比較的広く設け、実体の伴わない事業は更新段階で排除しております。例えば、事業が成立していない、売上・雇用・投資実績が出ていない場合は、更新で不許可となる可能性が高くなります。つまり、「学歴で足切り」ではなく「結果で評価」という発想です。

本来、『経営・管理』ビザの本質とは、学術的能力の証明ではなく、経済活動の担い手としての適格性にあるべきだと考えております。そして、重視されるべき評価軸は、極めて実務的・経済的な要素であるべきです。

例えば、経営未経験のスタートアップ企業については、次のような設計も十分に考えられるのではないでしょうか。

☑学位要件は加点要件に留め、絶対要件にはしない
☑一定規模以上の出資額・資本金があれば学歴要件を免除する
☑インバウンド向け事業や在留外国人向けサービスなど、 日本で数少ない構造的成長分野については別枠評価とする

これらの考え方は、経営・管理ビザ制度の趣旨に反するものではなく、むしろ事業の実体や継続性を適切に見極めるための、より実効性の高い選別につながるものと考えます。

今の日本の市場構造を冷静に見れば、人口減少、労働力不足、内需の縮小が進む中で、在留外国人と外国人観光客関連市場は、数少ない成長領域の一つです。こうした分野において、

●将来の納税者となり得る人材
●雇用を生み出す可能性のある起業家
●国際的なビジネス窓口となり得る存在

を、学位の有無だけで入口排除してしまうことが、果たして日本の国益にかなうのか。この点については、強い疑問が残ります。

経営・管理ビザの厳格化は、「排除のための制度」ではなく、「選別の精度を高めるための制度」であるべきです。形式的な要件だけでなく、事業の中身と将来性をどう評価するのか。その議論が、今まさに求められているのではないでしょうか。

日本が今後も国際的な競争力を維持していくためには、「実体ある事業を育てられる起業家」をどう迎え入れるかが問われています。経営・管理ビザの在り方もまた、その視点から再設計されるべき時期に来ていると言えるでしょう。

現場で制度に向き合う立場として、実態を見極める視点が制度設計に反映されることを、強く期待したいと思います。

出入国在留管理局申請取次行政書士
稲福 正直

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

稲福 正直をフォローする
入管法未分類
シェアする
稲福 正直をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました