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ミャンマー人材「特定活動」によるフリーター化について考える

入管法

こんにちは、行政書士の稲福です。

今回は、本国に帰国することができないミャンマー人に対して緊急避難措置として認められている「特定活動」の在留資格について私見を交えながら解説していきたいと思います。

ミャンマー人に付与されている在留資格「特定活動」とは、2021年2月のクーデター以降の情勢不安により帰国が困難なミャンマー人が日本に在留し、就労することを認めるための緊急避難措置のことで、 在留資格変更許可申請を行うことで、現在の在留資格から特定活動へ変更できるという制度のことです。これにより、ミャンマー人は日本での生活を継続し、状況に応じて就労することが可能になります。

申請要件は、以下の3つになります。

現在の在留資格の活動を満了した、または満了する予定の人(在留期間1年:就労可)
自己の責任によらず、現在の在留資格の活動を中断せざるを得なかった人(在留期間1年:就労可)
自己の責任により、現在の在留資格の活動を中断した人(在留期間6ヵ月:週28時間以内の就労可)

※難民申請中および不法滞在中のミャンマー人も対象となります

①は、雇用契約期間が満了した、技能実習を修了した、学校を卒業した等が対象となり、②は、技能実習の継続が困難となり、監理団体が実習先変更に係る措置を講じたにも関らず、新たな実習先を確保できなかった等が対象となります

そして、③に関しては、技能実習を修了していない、雇用契約期間内にも関らず自己都合で退職した、学校を退学した場合が対象となりますが、許可後、おおむね1年間刑罰法令違反や入管法令違反を犯すことなく、適正な在留を行っていると認められるなど、個々の事案に応じて在留状況等をふまえて、「在留期間1年:就労可」が許可されることもあります。

しかし、近年、ミャンマー国籍の外国人材を巡って、在留資格の運用を通じて生じている「特定活動によるフリーター化」が問題になっています。

例えば、本来は就労分野・業務内容が厳格に定められている在留資格「特定技能」について、許可が下りた直後、あるいは下りる前後のタイミングで在留資格を「特定活動」へ変更申請するケースが散見されております。

具体的には、本来は就労分野・業務内容が厳格に定められている在留資格「特定技能」について、許可が下りた直後、あるいは就労開始まもなくのタイミングで、在留資格を「特定活動」へ変更申請するケースが散見されるようになっています。

ミャンマー国籍の外国人が「特定活動」が通りやすい背景として、上述した国内情勢の不安定さや帰国困難を理由とした人道的配慮に加え、過去の特定活動(就労可)運用の蓄積があり、「個別事情を考慮する特定活動」として比較的柔軟な判断がなされてきました。

このため、特定技能では、 分野・業務・雇用先が厳格に定められている一方で、特定活動に関しては、 個別指定で就労制限が実質的に緩いという構造が生まれ、「特定技能より特定活動の方が自由に働ける」という逆転現象が起きています。

具体的には、特定活動の内容によって「職種・業種の指定がない」「雇用先の変更に制約がない」※「フルタイム・アルバイトの区別がない」など、就労制限が事実上なくなり、業種・職種を問わず働ける状態になります。結果として、特定技能としての受入れ体制や雇用計画が形骸化し、受入企業の管理が及ばない就労が可能となることによる、実態としてフリーター化が生じているのが現状です。

※「就労可」と「週28時間以内の就労」の2つのパターンがあり、週28時間以内の制限がある場合、フルタイムでの雇用はできません。

そのため、特定技能が下りた瞬間、また就労開始直後に特定活動へ切り替えるという行動が、合理的な選択肢として成立してしまっているのです。

本来、特定技能制度は、人手不足分野において、業務内容・労働条件・支援体制を明確にしたうえで、中長期的に就労してもらうことを前提とした制度です。その前提が、在留資格の変更によって簡単に崩れてしまうのであれば、制度全体の信頼性そのものが揺らぎかねません。


さらに問題を複雑にしているのが、ミャンマーを巡る国際的な状況の変化です。アメリカでは、ミャンマーについて「帰国が可能な状況にある」として、一部の特別措置的なビザの取り扱いを見直す動きも出ています。つまり、「人道上の理由による長期滞在」という前提が、国際的にも再検討され始めている中で、日本だけが実質的な無制限就労を許容し続けることには、制度設計上の歪みが生じていると言わざるを得ません。

この問題は、ミャンマー人本人のモラルだけの問題でも、一部の悪質な仲介業者だけの問題でもありません。在留資格の運用と制度設計が、結果として「抜け道」を生んでしまっている点に、本質があります。

特定技能制度を維持するためにも、また、真面目に制度に沿って受け入れている企業や外国人を守るためにも、今後は、

●特定活動への安易な切り替えを前提とした運用の見直し
●在留資格変更の審査基準の明確化
●受入企業・支援機関への適切な指導

といった対応が、避けて通れない局面に来ていると感じます。

ただし、近年は、特定技能許可直後・直前の切替が増えていたり、特定活動が事実上の「就労無制限ビザ」として利用されているなど、制度目的(人道保護)と実態(フリーター就労)が乖離している点について、入管内部でも明確に問題意識が共有されつつあります。

今後は、特定技能申請中の特定活動への切替については 切替理由・経緯の厳格な確認、特定活動(就労可)の付与について 業務内容・就労形態の明確化、「特定技能からの逃げ道」と見られるケースについては 不許可・短期許可・更新制限といった運用が、徐々に強まる可能性があります。つまり、いまは通っている運用が、ある日突然通らなくなるリスクを内包していると言えるでしょう。

さいごになりますが、ミャンマーを巡る在留資格運用は、「善意の柔軟運用」が積み重なった結果、制度の境界線が見えにくくなっている分野です。しかし、制度は曖昧なまま使われ続けるほど、ある日突然引き締められるという側面も持っています。だからこそ今、「制度の趣旨に沿っているか」という原点に立ち返る必要があります。

現場に立つ行政書士として、今後もこの分野については実務と制度の両面から、注意喚起と情報発信を続けていきたいと思います。

出入国在留管理局申請取次行政書士
稲福 正直

この記事の監修者
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所 行政書士
稲福 正直

アソシエイツ稲福国際行政書士事務所
代表行政書士
沖縄県那覇市出身
明治大学法学部法律学科卒業
東京都行政書士会
会員番号第15128号
専門は、建設特定技能ビザ申請・建設業に係る申請等

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