こんにちは、行政書士の稲福です。
この記事では、建設現場での『技人国』偽装就労の実態とそのリスクについて解説していきたい思います。
近年、日本の建設業界では慢性的な人手不足が続き、外国人労働者の受け入れが加速しています。
しかしその一方で、「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」という本来、ホワイトカラー向けの在留資格を取得した外国人が、建設現場で肉体労働をしているケースが後を絶ちません。
これは一見すると、単なる柔軟な労働配置のように思えるかもしれませんが、実際には入管法違反となる偽装就労であり、企業・外国人双方に重大なリスクをもたらします。
この記事では、建設業界における「技人国」の偽装就労の実態、そしてその背景や対策について、わかりやすく解説します。
在留資格『技術・人文知識・国際業務』について

『技術・人文知識・国際業務』は、以下のようなホワイトカラー業務が対象とした在留資格です。
☑技術分野(例:土木・建築・機械・電気などの工学系の設計や開発)
☑人文知識分野(例:法律、経済、社会学などに基づく業務)
☑国際業務(例:語学を活かした翻訳・通訳、貿易関連業務など)
つまり、専門的な知識や技術を必要とする業務に外国人が従事することを想定した在留資格で、現場作業員(ブルーカラー)としての就労は認められておりません。
また、大卒や専門学校卒など一定の学歴・実務経験が必要となり、設計や施工管理、CADオペレーター、事務職などで就労することを想定しております。
次に、在留資格『技人国』の該当性ですが、現場作業ではなく、専門的な知識や技術を必要とする業務に従事することが求められています。
建設業において、就労が認められている業務は以下のようなものがあります。
設 計・・・CADを使った設計業務、構造計算や建築法規の検討、建築図面作成補助など
施工管理・・・建築プロジェクトの計画・管理、現場監督、工事のスケジュール・安全管理
積算・見積り・・・技術的知識を要する内勤業務
技術事務・・・インフラ開発等技術提案、工事に必要な技術資料の作成、工事報告書作成、計画書作成 等
設計ですと、CADオペレーターは、パソコンのソフトで建物を設計する専門職であり、建築士の描いた図面を読み取る能力と、CADを操作するスキルが必要となっており、また建設法令や、建設についての専門用語の知識も必要です。
また、施工管理は現場のスケジュールや品質などを管理し、現場監督は現場で職人をまとめて指揮を執りますので、ともに現場での監督・管理を職務内容とするので、土木・建築に関する高度な専門的知識がなければできない職務となります。
その他にも、建設業の事務職には、総務、人事、経理、会計、法務、マーケティングなど、さまざまな職種があったり、営業職は工事案件の獲得を担当し、建設・建築などの自然科学系の知識や、会社の経営やビジネスに直結する法務、経済、経営、会計などの人文知識が必要になります。
つまり、『技人国』での就労は 、専門的な知識や技術を必要とする業務であるホワイトカラー職に限定されており、建設現場での肉体労働はできないことになります。
『技人国』での偽装就労とは

『技人国』での偽装就労とは、『技人国』の在留資格では本来認められていない現場作業を行わせることを指します。
前述したとおり、『技人国』は、専門的な知識や技術を活かして、ホワイトカラー業務(建設業で言えば、施工管理や設計、積算などが該当)に従事する外国人のための在留資格ですが、建設会社の中には『技人国』の在留資格で外国人を雇用し、本来その資格で認められていない現場での鉄筋・型枠・とび作業やコンクリート打設や解体工事、また内装や塗装などの補助作業のような現場の単純作業(肉体労働)を行わせているというのが実状です。
言うまでもなく、これらは「技人国」の在留資格外の活動であり、このような現場作業は、建設特定技能や技能実習の在留資格でなければ従事することはできません。
このよに、『技人国』の在留資格を持つ外国人材に対して、現場での肉体労働(型枠、鉄筋、とびなど)を行わせることを『偽装就労』と呼びます。
そしてこれは、本人の在留資格の活動内容を大きく逸脱する違法行為となります。
偽装就労が発生する背景について

それでは、建設業で偽装就労が起きてしまうのか、その背景や原因をわかりやすく解説します。
①特定技能や技能実習の受け入れ準備が整っていない
本来、現場作業をさせたい場合は「特定技能」や「技能実習」といった在留資格を活用すべきですが、それには一定の制度的・実務的準備が必要です。
必要な準備として、特定技能ですと、受入計画の認定、技能評価試験合格者の採用、支援計画の実施体制など、技能実習ですと、監理団体との契約、技能実習計画の認定、生活支援体制の構築等があります。
これらの準備や手続きは煩雑で手間がかかり、多くの中小建設業者にとって負担となり、即戦力を簡単に使える『技人国』の在留資格を持つ外国人材に頼ってしまうという構図があるのです。
②採用コストが安い
外国人材を雇用する際のコスト面においても、『技人国』と『特定技能』『技能実習』では違いがあります。
まず、技能実習ですが、受入れまでの費用として、監理団体への手数料や現地送り出し機関費用(研修、書類手続など)、受入れ後の費用として、監理団体への監理費(月2〜5万円程度)が発生します。
そして、特定技能の場合ですと、支援計画に基づいた義務的支援を登録支援機関へ委託した場合の支援委託費(月額1〜3万円)が発生します。
それに対し、『技人国』の在留資格を持つ外国人の場合ですと、紹介会社を通さなければ初期採用費用が発生せず、また、監理団体や登録支援機関を通す必要がないため月額支援コストもかかりません。
このように、費用構造がシンプルで、かつ外国人労働者への支援計画の策定(支援義務)もないため、あえて『技人国』の在留資格を持つ外国人材を雇用し、現場作業をさせてしまっているという実態があります。
➂在留資格の制限
日本の在留資格制度には、単純労働を目的とした一般的な在留資格が存在せず、この制度的な制約が、偽装就労の背景にあります。
つまり、業務範囲が分野ごとに限定される『特定技能』で認められている業種を除き、単純労働に従事するための一般的な在留資格がないため、受入れ企業側は(特定技能での在留資格が認められていない業種においては)技術職として『技人国』の在留資格を持つ外国人材を採用と申請し、実際には現場作業員として働かせるという手法を使うことがあります。
④外国人労働者側の事情
来日前や就職時に、企業や仲介者から通訳として働けると説明され日本に来たにもかかわらず、いざ働いてみると単純労働を強いられ、母国に戻るわけにもいかず、泣く泣く働き続けるケースも多々あります。
つまり『技人国』の在留資格で日本に来たはずが、現場作業や単純労働など、本来認められていない仕事をしているというパターンです。
このようなケースにおいて、外国人労働者も日本で働き続けたいという希望があるため、不当な労働環境に声を上げられない状況が続いたり、多少のリスクがあっても働かざるを得ないケースもあります。
しかし、在留期間の更新時に、在留期間中に実際に従事していた仕事内容を立証できない場合には、更新が不許可になることもあります。
⑤書類審査中心の制度の隙
『技人国』は他の在留資格は、書類だけでの審査が中心で、入管は在留資格取得後の就労実態まで細かく把握していないため、偽装就労を見逃す温床になっているのが実状です。
また、中小建設会社などでは、在留資格に関する管理が甘いこともあり、とりあえず現場に行かせてみるたり、見つからなければ大丈夫という制度の隙につけこんだ就労実態が、偽装就労を生む要因になっています。
⑥入管法の知識不足
一部の建設会社では、「技人国=外国人を雇えるビザ」くらいの認識しかなく、就労資格の内容を理解せず現場に入れてしまうケースも存在します。
また、建設業界特有の多重下請構造も、偽装就労が生じやすい要因となっており、下請構造の中で責任が曖昧に元請け企業が、施工管理として雇ったとしても、実際には下請け現場で肉体労働に従事させていることがあります。
⑦ブローカーの関与
ブローカーとは、外国人材の紹介や就職支援を行う中で、不正を斡旋する仲介業者のことで、合法的な人材紹介会社を装いながら、裏では違法行為を助長している存在もいます。
よくある手口として、
●偽装書類の作成支援
「事務職」として雇用契約書を作成し、実際は現場作業をさせる。
●在留資格の形式的な維持
オフィスでの短時間勤務や形式的な事務作業を報告し、実態とは異なる内容を入管に提出。
●本人にも誤解を与える
外国人本人に「この働き方で大丈夫」と誤認させ、違法就労の自覚がないケース。
また、外国人材紹介業者やブローカーが、「技人国の在留資格を取れるから、日本に来させましょう」と甘い言葉で企業に紹介し、結果的に不適切な就労をさせてしまうケースもあります。
偽装就労の法的リスク

企業が偽装就労に関与した場合、以下の法的責任が問われる可能性があります。
企業側のリスク
不法就労助長罪
罰則として、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
不法就労助長罪とは、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりした者を処罰するもので、入管法73条の2に規定されています。
働けない外国人と知りながら雇用したり、知らなかったとしても身分確認などをきちんと行わないで雇用していた場合に罰せられるということで、不法就労していた外国人労働者本人はもちろん罰せられますが、企業も処罰の対象です。
意図しなくとも、確認不足などの過失が企業にあった場合は処罰を免れないという点がポイントです。
在留資格取消の対象
入管の調査で発覚すると、企業の信用が失墜し、技能実習や特定技能の受入停止になる等、将来的に外国人雇用そのものが難しくなる可能性もあります。
労基法違反・安全配慮義務違反
技人国で現場作業させると、本来の教育・保護体制が整っていないため、労災時に重大な責任を問われる可能性があります。
外国人本人のリスク
不法就労罪
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方に処せられます。
出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、資格外の活動をしている外国人が働くことは『不法就労』に該当し、「知らなかった」や「指示されたからやった」では免責されませんので注意が必要です。
在留資格の取消・強制退去
申請した業務と異なる仕事をしていると判断されると、在留資格の取消や退去強制処分となる可能性が高いです。
再入国不可のペナルティ
不法就労に関与していた場合、5年間再入国禁止となる場合があります。
就労ビザ更新が困難に
一度違反が発覚すると、将来的な在留資格の変更・更新も困難になります。
偽装就労を防ぐための取組について

偽装就労を防ぐためには、企業も本人も在留資格ごとの就労範囲を正確に理解することが何より重要で、もし現場作業が主であれば、「特定技能」や「技能実習」での受け入れを検討するべきです。
また、雇用前に職務内容の整合性をチェックする体制を整えることも大切です。
①虚偽申請・偽装に対するリスク認識の共有
偽装就労により『不法就労』が発覚した場合、外国人労働者本人のみならず、企業側も不法就労助長罪などに処されるリスクがあります。
特に建設分野では、「現場で働いてもらえればOK」という安易な認識がトラブルの引き金になりがちですので、企業として必要なのは、「制度の正しい理解」と「社内でのリスク認識の共有」です。
適切な対応を行うことで、外国人材の活用とコンプライアンスの両立を実現しましょう。
②在留資格と職務内容の適正なマッチング
現場で働かせたいなら、『特定技能』や『技能実習』などの在留資格で受け入れる必要があります。
『技人国』は現場作業NGという原則を正しく理解しましょう。
➂入社後の業務実態の確認・定期モニタリング
外国人雇用のための社内体制を整え、外国人労働者を雇用する際に適正な労働契約を締結し、業務内容と在留資格を厳密に一致させることが重要です。
また、社内の労務管理体制を強化し、不法就労を防ぐチェック体制を構築する必要があります。
その他にも、職務内容の明確化と就業規則の整備をすることにより、外国人労働者が従事している業務内容が正しいのかを再度確認明確し、入管からの調査にも対応できる体制を構築すべきです。
④外部専門家との連携
行政書士など制度に詳しい専門家の支援を受け、適切な人材配置を徹底するなど、適法な受け入れ体制を作ることも重要です。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。
この記事では、建設現場での『技人国』偽装就労の実態とそのリスクについて解説しました。
外国人労働者は、建設業にとって貴重な戦力ですが、制度の理解と正しい活用が不可欠で、特に在留資格に対する認識の欠如はリスクが非常に大きいです。
特定技能や技能実習など、現場業務に適した在留資格を選び、しっかりと受け入れ体制を整えることが、企業にとっても外国人材にとっても安心できる雇用の第一歩となります。
適切な外国人材の活用こそが、これからの建設業を支える鍵となってくると思います。
さいごに
アソシエイツ稲福国際行政書士事務所では、建設業者様が特定技能外国人を雇用するために必要な申請業務をサポートしております。
また、建設業許可申請もオンライン(JCIP)にて全国対応しております(大阪・兵庫・福岡を除く)。
お問い合わせフォーム、お電話、LINE@にて初回限定の無料相談サービスも行っておりますので、是非一度ご相談下さい。


















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